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★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その30) ビートルズを批判した人々(その2)

ビートルズ ポップス 洋楽

前回書いたノエル・カワードよりもっと辛辣だったのは、イギリスの歴史家であり、ジャーナリストであったポール・ジョンソンです。

 

彼は、1964年2月28日にロンドンで出版されている政治と文化に関する雑誌「ザ・ニュー・ステイツマン」に、「ビートリズムの危険性」と題する記事を掲載し、「これは愚かさの神格化である」と評して、ビートルズが市民社会をビートルズ一色に狂乱させた歴史的事実を強く非難しました。

 

そして、ビートルズ・ファンを「愚劣の底なしの亀裂」と罵りました。「まだしもポップ音楽の評論家は、何の考えもなくレコードを買う人より、より文芸的または芸術的である。」と評論しました。彼は、さらに次のように続けます。

 

「将来の希望としては、感受性の高い10代の若者の代表が、「真の」偉大な芸術家(例えば、ミルトン、ワーグナードビュッシーマティス、エル・グレコ、プルースト)達に一生懸命に親しむことであり『聴くに耐えずその必要もない音楽と称する代物』を聴くことでは無い。」

 

「なぜ、良い大人たちまでが『シー・ラヴズ・ユー』を選ぶのか?一つには、歌詞が簡単で理解しやすいことにあると思われる。しかし、私は、実際のところ、関連する音楽の影響がとても強いため、ある人がビートルズのことを頭に思い浮かべた時に、その人がすぐに思い付いたその曲は、結局、ビートルズが書いた一連の曲となったのだと考えたい(つまり、ビートルズ現象の影響が絶大だったため、ある人がビートルズの名を聞けば、自然にその曲を思い浮かべたということです。ただ、すいません、この箇所はちょっと自信ないですf^_^;)。そして、もちろん、曲に対する評価は、メロディーや歌詞を無視し、コーラスに注目を集めることで、些細なものとして扱われている。」

 

「リスナーが少しだけ曲を聴きたいと思う時には、繰り返されるコーラスがその当然の候補となるなどとは、特にとんでもない考えである。なぜなら、スラングと非文化的な歌詞が並べられているからである。こんなものは、とても詩とはいえない。」

 

「私は、いわゆる『大人』があの曲を聴こうとしない要素として、他にどんなものがあるだろうかと考えてみた。コンサートでもレコードでも、音量はよく問題にされる。多分、ビートルズが、伝統的なバラードよりも、極端にエネルギッシュなロックを強調することにその鍵があると思う。」

 

「彼らの原始的な音響装置を考慮してみると、それまでのコンサートに打ち勝とうとすれば、音量を上げざるをえないのである。そして、コンサートで最も騒がしい音はファンの叫び声である。慣れていない人の耳が潰れてしまうのは当然なのである。」

 

 「多分、何人かのリスナーは、彼らのアクセントから、叙情的な詩を歌うには言語的な障害があると気が付いているであろう。 1963年12月に私が初めて彼らの歌を聴いたとき、特別なイギリス英語には聴こえなかった、単に目新しいことをしているというだけである。」

 

「彼らが話しているの聞いていると、彼らの生まれははっきりしている。だが、例え、グラスゴー訛りがあったとしても、彼らの発音は理解できない。いくつかのヴァージョンを最も大胆な言語学者が挑戦したとしてもである。それに、私は、何人かのリスナー、特に年配のイギリス人たちが、彼らの歌声に仰天させられるのではないかと心配するのである。」

 

「さらにあり得ることは、年配者が彼らの外見にショックを受けて、歌詞に注意が向かないであろうということである。レザーを着ていたなら、彼らはもっと強烈に革命的になれたかもしれない。少なくとも、我々は、マーロン・ブランド(ハリウッドの大スターです。若い頃は、革ジャンを着てワルを演じていました)と彼のギャング集団の衣装を見ているのである。アメリカは、4人の男たちが、スタイリッシュなスーツを着ていることにとても面食らっているように見える。」

 

「その反面、彼らのヘアスタイルは、次のことを示している。彼らがとても反抗的であること、男らしくないこと、市民社会全体に対して脅威をもたらすことなどである。1964年1月31日に雑誌ライフは、彼らを紹介する記事を書いている。その写真の解説では、彼らがイギリス王室にも庶民にも演奏している。」

  

「彼らのうち2人が殆どの曲を書いているが、演奏は丁寧で、プロフェッショナルであるとしているが、その一方で主要な記事は、イギリスにおけるビートルマニアの増殖を伝え、それがアメリカをも侵食するのではないかという恐れについて書いているのである。」

 

「実際、この脅威については、報道の始めの部分でしかあまり言及されていなかった。おそらく、これらは、これから長引くかもしれない恐怖を取り上げていない。雑誌ライフは、彼らが訪れ、去っていったと記している。」

 

ビートルズは、金魚を飲み込み(これは当時、ハーバード大学のエリート学生の間で、新入生が金魚を飲み込むことが流行したことを引用したのでしょう。日本の一気飲みみたいに流行してたんですね)、デイビー・クロケット(アメリカ建国時の英雄です。メキシコからテキサスを独立させるために戦いましたが、アラモ砦の戦いで敗れて捕らえられ、メキシコ政府によって処刑されてしまいました)の帽子を飲み込んでいった(これは、ビートルズがアメリカを席巻したことを苦々しく思い、その例えとしてこのような表現をしたのだと思います)。編集者達は、事態をあまりに軽く見すぎている。 」

 

「実際、古い世代の多くの人たちが、映画『ア・ハード・デイズ・ナイト』が公開されるまでは、ビートルズの侵略について騒ぎ立てていた。その映画は、事態を信じようとしない人たちに対して、どこでもビートルズが彼ら自身に関するユーモアのセンスを持っていること、それに付け加えて、彼らが真剣に音楽に取り組んでいるミュージシャンであることを教えたのである(つまり、映画が良識ある人まで洗脳してしまったことを意味しています)。」

 

「これが始まりに過ぎないことを知っているのは我々だけである。」(終わり)

 

まあ、しかし、よくもこれだけクソミソに書いてくれたもんですねえ(−_−#)っていうか、誇大妄想、あるいは被害妄想的なものを感じますね。しかも、カワードはまだ高齢者でしたから許せますが、ジョンソンはこの頃まだ35歳ですからね。年齢的には、十分ビートルズを理解できる世代です。

 

彼が忌み嫌ったのは、ビートルズを巡る大騒動、彼らのヘアスタイル、リヴァプール訛り、演奏と観客の歓声の音量などです。要するに彼らが市民社会を破壊してしまうモンスターであり、イギリスはすでにその犠牲になった。アメリカもいずれそうなるであろうと警告しているわけです。しかし、知識階層の人でもあっても、いや、だからこそというべきか、見知らぬものに対する警戒心は強烈なんですね。

 

確かに、ビートルズが、アメリカを侵略したことには違いありませんけどね。彼の評論が当たっていたのは、辛うじてその部分だけです(笑)彼は、イアン・フレミングが書いた、ジェームズ・ボンドが主人公の007シリーズの第3作目「ドクター・ノオ」にも噛み付いています。1964年3月6日に、イギリスの政治ジャーナリストのヘンリー・フェアリーは、「スペクテーター」という雑誌で、ジョンソンのこの一連の記事を「ちょっと大げさだ」と批判しています。

 

カワードは故人ですが、ジョンソンは存命中です(2015年1月現在)。驚くべきことに、何とこの記事を書いた35年後の1999年になっても、彼は、まだポピュラー・ミュージックに対する攻撃に躍起になっていて、主に報道機関をターゲットにしていました。

 

彼の夢(というか妄想)では、タイムズ紙は、まだポップコンサートに行ったことがない著名人に購入されているということになっています。その人々は、最近の30年間で、例えば、ディジー・ガレスピーチャーリー・パーカーデューク・エリントン、そしてもちろん、ビートルズなど全く知らないということになっています。いやはや、ここまで来るともはや病気としか言いようがありません(; ̄ェ ̄)

 

ただ、「70歳を過ぎて人間が丸くなった」と本人がインタビューに答えている通り、流石にもう噛み付くことは無くなったようです。これは最近の彼です。

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他にも、当時、彼らを批判した著名人は大勢いました。作家でジャーナリストのウィリアム・F・バックリーは、1964年に「ビートルズは、単に酷いというだけではなく、神聖なものを汚してしまっている。彼らは、恐ろしく、そして音楽的センスのかけらもない。彼らは、独りよがりで芸術のもたらす魔法に無関心で、反音楽の頂点に立っている。」アメリカの映画プロデューサーのデイビット・サスキンドは、1965年に「私がこれまでに会った最も不快な男性グループだ」とそれぞれ語っています。

  

いちいち挙げていたらキリがないのでもうこの辺にしときますが、彼らは、その後世間に大恥をさらしました。その後の彼らがビートルズに対してどのような態度を取ったのかは知りませんが、頬かむりするか、弁解するか、謝罪するかしかなかったでしょう。この轍を踏まないように、私は、自分より若い世代の人達を安易に批判することはしないように心がけています。

(参照文献)THE BEATLES BIBLE, New Statesman, THE WALL STREET JOURNAL, THE TELEGRAPH