★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その68)ポール・マッカートニーのベース・テクニックについて(その5)

ポール・マッカートニーのベース・テクニックについて、具体的な作品を通じてのお話を続けます。もう5回目になってしまいましたが、まだまだ語りつくせません。でも、あまり同じテーマが続くのも何なので、一旦、今回で打ち切りとしてまた別の機会にお話しします。

 

1 AND YOUR BIRD CAN SING(1966)

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(obaudoedu.blogspot)

この曲のイントロでジョンとジョージがユニゾンでギターを演奏している間に、ポールは、対位法を使ってカウンターメロディーを演奏しています。ギターのラインが下降していくのに合わせて、ポールがどのようにベースラインを作っているかが注目すべきポイントです。

 

ベースラインは、ギターと比較するとそれ程ラインをハッキリさせているわけでも、段階的に演奏しているわけでもありません。ただ、第1小節と第2小節の3拍目と4拍目で8分音符を入れています。これらの8分音符を一列に並べてみると、メロディーに対して非常に面白いカウンターメロディーを作り、協調していることがハッキリ分かります。どちらもBからスタートし、やがて分かれて行きます。

 

2 ALL MY LOVING(1963)

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言わずと知れた初期のビートルズを代表する傑作です。そして、ポールは、早くもこの時点で既にメロディック・ベースを始めています。標準的なロックの8ビートではなく、敢えてゆったりとした4ビートを刻み、弾むようなウォーキングベースを弾いています。ダイナミックなノートは、R&Bとジャズの両方のギターの要素を取り入れ、リンゴのハイハットをバックに完璧な対位法を取り入れています。

 

ですから、ベースラインだけを聴くと、完全な裏メロディーになっています。彼は、コーラスとギターソロの時には、フィーリングで演奏しているのではないかと思われます。そして、その当時も今もリードヴォーカルをやりながら、一切ネックを見てないんです!これは、当時のライヴ映像で確認できます。ベースだけでも難しいのに、リードヴォーカルをやりながら、一切ネックを見ないなんて凄すぎますね。しかも、フィーリングでサラッとやってるんですから。

 

3 Tell Me Why (1964)

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前記の曲とはまた違ったポールの洗練されたウォーキング・ベースがバッチリ決まっています。

 

この曲では、基本に忠実にベースのルート音を弾いて、大人しくギターの背後に回っています。ああ、この曲は普通にやるんだと思っていたら、コーラスが始まり、リンゴの派手なクラッシュシンバルが止まった途端、陽気に上着を脱ぎ捨ててウォーキング・ベースを始めます。アドリブなんでしょうか、つい、やりたくなっちゃうんでしょうねf^_^;

 

4  EIGHT DAYS A WEEK(1964)

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シングルカットされ、チャートナンバー1になったポップな曲です。エレキギターアコースティックギター、それに手拍子、これらが存在するにもかかわらず、ポールのベースがやはり元気一杯ですねf^_^;)彼は、スキッフルや初期の頃のエルヴィス ・ プレスリーがお気に入りで、彼のヘフナーからはとても元気なサウンドが聴こえてきます。

 

彼は、モータウンサウンドの影響を強く受けていて、スペースの入れ方に進歩が感じられます。

 

5 NOWHEREMAN(1965)

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ポールは、この頃からリッケンバッカー4001Sを使用するようになりましたが、ヘフナーよりスケールが長いため、音域を広くカヴァーすることができるようになりました。

 

ポールは、この曲でも対位法を使ってギターのカウンターパートを演奏しています。3本のギターとリッケンバッカーが調和し、リンゴの生き生きとしたスネアが響きます。

 

ポールのベースは、曲の他の部分からは独立していて、やりたいことを何でもやっているような印象も受けます。しかし、ジョンの感動的な歌詞をきちんと理解したうえで、それに沿った哀愁とメランコリックな感情を込めたサウンドを奏でています。

 

6  Michelle(1965)

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ポールの初期の頃のベースは、エネルギッシュで活発なものでしたが、アルバム「Rubber Soul」、中でも特にこの作品では、重厚でアコースティックなサウンドを奏でています。アメリカのC&Wの大御所ギタリストであるチェット・アトキンスのフィンガーピッキングのスタイルにも匹敵する程の素晴らしい演奏です。彼は、この作品で不思議なニュアンスを持つスタイルを確立させました。これも聴いているだけでうっとりさせられてしまう美しいベースラインです。

 

注目すべきなのは滑らかでまるで絹のようなベースラインで、対位法を使ってギターコードを詩的に支え、リンゴのハイハットに軽やかに乗せている点で、しかも、この奏法はスタジオでの収録で即興で演奏されたんです。

 

ポールは、1995年に「Bass Player magazine」という雑誌のインタビューで、「『Michelle』をレコーディングする時にベースが必要だとされるまでベースは弾かなかった、それまではベースは座ってヴォーカルをやりながら弾く楽器ではなかった。オープニングで下降していくギターコードに合わせたベースは、私の生涯の中でも素晴らしい瞬間だった。」と語っています。つまり、それまでは、わざわざベースだけを曲のために収録したことはなかったんですね。それだけ、ベースの地位を向上させたということでしょう。

 

7 Paperback Writer (1966)

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武道館コンサートでも演奏されたポップなシングルA面のチャートナンバーワンを獲得した曲です。

 

アップテンポのノリノリなナンバーですが、ベースは対照的に重厚でガツンと来るサウンドを奏でています。それは、なぜかジョンがこの曲にはパワフルなベースが必要だと望んだからで、彼は、ウィルソン・ピケット(アメリカのソウルシンガーで、「ダンス天国」という大ヒット曲があります)のパンチの効いた低音に衝撃を受けて、ポールにそんなサウンドを求めたのです。

 

ポールは、ジョンのリクエストに応えて、新たにレコーディングに参加したレコーディング・エンジニアのジェフ・エメリックに指示し、ラウドスピーカーをマイクの代わりに使うという手法で、強烈なサウンドを得ることを考え出したのです。これは、ポールが考え出した革新的な技術の一つです。

 

もちろん、ポールのベースはここでも強烈なインパクトを与えています。ジョージがギターを弾き始めると、ポールのベースは、ゲートから飛び出したジェットコースターのように走り出し、時折一息つきながら、予想もできないほど跳ね回っています。

 

ジョージのギターリフ、ジョンのトレモロのリズム、リンゴの疾走するビート、そしてポールの舞い上がるようなベースがこの曲のドライヴ感を叩き出しています。FAB4の素晴らしいチームワークがこの曲を生み出したのです。

 

ポールのベースフィルは、今では伝説になっています。チャートNo.1を獲得した曲の中でもベースが際立っているのは、この曲が初めてでしょう。

 

8 DRIVE MY CAR (1965)

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たまりませんねえ〜、このベースのグルーヴ感!ギターのラインのオクターヴ下のラインを弾いているのですが、とてもスリリングなサウンドを奏でています。ジョージのギターも良くがんばってポールのベースと見事に協調しています。ポールは、ヴォーカルのところではシンプルなラインを刻んでいますが、「and maybe I love you」のところでは若干ヘヴィなサウンドを弾いています。

 

ベーシストは、この曲でベースが重要な役割を果たしていることを実感します。なので、結構、ベースを始めた人がこれを演奏することが多いようです。確かに、ベースは、曲の底辺を支え、目立つ存在ではありません。しかし、ポールは、そういった楽器の持つ性質に縛られるベーシストではないんです。

 

9 HELTER SKELTER(1968)

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この曲のベースに耳を傾けると、それが高音で三重に録音されていることに気づきます。2つのチャンネルで録音し、ミキシングして三重にしたのではないかと推察されます。それによりインパクトの強い野性的なサウンドが生まれました。そのためにこの曲では、ギターよりベースの方が目立っている印象を受けます。ベースにとって、低音のコードを演奏すること以上に、ギターのサウンドに割り込むことの方が難しいのです。

 

この曲は、ホワイトアルバムに収録されていますが、ジョンは、このアルバムでハードロックをやりたいとメンバーに訴え、それを他のメンバーが受け入れて成立しました。ポールとリンゴが特にジョンのリクエストに的確に応えています。

 

10 LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS(1967)

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これも超名曲ですが、どの楽器もまるで空中に浮いているかのような幻想的なサウンドを奏でています。そして、ベースも例外ではありません。このことは、ビートルズの作品におけるベースが、普通の人が期待するようなベースラインとは全く異なるものの、完璧な仕上がりになっている良い例です。

 

ポールは、こう語っています。「この曲では、ルート音を簡単に弾くことができるけれど、私は独自のメロディーを演奏した。例えば、CからFへコードチェンジするみたいな簡単なことであっても、面白い効果を出している。私は、心ならずもベーシストになったが、その困難を乗り越えることができた。私は、ベーシストになったことを誇りに思っている。それはとてもエキサイティングなことだ。」

 

そして、この曲をジョージ・マーティンと聴きながら談義しています。
ポール「ベースを遅く始めたことが却って幸いしたよ。」
マーティン「その通りだね。」
ポール「ベースを遅く始めたために、メロディック・ベースラインを演奏できたんだ。」
マーティン「どのベースラインもとても興味深い。」
ポール「このアルバム(サージェント・ペパー)もその良い例だ。」

 

11 まとめ

同時代のベーシストと比較しても、ポールをテクニックで上回る人は確かにいました。しかし、リンゴと同じで比較すること自体が無意味なんです。彼は、メロディック・ベースという革新的なベースラインを創造し、ベースという楽器に重要な役割を担わせた先駆者という意味で偉大なのです。それまでは、バンドでも地味な存在で、誰も進んでやりたがらなかったベースを、彼に憧れて始めたミュージシャンはプロ、アマを問わず沢山います。

 

さて、まだまだポールのベース・テクニックを紹介したいところですが、この辺りにしておきます。また、個々の作品について語る時に触れることがあるかもしれません。

 

12 おまけ

公私ともに忙しくなりました。ブログの更新は続けますが、暫くヴォリュームを半分程度に減らします。ご容赦ください。

(参照文献)musicradar, abbeyrd.best

(続く)