★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その93)映画「エイト・デイズ・ア・ウィーク」を観た!(その6)

1 アメリカから観たビートルズ

前回に続いて、藤本、野口両氏の講演の内容をご紹介します。今回は関係者しか知らないホントの裏話をお話しします。長くなってしまうので2回に分けますね。

 

この映画は、どちらかというと、アメリカ人の視点から描いたビートルズ、そして彼らを知らない世代の人たちに向けられた映画だということです。アップルもそこは全面的にロン・ハワードに任せて余計な口出しはしなかったようです。

 

アメリカの当時のファンの女の子たちが「リンゴは鼻がセクシーよ」「ジョージはまつげが可愛いの」と口々にインタヴューに応えているところがとても可愛いですね。この辺りの映像は、恐らく未公開のものではなかったでしょうか?アメリカではリンゴが結構人気があったようなので、特にリンゴをクローズアップしたのかもしれません。

 

ホテルでのポールとリンゴのカメラの奪い合いのシーンも面白いですよね。カメラに向かって、ポール「僕を撮って!」リンゴ「いや、僕を撮ってよ!」ポール「僕だって!」リンゴ「じゃあ、お先にどうぞ。」ポール「それじゃあ(ポーズを取る)…」リンゴ「はい、カット!」って、ダチョウかい!(x_x) ☆\( ̄ ̄*)バシッ

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(learnodo-newtonic)

当初は、最後のシェイスタジアムのシーンは、使われる予定はありませんでした。それが途中から使われることになったんです。(その5)でお話ししたように、アップルとこのライヴの主催者のシド・バーンスタインの遺族とがこのフィルムの権利関係で揉めているので、この映画だけ特別に許可が下りたのは何故だか分かりません。バーンスタインの遺族もハワードがハリウッド映画にするならということで許可したんでしょうか?結果として大正解でしたね。あのシーンには大満足したファンも多いでしょう。ただ、DVDにならないのは残念です(+д+)

 

ハリウッドボウルのライヴも、元々は、映画に入っているものをサウンドトラックにしてリリースする予定だったんです。まあ、それが普通ですからね。しかし、CDをプロデュースしたジャイルズ・マーティン(ジョージ・マーティンの息子)がそれを嫌がったとか。

 

彼ももう父親ジョージが先にやってますから、「自分は親父とは違うんだ。」ってとこを見せたかったんでしょうし、実際、技術も当時より遥かに進歩してますしね。ですから、アップルも最初は「サウンドトラック版」と銘打っていましたが、途中から「関連商品」という風に差し替えています。

www.youtube.com

映画では、画質も音声も格段に良くなっています。あくまでもドキュメンタリーであるということを貫けば、画質も当時のものを使うべきところです。しかし、それでは若い人たちが映画を観てくれないだろうということで、画質を4Kでレストアして格段に向上させました。そして、画質だけが良くなったにも拘わらず音声がそのままだと、非常にアンバランスになってしまうので、音声のリマスターにも力を入れたんですね。

 

この手法には、賛否両論あるかもしれませんが、私は、これで良かったと思います。本物のドキュメンタリーじゃなく、あくまでエンターテイメントなんですから、やっぱり誰もが楽しめるものでなきゃ。特にビートルズを知らない若い人にアピールするためには、品質の向上は必須だったと思います。

 

2 日本側スタッフの奮闘

(1)アップルからのお達し

この映画の日本語字幕を担当したのは、最近、ハリウッド映画の多くを手掛けている松浦美奈氏です。ですから、翻訳の手法は、ハリウッド映画スタイルで音楽寄りではなかったんですね。藤本氏は、ピーター・ホンマ氏と共同で、入れられた日本語の字幕をチェックして日本語として通りが悪いとか、事実関係をチェックし、その後、英語の台本と照らし合わせてチェックする監修をしました。

 

映画の中で、歌詞が画面に出ずに曲だけが流れているシーンがあります。例えば、トゥモロー・ネヴァー・ノウズなんかは、曲が流れていても曲名は入っていませんでした。しかし、入れておかないとビートルズを知らない人には曲名が分からないので、字幕をどのタイミングでどこに入れるか苦労しながら入れたそうです。白い画面で字幕も白いと見えないとか。たった5日間しか与えられない中での、急ピッチの作業でした。

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Pinterest

ところが、藤本氏が良かれと思ってやった作業なのに、アップルから台本に歌詞が上がっていない箇所は曲名は入れないようにと指示があったそうです。ホント、一々うるさいですね(ー ー;)BGMで流れていて要らないというならまだしも、ちゃんと演奏されているのに曲名が分からないんじゃ、聴いた人が良い曲だと思っても探しようがないじゃないですか!

 

それで、せっかく入れた曲名を後から削除したので、曲名がないのに曲だけが画面に流れるなんてことになりました。ビートルズを知らない人は、「この曲、良い曲だけどなんて曲名だろう?」と疑問に思ったでしょうね。

 

ただ、1曲だけ削除し忘れたところがあるんだそうですf^_^;さあて、どこでしょうね?残念ながらDVDでは削除されてしまうので、今となっては藤本氏かホンマ氏じゃないとどこだか分かりません。歌詞が入っているところは、ちゃんと翻訳してありますが、ビートルズを知らない人にはその方が絶対親切ですよね。ファンじゃないと英語の歌詞だけ見ても、曲名はまず分かりませんから。

 

映画の字幕を入れる作業というのは結構大変なんですよ。語学に堪能なことは当然ですが、言葉のセンスもないといけないし、短い行数の中に収めないといけませんから。ジョークをそのまま翻訳しても意味が通じませんしね。画像が切り替わっているのに字幕が残っていてはおかしいですし、観客が読めるスピードに合わせないといけません。

 

ただねえ、EMIスタジオで映画のタイトルになった「エイト・デイズ・ア・ウィーク」を収録するシーンがあるんですがね。これは前奏がコーラスになっているヴァージョンで、シングルカットされたものではないんです。

 

それは良いんですけど、そのワンテイクを収録した後に、ポールがマーティンに向かって「今のはOKか?それともクソか?」と確認するシーンがありました。発言のニュアンスからすればその通りなんでしょうけど、もう少し他に翻訳しようがなかったのかな?せめて「ダメか?」とかね。ちょっと、品が無さすぎじゃないかと思いました(^_^;)いや、単なる個人的意見です。

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(Inside the Rock Era)

(2)アップルの社員は意外にビートルズを知らない

これも余談ですが、アップルの社員は、細かいことに口出しする割にはどうもビートルズのことを詳しく知らないらしく、コンサートの日付なども平気で間違えて入れてたりしたんだそうです。

 

例えば、シェイスタジアム・コンサートの日付を1965年8月23日にしていたところなんかはそうですが、本当に初歩的なミスですね。これは藤本氏がKADOKAWAに言って訂正させたそうです。社員だからといってファンとは限らないとはいえ、自社の大切なブランドなんだから、ちゃんと理解しておいてもらいたいもんですヽ(#`Д´#)ノ

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(solobeatlesphotosforum) 

(3)それでもチェックが漏れてしまった

藤本氏も時間が限られている中で何度もチェックしたんですが、ちょっとおかしな箇所があるんだそうです。映画を観てまだ字幕が間違ってないかチェックしてたんだそうです(^_^;)これは職業柄しょうがないですよね。で、やっぱり間違いという程ではないんだけど、ちょっと意味の通らない箇所を見つけたそうです。

 

例えば、それまでビートルズは5千人規模の会場でコンサートをやっていたんですが、警察の警備が大変なので、5千人を10回やるなら5万人を1回やるのも同じだろうということで、5万人規模の会場でやってくれと要請が来ました。しかし、字幕では5千人「も」入る会場ではやらないでくれと表示されていて、そこはちょっと意味が通らなくなっていますね。本当は「しか」と表示しないといけなかったところです。というかもっと正しく翻訳すると、「5万人入る会場でやってくれ」ですね。DVDでは修正されているはずです。

(続く)

 




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