★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その96)ジョージ・ハリスンのギター・テクニックについて(その1)

1 ジョージのギター・テクニックについての論争

 ジョージ・ハリスンはギターが上手かったのか?」この議論は、ビートルズ時代からずっと続いています。特にファンでない人はかなり厳しい評価を下す傾向があるようです。リンゴと同じように「彼は、ビートルズのメンバーだったから有名になれたのだ。」と言う人も少なくありません。

これまでリンゴ・スターのドラミング、ポール・マッカートニーのベース・テクニックについてお話してきました。いずれもこれまで誤解されてきたというか、過小評価されてきたと思われたからです。 

では、実際のところ、ジョージのギター・テクニックはどうだったのでしょうか?折しも11月29日は彼の命日にあたります。偶々、参加しているフェイスブックのファン・グループで、彼のギタープレイで好きなものを尋ねたところ、実に多くの方から様々な投稿がありました。それも人それぞれで好みが違うんですよ。皆さん、流石にファンだけあって実に良くご存知です。そこで、今回は、彼のギター・テクニックについて検討してみることにしました。 

2 ジョージに対する評価は低くないか?

(1)内なるライヴァルの存在

ビートルズには、ジョンとポールという2人の天才が存在しました。彼らは、そびえたつ絶壁のようにジョージの前に立ちはだかったのです。また、彼は、メンバーの中では一番年下だったということもあり、何時まで経っても「弟分」的な扱いを受けていました。

その上、楽曲の殆どはレノン=マッカートニーの作品でした。そのせいで初期の頃は、ギター・ソロもなかなかやらせてもらえませんでした。彼自身も控えめな性格で「クワイエット・(静かな)ビートル」と呼ばれていた位ですから。でも、それでちゃんとバランスが取れていたんです。もし、彼が「オレがオレが」って前へ出る性格だったら、とっくにビートルズは空中分解していたでしょう。

 

 (2)外なるライヴァルの存在

ジョージは、2015年12月18日、「ローリングストーン誌が選んだ100人のロックギタリスト」では、11位に選出されています。ただ、彼をあまり評価しない人は、これでもかなり上の方だと考えています。因みに1位は誰だと思いますか? 

ジミー・ヘンドリックスでした。2位がエリック・クラプトン、3位がジミー・ペイジです。まあ、これは人により好みがありますし、時代によっても変わりますからね。ただ、プロが多数決で決めるとこうなったということです。プロと言っても限られた人ですから、偏りはあるでしょう。 ただ、ヘンドリックスに関しては常にトップ3をキープしています。

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面白いことに2007年10月2日に遡りますが、IDOLATER 誌が「最も過小評価されているギタリスト」のランキングも発表していて、ジョージは堂々の第4位にランクインしていることです。つまり、彼は、あまりに過小評価されていると多くのプロは感じているということです。 

ジョージにとってちょっと不運なのは、彼の後輩であり、かつ親友にエリック・クラプトンがいたことです。彼は、素晴らしいギタリストであり、そのブルージーなプレイは見事としか言いようがありません。

 

「プリンス」という2016年に急逝したアーティストがいました。彼は、素晴らしいコンポーザーであり、ヴォーカリストであり、ギタリストでした。しかも、自分自身を描いた映画で主演し、アカデミー主演男優賞まで受賞するという正に天才でした。

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しかし、これ程の天才でありながら、どうしても彼が勝てない天才が同世代にいたのです。それがあのマイケル・ジャクソンでした。同世代に生まれてしまった不幸ってあるんですよねえ。神様のいたずらとしか思えません。

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これもついでですが、過小評価されているギタリストの1位もプリンスでした。彼のテクニックは超絶だったんですが、そのことは何故かあまり知られていないんです。 

3 ソロ・プレイをあまりやらなかったのはなぜ❓

彼のテクニックへの評価があまり高くない理由の一つとして、ソロ・プレイをあまりやらなかったことが挙げられると思います。というよりは、前述したようにジョンとポールがなかなかやらせてくれなかったんです。ビートルズ時代の楽曲のほとんどは、レノン=マッカートニーの作品でした。必然的にジョージには彼らの作品に合うプレイが求められることになりました。初期の頃の作品は3分未満の短いものが多く、延々とソロ・プレイを披露する必要がなかったのです。 

華麗なギター・ソロは、ギタリストにとっては正に腕の見せ所です。バンドではどうしてもまずヴォーカルに注目が集まります。そして、ヴォーカルが中断してギター・ソロに移ると、俄然ギタリストに聴衆の目が移ります。しかも、アドリブを加えるのが難しいヴォーカルと違い、ギター・ソロは、ギタリストに全てが託され、彼に与えられた時間の中で、好きなようにアドリブを加えることができます。 

しかし、ジョージは、延々とギター・ソロをやったり、リフを入れたりすることはありませんでした。彼は、恍惚の状態でソロ・プレイをやるより、むしろ、自分に与えられたパートを演奏する際に、バンドのギタリストとして要求される正確なサウンドを正確なタイミングで演奏することに専念していたのです。彼が謙虚であまり目立ちたがらない性格だったことも、そんな奏法を選択した理由だったかもしれません。 

4 出発点が他のギタリストとは違った

そもそも誰の影響を受けてギターを始めたかが他のギタリストとは違う点もあるのかもしれません。ジミー・ヘンドリックス、エリック・クラプトンジミー・ペイジたちのような多くのロックギタリストは、ロバート・ジョンソンやマディー・ウォーターズなどのブルース系のギタリストの影響を強く受けています。ブルース系のギターは、コード進行のパターンが決まっているので、アドリブを入れやすいんですね。  

ところが、ジョージは、彼らとは違う二人のギタリストの影響を強く受けています。一人は、カール・パーキンスで「ロカビリー界の王」と呼ばれ、プレスリーやヘンドリックスらにも影響を与えました。ロカビリーとは、ロックンロールとヒルビリーやカントリーが結合して誕生したジャンルです。50年代後半から流行し、プレスリーに代表される独特の歌唱法に特徴があります。

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ビートルズ自身も強い影響を受けており、ポールは、「パーキンスが存在しなかったら、ビートルズは存在しなかった」とまで語っています。彼の代表曲といえば「ブルー・スエード・シューズ」が余りにも有名ですね。もっとも、これは後でプレスリーがカヴァーして、そっちの方が有名になってしまいましたが(^_^;) 

ビートルズが解散し、それぞれソロになってからも、彼らのパーキンスに対する尊敬の念は変わらず、自分たちのイベントにゲストで招待していました。

もう一人は、これもカントリーミュージックの大御所、チェット・アトキンスです。あ、そうそうエディ・コクランもそうですね。

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彼らがジョージのギターの原点だとすると、少し謎が解けてきますね。ロカビリーやカントリーは、基本的にブルースと違ってギターソロを延々とやることは余り無いんです。  

次回では、彼がいかに素晴らしいギタリストであるか、特に他のギタリストと違う点を挙げてみたいと思います。それから彼のテクニックを味わえる作品を何曲かご紹介します。

(参照文献)The Top Tens, ofbuckleyandbeatles, ROLLINGSTONE

(続く)


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