★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その102)ジョージ・ハリスンのギター・テクニックについて(その5)

ジョージのギターが冴えている作品の紹介はいよいよこれが最後です。 

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Beatles By Day)

1    タックスマン

これはジョージの作品であり、傑作の一つといえるでしょう。この作品では、ポールのギターソロに注目が集まりがちですが、実は、作品全体にエキセントリックなテイストを生み出しているのは、他ならぬジョージのギターです。

 

彼のR&Bっぽいリズムギターは、1980年にザ・ジャムがヒットさせた「スタート!」という曲を先取りした感があります。というか、ジャムがインスパイアされたんでしょうね。特にベースに影響が強く感じられます。

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2    アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー

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これもジョージの作品です。彼は、ちょっとトリッキーにギターでフェイドインしていますが、これは、「エイト・デイズ・ア・ウィーク」で取った手法と同じです。このギターリフは、まるで遠くで弾いているかのような感覚にリスナーをいざないます。

 

このリフは、ジョージ自身が2回弾いていますが、1回目は聴こえない位にサウンドを抑えめにしてあります。

 

3    オクトパスガーデン

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ジョージのイントロのギターが印象的な作品です。リンゴのほのぼのとした歌詞とヴォーカルにとても良くマッチしています。ジョージは、レスリースピーカーを通して、まるで海中で演奏しているかのような独特のサウンドを提供しています。

 

   サムシング

ジョージがビートルズ時代に作った屈指の名曲であると同時に、収録されたアルバム「アビイ・ロード」全体を通して彼のギターが冴え渡っています。

 

彼のギターは、それまでのどの曲におけるより、甘美な深い味わいを持つラインを奏でています。これは、彼のギターに対する信頼を更に高め、彼の楽器や創造的な音楽との関係をより深めていったのです。

 

惜しいことに、ジョージがビートルズ時代にその真価を発揮したのは、解散寸前になってからでした。彼は、ソロになってから正に「フリー・アズ・ア・バード」鳥のように自由に大空を飛び回りました。彼にその才能を発揮させる機会をもっと与えていれば、あるいはビートルズの解散ももう少し先に延びたかもしれません。いや、むしろ解散は早まったか?何とも言えませんね。

 

ジョージは、「ルーシー」とニックネームを付けて愛用した1957年製のギブソンレスポールをレスリー・スピーカーに繋いで演奏し、アルバム「アビイ・ロード」全体を通して使用しました。

 

彼のプレイは、炎のように燃えたぎるメロディーを奏で、大胆になったかと思えば、ブルースっぽく静かに落ち着いたサウンドも見せました。このアルバムのレコーディング・エンジニアを担当したジェフ・エメリックは、「ジョージは、自分自身のアビイ・ロードに深く入り込んだのだ。彼は、初めて自分の意見を主張し、自分のやりたいことを正確にやることができた。そして、彼は、この美しい曲を作り、我々に素晴らしいギター・サウンドを提供してくれたのだ。」と語っています。

 

5    ヒア・カムズ・ザ・サン

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作品自体も名曲ですが、ジョージのギターが奏でる不思議なフィーリングのコードとメロディーは、ある意味、彼のテクニックを典型的に表していると言えるかもしれません。彼は、アコースティック・ギターの7フレットにカポタストを装着し、シンコペーションを使ったヴォーカルに上手く重ねています。

 

高いポジションでカポタストを使ったことでギターがマンドリンのようなサウンドになるという効果が得られました。これは、ボブ・ディランが「風に吹かれて」で使った奏法です。

6    ジ・エンド
実質的なラストアルバムであるアビイ・ロードのそれも最後にリストアップされ、正にビートルズの最後を象徴するかのような曲です。レコーディング・エンジニアだったジェフ・エメリックは「彼らは、アルバムの最後にパンチの効いた曲を入れる必要性を感じていた。」と語っています。そして、4人の持つすべてのエネルギーがギター・ソロの35秒間に一気に爆発しました。

 

実は、この曲のレコーディングに当たり、ジョンとジョージのどちらがギター・ソロをやるか決めかねていたんです。そこで、ポールが「じゃあ、3人でソロをやろう。」とポールが提案し、彼がまず先行してソロを始め、ジョンとジョージが続きました。まるで嵐のようなギター・ソロが荒れ狂いましたが、信じられないことにこれは生の収録でワンテイクで決めたのです。同じことをもう一度やれと求められてもできなかったかもしれません。

 

もうこの頃には解散する寸前の彼らでしたが、燃えるようなお互いの魂がぶつかり炸裂したんですね。それぞれ思い思いにソロを演奏したにもかかわらず、ピッタリと息が合っています。とても解散寸前だったとは思えません。

 

エメリックはこう語っています。「彼らは、ソロを各自で適当にやるつもりだったのに、結果的には自然にそうしたかのように素晴らしく息が合っていた。ソロを終えると彼らは微笑んだ。この時、私は、彼らがまだ若く、共同で素晴らしい作品を作ってきた頃のことを想い出したのだと思う。」

 

ああ、こんな素晴らしい演奏ができたのに何で解散しちゃったんだろう(涙)

 

7    ワン・アフター909

この作品は、キャヴァーン時代から演奏していましたが、その頃はゆったりとしたテンポでした。こんな感じです。

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ゲットバック・セッションということであの頃をもう一度思い出そうというコンセプトだったのですが、テクニックはその当時より遥かに進歩していて、アップテンポになりかなり難易度の高い演奏になっています。

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ジョージは、間奏で7~10フレットでソロを決めています。それ程フレットでの移動は大きくはないのですが、ハンマリング、プリングオフ、スライド、チョーキングなどのテクニックを多用し、かなり速いフレーズを弾いています。これも隠れた名曲だと思います。

 

8 オールド・ブラウン・シュー

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これもジョージの作品ですが、彼のエキサイティングなリフとソロがバッチリ決まっています。作品自体は、レノン=マッカートニーがこの頃指向していたブルースっぽいサウンドの影響を受けていますが、不協和音を奏でるピアノ、重いサウンドのベースとリズミカルなリードギターが見事な調和を見せています。

 

解散寸前のビートルズを皮肉ったとも取れる歌詞ですが、それとは対照的にジョージのギターが生き生きしている印象を受けます。あるいは、もう解散が近いことを感じていて、やっと束縛から逃れられるという開放感がもたらしたのでしょうか?

 

9    レット・イット・ビー

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ジョージは、ギターを巡ってポールと口論になり、険悪な関係になっていました。しかし、このギター・ソロは、そんなことを微塵も感じさせない素晴らしいサウンドを提供しています。

 

これには、シングル、アルバムなど色々なヴァージョンがありますが、どれも捨てがたい美しいメロディーラインです。どんな人間関係になろうと仕事はビシッと決める。これがビートルズなんですね。ソロをカヴァーした演奏を聞いてみて下さい。

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10 ジョージ自身の考えはどうだったのか?
ところで、ジョージ自身は、自分のテクニックについてどう思っていたのでしょう?彼は、ハンブルク時代からの友人であるクラウス・フォアマンに対し、「私は、本当のギタリストではない」と語ったことがあります。この発言の真意はどこにあるのでしょうか?また、彼は、作曲について「私と誰かを比較するのは無意味だ。私はシンプルにやるだけだ。」とも語っています。

 

また、後輩のアーティストであるトム・ペティに対し、「ユー・キャント・ドゥ・ザット」冒頭の12弦ギターの素晴らしいリフを思い付いた時のことを語りました。「私はただそこに立っていただけだ。でも、どうすれば良い曲になるか一生懸命考えてあのリフを思い付いたんだ。

 

これらの発言から推測すると、「私は、延々とソロを弾くタイプのギタリストじゃない。あくまでバンドの一員として、要求されるサウンドを正確に出すことに徹しよう。」「華麗なテクニックを披露するだけがギタリストの仕事ではない。重要なのは、その楽曲にどんなサウンドが必要かを追求し、極めることだ。」ということではないでしょうか?

 

11    解散後のジョー

ビートルズが解散後、ジョンとポールは、そのショックからなかなか立ち直れませんでした。対照的に最も元気だったのはジョージでした。彼が新たに取り組んだスライドギターのテクニックは高く評価されました。そして、シングル「マイ・スイート・ロード」を大ヒットさせ、アルバム「オール・シングス・マスト・パス」でその才能を一気に爆発させたのです。

 

解散後の彼についても詳しく書いて欲しいとのリクエストも頂いているのですが、あくまでビートルズがメインのブログなので(^_^;)また、いつか書く時が来るかもしれません。

 

さて、これでジョージのギターテクニックについてのお話は終わりです。次は、またビートルズにまつわるあれこれについてお話しします。

  (参照文献)GUITAR WORLD, POPULARMUSIC

(続く)

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