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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その108)ジョン・レノンのギター・テクニックについて(その3)

 ジョン・レノンのギター・テクニックについての解説を続けます。 

1    ジョン・レノンのギター・テクニックの特徴(再考)

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具体的な作品について解説している途中ですが、もう1回総論に戻ります。話が前後してすいません(^_^;)

 

ジョンは、母親のジュリアが音楽好きでバンジョーを教えてくれたこともあり、ギターを弾くようになりました。当然、バンジョーとギターではコードが違いますから、ギターを弾くためにはそのコードを覚えなければなりません。ところが、彼にはそんな気持ちなどさらさらなく、ポールに教えられるまでバンジョーのコードで通していました。そんなラフなジョンでしたが、プロになってもラフさは変わりませんでした。

 

大好きな音楽でしかもプロなのに、ラフにやるというのは生まれついての性格からなんでしょうね。ステージやレコーディングでミスっても平気でしたし、直そうともしませんでした。その点、ストイックなジョージとは対照的ですね。ジョージは、年齢が若かったこともあり、ステージやレコーディングでは結構テンパったりしてたんです。

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ただ、このジョンのラフさ加減が、とんでもない傑作を生み出したところがまた天才なんですね。彼は、コード進行のセオリーを全く無視した作品を数多く生み出しましたが、これこそ正に彼のラフさがプラスに働いた良い例でしょう。ギタリストとしてもラフさは相変わらずでしたが、それがまたちょうど良いテイストになっていて、作品全体のグルーヴ感をうまく引き出しているんです。

 

あ、そうそう、ジョンは、作詞・作曲はもちろんですが、ギターに関する限り、リック(短い定型のフレーズ)、間奏、リフ、アレンジなどの多くも手掛けていました。例えば、後にご紹介する「アイ・フィール・ファイン」のブルースをベースにしたリフも彼が作りました。

 

特にリックは短いので気が付きにくいのですが、実に上手く挟んでるんです。彼の作曲家としての才能は、こういったところでも生かされていたんです。ただ、レコードにそこまではクレジットされないので、ジョンがこれは自分が作ったと言えばそれを信じるしかないんですが。

 

ジョンの特徴として、右手首を柔らかく使ってストロークし、前腕はあまり大きく振っていません。相当手首が強くないと疲れると思うんですが、これがあのサウンドが生まれた隠れた秘密かもしれません。

 

2    アイム・ハッピー・ジャスト・ダンス・ウィズ・ユー

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ジョンは、アメリカの偉大なロックンロールギタリストである、ボ・ディドリーっぽいリズム・ギターを弾いています。彼がチャック・ベリーらとともに活躍したことにより、それまでリズム・アンド・ブルースと呼ばれていた音楽がロックン・ロールと呼ばれるようになったため、「ロックンロールの生みの親」とも称されています。

 

「ボ・ディドリー・ビート」と呼ばれる演奏スタイルは、コードやメロディーはシンプルにしてリズムを前面に押し出してノリを作るもので、彼こそジョンのリズム・ギターの原点ではないかと思えますね。少し、後の時代になりますがこれが彼の演奏です。

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さて、この作品でもジョンのリズム・ギターのカッティングが冴えています。聴いているだけで本当に踊り出したくなるような素晴らしいリズムを刻んでいます。もっとも、ジョージのギターとのコンビネーションがあることも忘れてはいけません。こんな感じです。

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3 アイ・フィール・ファイン

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この作品を初めて聴くと誰でも衝撃を受けます。イントロでベースが「ボン」と音を立てたかと思うと、ギターが「ンニョ~~~~~」なんてありえないサウンドが流れてくるからです。「な、何だ、この変なサウンドは?」とリスナーが戸惑っていると、実にキャッチーで軽快なイントロが始まります。

 

これは、「フィードバック」という奏法で、エレキギターをアンプに近づけると共鳴してこんなサウンドが出るんです。ちょうどマイクをスピーカーに近づけるとハウリングが起こって「ピー」なんて耳障りなサウンドが聞こえるのと原理的には同じです。やり方は、こんな感じです。

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ポールとジョージは、スタジオでジョンがギブソンのセミアコースティックギターをアンプに近づけているところを見ました。すると、変なサウンドが聴こえてきたのです。それで2人が「それ何だい?ヴードゥー教かい?」と尋ねると、ジョンが「違うよ。フィードバックさ。」「凄いじゃん!」そして、彼らは、プロデューサーのジョージ・マーティンにこのサウンドを録音できないかと尋ね、彼は、多分できるだろうと応えました。

 

その時の様子を語るジョージ・マーティン、そしてポール、ジョージ、リンゴです。マーティンは、恐らくフィードバックをレコーディングに使ったのは、ビートルズが世界初だろうと語っています。

 

ポールは、「ジョンがA弦を弾いてギターをアンプに近づけると、ンニョ~~~~~なんてサウンドが聴こえて来たんだ。何だそれ!と思わず叫んだよ。」ジョージは、「ジョンは、ステージでもA弦を弾いてアンプに近づけてフィードバックをやっていた。彼がジミー・ヘンドリックスを考え出したようなもんさ。」と、後にヘンドリックスがこの奏法を取り入れたことをユーモアを交えて語っています。

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偶然がもたらしたサウンドですが、並みのミュージシャンなら「おっと、いけねえ。」とすぐギターをアンプから離して終わりです。しかし、ジョンは、これは面白いと作品に取り入れたんです。しかも、シングルA面のヒットを狙う大事な曲でやるんですから、天才のやることは凡人にはうかがい知れません。

 

以前にも解説しましたが、サウンドを加工しようと最初に考えたのはジョージですし、実際、「アイ・ニード・ユー」でヴォリューム・ペダルを使用して効果を引き出しました。しかし、それは幻想的な雰囲気をもたらすという効果を上げるという点でまだ許容範囲といえましたが、いきなりイントロで雑音をぶち込むなんて大胆な発想は、流石にジョンでなければ思いつかなかったでしょう。

 

ただ、当時のEMIは、ミュージシャンの収録に関する厳しいコードがあり、フィードバックのような雑音をレコードにすることは禁止していたんです。しかし、ビートルズは、それを無視して強引にねじ込みました。

 

やむを得ず、EMIは、収録時にジョンがうっかりミスしたのをそのまま使ったとアナウンスしました。解散後の1973年にリリースされたいわゆる「赤盤」に添えられたライナーノーツには、まだそう書かれていたと思います。

 

ジョンは、1980年にインタヴューで「ヘンドリックスよりもフーよりも、誰よりも先にフィードバックをレコードにしたんだ。」と語っています。彼が名を挙げたアーティスト以外にもジェフ・ベックブライアン・メイなど、世界中のアーティストたちが、これを取り入れました。

 

そして、ジョンは、この作品で初めてリフから曲を作ろうと考えたのです。彼は、アルバムの全作品にリフを取り入れようと他のメンバーに提案したのですが、彼らはジョンの好きにやったら良いとは返事したものの、実際には収録は殆ど終わっていたので実現しませんでした。

これもアマチュア・ギタリストの演奏を観てみましょう。上がジョン、下がジョージのパートです。バレーで弦を押さえてコードを弾きながら、残りの指を巧みに使ってメロディーも弾いています。指の力もいるし、小指を相当伸ばさないといけません。ジョージも同じようにやってますが、お互いリード・ヴォーカルとコーラスをやりながらですからね。

 

間奏でジョンのリズム・ギターがメロディーを弾きながら下降していくところがカッコいいです。

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(続く)

(参照文献)THE BEATLES MUSIC HISTORY 

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