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★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その117)ポール・マッカートニーのヴォーカルの凄さについて(その3)

1 自然と身につけたヴォーカル・スタイル

私が参加しているファン・グループのある方から、ビートルズの発声法について情報を提供していただきました。

 

プロのヴォイス・トレーナーによると、彼らは、例えば「シー・ラヴズ・ユー」の時に頭を振って発声しているが、あれはパフォーマンスだけではなく、発声法としても理にかなっているということです。

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つまり、ヴォーカルは、首の後ろから鼻腔も開いて発声しないといけないのですが、頭を振ることで自然にそれができ、喉をリラックスさせて良く声が出るようにしています。彼らは、誰に教えてもらったわけでもなく、自然とそういったスタイルを身につけていたとのことです。

 

2   ミックスヴォイスの達人

先にポール・マッカートニーは、「ノン・ヴィブラートの代表格」とご紹介しましたが、同時に彼は、ミックスヴォイスの達人」でもあります。

 

ミックスヴォイスの定義自体諸説があるところですが、簡単に言うと「高音を地声のように出すこと」です。中低音から高音まで滑らかに出せることがポイントです。

 

普通、高音を出そうとすると声が裏返ってしまいますが、そうではなくて地声の延長で高音を出すのです。PAでヴォーカルの音量を増幅できるポップスやロックシンガーは、大体この発声法を使っています。

 

言葉で表現すると簡単ですが、トレーニングしないとなかなか難しいです。ポールがレッスンを受けた記録はないので、自然に出せたかあるいは自分なりに出せるよう努力したのでしょう。

 

ポイントは、声帯を閉じて高音を出すことですが、決して声帯に力を入れずリラックスさせることです。また、鼻と口との間にある「鼻腔」という空間を活用することにより、より声が良く響くようになります(鼻腔共鳴)。

 

3 アレクサンダーテクニークの導入

​さらに調査した結果、ビートルズ解散後のようですが、ポールは、「アレクサンダーテクニーク」と呼ばれるレッスンを受けています。

 

これを創始したのは、F.M.アレクサンダー(1869-1955)というオーストラリアの舞台俳優です。彼は、舞台で声が出なくなったため、その原因を探求したところ、身体と心が密接に連携していることに気づき、このテクニックを開発しました。

「アレクサンダーテクニーク」の画像検索結果 

今やこのテクニックは、舞台や音楽、医学など様々な分野で取り入れられ、ポール・ニューマンキアヌ・リーブスヒュー・ジャックマンなどの俳優、ポールやスティング、マドンナなどのアーティストなど数多くの著名人や団体が採用しています。ごく簡単に表現すると「身体の悪いクセを矯正し、リラックスさせて最高のパフォーマンスができるようにする」テクニックです。

 

ポールが未だにライヴを続けられるのも、これをマスターしたからかもしれません。

 

 

4 具体的な作品

では、いよいよ具体的な作品でポールのヴォーカルをご紹介します。前回の記事で彼は七色の声を持つとご紹介しましたが、【1】ハイトーン・シャウト系【2】明るく元気系【3】うっとり系【4】お茶目系【5】野太い系【6】コーラス系に分類して解説します。

 

5 ハイトーン・シャウト系

ポールは、女性並みのハイトーン・ヴォイス、そして強烈なシャウトでリスナーを圧倒します。

1    ロング・トール・サリー(のっぽのサリー)

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ポールのヴォーカルを語る上で絶対にはずせない初期を代表する名曲です。イントロなしでいきなり天井をぶち破るかのようなポールのハイトーン・ヴォイスが炸裂します。

 

これでKOされた人は、世界中にいるでしょう(私もそうです)。オリジナルは、リトル・リチャードなのですが、ポールは、完全に彼を凌駕しています。オリジナルと比較してみましょう。

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ビートルズがオリジナルのキーであるFを意図的にGに上げたのは、その方がよりポールのハイトーン・ヴォイスを効果的に使えると考えたからです。

 

この曲は、アマチュアの頃からカヴァーしているポールの十八番(おはこ)であり、その自信も手伝ってキーを上げただけでなく、彼の得意のメロディアス・ベースの腕前も披露して、その音楽的才能の素晴らしさを見せつけています。

 

その狙いが大成功だったことは、仕上がった作品を聴けば分かります。しかも、これほどの作品を既に下積み時代に完成させていたのですから、ビートルズのアレンジ能力の高さには、敬服するほかありません。

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冒頭の3小節は、ポールのヴォーカルをよりインパクトの強いものにするために、他の3人は、ギター・リフおよびドラム・フィルを抑えめにし、4小節から一斉に激しくスタートを切りました。このようなメリハリを付けたことで、実に効果的にポールのヴォーカルを引き立てることができたのです。

 

ポールは、リチャードが大好きで彼のマネからスタートしたのですが、この曲では強烈なシャウトで完全に彼を圧倒しました。この作品は、初期のライヴのセットリストには締めの曲として良く入れられていましたが、こんな高い声でシャウトして良く喉を潰さなかったなと感心します。

 

レコーディングは、何とワンテイクで決めました。ポールのヴォーカルとベース、ジョン、ジョージのギター、リンゴのドラム、それにジョージ・マーティンのピアノを加え、新たなテイクを撮る必要も無い程会心の出来だったのです。

 

1962年10月12日、リヴァプールのタワー・ボール・ルームのコンサートで共演したリトル・リチャードは、ポールのヴォーカルの魅力についてこう語っています。

 

「ポールは、特に私の曲が気に入っていて、高校生の頃から演奏していた。彼は、私のシャウトに感銘を受け、私のリヴァプール、それから翌月にあったハンブルクのステージでは、袖にいて私が歌うところを観ていた。誰もがステージで私の曲の一つを歌えば、それで会場全体が明るくなることを知っていた。」下がその時の写真です。

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中央の人物がリチャードですが、顔デカっ!FAB4より一回りでかいよ。ちっとも「リトル」じゃないじゃん(笑)もしかして、リチャードだけ前に出てるの?いや、遠近法おかしいって。 

 

2 アイム・ダウン

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これまた前期の曲の中で、ポールのヴォーカルを語る上において絶対に外せない曲です。前述のロング・トール・サリーをオリジナルにした感じでしょうか。イントロなしでいきなりポールのシャウトからスタートする辺りはよく似ていますね。

 

動画は、伝説のアメリカ、シェイスタジアムでのライヴです。この時は4人がノリまくり、特に間奏でジョンが肘を使ってエレクトリック・ピアノグリッサンドしているシーンが圧巻です。

ポールもロング・トール・サリーをモチーフにしたことは認めていますが、実際には抽象画を描くようなものでそう簡単にできたわけではなく、完成するまでには時間が掛かったと語っています。つまり、彼が言いたいのは写実的な絵は描けるが、却って抽象画の方が何を描けば良いのか分からないという意味で難しいということです。

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この曲が完成してからは、ロング・トール・サリーに代わり、ライヴの締めの曲として使われるようになりました。

 

ポールは、この曲ではヴォーカルに集中するためにベースは控えめにしています。彼は、このヴォーカルについてこう語っています。

 

「私は、リトル・リチャードの声を目指したんだ。ワイルドでちょっとかすれた声で叫ぶ。まるで幽体離脱したみたいにね。自分の現在の感覚から離れて、自分の頭の上に足を乗せて歌うんだ。実際に自分の身体から離れないといけない。そのことに気づくと、ちょっとおかしなトリックみたいで面白いんだよ。」

 

 

抽象的表現の権化ともいえるジョンとは対照的に、ポールは、平易な言葉で表現する達人ですが、う~ん、これはそんな彼にしては珍しく抽象的な表現で難しいです(^_^;)

 

幽体離脱」ってどういうことですかね?自分だけど自分でない?自分自身を俯瞰して見下ろせってこと?まあ、どっちにしろアマチュアバンドの皆さん、この曲のヴォーカルをやる時は、ポールのこの言葉を参考にして下さい(って参考になるのかな?)

ポールは、カヴァーの「ロング・トール・サリー」で師匠のリトル・リチャードを凌駕し、さらにオリジナルの「アイム・ダウン」でより高いステージへ駆け上ったのです。

(参照文献)BEATLES MUSIC HISTORY, THE BEATLES BIBLE 

(続く)

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