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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(号外)ポール・マッカートニーにインタヴューした雑誌の記事の誤りについて

 

1 始めに

このブログは、恐らくビートルズファン、そして、ポール・マッカートニーファン(もちろん、ジョン・レノンジョージ・ハリスンリンゴ・スターも含めて)の皆さん、あるいは彼らに何らかの興味をお持ちの方が読んで下さっていると思います。もちろん、今は彼らに興味はないけれど、このブログを読んだことがきっかけで、彼らに興味を抱いて下さるならなお有難いです。

今回は、ポール・マッカートニーにインタヴューしたある雑誌の記事に明らかな誤りがあることが分かり、それがミスリーディングであることを指摘したくてこの記事を書いたのです。

2 ある雑誌のインタヴュー

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エスクァイアという男性向けの雑誌があります。これは、アメリカの出版社が発刊しており、日本語版も発刊されています。

私は、アメリカ版の2015年8月号の記事にポールの特集記事が掲載されているのを知り、読んでみました。彼が表紙になってますが、相変わらずダンディーですね。

 

彼の現在の音楽活動についての記事が主な内容ですが、彼がインタヴューで日本のファンについて語っているところが私の目を引きました。このことは、以前にこのブログでも書いています。

その記事を原文のまま引用します。

"Esquire: Clearly you don't need the money and you don't need the fame. So what are you doing here playing a series of concerts in Japan, when you could be at home with your feet up? Paul McCartney: Two reasons: I love it, and it's my job. Three reasons: the audience. You sing something and you get this incredible warmth back, this adulation. And who doesn't like that? It's amazing."

(翻訳)

エスクァイア:あなたには富も名声ももう必要ないことは明らかです。あなたは、ご自宅の庭でリラックスして過ごせるのに、なぜ、わざわざ日本で一連のコンサートを開催するのですか?

ポール:理由は二つある。それが好きだから。そして、それが私の仕事だからだ。三つ目の理由は、観客だよ。彼らは、私が歌うと、信じられないくらい暖かい反応を返してくれるんだ。この賞賛なんだよ。これが嫌いな人なんていないだろ?驚きだよ。

何とも嬉しい言葉ではありませんか?ポールは、日本のファンが信じられない位に暖かい反応を返してくれるから、何度も日本でコンサートを開催するのだと率直に答えてくれています。日本のファンとしてこれほど嬉しいことはありません。

しかも、そもそもアメリカの記者がこの話題からインタヴューを始めたのは、余程好奇心を抱いたからでしょう。時間が限られていますから、聞きたいことを優先的に聞かないといけませんからね。

 

記者がなぜそれほどこの問題に関心を抱いたのかは、大体想像が付きます。アメリカは市場がでかいし、ヨーロッパ大陸はイギリスから近いから分かるが、なぜわざわざ遠い国まで何度も行くのか。ある意味素朴な疑問ですよね。

それに対し、ポールは、誰に遠慮することもなく率直に答えています。これって、結構大胆ですよ。だって、下手をすれば他の国のファンから反発を受ける可能性がありますから。それも日本で答えたのならまだしも、アメリカでですからね。

逆に言えば、これは正に彼の本心であり、決してリップサービスではないということです。前にも書きましたが、アメリカの雑誌でアメリカの記者からの取材を受けているからです。日本にこの記事が流れるとは思っていなかったでしょうから、リップサービスなどする必要はサラサラ無かったのです。それにジャパンツアーが終わった後ですから、なおさらですね。

実は、彼の答えには伏線があるんです。この取材は、2015年7月初めに行われています。同年4月下旬に彼は、日本でアウトゼアツアーを開催しました。

そして、武道館公演もラストに追加したのです。その時に、観客のサプライズ演出で、リストバンドが一斉に日の丸とユニオンジャックに点灯し、それに彼が大変感激したことも以前に書きました。それから2か月余りしか経っていませんから、取材の際に彼の脳裏には、武道館公演の記憶が鮮明に蘇っていたことは想像に難くありません。

「ポール 来日 2015 武道館 ユニオンジャック」の画像検索結果

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3 日本語版では記事がすり替えられている!

私は、先にアメリカ版を読んで彼の答えにとても喜び、そのことについて過去のブログでも触れました。そして、日本語版が出版されているのを知り、当然、オリジナルの記事に忠実に翻訳されているだろうと期待して購入しました。

それにこの記事を多くの人が読めば、「これで最後詐欺(笑)」などと揶揄していたマスコミやアンチの人々にも反論できるだろうと考えたのです。

 

ところが、記事を読んで愕然としましたΣ('◉⌓◉’)何と日本に関する記事がきれいさっぱりカットされていたからです!日本語版では、単にポールがコンサートを続ける理由をファンが暖かいからだと答えるに留まり、日本に対する彼の特別な想いには全く触れていないのです💢

日本語版の記事を以下に引用します。

ESQURE:最初に音楽活動を続ける理由を教えてください。お金や名誉はすでに十分におもちです。

PAUL MCCARTNEY:理由は2つある。歌うことが好きだし、またそれが僕の仕事であるからだ。あと3つ目の理由もある。僕の音楽を聴きたいというファンの存在だ。僕が歌う曲に対してオーディエンスが信じられないほどの温かみを持って応えてくれる。その瞬間を嫌に思う人間などこの世に存在しない。とても素晴らしい体験だ。

 

私の翻訳と比較していただければ一目瞭然だと思いますが、見事なまでにインタヴューの趣旨もポールの回答も一般論にすり替えられています。いや、私の翻訳の方がおかしければ遠慮なくご指摘していただいて構いません。しかし、そんなに難しい英語ではありませんから、私の翻訳が間違っていないことは多くの皆さんにご理解いただけると思います。

この記事は誤訳でしょうか?違いますよね?明らかに意図的に改ざんされてますよね?

これでは、彼の真意が全く伝わりません。こともあろうに日本で出版されている雑誌ですよ?購読者数は、それほど多くないかもしれませんが、せっかく日本に対する彼の特別な想いを日本の人々に伝えられる絶好の機会にもかかわらず、なぜこのような翻訳をしたのか真意を測りかねます。

単なる誤訳の類ではないんですよ。オリジナルの記事には上記の通り明確に「Japan」と記載されていて、それを見落とすことなどあり得ないからです。おそらく翻訳は、日本側の編集スタッフが担当したと思われますが、ポールと記者双方の日本についての具体的な言及をあいまいにし、一般化してごまかしています。

どう考えても作為的な翻訳としか思えません。もちろん、ポールは、日本語版の存在すら知らないでしょうし、ましてこんな風に答えた内容が彼に無断で改ざんされているなどとは知る由もないでしょう。

4 どうしようもない腹立たしさ

この記事に憤慨した私は、編集部のHPのフォームからメールを送信しましたが、1週間以上経っても何の回答もありません。どうやらシカトされたようです。

単なる誤訳でもプロのすることですし、校閲もしているはずですから許されないことは当然です。まして、作為的に内容を改ざんしたのであれば、ファンとして見過ごせません。何よりポールに対して失礼極まりないですし、日本のファンに対しても大変失礼です。

音楽評論家の湯川れい子さんにこの事実をお伝えしたところ、とても憤慨されていました。

twitter.com

また、女優の藤田朋子さんも疑問を持たれています。当然ですよね。

twitter.com

マスコミがちゃんとした取材をせず、裏も取らないで間違った記事を書くことは日常茶飯事ですが、この場合、既にアメリカの記者が本人に直接取材して記事を起こしています。後は、それを原文に忠実に翻訳するだけです。

テレビドラマや映画のセリフなどスラングや口語的表現で分かりにくい部分を意訳するならあり得ます。

2016年に公開されたドキュメンタリー映画「エイト・デイズ・ア・ウィーク」でも、「ベノ・ドーン」という発言に「仕立て屋」と字幕が付けられていました。「ベノ・ドーン」は、ビートルズが着用したスーツの店の名前ですが、そのまま字幕に直しても観客には分かりません。これは敢えて意訳する方が適切でしょう(字幕を担当された藤本国彦さんによれば、アップルは、映画全般について原文の通り忠実に翻訳しろとうるさかったとか)。

 

しかし、それとこれとでは次元が違います。このような作為を加える必要は無いどころか、ポールの真意が読者に伝わりません。こんなことをして誰が得をするのでしょうか?全く理解できません。

これは海外のニュースでも同じなのですが、日本のマスコミが正しく伝えているとは限らないことに注意が必要です。単なる翻訳ミスの場合もあれば、意図的に翻訳を変えていることもあります。もっと深刻なのは、重要な情報であっても都合が悪い時には無視することがあることです。

今回は、その良い例ですね。ただ、マスコミと違ってこのような形でしか反論できない、まさに「ごまめの歯ぎしり」状態なのが情けないです( ノД`)

できることならこの事実をポール本人に伝えたい。でも、残念ながら私には彼に直接コンタクトできる手段がありません。涙がこぼれるほど悔しいですが、どうしようもありません。

それで、少なくともこのブログを読んで下さっている皆さんには正しい事実をお伝えしておきたいと思い、この記事を書くことにしました。少しでも多くの方に知っていただければ幸いです。

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(続く)