★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その124)ビートルズのDNA、チャック・ベリーについて(その3)

「chuck berry johnny b goode」の画像検索結果

 1  他のカヴァー曲

ビートルズは、前回紹介した2曲以外にも数多くのチャック・ベリーの曲をカヴァーしており、それらはライヴ・アット・ザ・BBCなどに収録されています。

(1)ジョニー・B・グッド

www.youtube.com

チャックの曲としてはこれが一番有名でしょう。この曲の素晴らしいところは、特に歌詞ですね。

ニューオーリンズ生まれの貧しい少年は、読み書きこそ満足にできなかったが、ギターを弾くと天才的な才能を見せ、通りがかりの人々を驚かせた。彼の母親は、お前はいつか大きなバンドを率いてスターになり、遠いところから大勢の人たちがお前のギターを聴きにやってくるだろう。お前は、ライトを浴びてJohnny B Goodeと紹介され、観客が叫ぶ。Go Johnny, Go!と。

曲を聴いているだけで映画のシーンを見ているように、鮮やかに少年の現在と大人になった未来の姿が浮かび上がってくるではありませんか!歌詞には寸分のムダもありません。

しかも、チャックは、ギターを巧みに弾いて、リスナーが彼の演奏をその少年の姿と重ね合わせるようにさりげなく誘導しているのです。リスナーは、知らず知らずのうちに、今目の前で演奏しているチャックこそがこの曲の主人公なのだと想像するのです。

 

ジョンは、チャックに心酔していましたが、それは、ギターのパフォーマンスと共に、短い歌詞にストーリー性を込めるというチャックの作詞家としての才能に惚れ込んだのです。

「50年代の曲の歌詞に大した意味はなかった。しかし、チャックは歌詞に信じられない位に社会的な意味を込めていた。私は、彼の素晴らしいロックンロールを聴くと身も心もグニャグニャになり、他のことなんてどうでも良くなってしまった。ロックンロールは、世界を終わらせるかもしれないと思ったよ。」

「chuck berry」の画像検索結果

イントロのギターは、まるで管楽器によるファンファーレのようであり、ロックンロール史上でも屈指のものでしょう。チャックが弾いたギブソンES-350Tは、just like a-ringing' a bellという歌詞そのままに曲全体を通してベルのように鳴り響いたのです。

19世紀までの小説の中のヒーローの多くは中産階級出身でした。しかし、チャックは、初めて労働者階級出身のしかも黒人をヒーローにしたのです。これは革命的な発想でした。ローリング・ストーンズキース・リチャーズは、彼のアウトロー的なロックンロールは、チャックの存在なくしてはあり得なかったと語っています。

もちろん、チャックもマディ・ウォーターズなどの先人の影響は受けましたが、彼は、それらをすべて吸収して合成し、アンプにより増幅を加えることでロックンロールという新たなジャンルを生み出したのです。

(2)その他のカヴァー曲

ビートルズは、このほかにもキャロル、メンフィス・ テネシー、トゥ・マッチ・モンキー・ビジネス、アイ・ガット・トゥ・ファインド・マイ・ベイビー、アイム・トーキング・アバウト・ユーなど数多くの曲をカヴァーしました。これは、スイート・リトル・シックスティーンです。

www.youtube.com

2  ビートルズのオリジナル曲への影響

ビートルズは、メジャー・デビューしてからもアルバムに彼のカヴァー曲を収録し、また、オリジナルにも彼の影響を受けたと考えられる作品を制作しました。

例えば、「エヴリイバディズ・ガット・サムシング・トゥ・ハイド・イクスペクト・ミー・アンド・マイ・モンキー」(1968)や「カム・トゥゲザー」(1969)などの後期の作品においても、彼の影響の痕跡を感ずることができます。

「カム・トゥゲザー」がリリースされたときは、チャックの「ユー・キャント・キャッチ・ミー」の著作権を侵害しているとして、この作品を管理していたビッグ・セヴン・ミュージックに訴訟を提起されました。その後、ジョンのソロ・アルバムにチャックの曲を3曲入れることで和解が成立しました。これがジョンのライヴ映像です。

www.youtube.com

そして、チャックの「ユー・キャント・キャッチ・ミー」です。

www.youtube.com

比べて聞くと「ん?これってホントに似てる?」と疑問に思われるかもしれません。「カム・トゥゲザー」がゆったりとしたテンポなのに、「ユー・キャント・キャッチ・ミー」はアップテンポな曲ですから。全然似てないと思いますよね。

ただ、ユー・キャント・キャッチ・ミーのテンポを遅くしてみると、似てるかなと思える節もあるんですね。

また、歌詞にHere comes old flat-topと、oldを付け加えただけでオリジナルをそのまま使っちゃってるんです。これはかなり特徴的な歌詞ですから、流石にマズかったですね(^_^;)

ジョンは、あくまでチャックをリスペクトしていることをアピールしたかっただけなんですが、それが却って仇になってしまいました。

ポールは、類似性に気が付いてジョンに盗作と主張される可能性を指摘していました。

 

しかし、ジョンは、問題ないとしてそのままレコーディングし、リリースしました。ジョンの独断ではなくビートルズを含め、関係者全員が問題ないだろうと判断したのでしょう。しかし、結果的には訴訟に発展してしまいます。

最終的には和解という形で決着したので、著作権侵害だったのかどうかに関する裁判所の判断は下されないままに終わりました。ただ、裁判の成行きがどうも不利っぽいので、ビートルズ側が敗訴する位ならと和解で手を打ったようです。

後にジョンがユー・キャント・キャッチ・ミーをカヴァーしましたが、カム・トゥゲザーに似てますね。

もっとも、これはジョンお得意の皮肉を込めたつもりでしょう。「どうだい?あんたらが著作権侵害だって言ったことを証明してやったぜ。これで満足したかい?」ってな感じですかね。

youtu.be

皆さんはどう思いますか?判断は、人それぞれ違うでしょうが、私は、著作権侵害には当たらないと思います。この程度で引っ掛かるのなら、もはや楽曲の制作は不可能になってしまいます。ジョンは、インスパイアはされたかもしれませんが、パクったという認識はなかったと思います。

駆け出しの頃ならともかく、もう世界的アーティストとして君臨していたビートルズが、しかも、もう解散するかもしれないことをお互いに感じていた時期に、わざわざ著作権侵害の危険まで冒す必要はさらさらなかったはずです。それに、作品の完成度が素晴らしいし、歌詞も曲もパフォーマンスもすべて最高です。

 

1980年にジョン自身がこの問題について語っています。「カム・トゥゲザーは私の曲だ。チャック・ベリーの古い曲をぼんやりと意識はしたけどね。」

これ、チャック自身は訴訟を提起してないんです。まあ、あくまで私見ですが、チャックの作品を管理している会社が、ビートルズの名声を目当てに難クセをつけて一儲けしようと企んだ陰謀ではないかと思います。

まあ、そんなややこしい騒動もありましたが、ジョンのチャックに対する敬愛が変わることはありませんでした。後に、彼らは一緒にセッションしたのです。ジョンにとっても憧れのチャックとの共演は至福の瞬間だったでしょう。

youtu.be

チャックは、2016年10月18日に90歳の誕生日を迎え、38年ぶりとなるニューアルバムを来年リリースすると発表しました。

レコード会社によると、このアルバム「Chuck」は、殆どが新たにレコーディングされたオリジナル曲で、プロデュースもチャックが行ったそうです。具体的な発売日は明らかにされていません。

しかし、残念ながら、チャックは、ニューアルバムのリリース前に天に召されてしまいました(T-T)

ポールはチャックの訃報に接し、チャックの存在なくしてビートルズはなかったと彼の死を悼んでいます。あるイギリスの音楽雑誌では、チャックがビートルズに与えた影響について次のような記事を書いています。

若きFAB4が彼の虜になったのは、1958年初めに音楽の歴史を変えた「スウィート・リトル・シックスティーン」に出会ったときである。ポールは、チャックがビートルズに与えた影響について、次のように書き残している。「スウィート・リトル・シックスティーンのギター・イントロを初めて聴いた瞬間、私たちは偉大な彼のファンになった。彼が描いたストーリーは、歌詞というより詩のようだった。ジョニー・B・グッドやメイベリンなどがそうだ。私たちにとって彼は、普通の音楽でありながら同時にエキゾチックでもある曲を作るというマジシャンだった。私たちは彼から多くのことを学び、彼は、私たちをロックンロールの夢の世界に導いてくれた。」

チャックのリリースから5年後の1963年に、ビートルズはロンドンで「スウィート・リトル・シックスティーン」を1回だけ録音し、64年の冬にはアメリカを熱狂の渦に巻き込んだ。そして、ビートルズがバンドとして活動している間、初期のプリーズ・プリーズ・ミーの「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」から、ホワイトアルバムの「バック・イン・ザ・USSR」までどのアルバムにも彼の影響を見ることができる。

 

ポールは、「チャックは、世界におけるロックンロールの永遠かつ最高の伝説であり、それ以上の存在だったといえる。」と彼を賞賛しました。

「私はツアーの時に、彼の故郷のセントルイスで彼と会うという特権を得た。私にとってその想い出は永遠に大切なものだ。リヴァプールで育った青年たちに、彼が何をもたらしたかを説明するのは難しいが、何とかやってみたいと思う。」

ビートルズのために道を開いたといえるチャック・ベリーの存在なくして彼らの存在を想像するのは困難であるとともに、ロックの発明者抜きにこの半世紀の音楽全般を想像することはできません。今頃は、天国でジョンやジョージと楽しくセッションしているでしょうね。こんな感じで。

www.youtube.com

チャック・ベリーよ、永遠なれ‼️

(参照文献)beatlesarama, Guitarworld

( 続く)

にほんブログ村 音楽ブログ ビートルズへ
にほんブログ村