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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その131)リンゴ・スターのドラミングの凄さについて~ドラマーによるかなり濃いお話(その2)

「ringo starr drums」の画像検索結果

前回に引き続き、リンゴ・スターのドラムについてのお話です。話の内容が濃すぎるかなと心配していたのですが、結構読んでいただいていることが分かり、安心して続けることにします。

前回は、奏法のお話が中心でしたが、今回はドラムキットのお話から始めます。ただ、ドラムは、他の楽器と比べるとかなりパーツが多いので、説明するのも大変です。

1    リンゴのドラム・キットの変遷

リンゴのハイハット・スタンドは、1123という番号のフラットベースで1950年代後期のものです。エドサリヴァン・ショーで使っていたのがこれです。

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スタンドを支える脚の部分に着目してください。フットペダルとの接合部分から下が少し湾曲していますね?これは1963年製なんですが、この1年しか製造してない超レアな製品です。

ビートルズがブレイクしてラディックがバカ売れしたにもかかわらず、なぜかたった1年でお蔵入りさせてしまいました。ですから、50年以上も前の代物を未だに持ってる人は、ホントに数少ないでしょう。20年前で15万円くらいしたそうです。

そして、こちらがプレミアのハイハットスタンドです。これも締める金具がネジではなく特殊な形状をしています。

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なぜかリンゴは、映画「ア・ハード・デイズ・ナイト」の撮影の時には、ラディックのハイハットスタンドをこれと入れ替えて使っていました。その拘りの理由はリンゴに聞いて下さい(笑)

っていうか、こんな僅かな違いに気が付いた人が凄いですが。よほど当時の写真などを目を皿のようにして見ないと分かんないですよ(^_^;)だって、普通、わざわざスタンドだけ入れ替えるなんてことしませんからね。そんなにリンゴは、プレミアのスタンドが気に入ってたんでしょうか?

 

ありそうなオチとしては、リンゴが持っていたキットがごちゃ混ぜになって、本人、あるいはスタッフが入れ替えてセッティングしていることに気付かなかったってことですね。

下の写真の2つは、BBCのラジオ放送で使ったものです。CDについてるブックレットの写真に写っているのがこれです。50年代後期のセットですね。アメリカへ初めてのツアーへ行った時に、1123に変えたんです。

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「live at the bbc beatles booklet」の画像検索結果

この写真を見ても、私は違いが全然分かんないです(^_^;)

リンゴが使っていたシンバルのスタンドは、支持脚の接合部分がコの字型になっていてネジではありませんでした。そう、ここですね。

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これは、1963~65年頃に製造されたものです。その後になるとネジに変わるんです。昔は、アメリカのイーベイというオークションサイトなどで割と手に入ったそうですが、今では殆ど手に入らないんだそうです。

リンゴ・スター=ラディック」というイメージが強いんですが、彼は、最初からラディックを使っていたわけではありません。

リンゴは、ラディックを使う前は、プレミア58というドラムを使っていました。そして、ラディックに替えてからは、プレミアムを使うことはなかったのですが、「ア・ハード・デイズ・ナイト」の映画のラストシーンのところでは、何故かこのスタンドが使われていました。それから、シングル盤のジャケット写真に写っているスタンドもこれです。

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写真の向かって右がラディックのシンバルスタンド、左がプレミアのシンバルスタンドです。つまり、使い分けているんですね。その方がしっくり来たのでしょうが、この辺の拘りは、本人でないと分かりません。おそらくそこまで細かい話は、本人もしていないと思います。

っていうか、リンゴって良い意味でラフな性格なので、「オレが出したい音が出ればそれで良いんだ。」と思っていて、色んな製品がごちゃ混ぜになっていても大して気にも留めなかっただけかもしれません。

2 最初はアジャックスだった

リンゴが一番最初に使ったドラムは、イギリスのアジャックスというメーカーで、ローリー・ストーム・&・ザ・ハリケーンズ時代に使っていました。

その次がプレミア58でした。プレミアはイギリスのメーカーですが、あまり人気がありませんでした。というのはこれまたネジが問題で、ラディックにしても日本のヤマハにしても、統一された仕様だったんです。ところが、プレミアは、独特の仕様になっていたので、他のメーカーのものと取り替えが効かなかったんですね。

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ネジの取り替えがきかないというのはドラマーにとっては大問題で、チューニングを合わせることができないんです。他のメーカーであれば互換性があるので、ネジを交換できたのですが、プレミアだけはそれができないため人気がなかったのです。

3 ラディックを購入

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リンゴは、63年の中頃まではプレミアを使っていましたが、その辺りからラディックのダウンビートに変えました。リンゴは、ダウンビートを2台所有していて、1台はライヴ用、もう1台はレコーディング用として使い分けていました。

ラディックは、アメリカのメーカーですが、ドイツ系の移民が作った会社なので、元々はドイツ語です。ドイツ語読みではルートヴィッヒと発音します。それを英語で発音するとラディックになるんですね。

リンゴがこれを使ったことで一躍有名になりましたが、それまでもジャズドラマーとして有名なバディー・リッチが使っていることで既に有名でした。リンゴも後のインタヴューで「アメリカ製のドラムが欲しかった。」と語っています。

また、ラディックは、とても高価なことでも有名でした。日本でも販売されたのですが、グループサウンズジャッキー吉川ブルーコメッツが購入した時は、当時の大卒の初任給が1万2000円くらいだった頃に何と50万円!(@_@)近くしたそうです。

とんでもない値段ですね。貧乏人にはとても手が出せません(^_^;)

リンゴは、最初からラディックのブラックオイスターを欲しかったわけではなく、トリクソンというメーカーのドラムを欲しがっていたのです。色はブラックでした。

 

しかし、たまたま探しに行った店には在庫がなかったのです。ここが運命の分かれ道で、もし、リンゴが希望通りトリクソンを購入して使用していたとしたら、ラディックに代わってトリクソンのドラムがバカ売れしたことになったでしょう。運命とは不思議なものですね。

リンゴは、映画「ア・ハード・デイズ・ナイト」の撮影が終わった頃に、タムマウント(タムを支える金具)をロジャース製のスイートマジックに変えています。

20インチのバスドラムは、65年まで使っていましたが、それ以降は会場が広くなったので、1台は、22インチのスーパークラシックに変えました。タムも12インチから13インチ、フロアタムも14インチから16インチとそれぞれ一回り大きくなりました。

結局、リンゴは、このスーパークラシックをキャンドルスティックパークの最後のライヴまで使い続けました。これはレコーディングにも使用し、以前と同じように2台所有していました。

4 ラディックのオイスター・ブラック・パールという製品

リンゴが使っていたのは、ラディックのオイスター・ブラック・パールですが、今では同じ製品はもう作れないそうです。何故だか分かりますか?絶対、分からないと思います。いや、ラディックの60年代のヴィンテージものが好きで、収集している方なら分かるかもしれません。

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シェルというドラムの周囲の部分に薄いセルロイドのカヴァーが貼られていて、剥がすと真っ白な胴体が出てきます。この部分ですね。

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実は、このセルロイドが厄介な代物で、何台に1台の確率だか分かりませんが、カバーと本体との間にガスが溜まり、静電気の発生により引火して自然発火してしまう事故が起きたそうです。ドラムを保管していたら、いつの間にか燃えていたというわけです。イヤ、これシャレになりませんよね(^_^;)

もちろん、メーカにはユーザーからクレームが来てセルが原因だと分かり、使用することを止めたんです。そうすると、もう同じような色合いを出すことができなくなってしまいました 。

ラディックのシェルは、ボウリング・ボールというあの独特の模様ですが、80年代以降の製品はただ貼り付けてあるだけなので、持ちが悪くて自然にバリバリと剥がれてしまいます。60年代製のドラムが50年以上経っても何故剥がれないかというと、シェルを付ける前にカヴァーリングを貼り付けて、その後からシェルで囲んだためです。

当時の職人がとても手間暇をかけて製作したために長持ちするんですね。 今そんなことをしていたらコストが高くついて、それでなくても高いドラムがもっと高くなってしまうでしょう。

もう、ウオッカテキーラ並みに話が濃くなってきますが、今週はこの辺りで。

 

(続く)

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