★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その134)リンゴ・スターのドラミングの凄さについて~ドラマーによるかなり濃いお話(その5)

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1 ビートルズのカヴァーは易しそうで難しい

これはビートルズの楽曲全般についていえることですが、バンドが自分のスタイルで演奏する分には全く問題ありません。しかし、少しでも彼らのサウンドに近づけようとすると意外に難しいんです。
例えば、誰もが知っている「レット・イット・ビー」のイントロにしても、譜面だけを読むとすごく簡単なんです。
ところが、実際にレコードやCDから聴こえてくるあのサウンドを出そうとすると、これが意外に難しい。

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この感じですね。これは、ポールが左利きであることも多少は影響しているかもしれません。

のイントロも、譜面通りに弾くと絶対にあのサウンドは出ないんです。それは、やはり聴こえるか聴こえないかぐらいのゴーストノートが間に入っているからなんですね。

普通の8ビートのバラードではなく、シャッフルしているんです。だから、独特の余韻があってウットリするサウンドになるんです。

2 リンゴのドラミングの特徴-余計なサウンドはいらない

これは以前にも書きましたが、ビートルズは、当時はライヴの時にサウンドをプレイヤーに返すシステムがなかったので、観客の絶叫で自分たちのサウンドは全く聴こえないままに演奏していました。そして、リンゴは、前の3人の動きから大体この辺りを演奏しているなと狙いをつけてドラムを叩いていたのです。

彼らに合わせなければいけなかったので、リンゴは、いわゆるオカズ(フィルイン)と呼ばれる即興のフレーズは殆ど入れませんでした。

ライブの時はもちろんそうなんですが、スタジオでのレコーディングでも、リンゴは、「シンプル・イズ・ベスト」が信条のドラマーで、あえてフィルを少なめにしていました。普通のドラマーならどうしてもここで入れたいと思うような所でも、我慢して入れなかったんです。

例えば、「ヘイ・ジュード」のメロディーが終わって、ポールが「Ah〜」と叫んでコーラスに入る時に、彼はシンバルを「チン」と一発叩くだけで済ませてしまっています!

このいさぎよさ!「どうだい?これで十分だろ?」という彼の自信が伝わってきます。

3 モータウン・サウンドの影響

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ビートルズが、モータウンを中心とするブラックミュージックに大きな影響を受けていたことは広く知られています。彼らがカヴァーした曲の中にもブラックミュージックがたくさんありました。

そして、彼らは、自分たちのオリジナルの中にもブラックミュージックを取り入れたのです。それが独特のグルーヴ感を生み出しました。

代表的な曲の一つとして「ザ・ワード」が挙げられます。この独特のノリは、コンピューターでは出せないアナログのノリですね。逆に、コンピューターでピタリと波形を合わせてしまうとノリがなくなってしまいます。

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この曲も相当ブラックミュージックのフィーリングが出ています。「ドライヴ・マイ・カー」はさらに顕著な例ですね。まるでブラックミュージックそのものです。 

現代のレコーディングでは、クリックという電子メトロノームを使うのが当たり前になっていますが、それが使われるようになりだしたのは68年頃からです。それまでは、「せーのっ!」でスタートしていました。そうすると、プレイヤーの間でも微妙なズレが出るんですね。

最近では20代の若者の間でも、アナログレコードが見直されつつあるそうです。CDではカットされてしまっている周波数帯が、アナログでは聴き取れるんですね。コンピューター全盛の時代ですが、こういう手作り感も却って今の時代には必要なのかもしれません。 

4 リンゴっぽく演奏する秘訣

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ここから再び、ラディック氏のお話が元ネタになります。自分のスタイルでドラミングする分には気にしなくて良いのですが、少しでもリンゴに近づけたいのであれば、以下の点に注意してください。

(1)スネアをハイピッチにする

ビートルズのサウンドは、特に前期では全体的に明るいサウンドですから、リンゴのドラムもそれに合わせなければなりません。ラディックのキットなら明るいサウンドを出せるのですが、それは難しいのでそれ以外の方法で近づける方法を探ります。

まず、スネアのチューニングをハイピッチにすることです。スタジオでよくやるようなボテボテのサウンドでは、絶対にリンゴの雰囲気は出ないんです。

リンゴが初めてラディックのドラムキットを購入した時は、スキンに牛革が使われていました。BBCのちょっと前までですね。まだ、合成樹脂のスキンは出回り始めた頃でした。

リンゴは、牛革のスキンをアイロンのようなもので延ばし、思いっきり引っ張ってセットしていました。リムからはみ出したスキンは、見てくれが悪いのでキレイに切り取ったんです。後にレモ製の合成樹脂のスキンに替えました。

(2)良いドラムを使う

これは、なかなか厳しい条件ですが(^_^;) 

ラディックのドラムの特徴は、サウンドが明るいということです。これは、スキンだけでなくシェル全体でサウンドを出していることから来るもので、安物のドラムだと外観は良いのですが、サウンドがスキンからしか出てきません。この差がとてつもなく大きいのです。残念ながら、これをドラマーのテクニックでカヴァーすることはできません。

じゃあ、当時の日本製のドラムはどうだったかというと、シェルがベニヤ板の合板でそれをカヴァーリングでごまかしていました。しかし、ラディックのドラムは、メイプル、ポプラ、メイプルと3つの木を重ねて製造されていました。

メイプルが硬い木材であるのに比べ、ポプラはそれより柔らかい木材なので、ポプラの部分でサウンドを柔らかくするという働きがあったんです。ラディックは、このようにシェルを3層の木材で製作していたので、サウンドがまろやかでした。この違いはダントツで他のメーカーとは違ったのです。

(3)シンバル

リンゴは、主にジルジャンというメーカーの製品を使っていましたが、時折パイステ製のものも使いました。サウンドの特徴は、パイステの方がジルジャンよりより明るいシャ~ンというサウンドが出たことです。しかし、リンゴがパイステを使ったのは短い期間でまたジルジャンに戻しました。ちょっと、パイステではうるさかったのかもしれません。

後、重さも重要ですね。リンゴが使っていたのと同じ重さならパーフェクトです。

(4)スティック

これほどリンゴのドラムについて詳しいラディック氏ですら、リンゴが使っていたスティックに関してはよく分からないのだそうです。

ただ、一つ分かっていることは、現在普通に使われているレギュラーのものよりは長いということです。過去に「リンゴスターモデル」と銘打ったスティックが販売されていたことがあるんですが、ラディック氏によれば違うんだそうです。

本物に比べるとちょっと重いんですね。リンゴが使っていたのは、もう少し細身で軽いタイプのものだそうです。昔は重さを計って買ったんだそうです。

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(5)うちわ奏法

皆さんもよくご存じの様に、リンゴのハイハットの叩き方は独特で、うちわで扇ぐように叩いていました。これは特にAll My Loving といった曲などで重要なのですが、普通に縦に叩いてしまうと、あの流れる様なサウンドにはならないんです。あくまでも横に叩かないといけません。

当然のことですが、ハイハットのシンバルは上下に動きます。しかし、リンゴは、それを横に叩くことによって、そのシンバルの波を横に引っ張ったんですね。これで後ノリを出すことに成功したわけです。

これを普通に縦に叩いてしまうと、時としてプツッと音が切れてしまうことがあるんです。また、タメがなく抑えが効かなくなってしまうので、どんどんテンポが早くなってしまいます。

ただ、この奏法で演奏するためには相当手首が柔らかくないとダメで、実際、リンゴは手首がすごく柔らかいんだそうです。

(6)イス

サウンドには全く関係ありませんが、ついでにイスのお話もしておきます(笑)

リンゴが座っていたイスの色は何色だったでしょうか?黒ですか?はい、正解です。でも、それだけではありません。赤も使っていたんです。そう、これですね。

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(7)Back In The U.S.S.R.をもしリンゴが叩いたら?

アルバムではポールが叩いていますが、もし、あれをリンゴが叩いたとしたら、もっとシャッフルした感じになっていたのではないかというのが、ラディック氏の見解です。実際、ビーチボーイズのコンサートでリンゴが飛び入りで参加した時に、その曲を演奏していますが、それが参考になるかもしれません。

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オリジナルのポールのドラミングと比べてみていかがですか? ノリが違う気がしませんか?

初心者の方にはこちらの記事が参考になると思いますので、再度ご紹介します。

www.studiorag.com

さて、これでリンゴのドラムのお話はやっと終わりです、ふ~、ヤレヤレ(^_^;)

次はリクエストがあったので、再びビートルズに影響を与えたアーティストについて書こうと思います。

(続く)