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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ビートルズの足跡を訪ねて~リヴァプールとロンドン一人旅日記~(その19) 2枚目のアルバムをリリース(その2)

The Day Ringo Starr First Recorded With the Beatles

1 ビートルズのカヴァー能力の高さ

(1)4曲のカヴァー・ヴァージョン

「With The Beatles」の話を続けます。7月18日(初のレコード・セッション)の時に、ビートルズは4曲のカヴァー・ヴァージョンに取り組みました。

「You Really Got A Hold On Me」、「Money (That's What I Want)」、「 Devil In Her Heart」、「Till There Was You」です。特に最初の2曲は、「Please Please Me」に収録されたカヴァー曲のどれよりも後々に影響を残し、それまでのビートルズにおける最もすばらしいレコーディングとして記録されています。

私は、個人的には「Money (That's What I Want)」が1番好きですね。これは、1959年に後にモータウンとなるタムラ・レーベルからバレット・ストロングがリリースした曲です。プロデューサーのジョージ・マーティンがピアノを弾いているんですが、これがワイルドで曲に重厚な感じを加えています。特に、イントロがたまりませんね。

アルバムの最後をこの曲で締めくくったのは、明らかに「プリーズ・プリーズ・ミー」の最後を飾った「トゥィスト・アンド・シャウト」の成功に対抗しようとしたものです。「このバンドのリーダーはオレだぜ。」というジョンの意図が隠されているのかもしれません。

(2)オリジナルを凌駕した

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ビートルズは、オリジナル曲のキーをFからEに下げ、相変わらずパワフルなジョンのリード・ヴォーカルを響かせます。もちろん、オリジナルのストロングのヴォーカルもそれなりに良いんですが、ジョンのヴォーカルがあまりに素晴らしくて、どっちがカヴァーだか分からなくなります(^_^;)

ジョンのヴォーカルにポールとジョージがハーモニーを加え、それがとてもエネルギッシュな印象を与えます。クライマックスの最後のコーラス部分は、リンゴがバスドラムを加えていますが、このパターンは、すぐに1960年代初期のロックの特徴となりました。

「自由になりたい!」というジョンの叫び声は、心の奥底から絞り出したものです。ビートルズは、長い下積み時代を経験し、売れると言われながらなかなか成功せず、1960年代初期に売れた後も短期間の成功が期待されただけでした。

なぜなら、その当時のポップ・スターは、売れてももってせいぜい2、3年の短い活動期間しかないのが普通でしたから。彼らがある程度長期にわたり稼げるようになっても、ポールは、「Can't Buy Me Love」で、金に執着することに対する否定的な感情を表現しています。

 

 

2 負けじとポールもリードヴォーカルを

後年、ポールは、ビートルズの中でロックンロールをやらせたらジョンの右に出る者はいないと世間で評判になっていることを嘆いていました。この曲と「Twist And Shout」「Dizzy Miss Lizzy」を聴けばそれも無理はありません。

実は、ポールも「Long Tall Sally」「Kansas City / Hey-Hey-Hey-Heyなどのカヴァー曲でジョンに匹敵するパワフルなヴォーカルをやっていたのですが、1963年当時はまだ一般には知られていなかったのです。また、別の機会に紹介しますが、ポールが突き抜けたときのヴォーカルはとてつもなく凄いんです。

彼らには「Please Please Me」の時よりは「With The Beatles」の制作に取り組む時間が多くありましたが、編集とミキシングの作業が途中で入ったので、隔日に収録されました。
最もレコーディング・テクニックが使われた曲は、マネーです。それは、多重録音で一連のミキシングを補正したのですが、テープからテープへのコピーをできるだけ避けるために、各々テイクした別々のモノラルをミックスして使い、最終的にステレオ版を制作しました。
1963年の時点では、まだ一般家庭にステレオが普及しておらず、モノラルが主流だったんです。ステレオ版も制作されましたが、ビートルズは、どのセッションにも参加しませんでした。ステレオは、主にヴォーカルと伴奏との間のバランスを調整するために、一つのテクニックとして使われただけでした。
「With The Beatles」がリリースされる頃には、ファースト・アルバムの「Please Please Me」は7ヵ月間イギリスのアルバム・チャートのトップでしたが、それと入れ替わりにトップになり、21週間そこに留まりました。デビュー・アルバムの成功と併せて、ビートルズは、チャートのトップを51週連続で独占し続けました。
 
 

3 独創的なジャケット写真

(1)ただのアイドルではない

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アストリッド・キルヒャーが撮影したジョンとジョージ
この頃のアイドル・グループは、笑顔でジャケット写真を撮影したものですが、このアルバムのジャケット写真は、真っ暗な背景にメンバーの顔が半分だけ浮かび上がり、笑顔はありません。これは、ハンブルク巡業時代に知り合った、写真家のアストリッド・キルヒャーの影響を受けた「ハーフ・シャドウ」という手法です。
ビートルズは、既にこの頃からロックをアートに高めようとし始めていたんですね。彼らの姿はもはやアイドルの域を超えています。
撮影したロバート・フリーマンによると、正方形のジャケットに収めないといけないので全員を横一列にできず、リンゴが一番最後に加わったメンバーなので、彼を下段にしたんだそうです。ビートルズは、アストリッド・キルヒャーが撮影した写真を見せて、このイメージで撮影してくれとフリーマンに依頼し、EMIの通常料金の3倍に当たる£75を支払いました。

(2)アルバムジャケットもアートにした

ポールは、こう語っています。「ホテルでフリーマンが写真を撮影するのに1時間あった。彼は4つの椅子を引き抜いて、僕達をホテルの通路に並べさせたよ。まるで、スタジオのようだった。通路はむしろ暗かった。窓が一番端にあって、右からの強い自然光を使ってのこの写真を撮影したんだ。」
「多くの人々が彼が高度な細かい技術を使い、何時間とかかってこの非常に雰囲気のある画像を撮影したに違いないと思った。でも、実際には1時間しかかかってなかったんだ。ロバートは、フロアに座り込んでフィルムを2巻も使ったけど、非常によかったね。僕は、とても彼の写真を気に入ったよ。これから先、彼は、こんな風にビートルズの最高の写真を何枚か撮るんだろうなと思ったよ。」
しかし、後日、フリーマンは、写真をホテルの食堂で撮影したと主張しています。本当の場所がどこかはともかく、当初、EMIはジャケットに白黒の写真を使うことに難色を示しましたが、ブライアン・エプスタインとジョージ・マーティンが説得しました。
結局、フリーマンの写真は、アメリカでのキャピトル・レコードからリリースされた彼らのファースト・アルバムのジャケット写真にも使われました。このアルバムジャケットは、レコード・ジャケットそのものが一つのアート作品として注目されるきっかけになりました。またまた世界初ですね。ホントに次から次へと様々な仕掛けをしてくれるアーティストです。
 
 

4 アルバムの概念を変えた

(1)シングル曲を入れなかった

このアルバムには、ファンへの最大のプレゼントとして、既にヒットしたシングル曲やすぐリリースする予定のシングル曲は、1曲も入れないことになりました。つまり、全てファンが初めて聴く曲ばかりにしたのです。
これは、LPレコード(long playing recordの略称で当時はそう呼んでいました。)が少数のヒット曲とそれ以外の曲で構成されるのが一般的だった1963年当時としては、非常に珍しいことでした。シングル曲を一曲も入れないなんて、よほど売れる自信があったんでしょうね。
リリース前にもう30万枚の予約注文が入り、「With The Beatles」は成功したも同然でした。公式リリースの4日前の11月18日に、ビートルズは、25万枚売上げたために、その時点でシルヴァー・ディスク賞まで与えられました。発売の7日後には50万枚以上を売り上げ、1964年1月中旬までに、88万5千枚まで増加し、さらに年末までには93万枚が売られました。

(2)「Fab4」という言葉の誕生

ビートルズの広報担当者だったトニー・バーローは、前の「Please Please Me 」に引き続いてこのアルバム中の解説を書きました。「このアルバムには、多くのステージでビートルズが好んで演奏した曲を含む14曲が両面に収められている。彼らは、成功したファースト・アルバム『Pleas Please Me』で用いた『成功の方程式』を繰り返した。すなわち、彼らが最も賞賛するアメリカのR&Bアーティストのレパートリーから選んだ曲と一緒に、彼らのオリジナルの作品8つをレコーディングしたのだ。」
そして、彼は、収録曲をそれぞれ解説しました。この文章の中で彼は、「the fabulous foursome」という言葉を使いました。これは「素晴らしい4人組」と言う意味ですが、これはその後「Fab4」と略され、ビートルズの代名詞として盛んに用いられるようになりました。

(参照文献)THE BEATLES BIBLE

(続く)
 

 

 

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