ビートルズの栄光の軌跡を描いたドキュメンタリー映画「EIGHT DAYS A WEEK-The Touring Years」が2016年9月22日全国一斉にロードショーされることになりました。「ダ・ヴィンチ・コード」「アポロ13」「バックドラフト」そして、アカデミー賞監督賞を受賞した「ビューティフル・マインド」と素晴らしい映画をこの世に送り出したロン・ハワードがメガホンを取ったのですから、いやが上にも期待が高まります。この映画は、ポール・マッカートニー、リンゴ・スター、ヨーコ・オノ・レノン、オリビア ・ ハリスンの全面協力の下に製作されました。
ハワードは、こう語っています。「私は、1964年に世界を席巻した4人の若者達の驚くべきストーリーをアップルとホワイトホースとの合同で製作するという名誉を与えられたことにとても興奮している。彼らがポピュラー文化と人々の経験へ与えた影響は、どれだけ強調してもし過ぎることはない。」
この映画は、ビートルズがリヴァプールの下積み時代に出演していたキャヴァーン ・ クラブの頃から、ドイツのハンブルクへの巡業、そして、1966年にサンフランシスコのキャンドルスティック ・ パークでの最後のコンサートに至るまでのツアーを再現したものです。ビートルズは、1961年と62年にイギリス国内ツアーで既に異常ともいえる人気を獲得し、1963年の終わり頃にはヨーロッパツアーを行いました。しかし、彼らの人気が一気に爆発したのは、1964年2月9日にアメリカで出演したエド・サリヴァン・ショーでした。
その6月、ビートルズは、バンドとして初のワールドツアーを開始し、それから2年間、過密なスケジュールに追われました。彼らは、1966年8月にツアーを停止した時点で、15か国で世界中の90の都市で166回のコンサートを開催していました。ビートルズのツアーを通して世界中に巻き起こった現象は、文化のグローバル化の基礎を築いたものだったといえます。
ビートルマニア(熱狂的な・ファン)は、ただの現象では終わらなかったのです。世界中の人々がビートルズに触れたことにより、彼らは、大衆に文化的な変化を引き起こすといういわば触媒の機能を果たしました。
この映画は、通信手段の発達と技術の進歩と相まって、この文化的な一大変革期に、ビートルズが社会や政治に対してどれほど大きな影響を与えたかを分かりやすく解説してくれます。映画では、パフォーマーと観客とが電気によって増幅された音楽を共有することが、どれ程凄まじい結果をもたらしたかについても語っています。
映画のタイトルは、彼らの曲の中でチャートナンバーワンを獲得したものの一つですが、1週間に8日間と言う意味になります。これは、リンゴがツアー中に漏らした言葉をヒントに作られたタイトルで、1週間が8日もあるほど忙しいという意味です。それ程彼らがツアーをやっていた頃は、殺人的に過酷なスケジュールの毎日であったことを示しています。
彼らの記録映像は数多く残されていますが、この映画は、今までとは違った切り口で、彼らの新たな側面を見せてくれるであろうと期待されます。彼らがどのようにして数々の名曲を制作し、演奏し、爆発的な人気を獲得することができたのか、その秘密を探ることができるでしょう。
ビートルズファンはもちろん、そうでない方も貧しい若者達が、その天才振りを発揮し、一気にスターダムへ駆け上がっていく姿を目にすることで、青春の1ページを実感することができると思います。是非、劇場へ足を運んでご覧になって下さい。
また、この映画の公開に先立って「ビートルズ・ライヴ・アット・ハリウッド・ボウル」アルバムが9月9日に全世界で一斉に発売されます。
これは、ビートルズがアメリカ、ハリウッド・ボウル・スタジアムで、1964年、1965年の3回の熱狂に包まれたライヴをアルバムにしたものです。テープで収録したのですが、観客のあまりの絶叫にビートルズのヴォーカルも演奏もかき消されてしまいました。数多くのビートルズの名曲をこの世に送り出した名プロデューサー、ジョージ・マーティンをもってしても収録当時の技術では、「レコードで再現することは不可能だ。」と嘆かせた程の伝説の収録です。1977年にやっとアルバムがリリースされたのですが、CD化されることなく廃盤となってしまいました。
このアルバムには著名なミュージック・ジャーナリストのデイヴィッド・フリッケがエッセイを書いた24ページに亘るブックレットが添えられています。その表紙には、ビートルズのアメリカツアーに同行したボブ・ボニースが1964年8月22日に撮影した、映画「エイト・デイズ・ア・ウィーク」のポスターに使用された太陽が燦々と降り注ぐ中をタラップから飛行機に搭乗するビートルズの写真が印刷されています。このアルバムは、ジョージ・マーティンの息子、ジャイルズ・マーティンが最新の技術でリミックス&リマスターしました。これもまた素晴らしい仕上がりになっていると思います。
(続く)