★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その85)ビートルズ・スーツついに誕生!(その1)

1 ビートルズ・スーツついに誕生!
1962年1月24日、ピート・ベストの自宅でビートルズとマネージャー契約を結んだブライアン・エプスタインは、早速ビートルズを売り込もうと活動を開始します。その手始めとして、彼は、ビートルズにスーツを着用させることにしました。これが黒の革ジャンに身を包んだ彼らです。アーリー・ビートルズの数ある写真の中でも有名なショットですね。

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ビートルズが大ブレイクした最大の要因がそのサウンドにあったことは紛れもない事実です。しかし、ブライアンは、彼らのファン層を広げてもっとメジャーにするために、ファッションなども含めてトータルでビートルズ・スタイル」を確立するという戦略を立てたのです。

 

その一つがステージにおけるスーツの着用でした。ご承知の通り、この狙いはズバリ的中したのです。これは現代のタレントや政治家のイメージ戦略の先駆けともいえる画期的な試みでした。

 

契約からちょうど2か月後の3月24日、ブライアンは、ビートルズリヴァプールマージー川を挟んで対岸にあるバーケンヘッドにある「ベノ・ドーン」というイタリアン洋装店へ連れて行き、彼らにスタイリッシュなテイラード・スーツを購入しました。

 

彼らにとって舞台衣装としての初めてのスーツ、いわゆる「ベノ・ドーン・スーツ」の誕生です。残念ながらモノクロ写真なので色が分かんないんです(^_^;)それにしてもピートのリーゼントとスーツは、違和感満載ですよね(笑)

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2 スーツの購入
ブライアンのアシスタントだったアリステア・テイラーは、次のように語っています。「我々は、モヘア生地のスーツの採寸をするために彼らを店へ連れて行った。私は、ブライアンと一緒にマージー川で有名なフェリーに乗ったのを憶えている。我々は、まるで4人の危険な犯人を連行している数人の私服警官みたいだったよ(笑)スーツは、1着40ポンドもした。もちろん、全部ブライアンの自腹さ。」

「彼らにスーツを着用させるというのはブライアンのアイデアだったんだが、彼らも最初は抵抗した。でも、最初にポールが受け入れて、最後はジョンも渋々承諾したよ。まあ、彼らも売れたかったから、ここはブライアンの言うことを聞くしかないと判断したんだろうね。」

 

アンソロジーでは、ジョンとジョージがスーツを拒否したのに、ポールが早々と裏切ってスーツを着用することに同意したみたいな言われ方をして、ポールが反論してるところがおかしいですね(笑)でも、ジョンもイギリスの南部で革ジャンを着てると、ゴロツキの集団みたいに嫌がられたことを認めてますから。

 

ジョージもこう語っています。「スーツを着ることには特に、ジョンとピートが頑なに拒否した。僕だってイヤだったさ。でも、僕達はもっと仕事をしたかった。そのためには、何をしなきゃいけないかということに気が付いたんだ。」彼らもそろそろ革ジャンとジーンズから卒業しないといけないだろうとは薄々感じていたのでしょう。

 

そして、ついにビートルズは、それまでの2年間に亘り貫いてきた黒の革ジャンとジーンズスタイルに別れを告げ、スーツに身を包むことになりました。それまでのワイルドなロックンローラーから、誰からも親しまれるアイドル・グループに変身したのです。

 

3 スーツを着用して初めてのステージ
そして、このスーツをお披露目した記念すべき初ステージは、同じ3月24日、午後7時30分からバーンストン女性協会が主催したヘスウォール・ジャズ・クラブダンスパーティでした。これがその時のポスターです。ビートルズがメインバンドになっています。

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ポスターには「マージー・ビート誌でトップに選出」「ポリドール・レコードのアーティスト(トニー・シェリダンのマイ・ボニーでバックバンドとしてレコーディングしたことを指しています)」「ヨーロッパ・ツアーに先立って」という宣伝文句が印刷されています。これがコンサート会場となったヘスウォール・ジャズ・クラブです。

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この記載から、ビートルズは、オリジナルのレコード・デビューは未だしていないものの、既にリヴァプールを中心とするイギリス北西部ではトップバンドになっていたことが覗えます。これが、その時のコンサートのワンショットです。モノクロで分かりにくいですが、細い襟幅からしてベノ・ドーン・スーツではないかと思われます。

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4 なぜ、ブライアンは、ビートルズにスーツを着用させることを思い付いたのか?
(その82)でビートルズは、1962年3月7日に初めてのラジオ番組の収録を行ったと書きました。そして、その時に彼らはスタジオ入りする前に全員スーツに着替えたとも書きました。

 
何しろ日本でいえばお堅いNHKに当たるBBCですから、そのスタジオで演奏するとなると例えロックンロール・バンドとはいえ、「ドレス・コード」に従わなければならなかったのかもしれません。いかにラジオで聴取者には見えないとはいえ、そこはやはり天下のBBCですから、流石にスタジオ入りする衣装も革ジャンにジーンズというわけにはいかなかったんでしょうね。それにその番組の収録には観客も入れてましたから。キャヴァーンですらドレス・コードがうるさくて、入れろ入れないで揉めた位ですもんね。
 
ひょっとすると、ビートルズがスーツを着用するようになったキッカケは、案外、そんなところにあったのかもしれません。元々はBBCのドレスコードをクリアするために着用した。それで、着用させてみたらこれがなかなかカッコよかった。そこで、ブライアンがこいつはイケるってことで、その後もスーツ・スタイルを通すことに決めたのかもしれません。

 

ず~っと以前から、私は、「ブライアンは、どうしてビートルズにスーツを着用させるというアイデアを思い付いたのだろう?」と疑問に思っていたんです。「ロックンローラーの衣装は、黒い革ジャンにジーンズ」という固定観念を打ち破り、それとは真逆の紳士の象徴であるスーツを着用させるなんて、ある意味「コペルニクス的転回」ですから。全くの白紙の状態で思い付いたのか、それとも何かにヒントを得たのか。しかし、この記事を書いているうちにその疑問が氷解したような気になりました。

 

つまり、「THE BEATLES」のドロップ-Tロゴの誕生のような偶然の産物だったのかもしれません。私がこう考える根拠は、BBCのラジオ番組の収録が3月7日、初めてスーツでステージに立ったのが3月24日ですから、収録の方が先だったということにあります。そう、スーツを着用して公けの場で演奏したのは、BBCのスタジオ収録の方が先なんですよ。

 

そして、ブライアンがその時の彼らの姿を見てこれはいけるとピンと来たとしても何ら不自然ではありません。その時のスーツは、まだお揃いではなく、メンバーの自前でした。これをもっとスタイリッシュなお揃いのスーツにすれば、グッと好感度がアップするに違いない。そう考えたのではないでしょうか?あくまで仮説ですが、まんざら根拠のない不合理なものともいえないでしょ?このことに気が付いたことはプチ自慢させて下さいな(笑)

 

5 話はそう簡単ではない

ところがですねえ、あのビートルズ研究の第1人者であるマーク・ルイソンは、「3月7日説」を採用しているんですよ。困ったなあ~f^_^;相手がルイソンじゃ、私なんかじゃ太刀打ちできないし…。でも、アリステア・テイラーの証言も具体的で真実味がありますしねえ~。

 

しかし、このポールの写真を見て下さい。モノクロなので分かりにくいですが、生地は黒のベルベットで明らかにベノ・ドーン・スーツではありません。襟の幅もベノ・ドーン・スーツより広いですしね。また、ピートは、「ビートルズは、カスバではベノ・ドーン・スーツを着用しなかった」と証言しています。カスバには1962年6月24日まで出演しています。つまり、その頃には既にベノ・ドーン・スーツはできていたのですが、着用はせず、もっとカジュアルな衣装で出演していたようです。

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で、この写真なんですが、1962年3月25日にカスバに出演した時のものらしいんですね。そうすると、ビートルズの中でもポールは、比較的早い時期にベノ・ドーン・スーツではないスーツでステージに立っていたのは間違いありません。ってことは、ビートルズが、ベノ・ドーン・スーツではないスーツでスーツ・デビューした可能性も否定できませんよね。

それに、ルイソンも完全無欠ではなく、間違っているところもあるんです。例えば、この写真を見て下さい。

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ルイソンは、この写真が1961年2月21日に撮影されたものだとしています。しかし、ジョンの持っているリッケンバッカーには、ビグスビーのビブラートアームが装着されています。しかし、ジョンがそれを使い始めたのは、同年8月頃なんです。

というわけでルイソンに盾突くのもおこがましいですが、どちらを信じるかは皆さん次第です。って、どっかで聞いたようなセリフだなあ~(笑)

(参照文献)SocialField.info, Beatles-discography.com, beatlesouce

(続く)

 




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