★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その106)ジョン・レノンのギター・テクニックについて(その1)

1 ギタリストとしてのジョンはどうだったのか?

 

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これまで、リンゴ・スターのドラム、ポール・マッカートニーのベース、ジョージ・ハリスンのギターについて、それぞれテクニックを解説してきました。いずれも過小評価されがちなテーマであり、それを払しょくしたいと思ったからです。それならジョン・レノンのギター・テクニックについても解説して欲しいとのリクエストを頂きました。

 

確かに、他の3人を話題にしておいて、リーダーのジョンをスルーするわけにもいきません。

 

しかし、これは正直ちょっと難題です(^_^;)何よりジョン自身が、ギターワールド誌のインタヴューに応えて、「オレは、そんなにたっぷりギターの腕前を披露する程のギタリストじゃない。ジョージの方がオレより上手いから、リード・ギターは彼に任せてたよ。まあ、気が向いた時にはリード・ギターもやったけどね。」と語っているんです。

 

本人がギタリストとしての自分のスキルをよく分かってたんですね。それに彼は、ライヴでメインヴォーカルをポールとほぼ半々にやってましたから、なおさらギターを弾きながらというのは難しかったのです。実際、ジョンもステージではコードを間違えたり、ストロークをものの見事に空振りしたりと良くミスってましたし(笑)

 

でも、リーダーなので誰もそれを指摘できなかったんですね。いや、だからといって彼のリズム・ギターがダメだったのかというと、そんなことは決してありません。それをこれから説明します。

 

2 リズム・ギターとは?

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ジョンは、ビートルズ時代、主にリズム・ギターを担当していました。じゃあ、そもそも「リズム・ギターとは何か?」というところから説明した方が良いかもしれませんね。「何のためにギターが2本必要なんだ?」ってことです。リード・ギターの方がメロディー・ラインやソロを演奏したりして目立つのは事実です。

 

しかし、バンド全体のノリを作るのはリズム・ギターの役割です。ですから、「リズム・ギターがリード・ギターにおんぶにだっこ」してもらってちゃダメなんです。むしろ、「ギター・パートの3分の2はリズム・ギターが担当している」と言っても過言ではありません(リード・ギタリストの皆さん、ごめんなさい。その代わり、目立ちますよね?)。

 

したがって、優れたリズム・ギタリストは、コードとリズムをよく理解し、リズムセクションを担当するドラムやベースとしっかり協調しながら、ヴォーカルを支えなければなりません。言い換えれば、メロディー・セクションとリズム・セクションの繋ぎ役になり、バンド全体をコントロールするという重要な役割を担っているんです。

 

ただ、リード・ギターが間違えるとバレやすいですが、リズム・ギターは目立たない分、ごまかしが利くことはあるかもしれません。

 

3 リード・ギターとは?

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では、逆にリード・ギターの役割は何でしょうか?ある意味、リード・ギターはヴォーカルを除いて楽器の中では最も目立つ存在です。それだけに、ヴォーカリストを除けば、リード・ギタリストでバンド全体のスキルが評価されてしまうという地位にあります。ビートルズでは、ジョージ・ハリスンが主に担当していました。

 

特に、即興でのソロは、腕の見せ所です。独創的なソロを決めれば、これ程カッコいいプレイはありません。また、リフやフィルで聴かせ所を作ることも求められます。ですから、「リード・ギターは目立ってカッコいいけど、リフやフィル、ソロなどで独創性が求められる。リズム・ギターはリード・ギターよりは目立たないけど、バンド全体を支える重要な役割がある」ということです。

4 ギターに明確な役割分担をさせたのは誰が最初?

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2本のギターをリード・ギターとリズム・ギターと、それぞれ明確に役割を分担させたのはビートルズが最初ではないかと思ったのですが、バディー・ホリー&&ザ・クリケッツがギター2本とベース、ドラムでバンドを編成したのがどうやら最初のようです。当時は、ロックでもいわゆるビッグバンドスタイルが主流でした。チャック・ベリー、リトル・リチャード、エルヴィス・プレスリーなどですね。

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しかし、バディー・ホリー&&ザ・クリケッツはそんなバンドを編成する資金がなかったので、4人のバンドメンバーだけで演奏することが多く、自然にそのスタイルに収まりました。ですから、意識的にそうしたというよりは、そうせざるを得なかったというのが真相のようです。ビートルズがこのスタイルを取り入れたんですね。ポールもそれを認めています。

 

このように、バディー・ホリーがビートルズや後輩のアーティストたちに与えた影響には多大なものがあります。ビートルズもお金はありませんでしたから、自分たちで演奏するより他なかったんですが、やがて、これがポピュラー音楽界の主流となりました。

 

ただ、ビートルズがバディー・ホリー&&ザ・クリケッツと決定的に異なるところが一つあります。バディー・ホリー&&ザ・クリケッツはその名が示す通り、バディー・ホリーのワンマンバンドだったのに対し、ビートルズは後にFAB4と呼ばれたように4人がそれぞれ重要な役割を果たし、脚光を浴びたことです。

 

もっとも、ギターの役割分担とはいっても、そんなに明確な区分があるわけではありません。例えば、ザ・フーピート・タウンゼントは、リード・ギターもリズム・ギターも両方演奏しましたから。 

5 ジョンのリズム・ギターの特徴

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前述したように、リズム・ギターはそもそも全体のまとめ役なので、そんなに華々しい役割ではありません。しかし、バンドの持つグルーヴ感は間違いなくリズム・ギターが作り出します。ただ単にコードをストロークしていれば良いというわけではありません。

 

リード・ギターがいくらカッコよくソロを決めても、リズム・ギターがしっかりこのグルーヴ感を出してくれないと、バンドが全然ノレなくなってしまうんです。ジョンの場合、彼のリズム・ギターがビートルズのサウンドに独特のグルーヴ感を与えていました。

 

とにかくジョンっぽく決めたいと思ったら、ちょっと乱暴な感じで右手首を大胆に使って、ワイルドにストロークすることです。これをテキスト通りにお行儀良くしちゃうと、全然ジョンらしくなくなってしまうから不思議です。テクニックよりは、ノリやフィーリングを重視した奏法ですね。

 

6 具体的な作品

では、具体的な作品を通して解説しましょう。なお、解説の都合上、リズム・ギターもリード・ギターも併せてご紹介します。

オール・マイ・ラヴィング

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ジョンのリズム・ギターといえばこれと言って良い程、代表的な作品です。決め手は一拍三連符で、これが何とも絶妙に作品にマッチしています。アンチの人たちは、「あれぐらいアマチュアでも弾ける」と良く批判しますが、違うんですよ。弾けることも重要ですが、それ以上にあの作品にこの三連符を合わせるという発想が凄いんです!

 

まあ、それまでのギタリストだったら、普通にコードストロークで済ませていたでしょうが、そこをアクティヴなピッキングの三連符でやるという発想。つまり、独創性ですね。従来の概念を打ち破る奏法です。これこそがジョンであり、ビートルズなんです。

因みに、あの三連符を使わなかったとしたらこんな感じになります。

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ね?あの素晴らしい作品の魅力が半減してしまっているでしょ?並みのギタリストならみんなこんな感じで演奏したでしょう。

 

先ほどご紹介したプレイボーイ誌のインタヴューでジョンに「これはポールの曲さ。悔しいけどね。」と言わしめた程の名曲ですが、それもジョンの三連符が相当盛り立てているからなんですよ。同じインタヴューでジョンは、「でも、オレもバッキング・ギターでかなり貢献したんだぜ。」と自慢しています。確かに、ここは大いに自慢して良いところです。


それぞれの楽器が、単なるヴォーカルのバックバンドではなく、キチンと自分の役割を自覚し、なおかつ独創的なプレイをする。常に同じ場所にとどまらず、野心的に新しいサウンドを求め、かつそれを成功させる。ここがビートルズがそれまでのバンドと決定的に違うところなんですよ。

 

では、オリジナル通り三連符を取り入れた別のアマチュア・ギタリストの演奏を参考にしてみましょう。

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先程の三連符を使わない演奏と比べると、素人が聴いても分かる程差がついてしまうんです。いかにジョンのリズム・ギターが重要であったかがご理解いただけると思います。 

 

他の作品は、また次回に解説します。

(続く) 

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