前回(その115)の記事で「ポールは絶対音感の持ち主だと思わざるを得ません」と記載しましたが、その後の調査でポールは絶対音感の持ち主ではない可能性が高くなりましたので、お詫びして訂正します。
神経学者であり音楽家でもあるダニエル・J.レヴィティンは、論文「絶対音感の功罪」でポールは絶対音感を持っていなかったと記載しています。また、同様の記事は他の人が書いた資料にもあるので、ポールが絶対音感を持っていなかったことは、どうやら正しいようです。
レヴィティンは、音楽と脳との関係について研究している人物です。ポールは、レヴィティンの著書「音楽好きな脳(西田美緒子訳、白揚社)」を読み、第2章まで読んだところで、これ以上読むともう作曲ができなくなってしまうと不安になり、読むのを止めてしまったそうです。
天賦の才で作曲してきた彼が、学者の音楽理論を読んだら却って混乱してしまうでしょうね。ですから、読むのを止めたのは正解だと思います。また、そう考えると、ビートルズが正統な音楽教育を受けなかったことは、本当に良かったなと思います。天才の彼らにとって既成の音楽理論は邪魔でしかなかったでしょう。
もちろん、基本的な理論は別です。ただ、彼らが既成概念にとらわれない斬新な楽曲を制作できたのは、既成の枠にはめられることも大きかったといえるのではないでしょうか。
ただ、申し添えると、くれぐれも「絶対音感がないと一流のミュージシャンとは言えない」などと誤解しないで頂きたいのです。トッププロでも絶対音感を持っているのは、ごく一部しかいません。逆に絶対音感を持っていても、ミュージシャンでない人の方が多いのです。
つまり、絶対音感と音楽的才能とは殆ど一致しないということです。絶対音感は音楽の制作や演奏に不可欠のものではなく、あれば役に立つといった程度のものです。
というわけで、前回の記事中、ポールの絶対音感に関する部分は撤回させて頂きます。無用の混乱を招いて申し訳ありません。
(参照文献)ABSOLUTE PITCH-BOTH A CURSE AND A BLESSING, StringKick
(続く)