★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(184)ビートルズをこよなく愛し、大胆にカヴァーしたアレサ・フランクリンを偲ぶ

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1 アレサ・フランクリンとは?

アレサ・フランクリンは、ビートルズと同世代のソウル界における天才的な女性シンガーであり、楽曲やアルバムも自ら制作し、圧巻のライヴ・パフォーマンスを繰り広げた才能豊かな女性でした。Queen of Soul(ソウルの女王)」と呼ばれた所以(ゆえん)です。

残念ながら、彼女は、2018年8月16日に76歳で多くの人々に惜しまれつつ他界しました。彼女の訃報に接したポール・マッカートニーは、「ソウルの女王であるアレサ・フランクリンの美しい人生に感謝しよう。彼女は、何年にもわたり私たちにインスピレーションを与えてくれた。」と追悼のメッセージを送りました。

 

まずは、2015年に開催された、ケネディ・センター名誉賞と呼ばれる1978年から毎年アメリカで優れた芸術家に贈られる賞の祝賀公演で、アレサが居並ぶセレブたちに見せつけた圧巻のパフォーマンスをご覧ください。

彼女がキャロル・キング、ジェリー・ゴフィンと共作した「(You Make Me Feel Like) A Natural Woman」を歌っています。当時既に70歳を超えているとはとても思えない歌唱力です。

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ロックの殿堂と同じように、この時も受賞者に対する賞賛の意を込めて、一流のアーティストたちがパフォーマンスを繰り広げました。

受賞したキャロルも列席したオバマ大統領も、あまりの素晴らしいパフォーマンスに感動して涙を流しました。受賞したのはあくまでキャロルなんですが、アレサの圧倒的な歌唱力で彼女の存在が吹き飛んでしまった程でした。映像でこの迫力ですから、その場にいたら全身に鳥肌が立ったでしょう。

映画「ブルース・ブラザーズ」にもゲスト出演していましたね。歌唱力はもちろんですが、演技力もなかなかのものです。「あんた、あたしに何をしようとしてるのか、考えた方が良いわよ」という歌詞が、しっかり者の女房に扮したアレサが、経営している店を辞めて、ロックバンドに加わろうとするダメ亭主を引き留めるこのシーンにピッタリとハマってるんですよ!

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2 ビートルズを大胆にカヴァーした最も偉大なアーティスト

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もちろん、彼女に限らず全世界の名だたるアーティストたちが、こぞってビートルズの楽曲をカヴァーしています。一流のアーティストたちですから、どのカヴァーも素晴らしい出来です。

しかし、ことビートルズの楽曲のカヴァーに関しては、アレサ・フランクリンを超えるアーティストは存在しなかったのではないかといわれています。それほど彼女のカヴァーは素晴らしかったのです。

 

彼女は、ポピュラー音楽史上、偉大なアーティストであるとともに、最も大胆なビートルズファンの一人でもありました。彼女のように大胆なアレンジでビートルズを歌ったアーティストは、他に類を見ません。

彼女は、誰もが知る高い人気を誇る数少ない60年代のミュージシャンの一人であったがゆえに、ビートルズの楽曲を大胆にアレンジしてカヴァーできたのです。よほど腕に自信がなければ、恐れ多くて彼らの楽曲をあれほど大胆にアレンジしてカヴァーすることなどできなかったでしょう。

3 彼女はいかに大胆にアレンジしたのか?

(1)Eleanor Rigby(1970)

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アレサは、「Eleanor Rigby」に大胆なアレンジを加えてカヴァーした最初のアーティストでした。彼女は、そのカヴァー曲を自分の作品だと主張し、ビートルズもそれを事実上黙認していました。

彼女は、ビートルズがかつて「Twist And Shout」などでそうしたように、オリジナルに大胆なアレンジを加え、全く別の新しい作品に生まれ変わらせたのです。あまりアレンジを加えすぎると「オリジナルのイメージが壊れる」と作者からクレームが付くことがありますが、アレサに限ってはそんなことはありませんでした。

 

アレサは、エリナ・リグビーで「I’m Eleanor Rigby / I pick up the rice in the church where the weddings have been, yeah.」と歌い、主人公を自分に置き換えることで自己主張した最初のアーティストでした。

彼女は、オリジナルをR&Bにアップ・テンポし、バンドをバックにパワフルにシャウトし、「All over the world, the lonely lonely lonely people—where do they all belong?」と歌詞を一部変えて歌いあげました。こんな大胆なアレンジを加えるにはかなり勇気が必要ですが、彼女は臆することなくチャレンジし成功させました。

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(2)ビートルズもアレサを認めた

彼女のシングルは、ビルボード・ホット100の17位にランクインしました。ビートルズ・ヴァージョンの哀歌からはかけ離れていますが、それはまた、オリジナルが持つ薄幸の女性に対する情念と思いやりへの賛辞でもあったのです。

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ビートルズR&Bに代表される、ブラック・ミュージックに強く影響を受けたことは広く知られています。逆に、ブラック・ミュージックの代表格であるアレサが彼らにインスパイアされ、彼らの楽曲をR&Bにアレンジしてカヴァーしました。

このように偉大なアーティストが互いに影響を与え会いながら楽曲を制作したことは、ポピュラー音楽の発展に大きく貢献する結果となりました。

ビートルズは、女王が彼らの楽曲を「盗んで」くれたことをむしろ誇りにさえ思っていたでしょう。その証拠にポールが「Let It Be」を制作した時、彼は、アレサがそれをまた大胆にカヴァーしてくれるだろうと期待して、彼女にアセテート盤のデモを送ったのです(もちろん、彼女はそれもカヴァーしました)。

4 ビートルズの源流にはアメリカ音楽があった

リヴァプール生まれの4人の若者たちは、アメリカ音楽を聴いてその洗練されたセンスに感化され、乾いた砂が水を吸収するかのように自分たちの血や肉の中へ取り込んでいったのです。

彼らは、最初期の時代から、レイ・チャールズスモーキー・ロビンソンシェリルズ、リトル・ウィリー・ジョン、マーヴェレッツの楽曲を演奏しました。彼らは、オリジナルの楽曲が持つソウルに夢中になり、懸命にそれらを取り込もうとしました。

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アレサが1967年にリリースしたアルバム「I Never Loved a Man(The Way I Love You)」で一夜にしてセンセーションを巻き起こした時、彼らは、すでにスターとなっていました。彼女は、彼らがカヴァーしたアメリカのR&Bに果敢にチャレンジしました。彼女もビートルズがやったのと同じように、オリジナルを忠実にコピーしようとはせず、そこに何らかの新しい感覚を取り入れたのです。

音楽を愛した他の人たちと同じように、ビートルズは、彼女の恐れを知らない精神に畏敬(いけい)の念を抱いていました。彼女がビートルズの歌を歌ったときは、いつも彼らと同じように最高のパフォーマンスを見せたのです。

5 The Long and Winding Road(1972)

簡単にいえば、これは、あらゆるビートルズのカヴァーの中で最も優れているといえるかもしれません。なぜなら、オリジナルを最も良く輝かせ、この曲がどんなものであるかを的確に表現しているからです。彼女はアルバム「Young, Gifted and Black」の中でこの曲をカヴァーし、燃え上がらせたのです。

 

スタジオで収録されたビートルズのオリジナルは、プロデューサーのフィル・スペクターが加えた弦楽四重奏とコーラスに埋没してしまっています。アレサは、この歌に込められた主人公の孤独と苦痛を表現するため、ビートルズの「ゲットバック・セッション」でキーボードを担当したビリー・プレストンにオルガンを演奏してもらい、ゴスペルの魂を加えたのです。

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しかし、アレサは、ポールのオリジナルよりもさらに哀しみを加えました。彼女は、「Many times I’ve been alone and many times I’ve cried」というフレーズを繰り返して終わらせました。

彼女は、敢えて幸せな結末を暗示することはしませんでした。ポールのオリジナルでは、自分を愛する人のドアまで導いてくれと歌っています。しかし、彼女は、ドアを通り抜けたその先に何があるのか、本当に幸せがあるのかどうか分からなかったのです。

だから、彼女は、哀しみを残したままの方が良いと考えたのでしょう。それは、女王の最も華麗で哀愁を伴ったパフォーマンスの一つでした。

6 Let It Be(1970)

アレサの「Let It Be」は、1970年1月にリリースされました。ビートルズがシングルをリリースした2か月前です。ポールは、アトランティック・レコードのジェリー・ウェクスラーにデモを送って、彼女のために書かれた楽曲であるかのように、彼女が自分のヴァージョンでレコーディングしてくれるであろうと期待していたのです。そして彼女は、ポールの期待通りカヴァーしてくれました。

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アレサは、「Let It Be」の歌詞にある「Mother Mary」というラインに触れた時、ポールと同じように母親を子どもの時に失ってしまった辛い記憶を思い起こし、彼の心情に思いを馳せたのです。カーティス・キングが優雅なサックス・ソロを加えています。

7 The Fool on the Hill(1969/2007)

アレサは、1970年にリリースしたアルバム「This Girl’s In Love With You」のために、「フール・オン・ザ・ヒル」をデモ・レコーディングしました。しかし、それは2007年にリリースしたアウトテイクのコンピレーション・アルバム「Rare and Unreleased Recordings from the Golden Reign of the Queen of Soul」までは、日の目を見ませんでした。

彼女のヴァージョンは、ピアノ、ギター、タンバリンだけで、セルジオ・メンデス&ブラジル'66のヒット・ヴァージョンの影響を受けたボサノヴァ調でした。彼女は、独特のセンスで軽いタッチへアレンジしました。

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アレサがカヴァーしたビートルズの楽曲は、単にR&Bにアレンジされただけではなく、歌詞の一部を変更することで、より彼女のソウルをリスナーに伝えるとともに、彼らのオリジナルがいかに素晴らしい作品であるかを再認識させたのです。

(参照文献)RollingStone, SLATE

(続く)

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