★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

リンゴ唯一のドラムソロ(225)

1 最新鋭の武器ーモーグシンセサイザー

(1)まだ初期段階の製品だった

シンセサイザーは、ロバート・モーグ博士が開発しました。初期の製品は、とても巨大で多くのケーブルが取り付けられていました。シンセサイザーとは、電気信号を音楽的サウンドに変換する機械です。ついに、シンセサイザーがレコーディングに使用されるようになったのです。

これは、画期的なできごとでした。それまで音楽で電気を使うのは、楽器で作ったサウンドを電気信号に変換して、増幅したり編集したりすることでした。

しかし、シンセサイザーはその発想を逆転し、逆に、電子機器からサウンドを制作したのです。実験段階だったものが、モーグシンセサイザーによりキーボードで操作できるようになって、ようやくレコーディングで使用できるようになったのです。

シンセサイザーは、「I Want You(She's So Heavy)」で、ホワイトノイズ発生器と組み合わせて使用されました。ホワイトノイズは、すべての周波数において強さが一定となるノイズのことで、ノイズを出すことで他のノイズを消すことができます。

ジョンは、こう語っています。「我々は、最後にモーグシンセサイザーを使用した。そのマシンは、サウンドを広範囲に出せたんだ。犬ならもっと沢山のサウンドを聴けるだろう。まるでロボットみたいだった。」

「ジョージは、それを少し使えたけど、そのヴァリエーションを学ぶためには一生かかったね。ジョージは、ビリー・プレストン(レコーディングに参加した)のアルバムでそれを使用し、自分のソロでも使用した。「Maxwell's Silver Hammer」「I Want You(She's So Heavy)」でも使ったね。アルバムのあちこちで使ってたよ。」

(2)またまたジョージのファインプレイ

「george harrison 1969 moog」の画像検索結果

ビートルズは、当時最新鋭のマシンだったモーグシンセサイザーを導入したものの、開発者自身が使い方が分からなかったという代物でした(笑)モーグは、電子工学の専門家でミュージシャンではなかったので。

最初の製品は、まだ音楽の制作に使用できる代物ではありませんでした。しかし、開発が進められてようやく使用できる状態にまでなったんです。ジョージは、それを何とか使いこなしました。アルバムで使用したインドの楽器のシタールといい、彼は、好奇心旺盛だったんですね。

彼は、それまでビートルズサウンド革命に重要な貢献をしてきましたが、今回はビートルズサウンドだけでなく、ポピュラー音楽の発展にも大きな貢献をしました。これにより新たな時代を迎えることになったのです。

この頃は、まだコンピューターが導入される以前のアナログの時代でしたから、操作するのも大変だったでしょう。ともかく彼は、サウンド作りに役立つものであれば何でも貪欲に取り入れました。

シンセサイザーは43号室に設置され、そこからケーブルでコントロールルームに電気信号が送られました。ただ、この頃のシンセサイザーはまだ初期段階で、キーボードで操作ができず、弦楽器の弦のようなリボンの上で、指を上下してサウンドを生み出したのです。

ですから、使いこなすには相当熟練しなければなりませんでした。ジョージがキーボードを接続してどうにか使えるようになったのです。

これをオーバーダブに最初に使ったのが「Because」です。

 

2 衝撃的なエンディング

(1)「そこでテープをカットしろ!」

「I Want You(She's So Heavy)」では、エンディングでしっかりと刻まれているギターのアルペジオが、突然バシッと編集でカットされました。本来ならフェイドアウトしていたであろうサウンドが突然カットされたことにより、強烈なインパクトのあるエンディングとなりました。

youtu.beエンジニアのジェフ・エメリックは、こう語っています。「この曲のエンディングはフェイドアウトにするんだろうと思っていたが、エンディングの途中で突然ジョンが「そこでテープをカットしろ!」と叫んだんだ。私は、最初は不安だった。我々は、そんなことをしたことはなかったからね。」

「「テープをカットしろだって?」しかし、彼が頑として譲らなかったので、我々は、彼の言う通りにした。彼は、見事なエンディングを作ったんだ。サイド1は、リスナーを不安な気持ちに陥らせて終わることになった。」

私も初めてこの曲を聴いた時は驚きました。長いエンディングでいつ終わるのかなと思っていたら、突然終わるんですから。「え?何これ?」って呆気にとられましたね(笑)

エンディングは、普通これで終わりだよと言う締めくくり方をするか、フェイドアウトするかのどちらかです。それが突然プッツリと切れてしまうというのは、リスナーを非常に戸惑わせますし、不安に陥れさせもします。

しかし、この効果は絶大ですね。いきなりパンチを食らったような衝撃を覚えます。しかも、サイド1の一番最後の曲ですから。 編集でアルペジオを聴いていたジョンが突然ひらめいたのでしょう。

(2)隠しトラック

サイド2もまた、異例の方法で終了しました。このアルバムは「The End」で終わりになるはずでしたが、1969年7月30日に行われたメドレーのテスト編集中に、一旦はカットされた「Her Majesty」がテープの最後に追加されました。

youtu.beテープオペレーターだったジョン・カーランダーは、その時の事情をこう説明しています。「我々は、すべてのリミックスとクロスフェイド(あるサウンドをフェイドインさせながら、同時に他のサウンドをフェイドインさせること)した。ポールが現場にいて、初めて一緒にサウンドを聴いた。彼は、「「Her Majesty」は気に入らないからカットする。」と言ったのでカットしたんだが、最後の編集でうっかり残してしまったんだ。」

「彼は「ラフミックスだから問題ないよ。」と言った。まだラフミックスで、後でうまく編集するから気にするなということだ。私は、ポールに「これ、どうしたら良いですか?」と聞いた。そしたら「捨ててくれ。」と彼は応えた。」

「私は、会社から何も捨てないように命令されていたので、彼が帰った後、私は、テープを床から拾い上げた。赤のリーダーテープの前に約20秒入れて、編集テープの最後にそれをくっつけておいたんだ。」

ポールが編集後のカットを聴いたとき、彼は、「Her Majesty」が偶然残っていたことに気づき、気に入りました。それはアルバムの最後に収録されることになりましたが、正式にはクレジットされませんでした。1990年代にCDがリリースされた時に、初めて正式にクレジットされたのです。いわゆる「隠しトラック」の一種ですね。隠しトラックとは、音楽を収録したメディアでクレジットされていないボーナス・トラックのことです。

ビートルズは、こういう仕掛けが好きですね。「Sgt. Pepper's~」には「Sgt. Pepper Inner Groove」、「White Album」には、「Cry Baby Cry」のあとに「Can You Take Me Back」という隠しトラックを入れています。

youtu.be「Her Majesty」は、元々アルバムの長いメドレーの一部を構成することになっていたので、そのラフミックスは「Mean Mr Mustard」の最後のコードで始まり、最後の音符の前でカットされました。ビートルズが当初考えていたのは、「The End」でアルバムを締めくくることでした。

 

3 リンゴ唯一のドラムソロ(The End)

(1)リンゴはドラムソロをやりたがらなかった

「The End」は、リンゴのドラムソロに加え、メンバー全員のソロが入っているユニークなものです。リンゴは、若い頃からドラムソロをやりたがりませんでした。ドラムソロはドラマーの一番美味しいところですから、ドラマーなら誰もがやりたいと思うはずなんですが。

youtu.be彼は、ビートルズに参加する前に所属していたハリケーンズの時でも、いやいやドラムソロをやっていたんです。彼は、ドラマーとして「ドラムがリードヴォーカルやギターを邪魔してはいけない」という哲学を持っていました。

リンゴは、こう語っています。「ドラムソロにはまったく興味を持ったことがない。このドラムソロは、私がやった唯一のものだ。 他の3人がソロを取り入れているギターセクションがあり、彼らは、私にもドラムソロもやらせようと考えていた。 私は、嫌だと言ったんだ。「ソロなんかやりたくない!」 ってね。そしたら、ジョージ・マーティンが私を説得した。」

マーティンは、(これがビートルズとして最後のアルバムになるかもしれない。それならリンゴにドラムソロもやらせよう。)と考えたのでしょう。これは大正解でしたね。結果的にこれが唯一のドラムソロになりましたから。

(2)珠玉の13小節

Nowhere Man â on Twitter: "The Beatles recording the White Album at Abbey Road, 1968 mad fer it. âð¥ðµâ¦ "

「私がドラムソロをやっていたとき、時間を管理する必要があったのでマーティンはタイムをカウントしていた。ばかげてたよ。 「ダン、ダン ー1、2、3、4 ...」とカウントしてた。」

「おまけに13小節だったから、変なところで止めなきゃならなかったんだ。 まあ、それはともかくやり切ったよ。珍しいことだったね。あんなのも一つやっておいて良かったよ。」

普通は、12小節で一まとまりなんですよね。それが13小節という中途半端な長さでしたから、リンゴもさぞやりにくかったでしょう。でも、そんなことをサラリとやってしまうところが彼の凄さです。

「「Abbey Road」では、私だけの個人的な試みをやっている。レコードに登場するドラムサウンドは、新しいヘッドを使ったことによるものだ。レコードには、多くのタムタムサウンドが入っている。 私は、ドラムに新しいヘッドを取り付けたんで、自然にそれらを数多く使ったけど、そいつはとても素晴らしかったよ。 本物のレコードが魔法がかっているのは、タムタムがとてもよかったってことさ。今じゃあんな魔法がかったレコードを作るのは無理だね。操作されすぎちゃうからさ。」 Abbey Road」におけるリンゴのタムタムサウンドは、後世に至るまで絶賛されています。彼は、このアルバムで、それまでになかったほどタムタムを多用しました。これが心地よいアクセントになっています。

おそらくその最高傑作は「Come Together」でしょう。ジョンの「Shoot me」(ただし、このアルバムではmeは発声していないようです。ここでジョンが正確には何と発声しているのかも、実は一つの論争になっているんです)というヴォーカルの直後に絶妙なタイミングでタムタムが入ります。これがこの曲の持つ不気味な雰囲気を醸し出す効果をもたらしているのです。あれがなかったら、この曲の魅力は若干減殺されていたでしょう。

コンピューターのない時代でしたから、レコードのサウンドは、アーティストのテクニックに頼るところが大きかったのです。  

youtu.be(参照文献)THE BEATLES BIBLE

(続く)

 

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