★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ビートルズはアメリカ英語で歌っていた(230)

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1 ビートルズは普段は方言を使っていた

(1)リヴァプール訛り

私は、ビートルズのあるファングループの会員なのですが、そこで彼らのリヴァプール訛りが話題になったので記事にしてみました。

洋の東西を問わず、歌詞は、その国の公用語で標準語とされている言葉を使います。あえて方言を使うのは、元々古来から伝わる童謡や民謡だったり、特に何らかの狙いがあったりする場合ですね。

ビートルズも、もちろん、標準語で歌詞を制作していました。しかし、彼らは、全員リヴァプールというイギリス北西部の地方出身で、日常生活ではいわゆるスカウス(Scouse、リヴァプール訛り)と呼ばれる方言で会話していました。

ジョンとポールがインタヴュアーのリクエストに応じて、あえてリヴァプール訛りで会話していますが、これはちょっと分かりませんね(^_^;)

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日本語もそうですが、標準語と方言とではかなり違いがありますよね。私は、あまり詳しくないのですが、スカウスも英語の標準語からすると、使う単語やその意味、発音などが相当異なるようです。これは、標準語との違いを解説した動画ですが、相当違いますね(^_^;) 

ただ、日本でもそうですが、イギリスでも方言がなくなったわけではないものの、かつてほどの強い訛りが薄れて、徐々に標準語に近くなっているようです。メディアの影響でしょうかね。

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(2)歌手のシラ・ブラックもスカウサーだった

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上記の動画で歌手のシラ・ブラックの話が出てきます。彼女は、元々キャヴァーン・クラブの店員として働いていたのですが、ビートルズに歌手としての才能を見出され、彼らから楽曲の提供を受けてデビューし、見事に人気歌手としてブレイクしたのです。

そんな彼女もリヴァプール出身だったので、普段は完全なリヴァプール訛りでした(笑)リヴァプール訛りで話す人のことを特に「スカウサー」と呼びます。

上記の動画の5分過ぎ辺りで、彼女がよく使っていた「Lorra lorra laughs」というキャッチフレーズを紹介しています。これは、標準語では「A lot of lot of laughs」で大笑いという意味です。SNSなどでは「lol」と表記されているのでご存知の方も多いと思います。日本語だと(笑)ですかね。

そんな彼らでしたが、全イギリス国民に聴いてもらうわけですから、流石にヴォーカルでスカウスを使うわけにはいきません。当然のことながら、ビートルズは、標準語で歌詞を書き、歌いました。 つまり、日常会話と音楽とでは同じ英語でも言葉を切り替えていたわけです。

 

2 発音は音楽のジャンル分けにも影響する

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音楽のジャンルを分けるにあたって、皆さんは何を基準にしますか? ビート、リズム、テンポ、音色、楽器など色々とありますが、実は、これらだけでは、ロック、カントリー、パンクなどのジャンルを区別するには不十分です。面白いことに、音楽のジャンルを区別するのは音楽的な要素だけではないということです。では、何が区別のポイントになるのでしょうか?

実は、ヴォーカルのアクセントが、音楽のジャンルを定義するのにも役立つのです。ヴォーカルの際にネイティヴのアクセントが邪魔になるので、ジャンルに合うようにアクセントを変えてしまうのです。

実は、このことについては専門家が研究していて、1983年にイギリス人の社会言語学者ピーター・トラッドギルが「イギリスのポップソング発音の社会言語学」と題する論文で発表しました。彼は、イギリスのポピュラー音楽が普及し始めた数十年間に見受けられる著しい特徴について研究しています。彼によれば、ポピュラー音楽の歌手は、歌うときには母国語とは異なるアクセントを使用していたとのことです。

特に、「イギリスのポピュラー音楽の代表格であるビートルズローリングストーンズは、楽曲の中でアメリカ英語の発音をしていた。」と彼は主張しています。

アメリカのアクセントで始まり、後にネイティヴリヴァプールのアクセントに移行したビートルズは、方言のアクセントがジャンルを超えて発揮する力と、素晴らしいアーティストがジャンルで用いられる言葉を変える能力を持っていることの両面を示している。」

これは、ビートルズは、前期のころは、アメリカ音楽の影響を受けた発音をしていましたが、後期になってくると必ずしもそれにこだわらなくなって、母国語の発音をしたということを指摘しているのだと思います。ポールもアメリカ式に発音することがばかばかしくなったと語っています。

 

3 ポピュラー音楽はアメリカ英語が主流だった

(1)英語にも色々ある

イギリスが世界の多くの国を植民地にしたために、世界的に英語が普及することになりました。しかし、キリスト教にたくさんの宗派があるのと同じように、基本は同じ英語でも、国によって発音や意味が違います。

イギリス英語とアメリカ英語は、文法的には同じなんですが、単語の意味や発音が違ったりします。あくまで私の個人的な感想ですが、イギリス英語がなんとなく気取ってお高くとまっているような感じに聞こえるのに対して、アメリカ英語はフランクで砕けた感じに聞こえますね。

(2)エンターテインメントの世界はアメリカ英語が主流

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映画や舞台、音楽などのエンターテインメントの世界は、ずっとアメリカの独壇場でした。ブロードウェイ、ディズニー、ハリウッドなどの舞台や映画、ジャズ、ブルース、ロックンロールなどの音楽、全てはアメリカから全世界に提供されていたんです。

ポピュラー音楽の世界は、長い間アメリカが支配してきたので、そこで使われる英語も当然アメリカ英語ということになりますビートルズが大好きだったエルヴィス・プレスリーチャック・ベリー、リトル・リチャードなどのロックンローラーたちは、アメリカ英語でロックンロールを歌っていました。

下積み時代からビートルズは、彼らの曲を好んでカヴァーしましたが、歌う時も彼らと同じように発音していました。私も言語学としての英語に詳しくないのでよくわからないのですが、少なくともポップスやロックを歌うのにはイギリス英語よりアメリカ英語の方がマッチしていたのではないかと思います。そして、自然に彼らが制作したオリジナル曲もアメリカ英語の発音になったのです。

(3)イギリスはポピュラー音楽でアメリカを制覇したが

Rhoticity(ローティシティ)と呼ばれますが、これは「/r/の発音の有無」のことで、アメリカ英語はRhotic(/r/を発音する)であるのに対し、イギリス英語はNon-rhotic(/r/を発音しない)なのです。わずかな違いですけどね(^_^;)

例えば、「door」はイギリス英語では「ドー」ですが、アメリカ英語では「ドーア」と発音します。ビートルズは、語尾の「r」をアメリカ英語風に発音していましたが、やりすぎてしまったこともあります(笑)例えば、ポールは「Till There Was You」を歌っていましたが、「saw」の発音をやりすぎて「ソーア」になっちゃってます(^_^;) 

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ポールが参考にしたペギー・リーのヴァージョンでは「ソー」と発音しています。聴き比べてみてください。

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それまでポピュラー音楽界はアメリカが支配していたのですが、ビートルズが登場したことによってイギリスのポピュラー音楽がアメリカを制覇しました。しかし、皮肉なことに彼らの発音は母国語のそれではなく、アメリカ英語の発音だったのです。

もし、彼らが母国語の発音でレコーディングやコンサートをやっていたとしたら、ポピュラー音楽の歴史は変わっていたかもしれません。もちろん、それでも彼らが大成功したことは間違いありませんが、アメリカ人にとってはやや違和感が残り、レコードの売り上げやコンサートの入場者数に、僅かながらでも影響を与えた可能性はあるかもしれません。

 

4 Can’t Buy Me Love

ビートルズアメリカ英語で歌っていた典型的な例をいくつか挙げてみましょう。ファンなら知らない人はいない名曲「Can’t Buy Me Love」は、邦題はなく「キャント・バイ・ミー・ラヴ」と日本語表記されています。これは、ポール・マッカートニーが作曲し、リードヴォーカルを担当しています。イントロ無しで「♩〜 キャント・バイ・ミー・ラ~ヴ」という彼のヴォーカルからスタートします。

誰も何の疑問も持たずこの曲を聴き、歌っていますが、そもそも「Can’t」の発音が、ビートルズの母国イギリスのそれとは異なることをご存知ですか?イギリスでは、「キャント」ではなく「カーント」と発音します。「キャント」というは、アメリカのネイティヴの発音です。

両者を比較したものがこれです。

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ですから、イギリス人であるポールが歌う時は、「キャント・バイ・ミー・ラヴ」ではなく「カーント・バイ・ミー・ラヴ」と発音するのが本来なんです。しかし、聴けばすぐ分かるとおり、彼は、「カーント」とは絶対に発音していません。「キャント」とネイティヴ・アメリカンのように発音しています。

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ここが難しいところなんですが、もし、仮に彼が「カーント」と発音していたら、アメリカのリスナーの反応はどうだったかというところですね。ちょっと違和感を覚えたかもしれません。もちろん、大ヒットしたことは間違いありませんが、アメリカ人がそう発音するまで影響を与えられたかどうかは分かりません。 

 

(参照文献)You Say Potato: A Book About Accents, SLATE, POSITIVE ANYMORE

(続く)

 

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