★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

映画「YESTERDAY」のレヴュー(前編)(号外)

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1 ついに日本でも劇場公開

イギリス、アメリカでは一足先に公開されていた、リチャード・カーティス脚本、ダニー・ボイル監督の映画「YESTERDAY」が、2019年10月11日、ようやく日本でも劇場公開されました。二人の対談が公開されましたが、その中でボイル監督は、「これは、ビートルズに贈るラブレターだ。」と語っています。彼らへの愛と尊敬が込められた言葉ですね。


『イエスタデイ』ダニー・ボイル監督×リチャード・カーティス対談映像

それらの国では大ヒットして、その影響で50年前のビートルズの曲がアメリカのチャートにランクインし、何と「Here Comes The Sun」がビルボードの2019年7月13日のホット・ロック・チャート9位にランキングされました。50年前の曲が現代のヒットチャートのトップ10に入るなんて信じられませんね。

今回は、この映画のレヴューを行います。当然ネタバレがありますので、その点、気をつけてご覧ください。それから、あくまで記憶を頼りに書きますので、記憶違いや勘違いがあるかもしれませんが、その点はご容赦ください。

これは、ビートルズをバックボーンにしたカップルのラヴ・ストーリーです。ビートルズそのものを描いた映画ではありませんが、彼らの存在なくしては成立しなかった作品です。

もっとも、ネタバレがあると言っても、このブログをご覧の皆さんは、すでに映画の予告編などの情報をSNSなどでご存知かもしれません。ですから、まだ映画を観ていなくても、あらすじは知っておられる方も多いと思います。

さっぱり売れないシンガーソングライターが、ある日突然世の中からビートルズが消えてしまい、自分だけがビートルズの楽曲を知っているという、とんでもなくラッキーな状況に置かれました。彼はそれを利用して、ビートルズの名曲を自分の曲として発表し、スーパースターにのし上がるというお話です。ビートルズを知らない人も十分楽しめる内容になっています。

ただ、ファンの方なら思わずニヤッとするようなエピソードを随所で挟んでいるので、そこも見所ですね。映画を観る前にそれを知ってしまうと、面白くなくなってしまうかもしれません。

なので、楽しみにしている方は、ここから先は読まないでください(笑)

 

2 売れないシンガーソングライター

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イギリスのサフォークに住むジャック・マリック(ヒメーシュ・パテル)は、小学校の演奏会でオアシスの「ワンダーウォール」を演奏した思い出が忘れられず、プロのシンガーソングライターを目指しました。彼の幼なじみのエリー(リリー・ジェイムズ)は、彼と彼の音楽に夢中になり、彼のマネージャーを引き受けてそれ以来ずっと行動を共にしていました。

ジャックは、スーパーマーケットでアルバイトをしながらプロミュージシャンを目指していました。一方、エリーは、学校の教師になり、彼のマネージャーを続けていました。

しかし、ジャックは、いくら自分の曲を書いて演奏しても全く売れず、子どもの頃からの夢を諦めて、教師の道を選ぼうと考えていました。その時、彼は、彼女にこう言ったんです。「This is the end of “Long and Winding Road”(これが長く曲がりくねった道の終わりだ。)」

ファンは当然知っていますが、「The Long and Winding Road」はビートルズの楽曲のタイトルです。ここで早くもビートルズが存在したことをさりげなく暗示しているわけですね。もちろん、ビートルズを知らないエリーは全く気付きません。本当にさりげなく語っているので、多くのファンは、この時点ではまだ、彼女がビートルズを知らないというところまでは気が付かなかったかもしれません

彼女は、夢を諦めちゃダメだと反対しました。このエリーが、とてもチャーミングで素敵な女性でしたね。

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3 ビートルズが世界から存在しなくなった!

ジャックが自転車を漕いで自宅へ向かっている途中で、世界中が突然12秒間だけ停電したのです。真っ暗闇の中で、彼は、バスと衝突して路上に投げ出され、気を失ってしまいました。このときにバックグラウンドで流れているのが、ビートルズの「Strawberry Fields Forever」「A Day in the Life」といった幻想的な作品を連想させる曲で、「これから異次元の世界へ突入するぞ」ということをビートルズを知っている人に暗示しているんですね。

ジャックの意識が戻ると、そこは病院のベッドの上でした。幸い、大ケガはしませんでしたが、前歯が2本折れてしまっていました。見舞いに来てくれたエリーから、全世界が突然大停電になったこと、自分がバスに跳ねられて意識を失って入院していたことを告げられました。

エリーが職場へ戻ろうとすると、ジャックが「64歳になっても僕と食事をしてくれるかい?」と尋ねました。エリーは、「ええ。でも、何で64歳?」とジャックに問いかけます。彼が説明しかけると、急いでいたエリーは話の途中で病室を去ってしまいます。彼は「何で64歳って、そりゃ決まってるじゃないか」と独り言を言います。

ファンの皆さんならお分かりの通り、ジャックは、ビートルズの「When I’m Sixty Four」という曲にかけて問いかけたのです。この曲は、夫が妻に対して「自分が64歳になっても見捨てないでくれるかい?」と問いかけるほのぼのとした歌詞になっています。

おそらく、この時点でほとんどのファンが、ジャックだけがビートルズを知っていて、彼以外の人がビートルズを知らない世界に存在しているということに気づいたと思います。


When I'm Sixty Four (Remastered 2009)

イギリス人でジャックのマネージャーの彼女なら当然ビートルズのことはよく知っているはずですし、この曲のことも知っていると思ってそう問いかけたのでしょう。この時点ではまだ彼は、自分がとんでもない世界にいることを全く認識していませんでした。

退院後、ジャックは、知り合いの歯医者で事故で欠けた前歯2本を入れてもらいます。その時、歯医者が「私が開業したとき、君のお父さんが最初の患者だったんだ。私が今日あるのは、君のお父さんのおかげだよ。With a Little Help From My Friends(友人のちょっとした手助けのおかげ)」これもビートルズの作品です。

もちろん、歯医者もビートルズの存在を知りません。ですから、このセリフは、全く偶然出てきたものということになります。こんな風に随所にビートルズにまつわるエピソードを挟んでいるんですね。

4 ビッグ・アーティスト誕生?

ジャックは、友人に退院祝いのパーティーに招かれ、エリーから新品のアコースティックギターをプレゼントされます。そして、ジャックは、自分が作った曲を演奏してみますが、反応はイマイチでした。そこで、新品のギターに相応しい名曲として「Yesterday」を弾き語ります。


Yesterday - In Theaters June 28 (HD)

曲のあまりの美しさに感動したエリーは「そんな曲、いつ書いたの?」と震える声でジャックに尋ねました。何をバカなことを言ってるんだという様子で「俺のじゃない、ビートルズポール・マッカートニーの曲だよ。」と応えるジャック。しかし、友人に「誰?」と問い返されてしまいます。

ジャックは、メンバーの名前を次々と挙げましたが、友人たちは誰も知らないといぶかるばかり。挙句の果てに、友人は「ビートルズなんてどうせ誰も知らないマイナーなバンドだろ?ミュージシャンは、自分が好きなミュージシャンを誰もが知ってると思い込むもんさ。」と言い出す始末でした。

「おいおい、悪い冗談はやめてくれよ。」みんなが自分をからかっていると思ったジャックは憤慨します。「これは歴史に残る名曲だぞ?」「何よ?ちょっといい曲を作ったからって、もう上から目線?」 

友人たちは、ジャックのことをからかっているのではなくて、本当に知らない様子でした。そのことに彼は愕然(がくぜん)としてしまいます。

 

5 ビートルズが存在しない世界

(1)やっと事態を理解した

「まさか?」と思ったジャックは、大慌てで自宅のパソコンで「Beatles」を検索しました。しかし、ヒットしたのは「Beetle」、そう、カブトムシです。Googleではクワガタムシの写真がヒットしてました。

メンバーの名前で検索しても、誰もヒットしません。例えば、ポールならヨハネ・パウロ2世などまったく別人の名前がヒットしてしまいます。「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」とアルバムのタイトルを入力すると、独身男性の婚活パーティーがヒットしてしまいます。

彼は、自宅の本棚のレコードを床に広げて探しましたが、あったはずのビートルズのレコードがなくなっていました。面白いことに、ビートルズよりやや遅れてデビューして今でも現役で活動しているローリング・ストーンズのレコードは存在するのに、オアシスのレコードは存在しなかったんです。つまりビートルズが存在しなくなったことで、彼らから影響を受けたミュージシャンも同時に存在しなくなってしまったということですね。 この辺りがなかなか芸の細かいところです。

ただ、ストーンズは、ビートルズがデビューした時点ではすでに存在していましたが、彼らの影響を受けた点では同じなんですけどね(^_^;)ビートルズがオーディションで不合格になったデッカ・レコードに、ジョージ・ハリスンストーンズを紹介したのは有名な話です。

また、マネージャーのアンドリュー・ルーグ・オールダムは、もともとブライアン・エプスタインの部下でしたし、彼が、ストーンズのメジャーデビュー後、オリジナル曲がなく伸び悩んでいた彼らを何とかしたいと、ジョンとポールに依頼して「I Wanna Be Your Man」を譲ってもらったのは有名な話です。この曲のおかげで彼らは、初のナンバーワンヒットを獲得して一気にブレイクしました。

おそらくこの分岐点となったのは、ビートルズのデビュー前に既にミュージシャンとしてデビューしていたか、ビートルズのデビュー後に、彼らに触発されてミュージシャンになったかという点なんでしょうね。

(2)あの名曲が自分の作品になる!

つまり、大停電が原因で「YESTERDAY(昨日)まで存在していたはずのビートルズが、世界中から存在しなくなってしまった」のです!これが映画のタイトルとリンクしているわけです。

それでもまだ事実を受け入れられないジャックは、土砂降りの雨が降りしきる夜中にリリーの自宅を訪れ、「本当にビートルズを知らないのか?」と尋ねました。リリーは、「知らないってば!」と応えました。それでようやくを彼は、自分がビートルズが存在しない世界に存在することを認識したのです。

ジャックは、「世界中で自分だけがビートルズの名曲を知っている」というとんでもないアドヴァンテージを持っていることに気づいたのです。自分は、シンガーソングライターだから、ヴォーカルもギターやピアノの演奏もできる。ということは…そうです、ビートルズの名曲を自分の作品として発表できる。」のです。

10年間全く売れず、シンガーソングライターの道を諦めようとしていた自分にとんでもないチャンスが巡ってきたのです。

 

 

(参照文献)THE RIVER 

(続く)

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