- 1 多彩な才能でビートルズや他のアーティストをサポートした
- 2 MVを制作するようになった
- 3 優れた撮影のテクニック
- 4 幅広かった交友関係
- 5 解散後のジョンとの交流
- 6 ビートルズが隣の座席に座っていたかもしれない
1 多彩な才能でビートルズや他のアーティストをサポートした
トニー・ブラムウェルのお話しを続けます。ビートルマニアが増え、ブライアンがマネジメントするアーティストも増えました。トニーの忠誠心は、より大きな責任と隠れた才能をもっと生かすという形で報われました。「ブライアンがバンドを拡大していたとき、私は、シラ(ブラック)やジュリー(アンド・ザ・ペースメーカーズ)と一緒にツアーに出て、彼らのショーを手伝っていた。彼らのステージ・パフォーマンスをまとめたり、曲を推薦したり、そういうことをしていた」
「テレビで働いている友人もたくさんいて、マイケル・マイルズとの『Take Your Pick』など、いくつかの番組の監督をやらせてもらった。彼は、私に『Ready, Steady, Go』(ビートルズも度々出演した人気テレビ番組)のエピソードを何本かやらせてくれた。それは金曜の夜の儀式で、まるでパーティーのようだった」
トニーは、ローディに留まらず、マネジメントや撮影の才能も発揮するようになり、ビートルズだけでなく他のミュージシャンのサポートもするようになりました。
2 MVを制作するようになった
(1)ビートルズがMVを制作するようになったきっかけ
「ある時期、ビートルズがあまりにも有名になり、警備のためにBBCや他の場所に入ることができなくなったので、私たちは自分たちで小さなビデオを作ることにした。『We Can Work It Out』『Help』『Ticket To Ride』『I Feel Fine』など、彼らのためにビデオを作っていた」
ビートルズがMVを撮影するようになったきっかけは、警備上の問題でライヴ会場に入るのが難しくなったことだとは意外ですね。今まではコンサートをやめた彼らが、ファンに自分たちが演奏している姿を観せるために始めたのが動機だと言われていました。そういえば、上記の曲は、彼らがコンサートを止める前から演奏していたもので、もうその時にMVは撮影していましたね。
(2)後に大成功したアーティストたちもサポートした
「アメリカでは、ビートルズの成功によりポップショーが増えた。私は、テムズ川に屋外放送ユニットを設置し、スモール・フェイセズ、サンディ・ショウ、ムーディー・ブルース、フレデ・ アンド・ザ・ドリーマーズ、ヤードバーズ、ハーマンズ ・ハーミッツなど、彼らが気に入って2テイクのビデオを撮りたいアーティストを撮影していた。ブライアンにとって、これはかなり儲かるビジネスになった。ブライアンの劇場も経営し、日曜日にはポップ コンサートも行っていた」
なんとトニーがサポートしたミュージシャンの多くは、その後一流のアーティストになったのです。ビートルズの名声に才能のある若者が呼び寄せられたのかもしれません。
3 優れた撮影のテクニック
トニーの細部へのこだわりとカメラの腕前は、最終的に彼をサウスデボンに呼び戻しました。「ブライアンは、ここに二つのバンドを持っていた。ラスティックスは、ブリクサムとペイントン出身で、私は、列車がブリクサムまで通っていた頃はよく来ていた。私は、スカラホールで彼らのリハーサルをしていた。彼らは、テレビのコンテストで優勝し、ブライアンがマネージャーとなり、ビートルズとツアーをした」
「実際、彼らは、ムーディー・ブルースと一緒に彼らの最後のイギリスツアーに同行したんだ。トットネス出身の別のバンド、ザ・シルキーは、ジョンとポールがプロデュースした。彼らは、ボブ・ディランのカヴァー曲ばかりを集めたアルバムを作った最初のバンドだった」
「ボブは、自分の曲や詩を誰かがカヴァーしてくれることをとても誇りに思っていた。だから、コンサートに来てポールやジョンと会ったとき、彼が話したかったのはトットネス出身のザ・シルキーというバンドのことばかりだった。その頃にはみんな彼らのことを忘れていたけど、ディランは本当に感銘を受けたんだ。今でもスーパーでシルキーのシルヴィア(タトラー)に時々会うよ」
シルキーは、ビートルズの「You've Got to Hide Your Love Away」をカヴァーし、全米チャート10位を記録しました。
4 幅広かった交友関係
トニーは、クイーンのブライアン・メイに自宅を売りましたが、その取引の一環としてレコードを屋根裏に置いていくまでは、業界で最も羨ましがられるレコードコレクションを持っていました。彼がアメリカでビートルズのコンベンションについて話すと、6万人の観客が集まりました。トークショーでこれだけの人はなかなか集まりません。
「とにかくやるのが好きで、すごく楽しいよ。ビートルズのファンはとてもいい人たちで、彼らはまだジョン派かポール派のどちらかだ」
トニーは、トットネスで幸せにかなり静かに暮らしていましたが、彼の幅広い交友関係は多くの有名人の羨望の的となっていました。彼は、ブルース・スプリングスティーンと友人だった時の話を思い出します。まるで隣の男のことを話しているかのように、彼の家でフィル・スペクターの生涯の作品を眺めていたのです。
トニーは、よくポールと連絡を取り合っていました。「彼がライヴをやるなら、一緒に行って一杯飲むよ。彼がパーティをやるなら、たいてい誘ってくれるんだ。彼は素晴らしい人だよ。ポールは見た目通りの人だよ。ひどく怒らせない限り、彼は親指を立てて言うんだ。『オーライ、オーライ』ってね」
5 解散後のジョンとの交流
トニーは、ポールとは密接な関係を保っていましたが、ジョンとはヨーコとの関係のせいで揉めることも時々あったそうです。彼は、彼女のことをよく思っていませんでしたから。亡くなる直前、ジョンは彼に電話しましたが、交換台のミスで彼は電話に出られませんでした。
「私は、当時ポリドール・レコードを経営していたが、電話は『ポリ』が彼の夢のアルバムを出すかどうか尋ねるものだったと思う。当時は(彼と)レコード契約はしていなかった。何か別のことだったのかもしれない」
些細なミスでトニーは、ジョンと最後の会話ができなかったのです。トニーは、その少し前にニューヨークにいて、友人のブルース・スプリングスティーンに会いました。
「彼はジョンに会いたいと言っていた。私は、二人をペアにしようとしたが、ヨーコからジョンは忙しいというメッセージが返ってきた。それは数週間後のことだった」トニーが自分を嫌っていることを知っていたヨーコは、ジョンに会わせたくなかったのかもしれません。
「ニューヨークで、ジョンがスタジオで何かをしていると聞いていたので、イギリスに戻るとすぐに彼に手紙を書いて、レコード契約を探しているかどうか尋ねた」
「返事はなかったので、電話の内容はそのことだったのではないかと思う。本当のところはわからない。」ひょっとすると、アルバムを制作したいという依頼だったのかもしれません。仮にそうだったとしても、それは実現しなかったのですが。
6 ビートルズが隣の座席に座っていたかもしれない
(1)メンバーは結束していた
トニーは、バンドについての素晴らしい洞察を記した著書「マジカル・ミステリー・ツアーズ」のPRをしています。これは、彼がイギリス音楽史の最も重要な瞬間の一つに、非常に親密な仲間と非常に親しかったという意味において重要です。そして、彼らと非常に親しかったが、実際にはグループのメンバーではなかったということは、彼が彼らの全体像を見ていたことを意味します。
「ビートルズは、学校のギャングのようなものだった。誰も彼らの内輪には入れなかった。妻でさえそうだった」
「彼らは、お互いに結婚していた。彼らは、周りで何が起こっているのか本当に知らなかったと思う。彼らが林檎の樽を頼めば、林檎の樽が出てくる。当時、彼らは、自分たちを取り囲む巨大な機械が何でもやってくれることを完全には理解していなかったと思う」
「彼らは、マスコミと素晴らしい関係を築いていた。マスコミは今とは違っていたし、エンターテイメント部門には良い友人がいた。悪いものは何も現れなかった。とにかく彼らのバンドは行儀がよく、公の場で大失敗することはなかった」
(2)ビートルズは変装して外出していた
彼は、多くのエピソードを語りましたが、中でも興味深い話があります。それは、多くの人がビートルズのメンバーの隣に座ったことがあるかもしれないという事実です。そして、彼らの人生も変わったというよりは、おそらく彼らはそれに気づいていないのです。「彼らはいつも出かけていた」と彼は言いました。「外出して何かをしたいときは、変装してバスに乗った。人々はよく彼らを変な目で見たが、乗客は12番バスでビートルズの隣に座るとは思っていなかっただろうから、うまくいったのだろう」
「ジョンは、特に地下鉄でよく移動していた。彼は、いたずらをして楽しんだり、現実逃避したりするためにそうしていた」
これは意外です。まさか、ビートルズが度々変装して外出し、バスや地下鉄に乗っていたとは。彼らがどれほど変装しようが、外出した途端、たちまちビートルマニアに見つかってしまいそうな気がします。ロンドンが中心だったのでしょうが、ほとんどの人々は、座席の隣に彼らが座っているというとんでもない幸運に恵まれたことに気づきもしなかったのです。当時のロンドン市民はもしかしたらあの時の彼が…なんて思い当たるかもしれません。
こうしてビートルズに多大な貢献をしたトニー・ブラムウェルは、2024年6月この世を去りました。
(参照文献)フィフスビートル・プロボーズ
(続く)
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