
- 1 ポールの管楽器演奏
- 2 ポールの管楽器演奏がユニークな作品
- 3 ポールは何を演奏していたのか?
- 4 ペニーホイッスルとは
- 5 ポールがペニーホイッスルを使用した
- 6 本当にペニーホイッスルだったのか?
1 ポールの管楽器演奏
映画「Magical Mystery Tour」のプロジェクトから生まれた最高の曲の一つは、ポールの「The Fool on the Hill」です。この曲では、作曲家がビートルズのレコードでやったことの中で、ジョンの作曲に対する哲学的アプローチに最も近づいたことがわかります。ラヴソングや楽天的な歌詞を好む傾向にある彼が、ビートルズ時代に残した作品の中でも深い思索を感じさせる歌詞で際立っています。
また、フルートを目立たせているのもこの曲がグループの過去の作品の中でユニークな特徴です。オーケストラのフルートは、ポールのピアノパートと並んで、曲全体を通してメインのバック楽器となっています。
2 ポールの管楽器演奏がユニークな作品
(1)ポールのソロパート
プロのフルート奏者3人に加え、曲の3か所でポール自身がこの曲の間奏で演奏するリコーダーのようなサウンドが聴こえてきます。ポールの管楽器パートは完全に彼自身のアイデアで、彼の強い要望でレコーディングされました。彼はレコーディングの初期の段階でプロデューサーのジョージ・マーティンにこれを使ってレコーディングしたいと申し出たのですが、演奏のクオリティーに不安を覚えたマーティンはすぐには了承しませんでした。
ポールは、様々な楽器は演奏できるオールラウンド・ミュージシャンとはいえ、さすがに不慣れな楽器でレコーディングするのは難しいと思ったのかもしれません。しかし、ポールの粘り強い説得に負けて了承したのです。
(2)管楽器の演奏
フルートとは別にポールが別の管楽器のソロを演奏し、主役の座をさらっています。これらのフルートなどのパートは、実はオーケストラのオーヴァーダブの前にレコーディングされたものです。マーティンによると、このレコードを「もう少しプロフェッショナルなサウンドになるように」するために後から追加されたとのことです。
彼は、ポールが管楽器を演奏することを了承したものの、それだけでは弱いと考えたのでしょう。素人っぽい演奏で普通なら違和感を覚えるところですが、それがむしろこの曲のファンタジーさをより引き立てています。改めてこの曲を聴くと、素晴らしい決断だったと思います。
3 ポールは何を演奏していたのか?
(1)リコーダーではなかった?
さて、ここでこの作品にまつわる最大の疑問点にぶつかります。それは「ポールが演奏した管楽器は何だったのか?」という疑問です。ポールは、一般的には木製のリコーダーを演奏しているとされています。リコーダーは笛の吹き口が付いたフルートの一種で、専門用語では「フィップル・フルート」とも呼ばれています。日本では小学生が音楽の授業で習いますね。
しかし、1969年にジョン・ギリアンドのラジオドキュメンタリー「ポップ・クロニクルズ」にゲストとして出演したマーティンは、この曲で実際に演奏されていたのはリコーダーではなかったと明言しています。私は、あの音色からして自分が小学生の時に吹いていたリコーダーのサウンドだとずっと思っていたんですが。
(2)ペニーホイッスルを演奏した。

マーティンによるとレコーディングの初期段階では、「ポールは実験していた小さなおもちゃの笛、ペニーホイッスルを持ってきていた」と語っています。木製のリコーダーとは対照的に、ペニーホイッスルは正式にはティンホイッスルと呼ばれ、通常ちょうど6つの指穴がある小さな金属製の楽器(木製もあります)です。この楽器の現代版は、19世紀半ばにイギリス北部の都市マンチェスターでロバート・クラークによって発明され、20世紀には子供のおもちゃとして最もよく見られました。
4 ペニーホイッスルとは
(1)1843年にアイルランドで発明された

ペニーホイッスルは、シンプルでありながらも多様な音色を持つ楽器で、ポールの音楽に新たな風を吹き込みました。形状や音色はリコーダーとよく似ていますが、上の図のように別の楽器です。クラークは、ペニーホイッスルを大量生産し、一般に普及させることで楽器の手軽さとアクセスの良さを実現しました。
この楽器は、アイルランドの伝統音楽において特に重要な役割を果たし、多くのミュージシャンによって演奏されるようになりました。アイルランド音楽のミュージシャンたちがこの楽器を広めたことで、ペニーホイッスルは世界中で知られるようになり、様々な音楽ジャンルにおいても使用されるようになりました。軽快でメロディックな音色が特徴です。ポールは、この楽器を通じて、ビートルズの楽曲に新しい要素を加え、リスナーに新鮮な体験を提供しました。
(2)様々な音楽シーンで使用されている

ペニーホイッスルは、もともと「クラーク・フラジェオレット」として知られ、手軽に持ち運べることから多くの人々に愛用されました。ペニーホイッスルという名称は、当時1ペニーで購入できる安価な楽器であったことに由来しています。これにより広く普及し、様々な音楽シーンでの使用が可能となりました。
ペニーホイッスルはシンプルな構造を持ちながらも、豊かな音色を生み出すことができるため、演奏者にとって非常に魅力的です。アイルランドの民謡やダンス音楽に欠かせない存在であり、特にセッションやフェスティヴァルでの演奏が盛んに行われています。
また、その多様性から映画音楽やビデオゲームのサウンドトラックにも頻繁に使用されています。特に、アイルランドの文化を反映した作品やファンタジー系のゲームでは、その独特の音色が雰囲気を高めるために重宝されています。簡単に演奏できるため、初心者からプロまで幅広い層に支持されており、音楽の世界での存在感を増しています。この楽器は、特にフォークやアイルランド音楽において重要な役割を果たし、ポールのようなアーティストによって新たな解釈が加えられています。
5 ポールがペニーホイッスルを使用した
(1)ポールの優れた音楽的直感
「レコードには彼のペニーホイッスルが入っている」とマーティンは認めました。「そして、彼のサウンドを少し良くするためにダブルトラックした」と付け加えました。ポールは、子供の頃に父親に買ってもらったトランペットを吹いていましたから管楽器も演奏できたとは思いますが、それでもペニーホイッスルはさすがに難しかったと思います。実際、レコードを聴いてみてもこのパートだけはちょっとたどたどしい感じがします。
でも、そのたどたどしい子供のように無邪気な音色は、曲の中で描かれている「丘の上の愚か者」の姿を彷彿とさせます。いつものように、ポールの音楽的直感は的確で、スタジオでの実験的な意欲が素晴らしい楽器演奏につながりました。あれがなくても名曲であることに違いはありませんが、ビートルズらしい遊び心が存分に感じられます。丘の上の愚か者自身と同じように、正式な音楽教育を受けていないリヴァプール出身の4人の若者は、クラシック音楽の訓練を受けたミュージシャンには見えないものをよく見ていました。
(2)ポールのペニーホイッスル演奏

ポールは、ペニーホイッスルを使用することで、「The Fool on the Hill」に独特の音色と雰囲気を加えました。この楽器は、木製のリコーダーと同様に特有の柔らかい音を持ち、リスナーに心地よい印象を与えます。「The Fool On The Hill」では、彼が即興で演奏したペニーホイッスルのメロディーが、曲全体の雰囲気を一層引き立てています。ポールは、この楽器を通じて、伝統的な音楽と現代的な要素を融合させ、新たな音楽的表現を追求しました。彼のこのような試みは、ビートルズの音楽における革新性を象徴しています。
6 本当にペニーホイッスルだったのか?
ただ一つ疑問が残ります。マーティンは、ポールがペニーホイッスルを使用したと断言していますが、彼がこの曲をレコーディングしている様子を撮影した写真を見る限り、リコーダーを吹いているように見えます。ただ、ペニーホイッスルの中にもリコーダーとよく似た形状のものがあるので紛らわしいですね。「ザ・ビートルズレコーディング・セッションズ」では、1967年9月25日のレコーディングの時にポールのリコーダーをオーヴァーダブしたと記録されていますが、ペニーホイッスルは記録されていません。
「マーティンの記憶違いで、実際はペニーホイッスルではなくリコーダーを使用した」「レコーディングではリコーダーもペニーホイッスルも両方を使用した」「レコーディングしたのは実際はペニーホイッスルだけだったが、たまたま写真を撮影した時はリコーダーを使っていた」など色々な想像が可能ですが、はっきりしたことは分かりません。もうこの頃になると、彼らが演奏している動画も作品となったもの以外はあまり残されていません。
ただ、ちょっとしたヒントになるのは他のミュージシャンが、彼らの曲をカヴァーした演奏があることです。一見するとリコーダーのように見えますが、形状をよく見るとペニーホイッスルが使われていることがわかります。この音色を聞く限り、やはりポールはこれを使ったのかなと思うのですが果たしてどうでしょうか?
(参照文献)ファーアウト
(続く)
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