★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ジャケットにアートという概念をもたらした「Revolver」(527)

革新的な「Revolver」のジャケット

1 ビートルズがアイドルからアーティストに変貌したアルバム

(1)革新的なアルバム

ジャケットをデザインしたクラウス・フォアマン

アルバム「Revolver」は、多くの人にとって、彼らの歴史を象徴する作品だと考えられています。ビートルズサウンドがモノクロから鮮やかなワイドスクリーンテクニカラーへと変貌した重要な瞬間を象徴し、すべてを変えた先駆的なアルバムです。

ジョン・レノンポール・マッカートニーは、この時期にソングライターとして絶頂期を迎えていました。「Here, There and Everywhere」「Tomorrow Never Knows」「Eleanor Rigby」などの名曲を制作し、ジョージ・ハリスンは「Taxman」「I Want To Tell You」「Love You To」で、彼らとは違う独自のコンポーザーとしての才能を開花させました。

(2)友人のクラウス・フォアマンがデザインした

そして、クラウス・フォアマンは、このアルバム・ジャケットの画期的なアートワークとデザインを手がけました。フォアマンは、1960年、恋人で写真家のアストリッド・キルヒャーを通じて、カイザー・ケラー・クラブで当時ハンブルクに巡業に来ていたビートルズと知り合いました。

フォアマンは、その後もビートルズのメンバーとの交流を持ち、彼が「Revolver」のジャケットのカヴァーアートをデザインすることになったのです。今回はその経緯についてお話しします。

 

 

2 ジョンからカヴァーのデザインを依頼された

(1)ジョンから直接オファーがきた

ビートルズとの想い出について振り返るフォアマン

1966年6月下旬、フォアマンの自宅の電話が鳴りました。ジョンからの電話でした。フォアマンは「ジョンだ」と言われて最初は「ジョンって誰だ?」と思いました。彼らは、ビートルズハンブルク巡業に行っていた頃からの友人でしたが、ビートルズがブレイクしてからは会う機会もありませんでした。それにジョンなんてありふれた名前だし、電話の声は普段の声とは違いますからね。ところが、正真正銘のジョン・レノンがいきなり電話してきたんです。

ジョンは「次のアルバム・カヴァーのアイデアはあるかい? 何を載せたらいいかまだ決めてないから、何かアイデアがあれば見せてくれ」とフォアマンに話しました。フォアマンは画家ですから、ジャケットのデザインを制作できるのではないかと考えたのです。それから彼は、スタジオに来るように誘われ、後にアルバム「Revolver」に収録されることになる曲を聴きました。

(2)フォアマンは収録曲に驚愕した

www.youtube.com

フォアマンは、こう語っています。「最初に聴いた曲の印象は、ただただ信じられないというものだった。説明するのが本当に難しかった。それまでのどのポップ・グループの作品よりもはるかに先を行っていたんだ」

シュトックハウゼンやその他の前衛音楽の領域に突入し、ビートルズの初期からのファンが突然、新しい音楽に出会ったんだよ。彼らがこれを受け入れるかどうか、私にはわからなかった。本当に未来への大きな一歩だった」

「『Tomorrow Never Knows』は本当に素晴らしかったが、同時に怖さも感じた。『Love Me Do』を愛するファンたちのことをずっと考えていたから。彼らは、この音楽をどう受け入れるんだろうって」

フォアマンが驚愕し、同時に不安を覚えたのも無理はありません。当時、ビートルズは、ポピュラー音楽の最先端を走る実験的な曲を制作していて、彼はそれを初めて聴いたのですから。彼らの曲はあまりにも時代の先を行きすぎていて、それがアイドル時代の曲を愛してきたファンに受け入れられるのかどうか、フォアマンには全くわかりませんでした。ファンは、まだビートルズが激変しようとしていることを知りません。

アーティストの実験的な試みは、多くの場合、大衆に理解されず受け入れられません。フォアマンは、その点について確信が持てなかったのです。しかし、ビートルズは、そんなことは一切気にしていませんでした。

 

 

3 革新的なアルバムに相応しいカヴァーが必要だった

「だから私の仕事は、このレコードに込められた新しいアイデア、新しい実験的な要素を世間にどう伝えるかを考えることだった。色とりどりのメンバーの顔写真で埋め尽くされたありきたりのカヴァーではダメだった。全く違うものにする必要があった。それは大変な仕事だった。でも、私はその仕事に取り組まなければならなかった」

フォアマンは、これがとんでもなく革新的なアルバムだとわかった以上、平凡なジャケットではダメだ、アルバムに相応しい斬新なものでなくてはならないと確信したのです。それは「ジャケットもアルバムの重要な構成要素である」という当時としては画期的な発想でした。それで、彼は自宅に帰って絵やスケッチを描き、それからEMIスタジオにそれを持っていきました。

「私は、いくつかアイデアを思いついていた。でも、とにかくたくさんの写真を入れなきゃいけないって結論に至った。だって、ファンはいつもビートルズの写真をできるだけたくさん見たがるからね。」

「髪の毛のデザインにするかどうかも、最初は決めていなかった。気球とか、船とか、いろいろ試してみたんだけど、最終的に髪の毛のアイデアにたどり着いたんだ。『髪の毛、これは本当に重要だ』って。」

4 全員が同じデザインを選んだ

Rain (1966) – The Beatles | Observation Blogger

「それで、大きな紙にスケッチを描いたんだ。画家が使うような、両面に描けるすごく大きなスケッチブックみたいなやつにね。当時初めて発売されたマジック・マーカーで、その大きな紙に全部落書きして、その紙を折りたたんだ。描き終わると、EMIの食堂に持って行った。メンバーが座っていたのはそこだった」フォアマンが食堂に入るとビートルズがいて、彼はそこで彼らにスケッチを披露しました。

「実は誰が最初に言ったのか覚えていないんだけど、皆が指差して『これだよ、髪の毛のあるやつ。素晴らしいね。髪の毛の中に小さな人の姿があるのが最高だ』と言ったんだ。私もそのアイデアが気に入ったので嬉しかった。でも、本当は、彼らがあれを選ぶだろうとわかっていたんだよ。他のデザインについては話もしなかった。『こっちの方がいいかも』なんて誰も言わなかった。皆、髪の毛と人の姿がたくさんついている方を選んだんだ」フォアマンが他にどんなアイディアを持って行ったのかわかりませんが、ビートルズの全員が一目で髪と人の姿をコラージュしたデザインを気に入った様子が窺えます。

 

 

5 髪の毛のインスピレーション

(1)ロングヘアが象徴的だった

「当時は、今ではなかなか想像できないことだが、実際にあんなに長い髪をしている男性がいるというのは、とてもセンセーショナルなことだった。それまで知られていなかったことだ。ビートルズの集団的なルックスにとって、とても重要な部分だった。私はペンとインクでそれを描き、全体をまとめるようなスタイルで描いてみた。それがうまくいって良かったよ」ビートルズの象徴といえば何と言ってもロングヘアでした。このイラストはそれを強調してペンとインクというシンプルな画材で、特に髪を細かく丁寧に描いたことが成功の大きな要因でしょう。

(2)他のアーティストからインスピレーションを受けた

彼がこのジャケットを作成するにあたってインスピレーションを与えた特定のアーティストや作品はありました。「コラージュといえば、(クルト・)シュヴィッタース(コラージュを得意としたドイツの画家)を思い浮かべた。他にもたくさんのアーティストを思い浮かべたが、特に誰か一人というわけではない。『ああ、あなたはビアズリー(イギリスの画家)の展覧会に行ったんだね」と言われることもあるが、私は行ったことすらない。ビアズリーは大好きだよ。彼は素晴らしいアーティストだ。でも、あのスタイルは私にとって彼のインスピレーションではなかったんだ」

確かに、ビアズリーのモノクロの線描画を見ると、このジャケットに影響を与えたのではないかという気がします。ただ、フォアマンによるとビアズリーの影響を受けつつも、他のいろんなアーティストからインスピレーションを受けたということが窺えます。

ビアズリーの代表作「サロメ

6  コラージュのアイデア

クルト・シュヴィッタースのコラージュ作品「ダス・ウンビルト」

フォアマンは、ハムステッドのパーラメントヒルにあるアパートに住んでいて、そこでこの作品を制作しました。これは、様々な要素を組み合わせたコラージュです。

「最初からずっとこの考えはあった。メンバーたちにも『モノクロでやりたいんだ』って言ったんだよ。『ああ、いいね、モノクロでいいよ』って。それで私は『ほら、世の中は全部カラーだよ。ジャケットにはみんなの顔が描かれているんだ。ほとんどがバンドの笑顔だよ。今、サイケデリックな感じで、何て言うか『フラワーパワー』みたいにみんな熱狂してるけど、今回はちょっと違うやり方でモノクロにしよう』って言ったんだ」

「それから「ビートルズって名前じゃなくてもいいんだよ。みんなビートルズだってわかるから」って言ったら『そうだね、ビートルズの名前はいらない』って同意してくれた。当時はアルバムのタイトルも決まっていなかったので、とにかく作り始めたんだよ」ジャケットといえば、フルカラーでミュージシャンが笑顔で写っているというのが主流だった時代に逆行して、あえてモノクロにしたところがビートルズとフォアマンの革新的なところです。

 

 

(参照文献)ゴールドマイン

(続く)

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