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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

70年代の「ブラス・ロック」バンドに大きな影響を与えたビートルズ(538)

レコーディング中のビートルズ

1 後の「ブラス・ロック」バンドに影響を与えた

(1)ブラスセクションを積極的に取り入れた

ビートルズがシカゴなどに代表される「ブラス・ロック」というジャンルを創設したわけではありませんが、彼らに大きな影響を与えたことは事実です。確かに、50年代のR&Bやロックンロールでもブラスはフィーチャーされていました。

しかし、それはあくまでもシンガーをメインにしたビックバンドにブラスが使用されていたのであって、ブラスセクションとしてスポットライトが当てられていたわけではありません。ビートルズは、ギターやキーボードでは出せないブラスのサウンドに着目して、もっとその特色を楽曲に積極的に活かそうとしたのです。

(2)シカゴはビートルズに影響を受けたことを公言している

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ビートルズによるブラスセクションの導入は、後のシカゴなどのブラスロックバンドに大きな影響を与えました。1966年のビートルズのアルバム「Revolver」でトランペットなどのブラス楽器を取り入れたことが先駆的であり、シカゴのメンバーもビートルズからの影響を公言しています。

特にビートルズがオーケストラのようにブラスを配置した試みはシカゴにも強い感銘を与え、ブラスセクションを曲単位ではなくバンド全体のサウンドとして活用するアイデアにつながりました。シカゴが管楽器を活かした新たな音楽スタイル「ブラス・ロック」というジャンルで成功した背景には、こうしたビートルズの革新的な取組みがあったのです。

 

 

2 ブラスセクションの導入

(1)ポールはブラスが大好きだった

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ビートルズは、芸術的な理由と現代音楽のトレンドに影響を受けた理由から、レコーディングにブラスセクションを取り入れていました。特にポール・マッカートニーは、オーケストラや金管楽器を非常に好んでいました。例えば、アルバム「Revolver」収録の「Got to Get You Into My Life」について、彼は、ブラスセクションを多用したアメリカの R&Bソウルミュージックをたくさん聴いていたと述べています。

ジョー・テックス、ウィルソン・ピケット、サム&デイヴなどのアーティストの影響を受けたポールは、そのサウンドを自分なりに表現したいと考え、レコーディングにトランペットとサックスを取り入れたのです。彼は、この手法を自分たちの音楽にとって斬新な試みであり、さまざまなアレンジメントを試す方法でもあると説明しています。

(2)ロックの新境地を開いた

さらに、ブラスの使用はバンドのサウンドを際立たせ、新しい音色やムードを探求することを可能にしました。プロデューサーのジョージ・マーティンは、「For No One」のフレンチホルンのソロに見られるように、オーケストラのミュージシャンやアレンジメントをしばしば採用しました。ポールは、幼少期からフレンチホルンの音色を賞賛しており、この曲にユニークなソロを入れたいとマーティンに相談しました。マーティンは、このヴィジョンを実現するために、アラン・シヴィルなどのトップセッション・ミュージシャンを起用しました。

 

 

3 ブラスの導入はビートルズの音楽的進化を象徴していた

(1)ビートルズは音楽的進化を続けていた

ストーリーピン画像

ブラス、そしてオーケストラの要素を取り入れたことは、ビートルズのレコーディングに対するアプローチの進化、サウンドの幅の拡大、1960年代のポップミュージックのトレンドの変化への対応を反映したものでした。彼らの音楽的進化はこういった面にも現れていたのです。シカゴ、ブラッド・スエット・アンド・ティアーズなどに代表される「プラス・ロック」と呼ばれるジャンルのアーティストたちに大きな影響を与えました。

1966年5月18日は、アルバム「Revolver」のレコーディング・セッションの21日目でした。「Got To Get You Into My Life」は、アルバム「Revolver」の最初のセッション(4月7日、8日、11日)で作業が行われ、その後1か月以上放置されていました。この日、12時間(午後12時30分から午前12時30分)にわたるセッションで、ビートルズは再びこの曲に取り組みました。

(2)トランペットらしいナンバー

まず、ブラスセクションがレコーディングされ、テイク8に追加されました。「トランペットを加えたのは、トランペットらしいナンバーのように聴こえたからさ。他の曲では誰も使っていなかったし、同じように僕らも使っていなかった。斬新だったよ」  *1

ポールは、直感的にこの曲にトランペットがピッタリ合うんじゃないかと感じていました。50年代のR&Bやロックンロールにもブラスは使用されていましたが、ビートルズはそれをより全面に押し出して、ロックの可能性を広げる独自の路線を開拓しました。

 

 

4 ジョージ・フェイム・アンド・ザ・ブルー・フレイムズにオファーした

(1)ポールもジョンも知っているバンドだった

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エディ・ソーントンとグレン・ヒューズは、「ジョージ・フェイム・アンド・ザ・ブルー・フレイムズ」のメンバーでした。彼らはジャズ、ソウル、スカ、カリプソなど幅広いレパートリーを持つイギリスのリズム・アンド・ブルース・グループで、ポール・マッカートニージョン・レノンはロンドンのナイトクラブで何度か彼らのライヴを観ていました。この繋がりで、彼らはポールからこのセッションに招待されたのです。しかし、グレン・ヒューズが病気になり、ブルー・フレイムズのもう一人のメンバーであるピーター・コーが急遽代役を務めました。他に3人のフリーランスが加わりました。

「ジョージ・フェイム・アンド・ザ・ブルー・フレイムズで演奏していたので、ビートルズ、特にジョンとポールのことはスタジオやロンドンのナイトクラブで知っていた。実際、ポールはバッグ・オネイルズ・クラブで私たちの演奏を観ていた時に(後に彼の妻となった)リンダ・イーストマンと出会ったんだ。しかし、ポールが私にこのセッションを一緒にやらないかと誘ってくれたのは、(セント・ジェームスの)スコッチ・クラブでのことだった」*2

ジョージ・フェイム・アンド・ザ・ブルー・フレイムズの演奏をジョンもポールも実際にクラブで聴いていたんですね。それで、彼らなら間違いないと白羽の矢を立てたのでしょう

(2)レコーディングに参加して仕事が増えた

エディ・ソーントンはこう語っています。「それがきっかけで、たくさんの仕事が増えた。ビートルズの仕事を通して、ジミ・ヘンドリックス、サンディ・ショウ、スモール・フェイセス、ローリング・ストーンズなどとも共演した」当時のミュージシャンは、「ビートルズのレコーディングに参加すると仕事が増える」という恩恵に浴したんです。一時的に仕事が増えただけではなく、歴史に彼らの名前が刻まれることになったのです。

「ジョージ(フェイム)から電話がかかってきたので、急いでEMIスタジオへ向かった。私はテナーサックスを吹くので、テナーとバリトンではなくテナーを2本使うことになった。ビートルズは、明確なジャズの雰囲気を出したいと考えていた。担当はポールとジョージ・マーティンだった。(楽譜は)何も書かれてはいなかったが、ポールがピアノの前に座って自分のやりたいことを示して、ヘッドフォンでリズムトラックを流しながら演奏した。何度か試して感触を確かめていると、コントロールルームにいたジョン・レノンが突然飛び出してきて、親指を高く突き上げて「わかった!」と叫んだのを覚えています。ジョージ・ハリスンも少し手伝ったが、リンゴは隅でチェッカーをしていた。*3

ビートルズは楽譜の読み書きができなかったので、実際にセッションで音を合わせるしかなかったのです。ポールが主導する形でセッションは行われましたが、おそらくジョンもセッションでいくつか試しているうちにピッタリはまったと思ったのでしょう。

 

 

5 セッションをやりながら音を合わせた

「面白くて、珍しい経験だった。あんなセッションは初めてだった。曲調はリズム&ブルースっぽい感じで、演奏したのは1曲だけだった。どうやらビートルズは何か特別なものが必要だと感じていたようだ。曲のアレンジについては、まあ、何も書いていなかったよ!ただ彼らの演奏を聴いて、どんなものが欲しいのかイメージを掴んだ。そこから徐々にアレンジを作り上げていった。いくつか試してみて、ポールとジョージ・マーティンがどれを使うかを決めたんだ。*4

一種のジャム・セッションのような感じだったんでしょうね。お互いに音を探りながら合わせて行って、最終的にこれだというアレンジをつかんだのでしょう。

(参照文献)ポール・マッカートニー・プロジェクト

(続く)

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*1:ポール・マッカートニー – キース・バッドマン著「ザ・ビートルズ・:オフ・ザ・レコード」(2008年)より

*2:エディ・ソーントン、トランペット奏者、マーク・ルーイソン著「ザ・コンプリート・ビートルズ・レコーディング・セッションズ」より 、2004年

*3:ピーター・コー、トランペット奏者、マーク・ルーイソン著「ザ・コンプリート・ビートルズ・レコーディング・セッションズ」より、2004年

*4:レス・コンドン – トランペット奏者、キース・バッドマン著「ザ・ビートルズ:オフ・ザ・レコード」より、2008年