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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ビートルズのTVアニメは長らく不評だったが後に見直された(544)

ABCのTVアニメシリーズ

1 ビートルズがアニメ化された

(1)ずっと評価は低かった

ビートルズの全フランチャイズについて言えば、ABCのアニメシリーズ「ザ・ビートルズ」は、昼食のテーブルに一人で座っている子供のようなものです。ほとんどのビートルマニアはこのアニメを嫌悪し、考え抜かれていない戯言に過ぎないと考えています。

しかし、少しは評価に値する点がいくつかあると思われます。特に、1965年のアメリカでのテレビ初放送から50周年を迎えたにもかかわらず、全く注目されなかったことを考えるとなおさら見直してみるいい機会なのではないでしょうか。

(2)その後触れられていない

このシリーズが「ビートルズ・アンソロジー」ドキュメンタリー(少なくともABCで放送された編集版)では一切触れられていません。アップルが所有しているにもかかわらずDVDやビデオで発売されなかった最大の理由は、ビートルズ自身にあるかもしれません。なぜなら、彼らは自分たちの描写、特に声の再現を心底嫌っており、おかしなストーリー展開は言うまでもなかったからです。

 

 

2 映画「A Hard Day's Night」の大ヒットからアニメ化が企画

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ビートルズは1964年までに世界ナンバーワンのバンドの地位を確立し、彼らのスーパースターとしての地位により、名前や肖像をいくつかの商品展開に貸し出すことで利益を上げられたことは、今では誰もが知っています。人形などこれでもかというほど多種多量の商品が開発されました。

さらに映画「A Hard Day's Night」 が批評的にも興行的にも成功し、コンサートを観ることができない多くのファンが、お気に入りのバンドを大画面で観ることができたことを考えれば、ビートルズをベースにしたアニメシリーズの企画がやがて提案されたのは当然の流れでした。メディアのインタヴュー時でさえビートルズが常に醸し出していたリヴァプール出身の生意気さと尽きることのない遊び心は、アニメシリーズにぴったり馴染むように思われました。

 

 

3 アメリカがアニメ化した

(1)テレビプロデューサーが飛びついた

TVアニメを企画したアル・ブロダックス

アメリカの映画・テレビプロデューサー、アル・ブロダックスは、エドサリヴァン・ショーでのバンドの演奏を見て、ビートルズをアニメシリーズ化するというアイデアに夢中になりました。ブロダックスは以前、1960年代初期にポパイのテレビ向け短編シリーズを制作しましたが、これは意図的に短くして、短期間で複数作品を制作し継続的に放送できるようにしました。

これらの短編は、結果としてポパイのファンからは質が低く、シリーズ全体の汚点だと考えられています。ブロダックスはまた、「クレイジー・キャット」のリヴァイヴァル版や「キャスパー・フレンドリーゴースト」「ビートル・ベイリー」など他にもいくつかのアニメシリーズを制作しました。

(2)ブライアンはイギリスでの放送を拒否した

ビートルズのマネージャー、ブライアン・エプスタインは、ABCとブロダックスがアメリカの視聴者向けにシリーズを制作することに同意はしましたが、イギリスの視聴者に番組を放送することは決して望みませんでした。彼は、バンドのばかげた描写、安っぽい筋書き、やや原始的なアニメーションは、グループに対する侮辱だと感じていたのです。実際、このシリーズのエピソードがイギリスで放送されたのは1980年代、つまりバンドが解散してから10年以上も後のことでした。

 

 

4 声優が不評だった

(1)本人とは全く違う声

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この番組は今日に至るまで多くのビートルズファンから酷評されてきました。多くの人が指摘する最大の問題は、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの声の不正確さです。本人が吹き替えをしてくれたら素晴らしかったでしょうが、当時彼らは、ツアーやレコーディングのスケジュールで忙しかったため、それは現実的ではありませんでした。そのため、この番組には声優を起用せざるを得ませんでした。

(2)声優は二人で四人の声を担当していた

四人のキャラクターを別々の声優が担当しているように見えるかもしれませんが、実際には二人だけでした。ジョンとジョージはアメリカ人俳優のポール・フリーズ、ポールとリンゴはイギリス人俳優のランス・パーシヴァルが担当しました。

特にフリーズはアニメキャラクターの声優として非常に優れた才能を発揮し、ランキン=バスのストップモーションTVスペシャルやディズニーのプロジェクトなど、数多くの作品に携わりました。メル・ブランクと共に、彼はしばしば「千の声を持つ男」と呼ばれていました。

(3)ビートルズも気に入らなかった

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この番組に関する唯一の出版書籍である「ビートルトゥーンズ:ビートルズアニメの背後に隠された真実の物語」の著者、ミッチェル・アクセルロッドによると、ビートルズのメンバー自身も、アニメ化された自分たちの声を初めて聞いた時はあまり感銘を受けなかったそうです。

アクセルロッドによると、上映中、リンゴはポールに「僕はダミーにされた」とコメントし、ポールは「僕の声が甲高すぎる」と答えました。その間、二人の声を担当したパーシヴァルは、二人の間に恥ずかしそうに座っていました。さぞ居心地が悪かったでしょう。ジョンは、グループが「原始家族フリントストーン」に変わったと言いました。

アクセルロッドは、声の描写に正確さを欠いたのは偶然ではないと説明しました。ブロダックスがビートルズの声を選んだのは意図的なことでした。そもそもこの番組は、最年少のファンを対象としていたため、子供たちはリヴァプール訛りを理解できないだろうと考えたからです。

 

 

5 意外にも視聴率は高かった

(1)何度も再放送された

バンド側からの当初の反応の悪さにもかかわらず、この番組は1965年9月25日のテレビ初放送と同時に高い視聴率を記録しました。全39話が制作され、1969年まで放送されました。もっとも実際には2シーズンしか放送されず、その後1969年まで再放送されました。各エピソードはビートルズの曲名にちなんで名付けられ、2曲の「一緒に歌おう」コーナーを収録しました。

(2)使用された曲はビートルズのものだった

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ビートルズには不評だったこのアニメの救いとなる点があります。曲が流れる時は、ビートルズが実際に歌ったオリジナルのヴァージョンが使われていました。また、このシリーズは実在の人物をアニメ化した史上初の作品でもありました。

これは後に、1969年に公開されたビートルズサイケデリックな長編アニメ映画「イエロー・サブマリン」の基礎となり、ブロダックスも共同でこの映画を手がけました。

(3)描画は特徴をよく捉えている

確かに、ストーリー展開は滑稽で、ビートルズはたいてい女性ファンや女性の姿をした姿をしたワニや吸血鬼でさえビートルマニアとなって彼らを邪魔し、様々な窮地に陥れます。セリフには、ビートルズ自身はおそらく口にしなかったであろう、下手な駄洒落やイギリス英語が散りばめられています。

実際、かわいそうなリンゴは、たいてい非常に鈍感でトラブルメーカーとして描かれています。しかし、このアニメ自体に独特の魅力を感じる人も存在しており、アニメーターたちは、ビートルズのメンバー一人ひとりの身体的特徴や癖を非常によく捉えているとしています。

(4)海賊版が出回った

シリーズのイラストレーターの一人であるクリス・カディントンは、かつてこう回想しています。「各作品をアニメ化するのに約4週間かかったが、とても楽しかった。キャラクターは描きやすく、ストーリーもシンプルで分かりやすかった」

アクセルロッドは、アップルが公式DVDをリリースさえ行えば、ビートルズを少しでも利用してシリーズへの関心を再び高められる可能性を秘めていると考えています。ビートルズのコンベンションには、何十年も前から海賊版が出回っています。

6 後に評価が好転した

(1)ビートルズも考えを改めた

2015年のインタビューでアクセルロッドが指摘したように、このシンプルなアニメーションは、現在多くのアニメチャンネルが制作しているものとそれほど遜色なく、子供たちにビートルズの音楽に触れる機会を提供するとしています。このアニメは近年、カルト的な人気を得ています。

ビートルズ自身も後年、このシリーズに対する態度を和らげるようになり、ジョンはインタヴューで「今でもテレビでビートルズのアニメを見るとすごく楽しめる」と語り、ジョージは1999年に「(アニメは)いつもなんとなく好きだった。ひどいとかバカバカしいところが逆に良かったんだ。分かるだろ? 時が経つにつれて、今の方が面白くなってると思うよ」と認めています。

(2)若い世代にも好評

これは、現在のアニメファンにも共通しているようです。あるいは1980年代前半から1990年代半ばまでに生まれたミレニアル世代のファンが牽引している可能性もあります。このシリーズ専用のTumblrページやミームも作成されており、興味深いことにマクファーレン・トイズは2004年に、このアニメをモデルにしたワニ、スピーカー、ラジオ、しかも決して安くはないんですが、フィギュアセットを発売しました。

確かに、ばかばかしいストーリーではあるものの、それがむしろ生身の人間には決してできないアニメならではの面白さなのかもしれません。いつかこのアニメシリーズが公式DVDでリリースされ、ファンがビートルズコレクションに加えられるようになる日が来るかもしれません。

(参照文献)ゴーレトロ

(続く)

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