★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ジョージはクラプトンをレコーディングに参加させることで自ら道を切り開いた(557)

「While My Guitar Gently Weeps」のレコーディングに参加したエリック・クラプトン

1 ジョージはエリック・クラプトンをスタジオに招いた

(1)ビートルズの仲間に入ることを強くためらっていた

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「While My Guitar Gently Weeps」はジョージが思ったようには完成せず、彼は当然ながら苛立ちを募らせ、一からやり直すべくグループにこの曲をさらに28テイクも歌わせました。しかし、この曲の再リメイクのレコーディング中に、あるスペシャルゲストがスタジオに入ってきました。

ジョージはその日のスタジオ訪問で起きた出来事をこう説明しています。「エリック・クラプトンとロンドンへ向かって車を走らせている時、俺は言ったんだ。『今日は何をしてるんだい?スタジオに来て、この曲で一緒に演奏してくれないか?』」と尋ねた」

「彼は『いや、それはできない。ビートルズのレコードに他人が演奏したことは一度もないし、他のメンバーも気に入らないだろう』と言った。私は『これは俺の曲だ。君に演奏してほしいんだ』と返した」

当時、自身のバンド「クリーム」の解散を発表したばかりで、同年秋のさよならツアーの準備を進めていたクラプトンは、ジョージをサリーからロンドンのEMIスタジオまで車で送っていました。二人はクラプトンが「ヤードバーズ」で活動していた頃から知り合いで、1964年末から1965年初頭にかけてビートルズがクリスマス公演を行った際、共演もしていました。

(2)態度を一変させたメンバー

その頃にはクラプトンは、すでに世界的なトップギタリストとしての名声を確保していました。クラプトンはジョージを車から降ろした後、渋々ながら後で彼の曲のレコーディングを手伝うためにスタジオに来ることに同意しました。クラプトンほどのギタリストでも、さすがにビートルズのレコーディングに参加するのをためらったのです。

「それで彼が来たんだ」とジョージは後に説明しています。「『エリックがこの曲で演奏する』と言ったら、それが良かったんだ。みんながより良い態度で臨むようになったから…ゲストを呼ぶと人々がどれだけ丁寧に振る舞うか見ていて面白い。だって、自分がそんなに意地悪だってことをみんなに知られたくないからね…」

「ポールがピアノに向かい素敵なイントロを弾くと、みんなもっと真剣に受け止めたんだ… それに俺もリズムを弾きながらヴォーカルに集中できた…後でビリー・プレストンが『Let It Be』に参加した時も同じで、みんな言い争ってたんだ。ただ見知らぬ人を仲間に入れるだけで、みんな落ち着くんだよ」

現金なもので、それまで口も利かなかったジョンもポールもクラプトンを大歓迎しました。メンバーの仲が良い時に部外者が入るのはチームワークを乱してしまうおそれがありますが、逆にメンバーがギスギスしている時に部外者が入るのは、潤滑油的な役割を果たすメリットがあるのかもしれません。

2 なぜクラプトンを呼んだのか

George Harrison at the recording sessions of "The White Album" with his  Gibson SG, 1968. Glyn Johns took this pic. : r/beatles

White Album」をレコーディングした頃のビートルズは険悪な空気で、お互いに目を合わせず口も聞かないようになっていました。不思議なことですが、なぜそうなってしまったのかはっきりした原因はわかりません。

この引用文でジョージは、クラプトンにこの曲を演奏してもらいたかったより個人的な理由を説明しています「彼をギタリストとして尊敬していたんだ。ポール・マッカートニーと長年一緒にいたせいで、自分自身のギタリストとしての自信がなかった。彼は俺をギタリストとして台無しにした」

これはポールを非難するというより、才能あふれる共同作業の中で、自信を失っていったジョージ自身の心情を率直に語った言葉と受け取るべきでしょう。ギターもうまかったポールは、本来ならジョージが担当するはずのギターパートを何度か担当していたのです。

「俺はエリック(クラプトン)をギタリストとして高く評価していたし、彼は俺を人間として扱ってくれた…あのシタールの件を経験したばかりだったんだ」

「3年間シタールを弾き、インド古典音楽を聴きながらシタールの練習に没頭していた。スタジオでのレコーディングの時以外はね。その時はギターを取り出して、パートを覚えたらすぐに演奏して、レコード用に録音してたんだ。でも、ギターへの興味は本当に失せていた」ギターにすっかり自信も興味もなくしていたジョージの姿が窺えます。

3 ソロパートをクラプトンに譲った

(1)現場主義のミュージシャン

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ポールは2021年のHuluシリーズ「McCartney 3,2,1」で、エリック・クラプトンを「現場主義の」ミュージシャンと評し、この曲のセッションにジョージが彼を招いたことへの個人的な思いを語りました。「ジョージが独り占めできたはずの瞬間をエリック(クラプトン)に与えたのは、非常に寛大な行為だった…ジョージはそういう人だった。とてもオープンな人だった」

彼のいう現場主義のミュージシャンとは、譜面や理論よりも、その場の空気や共演者、感情に反応してサウンドを出すタイプの音楽家という意味です。だからこそ、この曲では、このギターソロという決定的なサウンドを一気に生み出すことができたのです。ジョージ自身が作曲した曲でもありますから、本来ならこの曲のギターソロはジョージが担当するところです。しかし、彼はそんなことには全くこだわりませんでした。彼の人柄がしのばれますね。

(2)ジョージはクラプトンが到着する前にレコーディングを開始していた

しかし、クラプトンが到着する前に、ジョージはバンドメンバーを率いて「While My Guitar Gently Weeps」の新たなレコーディングを始めました。彼は最初のテイクを「テイク1!」と宣言しましたが、実際には「テイク17」に相当していました。

彼は、その後ポールにこう指示しました。「イントロのコードは君と俺とリンゴだけで。残りのメンバーとエリックは別の部分で入ってくれ」続く28テイク(17~45番)は、ドラムスにリンゴ(トラック1)、ギターにジョン(トラック2)、ピアノとハモンドRT-3オルガンを交互に担当するポール(トラック3)、アコースティックギターとリードヴォーカルにジョージ、ハーモニーヴォーカルにポール(トラック4)という構成になっていました。

(3)ビートルズとクリームのレコーディングの違い

クラプトンが到着すると、トラック2でジョンに代わってリードギターを担当しました。彼は、これらのテイクの大部分でビートルズと共に演奏し、8トラックテープの4トラックを後日のオーヴァーダブ用に空けておきました。

テクニカル・エンジニアのブライアン・ギブソンは、この日のクラプトンのスタジオでの作業について次のように述べています。「エリックは、他のセッション・ミュージシャンと全く同じように振る舞っていた。とても静かで、ただ演奏するだけ。それだけだった…大げさな演出は一切なかった」

「エリックがジョージに話したことを覚えている。クリームのレコーディングのアプローチはリハーサル、リハーサル、リハーサルで、スタジオで過ごす時間はほとんどなかった。一方、ビートルズはレコーディング、レコーディング、レコーディングを繰り返し、最終的に良いサウンドにたどり着くようなアプローチだった。セッション自体が彼らのリハーサルだったんだ」アーティストによってレコーディングの仕方が違うというのもなかなか興味深いですね。

4 スタジオの雰囲気が和やかになっていた

White Album」のレコーディング中に談笑するビートルズ

「テイク25」がベストと評価されましたが、「テイク27」は「White Album」50周年記念スーパー・デラックス版に収録されました。ジョージが「チーズとレタスとマーマイト・サンドイッチとコーヒーだけ」と注文するところから始まり、そのままカウントダウンが始まります。

2つ目のブリッジで、これが完成版には到底及ばないことが明らかになります。ジョージがヴォーカルで何かを試して失敗した直後、クラプトンがコードを間違えてしまい、ポールが「ハリー、ちょっと待って!」と叫びます。クラプトンがミスを謝罪すると、ジョージは「大丈夫だよ。スモーキーを歌おうとしたんだけど、スモーキーじゃなかったんだ」と言い、ジョンが「アーメン!」とバックで声をかけました。これは教会でのお祈りではなく「その通り!」というような意味です。ジョージは、お気に入りの歌手の一人であるスモーキー・ロビンソン特有のファルセット・メリスマを試みますが、どうしてもマスターできませんでした。

「ファルセット・メリスマ」とは、ファルセット(裏声の一種で柔らかく高い声)を使いながら、一音節に複数の音を連続して歌い上げる高度な歌唱テクニック(メリスマ/フェイク)を指し、R&Bやソウルなどで多用される表現方法です。柔らかい裏声(ファルセット)と、音を細かく揺らしたり変化させたりするメリスマ(フェイク)が組み合わさり、感情豊かな装飾的な歌い方となります。

そのスタイルは最終的にジョージの声質・技術には完全には合わなかったのですが、ジョンがそれを茶化したんです。ピリピリしていたスタジオの雰囲気が、クラプトンの参加により和やかになっていたことが窺えます。また、クラプトンのミスを咎めず自分のミスだと言ったのもジョージらしいですね。

この日の活動に関するもう一つの興味深い余談は「テイク40」です。即興のジャムセッションへと突入し、ポールは「Lady Madonna」と「While My Guitar Gently Weeps」の一部を歌いました。ビートルズは「ビートルズ・チャット」と題したテープを編纂しており、後世に残すべきと思われる断片を集めていました。この曲のテイクもそこに収録されていたのです。

(参照文献)ビートルズ・ミュージック・ヒストリー

(続く)

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