★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その116)ポール・マッカートニーのヴォーカルの凄さについて(その2)

前回に続き、ポールのヴォーカルの凄さについてお話します。

「paul mccartney sing non vibrato beatles」の画像検索結果

1 ノン・ヴィブラートの代表格

(1)ヴィブラートとは?

プロの歌手の多くは、ヴォーカルにヴィブラートを掛けます。ヴィブラートとは、演奏やヴォーカルで音を伸ばして出す時に、音程を素早く上下させたり音量を大きくしたり小さくしたりするテクニックです。図解するとこんな感じです。

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ヴィブラートの図解

ヴァイオリンなどの弦楽器では、弦を押さえる指の位置を細かく揺らせます。

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「ヴォーカルにヴィブラートをかけないプロ歌手はいない。」と思われている方も多いかもしれませんが、決してそんなことはありません。ノン・ヴィブラートでヴォーカルをやっているプロもいます。ビートルズは、全員がそうですね。

 

(2)ヴィブラートの効果

なぜヴィブラートをかけるかというと、その方がサウンドに余韻が残り、聴いていて心地よくなるからです。逆にヴィブラートをかけないと、奥行きのないフラットなサウンドになってしまいます。

ですから、ヴィブラートをかけずに、しかもリスナーを感動させる方が却って難しいんです。それに音を長く伸ばすロングトーンをヴィブラートなしでやると、声を伸ばすにつれ自然に音程が下がってしまう欠点もあります。

ヴィブラートについての動画の解説を観てみましょう。1分辺りからヴィブラートをかけないで歌った場合と、かけて歌った場合とを比較しています。やはり、かけた方が美しく聴こえますね。

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(3)ノン・ヴィブラートによるヴォーカルは難しい

このようにヴィブラートは、ヴォーカルをリスナーに美しく聴かせるためのテクニックですから、あえてヴィブラートをかけないで歌うには相当魅力的な声であるとか、他のテクニックを使うといった要素が必要になります。つまり、ノン・ヴィブラートによるヴォーカルでリスナーを魅了する方が余程難しいんです

ヴィブラートをかけるというと難しいように聞こえますが、実は、練習すればできるようになるんです。逆に、プロの歌手が、敢えてヴォーカルにヴィブラートをかけないことは、かなりのハンディキャップを背負うことになります。

 

ところが、こんな不利な条件があるにもかかわらず、ポールは、ヴォーカルにヴィブラートをかけませんでした。アンド・アイ・ラヴ・ハーのようなバラードであっても、ノン・ヴィブラートで歌っていました。何故かは分かりませんが、ポールは、ヴォーカルにヴィブラートをかけるのが嫌いだったのです。

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ヴィブラートをかけるとこうなります。これは、同じ曲をアメリカの歌手、俳優のハリー・コニック・ジュニアがカヴァーしたものです。

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(4)ポールはヴィブラートを嫌った

何故、ポールがヴィブラートを嫌ったのか、彼自身そのことについて語っていないので正確なことは分かりませんが、一つは、ハモりの時に邪魔になる可能性があることではないかと思います。

ハモる時にヴィブラートをかけてしまうと、音程が揃わずハーモニーが崩れてしまいます。ビートルズの楽曲は、コーラスが入るものが多かったので自然にそうなったのかなとも思います。ただ、これには反論があって「ヴィブラートを入れつつハモることはできる」とする方もいます。確かに、クラシックの合唱などはそうですね。

 

もう一つ考えられるのは、メロディーに対する拘りが強かったのではないか、つまり、ありのままの美しいメロディーを聴かせたかったのではないかということです。オペラは、強くヴィブラートをかけますが、あれだと芝居がかり過ぎてあまりに不自然な印象を与えると考えたのかもしれません。

(5)イエスタデイの弦楽四重奏でも反対

それを示すエピソードとしてこんなのがあります。ポールは、イエスタデイで弦楽四重奏をフィーチャーする時に、プロデューサーのジョージ・マーティンに対し、「ヴィブラートはかけないでくれ」と要求しました。

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そもそも弦楽四重奏をフィーチャーすること自体にも、ポールは反対していました。マーティンの説得により渋々OKしたものの、それでもヴィブラートはかけるなと要求したのです。彼は、純粋なサウンドが欲しいという理由を挙げていました。しかし、ヴァイオリンなどの弦楽器は、ヴィブラートを入れて弾くのが当たり前なので、流石にこの要求も却下されました。

このエピソードからすると、ポールは、余程ヴィブラートが嫌いだったみたいですね(^_^;)幼い頃、彼は、近所の教会の聖歌隊に所属していた時がありました。聖歌隊の合唱は、ボーイソプラノでヴィブラートをかけません。こういう体験もひょっとすると関係したのかもしれません。あくまで憶測です。

2 天賦の才と後天的な努力

(1)正式な音楽教育は受けなかった

ポールだけではなく、ビートルズは、全員が正統な音楽教育を受けていません。ポールは、父親が地元のミュージシャンだったため、クラシックピアノやギターのレッスンを受けることはできました。

しかし、それ以外の3人は労働者階級出身でしたから、プロのレッスンを受ける経済的余裕はとても無かったのです。すなわち、自分の天賦の才と後天的な努力のみで実力を磨いたのです。ですから、信じられないことですが、彼らは、超一流のプロミュージシャンであるにもかかわらず、譜面の読み書きができなかったのです!

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譜面の読み書きができなかったからといって、Don't let me down(がっかりさせないでくれ)とは言わないでください(笑)プロデューサーのジョージ・マーティンは、ジャーナリストのレイ・コナリーのインタヴューに対しこう応えています。

「ポールは、譜面の読み書きはできなかったが、私が知る限り最高のミュージシャンだ。何故そう言えるかというと、それは、彼が音楽というものが何であるか、それをどうすれば作り出せるかを天賦の才により理解していたからだ。私も同じ才能を持っていた。だから、私とポールは親密な関係になれたんだと思う。」

 

(2)天才には必要なかった

譜面の読み書きができなくても、作曲や編曲、演奏には何ら支障はありませんでした。彼らは、歌詞とコードを書いたメモさえあれば、メロディーはジョンやポール、あるいはジョージがガイド演奏したりハミングすれば、それで全員が合わせることができたのです。これはビートルズを結成してから解散するまで一貫していました。マーティンが必要に応じて譜面を書いていたのです。

彼らが天賦の才に恵まれていたことはもちろんですが、それに加え練習や研究も怠りませんでした。「天才が努力するとこうなる」という典型的な例でしょう。 

3 ポールの歌い方の分類

「paul mccartney vocal」の画像検索結果

これは専門家が分類した訳ではなく、私が分かりやすいように適当に分類しただけです。人により分類の仕方は様々ありますから、その点はご承知おきください。また、同じ作品でそれぞれが同居している場合もあります。

(1)ハイ・トーン系

代表曲:ロング・トール・サリー(のっぽのサリー)

ポールは、普通の男性にはとても出せないようなハイ・トーンを発声することができました。しかも、この曲は彼のヴォーカルそのもののパワーも凄いです。

(2)シャウト系

代表曲:ヘルター・スケルター

強烈なシャウトをぶちかまします。現代のヘヴィ・メタルに通ずるものがあります。

(3)明るく元気系

代表曲:シー・ラヴズ・ユー

明るくはつらつとした若さを感じさせるヴォーカルです。

(4)うっとり系

代表曲:ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア

ウットリと聴き惚れてしまう美しいヴォーカルです

 

(5)お茶目系

代表曲:オブラディ・オブラダ

コミカルでリラックスした感じが出ています。

(6)野太い系

代表曲:レディー・マドンナ

腹に響くような野太い低音を聴かせます。

(7)コーラス系

代表曲:ビコーズ

ジョン、ジョージと共に絶妙なハモりを聴かせます。「ビートルズは、偉大なコーラスグループでもあった」と実感させられます。

具体的な作品については、次回でお話します。

(参照文献)True Strange Library, BEATLES MUSIC HISTORY, THE BEATLES BIBLE

(続く) 

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