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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

「There's a Place」はジョンが初めて書いた内省的で深い意味を持つ曲である(543)

「There's A Place」を収録したファーストアルバム「Please Please Me」

1 自立をテーマにした最初の曲

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「『There's a Place』は、ある種のモータウン風、黒人音楽的な試みだったんだ。」そこにはいつものレノンらしい言葉がある。「私の心の中に悲しみはない…」「それはすべて君の心の中にある」*1

「There's A Place」は、1963年2月11日に行われたEMIの「Please Please Me」セッションで最初にレコーディングされた曲で、当時としては(そして現代においても)特筆すべき作品です。ウィルフリッド・メラーズが後に著書「神々の黄昏」で指摘したように、ビートルズが自立をテーマにした最初の曲でした。

この曲は、作詞家ジョン・レノンの歌詞に繰り返し登場する「思考や夢、記憶の中に安らぎを見出すこと…内なる思考の安全地帯へ退避することで人生の悲しみに対処すること…」というテーマを確立しました。そして、これは、後の「Strawberry Fields Forever」「Girl」「In My Life」「Rain」「I’m Only Sleeping」「Tomorrow Never Knows」などの曲で繰り返される重要なテーマとなりました。

そう意味で初期の曲ながら実は後々深い意味を持つのです。今回は、少々難しいお話になりますがお付き合いください。

 

 

2 ポールが「Somewhere」からヒントを得た

(1)映画「ウエスト・サイド物語

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この曲のインスピレーションは、ポールから提供されました。彼が映画「ウエスト・サイド物語」で聴いたレナード・バーンスタインスティーヴン・ソンドハイム作曲の「Somewhere」です。

満足のいくバッキングトラックが完成するまでに10テイクを要しました(テイク3、5、7は未完成)。これらのうちテイク10が「ベスト」とされ、ジョンは1958年製リッケンバッカー325カプリ・エレクトリック・ギター、ポールは1961年製ヘフナー550/1ベース、ジョージは1957年製グレッチG6128デュオジェット、リンゴは1960年製プレミア58マホガニー・デュロプラスティック・ドラムキットを使用しています。

(3)リードヴォーカルはジョン

リッケンバッカーを演奏するジョン

ジョンは、作曲家が自分の曲でリードヴォーカルを担当するというビートルズの伝統に従い、メロディーラインをリードヴォーカルで歌いました。ポールは伴奏に加え、時には高音部のハーモニーを入れました。ポールは「when I'm alone」「only you」「In my mind, there's no sorrow」「There'll be no sad tomorrows」などの重要なソロパートは歌いませんでした。ジョージもハーモニーを担当しています。テイク11~13で重ね録りされた要素の一つが、ジョンの奏でる哀愁を帯びたハーモニカの泣くような音色です。

 

 

3 評論家はこぞって称賛した

(1)「口承的詩人」かもしれないと気づかされる最初の曲

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「神々の黄昏」の中で、メラーズは「There's A Place」の「奇妙なほど厳格で、断固としてダイアトニックな」表現、「ほとんど転調がない」点を称賛しています。メラーズはこの率直な音符の選択が、自立の中に見出される強大な力について歌った曲にとって理想的だと考えています。

メラーズは、ジョンが「気分が落ち込み、憂鬱な気分」から救われたのは「彼自身の心の中にあり、それは究極的には侵害できないものだった」と指摘しています。愛する女性の強力で長引く思い出を再訪することで、ジョンが真に孤独である時間や場所はなくなる。彼女は、常に彼と共にいるのだ。「この曲こそが」とメラーズは結論づけています。「ジョンが『口承的詩人』かもしれないと気づかされる最初の曲だ」

しかし、22歳の作曲家にはまだ「長い道のりが残されている」ともメラーズは指摘しています。ジョンが内省的な歌詞を書き始めたことに関して、ボブ・ディランの影響が大きかったことはよく知られています。しかし、実は、1963年のファーストアルバムの時点でもうすでにその片鱗を見せていたことに改めて驚かされます。

(2)ジョンの最初の魂の探求

同様に、ミュージシャン、作曲家、そして作家でもあるアンソニー・ロブステリは、著書「I Want to Tell You」の中で、「There's a Place」に多くの賞賛すべき点を見出しています。彼はこの曲を「ジョンの最初の魂の探求」と呼び、この内省的なバラードは「ビーチ・ボーイズの『In My Room』より数か月、そしてジョン自身の『I'm a Loser』より1年半も前に生まれた」と指摘しています。

ロブステリは、「There's A Place」の心を打つ歌詞は「純粋なレノン」であり、13小節のハーモニーの後で「When I'm alone」と歌うという独自の仕掛けが、この曲を個人的で「より心に響くものにする」効果的な手法だと評しています。

(3)悲しみは(語り手の)精神空間には存在しない

キット・オトゥール博士は著書「Songs We Were Singing」の中で、この曲の歌詞を絶賛し、「聴く者の期待を裏切る」と指摘しています。彼女はこう説明しています。伝統的に、ラヴバラードにおける幸福は、恋人たちが実際に一緒にいるときにのみ存在し得た。しかし、「There's A Place」では、カップルは「物理的な場所ではなく、その人の心の中で」再会する。「ここでは、一人でいるのはネガティヴな状況ではなく、むしろ思考の機会なのだ」

さらに彼女は、こう続けます。「ブリッジでは…悲しみは(語り手の)精神空間には存在しないことを強調している。言い換えれば、この登場人物に同情するのではなく、彼を思考とともに放っておいてあげれば、彼は決して孤独を感じることはないのだ」

オトゥールは、ジョンがここでライトモチーフを確立し、一人でいる時間という豊かな内的資源に敬意を表する反復するテーマを確立したと指摘しています。「ジョンは、このテーマに何度も戻り、熟考の価値を称賛している...『I'm Only Sleeping』『Tomorrow Never Knows』『Watching the Wheels』など後の楽曲で繰り返しこのテーマに立ち返り、内省の価値を称賛していく」と彼女は語っています。

 

 

4 敬意と期待を抱かせる

(1)恐れる孤独を超越する能力

ストーリーピン画像

「There's A Place」は確かに初期の作品ではあるものの、敬意と期待を抱かせる点が数多くあります。「The Ballad of John and Yoko」の中で、クリストガウとピカレラは、ジョンのこの曲をビーチ・ボーイズのバラード「In My Room」と比較し「レノンには自分の部屋以外にも行くべき場所があり、ブライアン・ウィルソンよりも良い方法でそこへたどり着くことができる…」と述べています。

彼らは「歌手が夢のような世界に逃げ込むことで、自分が恐れる孤独を超越する能力」こそが、喪失と痛みと戦うすべての人にとってこの曲の魅力となっていると指摘します。「この初期の曲は、ロックンロールのラヴソングの慣習の中で、多くのことを(すべてではないにしても)伝えようとする(レノンの)衝動を典型的に表している…」と彼らはさらに指摘しています。

インド哲学やドラッグに触れる前に既にこの手法を発見していたんですね。

(2)幸福感と憂鬱感の珍しい融合を表現した

同様に、ウォルター・エヴェレットは「ザ・ビートルズ・アズ・ミュージシャンズ、ザ・クオリー・メン・スルー・ラバー・ソウル」の中で、「There's A Place」を「主にジョンが作曲した」とし、R&Bとブルースに影響を受けているとしています。しかし、エヴェレットは「レノンはブルースを抱えていない。自らの精神世界に退避し、…そこで最愛の人との幸福な記憶が…彼を『落ち込ませた』原因を忘れさせてくれるのだ」とコメントしています。エヴェレットは、この曲が「歌詞とサウンドの世界の両方が、幸福感と憂鬱感の珍しい融合を表現している点で特異な楽曲」と指摘しています。

 

 

5 若きソングライターの途方もない可能性を物語っている

ジョンが「There's a Place」を書いたのは、わずか22歳の時でした。情報源によっては、もっと若い頃だったという説もあります。音楽的には未熟かもしれませんが、歌詞と作品のテーマは、この若きソングライターの途方もない可能性を物語っています。

また、この曲は、ジョンが「I'm So Tired」「Nowhere Man」「I'm a Loser」「I'll Cry Instead」「(You've Got To) Hide Your Love Away」「I Don't Want to Spoil the Party」「I'm Losing You」など、数々の曲で繰り返し取り上げることになる、内なる平和と充足感を求めるというテーマをリスナーに提示します。ティム・ライリーは「Tell Me Why」で次のように指摘しています。「(この)曲は、彼が外の世界ではなく、自分自身の中に求める平穏について歌っているのだ」

(参照文献)カルチャーソナー

(続く)

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