★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(183)ジョンかポールか?一体どっちなんだ、あの曲を書いたのは?

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1 レノン=マッカートニーの誕生

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(1)リーバー=ストーラーに憧れて

ビートルズの楽曲のほとんどのクレジットは、「レノン=マッカートニー」となっています。これはジョン・レノンポール・マッカートニーが共作したということを示しています。

そもそも、レノン=マッカートニーというクレジットを付けることにしたのは、2人がまだ15〜16歳の青年時代に取り決めたことでした。

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ジェローム・リーバーとマイク・ストーラーが「リーバー=ストーラー」というコンビを組んで、「ハウンド・ドッグ」「スタンド・バイ・ミー」などといった後世に残る歴史的名楽曲を数多く制作しており、彼らに憧れていたジョンとポールはそれにあやかったのです。

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ただ、彼らと違う点は、リーバーが作詞、ストーラーが作曲とハッキリ分業にしていたのに対し、ジョンとポールは、2人とも作詞も作曲も両方をこなしたことです。これが話をややこしくしている一因ですね💦

恥を忍んでカムアウトしますが、実は、私がまだ駆け出しのビートルズファンだった頃、レノン=マッカートニーとあるので、てっきり、ジョンが作詞でポールが作曲を担当したんだと思い込んでいました(^_^;)日本では、「作詞〇〇 作曲△△」とクレジットされることが多いものですから。これ結構「ビートルズ初心者ファンあるある」だと思います。

(2)話し合いで決めたクレジット

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プロとしてデビューするときに、マネージャーのブライアン・エプスタイン、ジョンとポールの3人でクレジットをどうするか話し合ったのです。ジョンが「レノン・アンド・マッカートニー」と主張したのに対し、ポールは「マッカートニー・アンド・レノン」でどうかと提案しました。

ジョンも一時は妥協して、メインで制作した方の名前を先にするという案も了承しました。しかし、それもうやむやになってしまい、結局、レノン=マッカートニーで統一されることになりました。

レノン=マッカートニーの方が響きが良いし、スペルもLの方がMより先に来るし、ゴロが良いということで、ジョンに押し切られたようです。でも、ジョンがポールより歳上で、リーダーだったからというのが本当の理由でしょうね(笑)

2 昔から繰り広げられてきた論争

ファンは、よく知っていることなんですが、実は、共作といっても楽曲によって2人の関わり方が異なり、フィフティ・フィフティに近いものや一方がメインで他方がサブ、そして、完全にどちらかが一人で作ったと様々なパターンがあります。

特に後期に入ると、ジョンとポールの音楽の方向性の違いが明らかになり、それぞれ単独で作詞作曲するようになりました。ここにも一応お約束があって、メインヴォーカルを取っている方が制作したと考えられています。特に、後期の楽曲は、ほぼ間違いありません。

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ただ、中には、どちらがメインで作ったかについて、当の本人である2人の間でも主張が食い違っている楽曲があり、ファンの間でもずっと論争が繰り広げられてきました

誰しもありがちなことですが、時間が経てば経つほど記憶が薄れ、他の記憶と混同したり、勘違いしたりしていることがよくあります。ビートルズの楽曲についても、ジョンとポールのどちらがメインで作ったか対立しているものについては、それぞれが記憶違いや勘違いをしている可能性があります。
60年代は、こういうところは結構アバウトでのんびりした時代だったので、誰もそれほど気にも留めませんでした。ですから、公式の記録にも残されていないのです。

もし、ジョンが生きていたらポールと論争になったでしょうね。
ジョン「あの曲を書いたのはオレだよな?」
ポール「違うよ、オレさ」
多分、この論争は、永遠に決着がつかなかったと思います(笑)

3 ある科学者の研究

そこで、ある科学者が、どちらがメインで作った楽曲であるかを数学的に分析しようと試みました。

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ハーバード大学のマーク・グリックマン(統計学の上級講師)は「『彼』は、以前、フーリエ分析という手法を使って、『ア・ハード・デイズ・ナイト』のイントロのコードが何であったかを分析したことがある。」と語っています。

「彼」とは、ダルハウジー大学の数学担当の教授であるジェイソン・ブラウンです。このブログでも以前に彼の分析についてご紹介したことがあります。それについては、「(その57)ア・ハード・デイズ・ナイトのオープニング・コードの謎」を参照してください。

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グリックマンは、楽曲をデータに変換する様々な興味深い手法を考えつく才能があることで知られています。彼は、「ブラウンは、グラフを使ってビートルズの楽曲を分析していたが、それはよく見かける典型的なグラフではなく、数学的に表現したものである。」

つまり、数学にあまり詳しくない人が見てもわかるような、折れ線や棒グラフではないということですね(^_^;)

4 文体には指紋がある

(1)計量文献学による統計的分析

2人の科学者が、ビートルズの楽曲のうちジョンとポールのどちらが作ったのかが論争になっていることについて雑談をしていました。

雑談しているうちにグリックマンは、聖典からシェイクスピアの劇まですべての原作者が誰である確率が高いかを判断するために、何十年にもわたって用いられてきた統計学のテクニックを使ってみたらどうだろうと考え始めました。それは基本的に、特定の単語やフレーズが作成者によってどのくらいの頻度で使用されているかを見出し、分析するという複雑な手法です。

グリックマンは、「それは、ある意味、文体の指紋のようなものだ。」と語っています。

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(2)計量文献学とは?

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彼らが用いたのは「計量文献学(けいりょうぶんけんがく)」という学問で、ウィキペディアによれば、「文献の特徴を数値化し、統計学的手法を用いて文献の分析や比較を行う方法、またはそれに関する学問分野。文体に注目して計量文体学(英語:Stylometry)などの名も使われる。」と定義されています。

簡単にいえば、「人が書く文章には特徴があって、それを統計的に分析することにより誰が書いたかを突き止められる。」ということのようです。

それでも、2人の科学者は、はたしてブラウンの手法で、楽曲のメロディやコードを言葉と同じように扱えるのかどうか確信は持てませんでした。ジョンとポールのどちらが作ったかを判断するために、文体学的なテクニックを使って分析できるのか、彼らも懐疑的でした。

5 科学的に分析してみたら

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まあ、どっちにしろ、やってみなければわからないので、彼らは挑戦してみることにしました。最初に、彼らは、楽曲の中にジョンとポールそれぞれの指紋が残されていないかを探りました。彼らは、どちらが書いたかはっきりしている1963年にリリースされたアルバム「Please Please Me」から1966年の「Revolver」までの70曲の一部をコンピュータで分析しました。

メロディーラインを分析してみると、彼らは、ジョンが音程をあまり大きく上げ下げしない傾向があるのに対し、ポールは、音程を大きく上げ下げする傾向がみつかりました。

グリックマンは、ポールが制作した「Eleanor Rigby」の「Where do they all come from?」の箇所を例にとってこう語っています。「Where doの箇所はオクターヴ・ジャンプだ。ジョンの楽曲にはヴォーカルの高音域でのオクターヴ・ジャンプはない。」

オクターヴ・ジャンプとは、メロディーの音程を1オクターヴ上げるメロディー・ラインです。ヴォーカルだけではなく楽器でも使います。

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彼らは、メロディーに伴うコード進行を追っていったのですが、そこで、ジョンは、トニック・コードからマイナー6に移行する傾向があることを発見しました。彼が制作した「It's Only Love」がその一例です。

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一方、ポールは、4thコードからマイナー2thへのコード進行が特徴的であることにも気づきました。「I’m Looking Through You」がその一例です。

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6 面白い分析結果

グリックマンとブラウンは、さらに面白いことを発見しました。彼らは、ジョンとポールが残した指紋から、彼らのコラボレーションとしてのみ知られていた17曲、あるいは彼らが矛盾して記憶していた楽曲に彼らの理論を適用して分析しました。

グリックマンは、アルバム「Rubber Soul」中の「The Word」がジョンの楽曲なのか以前から疑っていましたが、分析の結果、ポールの作品の傾向が強く現れていることがわかりました。

また、ジョージがリードヴォーカルを取った「Do You Want to Know a Secret ?」とは、ジョンの作品である可能性が高いという結果になりました。もっとも、これはファンの間では以前から知られていたことで、それを裏付ける結果となりました。

そして、「In My Life」では、ジョンがこの楽曲の制作にあたって、ポールから少しだけヒントをもらったと発言していましたが、ポールは、ジョンが書いた歌詞に自分が曲をつけたと記憶していると語っています。つまり、2人の主張が真っ向から対立しているのです。

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「私たちの分析の結果では、ジョンがこの楽曲を書いた可能性が高い。ポールが関わったのは2%程度だ。」とグリックマンは語っています。つまり、ポールの記憶違いということですね。

もちろん、グリックマンも一流の科学者ですから、彼らの研究には限界があることを認めています。彼らは、歌詞やテンポ、楽器などの多くの変数を考慮していません。つまり、それらのデータを分析すれば、違う結果になる可能性もあるということです。

それでも、彼らは、より精緻な分析ができるようテクニックを向上させる技法について議論を始めています。

7 Let It Be

以上の研究結果は、2018年8月1日に発表されました。

これを信じるか信じないかはあなた次第です。しかし、彼らも認めているように、研究に一定の科学的根拠は認められるものの、他に考慮しなければならない要素が数多くあり、精緻なデータとはなっていません

ビートルズの楽曲には他にも数多くの謎があります。「A Day In The Life」のミドルエイトの最後で♫Ah~とスキャットを入れているのはジョンかポールか未だに議論されていますが、これもその一つです。

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将来もっと科学が発達し、あるいは有益な機器が発明されたら、真実が明らかになる日が来るかもしれません。でも、謎は謎のままでLet It Be(あるがままに)にしておいた方がいいのかもしれませんね。

(参照文献)WGBH, nola

(続く)