★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

統一された衣装から個性豊かな服装へと変わっていったビートルズ(470)

トレードマークとなったダギー・ミリングスがデザインした襟なしスーツ

1 スーツにも変遷があった

(1)微妙な個人差があった

www.youtube.com

ビートルズのファッションについて書かれたディアドレ・ケリーの「ファッショニング・ザ・ビートルズ」についてのお話しを続けます(脚注は同書のページ)。ビートルズが清潔で洗練され、服装が整ってくると、彼らの服装は好みの問題になり始めました。ケリーは、初期のビートルズの写真を盛んに撮影したレス・チャドウィックのフォトセッションや、グラナダテレビによるキャヴァーンのステージショーの「ノウ・ザ・ノース」の収録でグループが着ていた服装に、微妙な個人差があったことを指摘しています。でも、当時の写真や映像はモノクロなので見てもよくわかりません。

(2)トレードマークとなった襟なしスーツ

ビートルズは、ロンドンを拠点として商売していた紳士服のオーダーメイドを仕立てていたダギー・ミリングスを紹介されました。彼は、クリフ・リチャードなど有名なポピュラー・ミュージシャンの衣装を数多く手がけていました。ミリングスは、ビートルズのために「ベルベットの襟が付いたチョコレートブラウンのスリーピース・スーツ」を仕立てて提供し、これは世界中に紹介されました。数あるビートル・スーツの中でももっとも彼らをアイドルに仕立て上げた画期的なものでしょう、ビートルズは、その下に「ポルトフィーノのカフをつけたピンクと白のギンガムチェックのペニーカラーシャツを着ていた」と説明しています。*1

(3)流行の最先端だった

007ジェームズ・ボンドが着用していたカクテルカフ

ギンガムチェックは格子状のデザインで、ポルトフィーノカフはカクテルカフとも呼ばれ、メンズシャツの袖を折り返してボタンで留めたものです。60年代に映画007でジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリーがこれを着用していました。ペニーカラーシャツとは、小さく丸みを帯びた襟が特徴のメンズシャツです。

要するにビートルズの衣装は、当時の流行の最先端を行っていたおしゃれなものだったということですね。ケリーは、ビートルズの見た目は、彼らが成功していく過程で常に変化する万華鏡だったと説明します。つまり、スーツというスタイルは維持していたものの、デザインがどんどん変わっていったということです。結果的にビートル・スーツといっても多彩な種類ができあがりました。そういえば、「ビートルズのスーツは何種類あった?」と聞かれて即座に答えられる人は少ないでしょう。

 

 

2 帽子を被ったのはジョンだけだった

(1)メンバーそれぞれの個性があった

ヘレン・アンダーソン製作のジョンの帽子

カラー写真と優れた資料が満載されている275ページ全体を通じて、ケリーは、ビートルズがキャリアを通じてスタイルを進歩させ、荒っぽくて粗野だったものから次第にカラフルでサイケデリックなものへと進化していった過程をたどります。さらに、それぞれのメンバーの見た目の変化が注意深く研究されています。

例えば、ジョンは、「ビートルズの中で帽子をかぶった唯一の人物であり、それが彼を注目すべき人物として浮き上がらた」と記しています。*2 なるほど、改めて指摘されるとそうだなと気づきます。他の3人は、映画の出演など特に必要な場合でしか帽子は被りませんでした。

ビートルズと同世代でリヴァプール出身のファッションデザイナーであるヘレン・アンダーソンに特注した革製キャップが「彼の特徴的なスタイル」を確立したとケリーは主張します。そして彼女は、ジョージが常に流行に敏感で「彼の反抗的だが本質的にスタイリッシュな性格を反映するように学生服を自分流に仕立てていた」と指摘しました。*3 彼は、少年時代から4人の中で一番流行に敏感だったんですね。そういえば、インド文化を真っ先に取り入れたのも彼でした。

ポールは、1965年になっても常にカフスボタンを着用していたほど、フォーマルなスタイルを好む傾向にありました。そういえば、「ルーフトップ・コンサート」でも彼だけがフォーマルなスタイルでしたね。それはバンドに威厳を与えるという効果をもたらしました。このように彼らは、統一された衣装から次第に思い思いのファッションに身を包むようになったのです。

(2)シェイ・スタジアムのセミミリタリー・ジャケット

セミミリタリー・ジャケット

ケリーは、エドサリヴァン・ショーとカーネギー・ホールの両方で、1964年2月のバンドの様子をたどります。*4彼女は、映画「ハード・デイズ・ナイト」での彼らの服装について素晴らしい実話を語り*5、1965年11月のMBE叙勲式の服装を分析しています。その時の彼らの服装は、4つのボタンがついたダブルのスーツで洒落た上品さを醸し出していました*6おそらく彼らのファッションの中でも、最上級のフォーマルなものだったでしょう。

ケリーは、シェイ・スタジアムのあの轟音のステージでビートルズが着ていた特徴的なセミミリタリー・ジャケットに注目しました。実際、「ファッショニング・ザ・ビートルズ」では、レザーからコーデュロイ、さらにはテクスチャー、プリント、パターンに至るまで、バンドの「進化する美学」のあらゆる側面が網羅されています。*7ビートルズがトレンドを作り、一つのところに止まることなく、まったく違うものに急速に移行する様子を、ケリーは読者の目の前で見せてくれます。

 

 

3 後期のビートルズのファッション

1968年、「マッド・デイ・アウト」のフォトセッション

コンサートを全て中止したビートルズは、お揃いのステージ衣装を用意する必要がなくなり、それぞれが思い思いのファッションに身を包みました。1960年代の終わりまでに、ビートルズの新たな境地には、アップル・ブティック、アップルのキングス・ロード敷地の下層階にあるレスリー・キャベンディッシュのサロン、ビートルズがリシケシに着ていくためにデザインされたインドのアパレル、そして、アルバム「トゥー・ヴァージンズ」の表紙に登場したジョンのヌードが含まれていました。1969年までには、ジョンとポールの間にあった1958年のニュー・クラブムーアでのライヴでお揃いのスポーツコートを着たような燃え上がる火花は、消えゆく残り火と化していました。

ケリーによると、ホワイトアルバムの写真には「ポールが意図的にひげを剃っていない」「色あせたリーヴァイスのジャケットを着たジョン」とボサボサの髪があり、「ヘンリーTシャツの一番上のボタンを外したジョージ」が写っていたと指摘しています。しかし、この「洗練されたファッションからみすぼらしいものへの移行」は、この物語の一部であるとケリーは主張します。それは終わりの始まりでした。彼らは、それぞれ別の道を歩み始めると同時に、ファッションやヘアスタイルなども全く気にしなくなっていたのです。

この変化をもっとも象徴的に表しているのが、いわゆる「赤盤」「青盤」と称される1973年にリリースされたベスト・アルバムのジャケット写真です。一つのグループが7年余りでこれほど外見が変わったのかと驚きます。

デビュー直後と解散直前で大きく変化したビートルズの外見

 

 

4 解散後のファッション

ビートルズが解散してソロ・ミュージシャンに移行する中、ケリーは「不滅に向かって前かがみ」と名付けた章で、彼らを「1970年とその先」へと追い続けます。彼女は、ジョン、ポール、ジョージ(そしてその後のリンゴ)がキャリアをスタートした当初から、彼らが採用した服装やルックスは決して「熱狂的な群衆」を喜ばせるためのものではなかったと指摘します。

ケリーは、「ジーンズ、レザー、モッズ、ネオ・リージェンシー、ヒッピー、ウエスタン・カウボーイ、インディアン・アシュラム、そして再びジーンズに戻るなど、あらゆる変遷を通じて、(ビートルズ)は主に自分たちを喜ばせることに関心を持っていた。」と述べています。*8 彼らは、自分が着たい服を着て、それがどう見られようがなんとも思わなくなっていたんですね。

デビューした頃のビートルズは、髪が長いことを批判されても笑って無視しました。しかし、解散後、アイドルの頃のビートルズの外見とは全く異なることを批判されたとき、もう30歳前後になった元ビートルズは、ただ肩をすくめました。「もうあの頃のオレたちじゃないんだ」そして、ジョンが頭を剃ったことで激しく批判されたとき、彼は、「私はアーティストであり、モデルではないのだから、そんなことはどうでもいい」と発言しました。どんな格好をしようが彼らの自由なのに、批判する人がいたとは驚きです。ビートルズ時代の夢を壊されたくなかったのでしょうか。

 

 

5 ファッションからビートルズを分析した功績

ケリーは、ビートルズの最もスタイリッシュな要素は、自分たちが何者であるかという独特の感覚だったと主張します。そしてそれは決して変わりませんでした。これは、ビートルズの歴史のめったに議論されない側面を興味深い視点で捉えたものです。

頭のてっぺんからつま先まで、彼らの生来の芸術性に注目したケリーは、ファッションの観点から鋭く彼らの変遷を辿っています。彼らの音楽性に関してはこれまで散々語られてきました。しかし、ファッションに焦点を当てて深く分析したのは、おそらく彼女が初めてでしょう。その点において彼女の功績は賞賛されるべきだと思います。

(参照文献)カルチャーソナー

(続く)

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