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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

「Love Me Do」の謎~リードヴォーカルを交代したエピソードについての疑問(407)

1 クロマティック・ハーモニカも使っていた?

(1)クロマティック・ハーモニカも使っていた?

クロマティック・ハーモニカ(右側にボタンが付いている)を持つジョン

前回の記事(406)で「ジョンが使っていたハーモニカは、ホーナー社製のシグネチャーである」と記載しました。それ自体は間違っていないのですが、この記事を読んだ方から「(404)に掲載されている写真に写っているのはクロマティック・ハーモニカであり、ジョンは、曲によって使い分けていたのではないか?」とのご指摘を受けました。

確かに上記の写真を改めて確認してみると、白黒で分かりづらいのですが、クロマティック・ハーモニカの特徴であるボタンがハーモニカの右側についているのが確認できます。そうすると、ジョンは、クロマティック・ハーモニカも併用していて、曲によって使い分けていたのかもしれません。

(2)ジョンは「ハープ」と答えた

1963年、BBCのリハーサルでハーモニカを演奏するジョン

また別の方からは、1963年7月11日に放送されたBBCの「Pop Go The Beatles」という番組を紹介していただきました。放送中で司会者が「ジョンがハーモニカを準備しています」とリスナーに説明すると、ジョンが話を遮って「この曲ではハープを使います。ハーモニカは『Love Me Do』で使います」と訂正しているのが聞こえます。つまり、彼の中ではハープとハーモニカが明確に区別されていて「Love Me Do」では前者を使ったということですね。これがその時のジョンの発言です。

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また、ジョンのTwitterでは、「子どもの頃からハーモニカとマウスオルガンをいくつも使っていた」と書いてあります。彼がいう「マウスオルガン」が何を指すのかもよく分かりませんが、いろんな種類のハーモニカを使い分けていたのだろうということは想像がつきます。ただ、さすがにどの曲でどのハーモニカを使っていたかまでは特定するのが難しいですね。

この後に演奏したのがチャック・ベリーがカヴァーした「I Got To Find My Baby」のビートルズ・ヴァージョンですが、かなりハープの腕を上げているのが分かります。この曲ではハープを使い、「Love Me Do」ではハーモニカを使ったことは、ジョン自身が説明しているのですから間違いありません。

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(3)今後の研究課題

残念ながら、ジョンが実際にハーモニカを演奏している動画は少なくて「Love Me Do」「I’m A Loser」しか確認できていませんが、この二つはボタンがないし、操作もしていないのでシグネチャーと思われます。となると、クロマティックを使っているのは、他の曲のどれかということになりますが、音源を聴いてもどちらかを聴き分けるのは困難です。

ハーモニカのプロや詳しい方なら、サウンドを聴いただけで聴き分けられるのかもしれませんが、残念ながら私にはその能力がありません。どの曲でどのハーモニカを使用していたかというところまで細かく分析した資料は、現時点では見つけられていません。この問題は、今後の研究課題にしておきたいと思います。

 

 

2 「Love Me Do」のリードヴォーカルの交代

(1)これまでの定説

これまで伝えられてきたところでは、レコーディングでは当初ジョンがリードヴォーカルを担当していました。しかし、リハーサルを聴いたマーティンが、ジョンがヴォーカルの途中でハーモニカに切り替えて演奏することに違和感を覚えました。

「それでは『Love me do』じゃなくて『Love me wooo 〜』になってしまう」と指摘し、ポールにリードヴォーカルを担当させ、ジョンがハーモニカを演奏できるようにしました。ポールは、いきなりリードヴォーカルを担当させられ、緊張のあまり声が震えてしまったというものです。これが今日に至るまで語り継がれているリードヴォーカル交代の顛末です。

(2)リードヴォーカルをレコーディングの途中で交代させるか?

もこれが事実なのだろうとは思っているのですが、どうしても腑に落ちない点がいくつかあるんです。まず最初に思い浮かんだのは「レコーディングの最中に、そんな簡単にリードヴォーカルを交代させるだろうか?」という素朴な疑問です。ポピュラー音楽の演奏でリードヴォーカルは、ドラマでいえば主役に当たりますから、そう簡単には交代できないはずです。

ビートルズは、はじめてのレコーディングに当たって、相当気合を入れて何度も練習してきたはずです。なんといっても、自分たちのデビューシングルになるわけですから、当然リードヴォーカルも念入りに練習していたはずです。

ポールも優れたシンガーですし、リードヴォーカルは、ジョンと半々くらいの割合で担当していました。この曲でもジョンとともにハモっていますし、曲自体もそんなに難しい曲ではありませんから、やれと言われればぶっつけ本番でもできたでしょう。しかし、いくら1962年という現代よりはるかにのどかな時代だったとはいえ、レコーディングという重要な仕事の途中でそんなに簡単にリードヴォーカルを交代させたとは思えないのです。

何しろ、マーティンは、この曲ではドラマーもピートはもちろん、リンゴすら気に入らず、セッション・ドラマーのアンディ・ホワイトのヴァージョンをアルバムに採用したほどストイックでしたから。それほどこだわりの強いプロデューサーが、簡単にリードヴォーカルという重要なポジションを交代させるだろうかという疑問がわきます。

次に、この曲は、1958年にポールがメインで制作した曲です。ビートルズの古くからのお約束として、メインで制作したメンバーがリードヴォーカルを担当することになっていました。そうすると、そもそも最初からこの曲は、ポールがリードヴォーカルを担当していたと考えるのが自然だと思います。

 

 

3 ヴォーカルの途中でハーモニカに切り替えたりしない

(1)リードヴォーカルではありえない

当たり前の話ですが、ハーモニカを演奏しながら同時にヴォーカルはできません。この曲を聴いていると「do」の所にハーモニカが入るのがものすごくしっくりきます。長年このアレンジで聴き慣れているから、そう聴こえるだけかもしれませんが。でも、ここはリードヴォーカルが歌っているところですから、必然的にリードヴォーカルを途中で止めてハーモニカに変えないといけません。

自分が歌っている途中で、唐突にハーモニカに切り替えるミュージシャンはいません。あまりに不自然ですからね。彼らの先輩であるボブ・ディランもそんなことはしていません。なので、どう考えても「ハーモニカを演奏できないからリードヴォーカルを交代した」という話は、不自然ではないかと思っています。ヴォーカルにしてもハーモニカにしても、一区切りがついてからどちらかに切り替えます。百歩譲ってコーラスならあるかもしれませんが、リードヴォーカルではまずやらないでしょう。

(2)ハーモニカを演奏できたのはジョンだけ

そして、こんなことは人から指摘されるまでもなく、ほかならぬビートルズ自身が一番よく分かっていたはずです。ジョンが語っているように「Love Me Do」でハーモニカを使い、しかもリードヴォーカルに重ねたかったとすれば、最初からメンバーの誰かがリードヴォーカルを歌っているバックで、別のメンバーがハーモニカを演奏するというスタイルを採っていたはずです。

そして、ビートルズの中でハーモニカを演奏できるのはジョンだけでしたから、必然的にジョンはリードヴォーカルから外れることになります。となると、やはりこのリードヴォーカルは、元々ポールが担当していたのではないかという疑問が生じます。

 

 

4 なぜオーヴァーダブしなかったのか?

(1)「Please Please Me」ではオーヴァーダブした

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それと、ハーモニカのサウンドをリードヴォーカルに重ねたいのであれば、それだけ後でオーヴァーダブすれば済む話で、当時その技術はすでにありました。実際、次のシングル曲である「Please Please Me」では、ハーモニカを後でオーヴァーダブしました。ですから「Love Me Do」の時点でそれができなかったとは考えにくいのです。とすると、ボールがリードヴォーカルを最初から担当していたと考えるのが自然なのではないでしょうか?

(2)ジョンのリードヴォーカルの音源が残されていない

マチュア時代に制作された「Love Me Do」は、まだ完成形ではなかったとはいえ、ライヴではたびたび演奏されていました。とすればリヴァプールでもハンブルクでも、どこかで録音された音源が残されていたのではないかと思います。

しかし、現在残されている音源は、全てポールがリードヴォーカルを担当していて、ジョンのものは見つかっていません。私が知らないだけかもしれませんが。となると、ますますジョンがリードヴォーカルを担当していたというのは怪しくなります。

以上の疑問点をまとめてみると下記のようになります。

・レコーディングの途中でリードヴォーカルを交代させるとは考えにくい

・ポールが制作した曲だから彼が担当するのがそれまでの慣習だった

・リードヴォーカルの途中でハーモニカに切り替えられない

・オーヴァーダブすればよかった

・ジョンのリードヴォーカルの音源が残されていない

色々と疑問点を並べましたが、残念ながら定説を覆すまでには至りません。ただ、私が抱いている疑問点については、同じようなことを感じている方も多いのではないでしょうか?

 

 

 

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