★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

チャーリー・ワッツは、ミック・ジャガーを殴っていなかった?(号外)

ミック・ジャガーとチャーリー・ワッツ

1 チャーリーは事件を否定した

(1)チャーリーがミックを殴った

60年代のロックシーンをビートルズと競い合っていたローリングストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツが亡くなったことを受けて、彼に関する特集記事を8月27日付けで書きました。その中で酔っ払ったミックがチャーリーの部屋に電話をかけ「オレのドラマーはどこだ?」とふざけて話した時に、怒ったチャーリーがホテルの部屋に乗り込んでミックを殴ったというエピソードを紹介しました。しかし、最近、「それは事実ではない」という報道があったので、ここで事件の真相について検討してみたいと思います。

 

(2)チャーリーは事件を否定した

この話は、ほとんど定説のようになっていて、誰も否定する人はいませんでした。しかし、1994年、アメリカのCBSテレビに出演したチャーリーは、この話を否定したのです。

ローリングストーンズにおけるチャーリーのドラマーとしての役割に話が展開し、インタヴュアーが「私は、こんな文章を読んだことがあります。真実かどうか分からないが…ミックがバンドのドラマーであるあなたのことについて話したら、あなたがドアをノックして…」と言いかけると、チャーリーは、大きく首を振って話を遮り、「いやいや、ミックは、よく私を困らせたんだ。彼がある時、私のことを『オレのドラマー』と呼んで困らせたので、私は、いつも彼のことを『オレのシンガー』と思っていたんだよ。」と暴行の事実を否定しました。

やや間をおいてからインタヴュアーは、「ある意味、それは正しいですね。」と話を続けると、チャーリーは、「どっちも正しいよ。そうだろ?それが言いたかったんだ。そんなところさ。あの時、彼は、私を困らせたんだ。」とにこやかに語りました。動画の2分辺りのところです。 www.cbsnews.com

2 チャーリーは真実を語ったのか?

(1)否定はしたが…

The Unflappable Greatness of Charlie Watts - The Ringer

さて、「チャーリーがミックを殴った」というエピソードがあり、チャーリーがそれを事実ではないと否定しました。ここまでは争いのない事実です。問題は、チャーリーの話が真実かどうかです。普通なら本人が言っているのですから、間違いないと思いますよね。

ここからは、あくまで私の推察です。私は「チャーリーは、本当はミックを殴ったんだけれど、公共の場で言える話ではないので、あえて否定したのではないか?」と考えます。以下にその理由を示します。

(2)コンプライアンスに抵触することを懸念した?

人を殴るというのは暴行という犯罪ですし、メンバーが若かりし頃の60年代ではなく1984年です。チャーリーがインタヴューを受けた90年代には、もうコンプライアンスという概念が先進国では定着していました。コンプライアンスというのは、ざっくり言えば「法や社会のルールに反するようなことはやってはいけない。」という考えですね。

チャーリーは、たとえ身内の昔話とはいえ、暴行した事実を認めるのは流石にマズいと、とっさに判断したのではないでしょうか?日本でも著名人が脚光を浴びると、何十年も前の法や社会のルールに反する行為が暴かれて、表舞台からの退場を余儀なくされることがあります。彼は、そういったことを懸念したのではないかと推察します。

(3)とっさにインタヴュアーの話を遮った

それに、チャーリーの態度もちょっと不自然ですよね。だって、インタヴュアーは、まだ「ノックして」とまでしか言ってなかったんですよ?まあ、あの事件を話題にしようとしたのは明らかですが、それにしても、みなまで言わせず話の途中で遮ったんですから(^_^;)紳士の彼なら最後まで話を聞いたはずです。

しかし、その時は珍しくインタヴュアーの話を遮って話し出した。このまま彼に喋らせたら「殴った」という言葉が出ると感づいて、いかにも慌てて遮ったという印象を受けます。

それに言葉尻を捕らえるようで恐縮ですが、チャーリーは、最後に「あの時」と言ってしまっています。これは、ある特定された時間を指しています。事件があった時を「あの時」と思わず口走ってしまったのではないでしょうか?「いつも」と言っていれば、まだごまかせたかもしれません。

それに、事件を知らない人がこのやり取りを聞いたら、「あれ、何でチャーリーは、インタヴュアーの話を途中で遮ったのかな?最後まで話を聞いていないのに、何で彼が何を言おうとしたのか分かったんだ?それに、そもそもこの二人は一体何の話をしていたんだ?」と「?マーク」が頭の周囲に一斉に点灯するでしょうね(笑)この記事を読んでいただいている皆さんはもう承知のことですが、知らない人にここのやり取りだけを読ませたら、何の話をしているのかさっぱり分からないでしょう。

インタヴュアーもチャーリーがその事件に触れて欲しくないという気持ちを察して、それ以上追求するどころか、むしろ、チャーリーに有利になるよう上手く話を誘導しました。なかなか機転の利く人ですね。「あ、これ、マジの話らしい。これ以上追求したらヤバいぞ💦」と察して、無難な着地点を見つけたのでしょう。

 

3 キース・リチャーズが暴露した

(1)キースの目撃証言が発端

Book Review: Life (Snorts), by Keith Richards

この話が広まったのは、2010年に出版されたキース・リチャーズの自伝「ライフ」でこの事件が紹介されたことに端を発します。ここからこの事件が様々な出版物で引用されることになりました。その過程で若干「ヴァージョン違い」が生じています。

チャーリーがミックを殴った後で「二度とオレのドラマーと呼ぶな。」と言ったところまではほぼ共通しているのですが、その後に「オレの歌手よ。」と言ったかどうかで説が別れます。ただ、そういった微妙なズレはあるものの、ほとんどの記事が核心の部分では一致しています。

この事件が真実性を帯びるのは、キースの目撃証言があるからです。彼は、加害者でも被害者でもない目撃者ですから、当事者の証言より客観的であるといえます。しかも、バンドのメンバーです。

ビートルズストーンズのようなスーパースターともなると、数多くの関連本が出版され、中には金儲けを企んでか、目立ちたいからか、ありもしない話をねつ造する輩もいます。しかし、キースがそんなことをするはずがありません。とすれば、彼の証言が真実である可能性は高いといえるでしょう。

(2)エピソードが具体的かつ詳細

証言したのがキースというだけでなく、内容からしても、事件の状況が具体的で詳細に描かれています。私の記事をもう一度ご覧いただければ分かるとおり、事件が起きた時期や場所、登場人物、誰が何を言ってどう行動したか、つまり、事実を第三者に伝達するために必要ないわゆる5W1Hが完璧にそろっているんです。

裁判官が裁判において事実認定をする時に、ある証人の証言が真実であるかどうかについて、それがどれだけ具体的かつ詳細であるかを一つの判断基準にしています。物的証拠と違って人の証言ですから、記憶違いがあったり、思い込みがあったりします。

しかし、多少真実と異なるところはあっても、その証言が具体的で詳細であればあるほど、真実を語っている可能性が高くなるという裁判上の経験則から、裁判官は、事実認定においてこの点を重視します。

このことを念頭においてこの件について検討してみると、実に証言が具体的かつ詳細にわたっています。「チャーリーは、ヒゲを綺麗に剃っていた」とか「コロンの匂いがした」とか。作り話にしてはあまりに具体的かつ詳細ですよね。

確かに、あるエピソードが盛られたり、尾ひれがついたりするということはよくあります。チャーリー自身が認めているように、ミックが彼のことを「オレのドラマー」と呼んだのは事実です。

しかし、そこから話を盛るにしても、チャーリーがミックを殴ったなんて、いくらなんでも話が飛躍しすぎていませんか?せいぜい口論になった程度で留めるでしょう。

 

4 やはり事実だったのではないか?

Mick Jagger Didn't Enjoy Writing Memoir So He Stopped | PEOPLE.com

以上の理由から、私は、やはり、この事件は事実だったのではないかと思います。チャーリーは、コンプライアンスの問題に抵触することを懸念して、この「武勇伝」を封印したのでしょう、

ヤンチャなミックやキースならまだしも、あの紳士で控えめなチャーリーだけに、このエピソードはギャップがあって面白いですよね。とはいっても、暴力が認められるものではありません。「若気の至り」で許されるような年齢でもありませんし(^_^;)

面白いのは、殴られた被害者のはずのミックがこの件に関して沈黙を守っていることです。となると、ますます怪しいですね(笑)もし、伝えられていることが真実でないのなら、早い時期に否定しているはずですし、彼がチャーリーを擁護するつもりなら、なおさらそうしていたでしょう。しかし、あえて何も言わないのは、うっかりこのことについて語ると、追及されたら真実であることを認めざるを得なくなってしまうので、この話題を避けているのではないかという気がします。

以上は、あくまで私の推察です。この事件を真実と認めるかどうかは読者の皆さんにお任せします。

(続く)

 

この記事を気に入っていただけたら、下のボタンのクリックをお願いします。

にほんブログ村 音楽ブログ ビートルズへ
にほんブログ村

下の「読者になる」ボタンをクリックしていただくと、新着記事をお届けできます。