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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ローリング・ストーンズも「Love Me Do」に心を奪われた(438)

1962年10月27日、初めてラジオのインタヴューを受けるビートルズ

1 ローリング・ストーンズも影響を受けた

(1)感動しつつ動揺した

ミック・ジャガー

前回の記事で「Love Me Do」に影響を受けたスティングとエルトン・ジョンについてご紹介しました。他のアーティストについては資料がないため書けないとしていましたが、大事なアーティストを忘れていました。ローリング・ストーンズミック・ジャガーです。彼もこの曲から大きな影響を受けました。ただし、彼がこの曲を聴いた時の印象は、先の二人と比べて少々複雑でした。

ミックは、この曲を聴いて感動したと同時にかなり動揺したのです。彼そしてメンバーのブライアン・ジョーンズも、ビートルズが自分たちのバンドの音楽スタイルと類似しているように感じましたが、同時にこの曲からインスピレーションを受けました。ミックは、ビートルズが レコードデビューしたとしても、それはロックンロールであり、まさか自分たちの得意分野であるブルースの領域に侵入してくるとは想定していなかったのです。

前回もご紹介したとおり、この曲は、多くのジャンルが融合した曲です。ロックンロール、ブルース、R&Bなどの様々な要素を聴くことができます。ただ、ブルージーという点では、ストーンズの音楽的志向にかなり近いかもしれません。この曲により挑発的な歌詞とのどを鳴らすようなヴォーカル・パフォーマンスを加えればストーンズの曲になりそうです。しかし、危機感を覚えながらもミックは、この曲がそれまでのイギリスの音楽シーンとは明らかに一線を画していることはわかっていました。

(2)ストーンズが路線を変えた

Love Me Do」は、ストーンズの音楽の方向性に対する考え方を変えました。それまで彼らは、ビートルズと同じように多くのアメリカのアーティストから影響を受けていました。当時アメリカで流行していた音楽のスタイルは、彼らが作っていた音楽とはあまりにも違っていたのです。彼らは、当初、ブルースのコアなファンだけが自分たちの音楽を受け入れてくれると考えていました。

しかし、「Love Me Do」は、ストーンズに希望を与えたのです。彼らは、この曲の成功が大衆の音楽的嗜好の大転換を告げるものだと感じました。それまで彼らは、アメリカ人が演奏するようなブルースでなければ受け入れてもらえないと思っていました。しかし、ビートルズがブルージーなロックンロールのシングル曲をヒットさせられたのなら、ストーンズにだってできるに違いないと考えを変えたのです。おそらくこの瞬間にビートルズは、ストーンズが長年にわたってヒットチャートを賑わせる曲を連発する道を開いてくれたのです。

 

 

2 ビートルズのロックの殿堂入りにおけるミックのスピーチ

www.youtube.com

1988年にビートルズがロックの殿堂入りを果たした際、ミックは、インダクターとして壇上に上がりビートルズを賞賛するスピーチをユーモアを交えながら行いました。「僕らは、チャック・ベリーの曲やブルースをやっていて、自分たちのことをとてもユニークな動物だと思っていました。そして、リヴァプール出身のグループがいて、彼らは、長髪でみすぼらしい服をを着ていると聞いていたんです」彼は、ビートルズが地元のリヴァプールで貧しい生活をしていたとジョークを飛ばし、会場内は笑いに包まれました。

そして、「Love Me Do」を聴いた時のエピソードについて次のように語りました。「でも、彼らは、レコード契約をしていました。ブルージーなハーモニカが入った『Love Me Do』というレコードがチャートに入っていました。これらのことが全部頭に入ってきて、僕はもう病気になりそうになりました」

おそらくミックは、初めてこの曲を聴いたときに、ビートルズが自分たちの得意分野である ブルースの領域に侵入し、しかも成功したことに動揺したのでしょう。しかし、それは、必ずしも彼らにとってマイナスなことではありませんでした。むしろ、アメリカ人でなくてもブルースは作れるだけでなく、ブルースとはまた違うポピュラー音楽を作れる可能性をビートルズが教えてくれたことになります。まさにビートルズが新しい音楽の道を切り開いてくれたわけですね。

ミックは、最終的にビートルズを賞賛し、彼らが他の多くのイギリス出身のバンドが商業的にブレイクするのを助けたと語りました。そして、自分がビートルズのロックの殿堂入りを紹介できることを誇りに思うと締めくくりました。*1

 

 

3 キース・リチャーズビートルズが好きだった

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ミックは、ストーンズを描いたドキュメンタリー映画「マイ・ライフ・アズ・ア・ローリング・ストーン」の中でこう説明しています。「僕らがロンドンのクラブで仕事をしていたら、ビートルズがちょうど出てきて『Love Me Do』がヒットしたんだ。そして、僕らは『なんて素晴らしいレコードなんだ!』と言ったんだ」ストーンズがこの曲に感動したとは意外ですが、ブルースっぽい感じながらオリジナルな音楽性を持っていることに彼らも気づいたのでしょう。

ビートルズは突然爆発的に売れた......でも、僕らは、ブルース・バンドなんだ。ビートルズがすべてを変えた。キースは、いつもビートルズを演奏していた。それで僕は気が狂いそうになったよ!彼がビートルズを演奏していたのは、他の曲を聴きたくなかったからじゃない。キースがこんなポップな曲を書きたがったのは、僕らは紛れもなくブルース・バンドだけど、ポップな曲を書きゃなきゃいけないってことがわかってたからなんだ」

キースがビートルズを気に入って彼らの曲ばかり演奏していたというエピソードも意外ですね。てっきり、俺たちはアイツらとは違う、ブルースバンドだとか言ってそっぽを向いていたのかと思っていました。映画のトレーラーでもそのことについてミックが語っているところが取り上げられています。そんなキースに対してミックは「俺たちは、ブルースバンドだろ」と抵抗していました。

しかし、彼もビートルズがブレイクしたことで、今まで自分たちが歩んできたブルース路線を続けていては売れないことは分かっていました。大衆に受けるポップな路線に転換する必要があることは分かっていたし、実際それができたからこそストーンズはブレイクしたのです。

 

 

4 ジョー・エリオット(デフ・レパード

ジョー・エリオット

デフ・レパードは、イギリスのロックバンドで1980年代に最盛期を迎え、シングル、アルバムともにチャートを席巻し、2019年にロックの殿堂入りを果たしています。そのヴォーカルを担当しているジョー・エリオットは、「Love Me Do」についてこう語っています。

「『Love Me Do』がリリースされたとき、僕は3歳2か月だったんだけど、プラスチックのおもちゃのギターを持っていて、ラジオからその曲が流れるたびに、椅子の上に立って一緒に歌っていたんだ。なぜその曲が他のどの曲よりも私の心に飛び込んできたのかはわからないが、私が生まれて初めて歌った曲だった。ハーモニカのイントロのせいかもしれない。当時、ハーモニカのブレイクが入った曲は、フランク・アイフィールドの『I'll Remember You』しか覚えていないんだ。」

「でも『Love Me Do』は、フレディ・アンド・ザ・ドリーマーズやジェリー・アンド・ザ・ペースメイカーズ、あるいは似たようなアクセントを持つどのバンドよりも、頭ひとつ抜けていた。レノンとマッカートニーの声は、当時のレコードのようにリバーブに覆われておらず、メロディーのセンスは驚異的だった。」

「彼らがその後にやったことと比較すると、『Love Me Do』はロケットが軌道に乗ったら捨てられてしまうような作品だが、そのプロセス全体にとっては不可欠なものだった。今でもこの曲を聴くと笑顔になるし、この曲が私にとっての発射台だったと思うと大きな誇りを感じる。」*2

なんと、まだ3歳の子どもがラジオから流れてきた数多くの曲の中でも「Love Me Do」に心を奪われていたとは驚きです。しかも、彼は、他の曲は忘れてもこの曲を聴いた時のことは鮮明に覚えているんです。よほど彼の感性に響く何かがあったのでしょう。

そこで、改めて調べてみると「Love Me Do」を聴いて感動したアーティストが他にも大勢いることがわかり驚きました。しかも、受け止め方がそれぞれ違っていて面白いんです。この曲にいろいろな角度からスポットを当てることができるいい機会ですから、聴いた時の印象についてコメントしているアーティストと、そのコメントを次回も紹介したいと思います。ね、全然地味な曲じゃないでしょ?

(続く)チートシート、ザ・ガーディアンズ

(参照文献)

(追記)

私が出演するオンライン舞台「あの日、彼は泡(あぶく)のように消え去った」の試聴用チケット(無料)を配布中です。スリル満点のサスペンスです。9月17日(日)午前10時(2週間程度のアーカイブ配信あり)、放映時間は30分です。下記のサイトから観劇用のチケットを入手してYouTube用のURLを取得してください。ゲスト購入で結構です。

生配信用サイト:

gekidan-focus.stores.jp

アーカイブ配信用サイト:

gekidan-focus.stores.jp

 

 

 

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