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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

「Love Me Do」の謎~なぜデビュー・シングルに選んだのか?(404)

Love Me Do – The Beatles | Goldmine1969.com

1 デビュー・シングルに選んだのはなぜか?

(1)以前からモヤモヤしていた

Love Me Do at 60: Six surprising things you didn't know about The Beatles'  first single - Liverpool Echo

言わずと知れたビートルズのデビュー・シングル「Love Me Do」についてですが、今回取り上げる話題は、以前から私が個人的に疑問に思っているだけで、一般的に謎だと思われているわけではありません。ただ、多くの人も同じ疑問を感じているかもしれませんね。私がずっとモヤモヤしてきたことを皆さんがどう感じておられるのか、ちょっと問題提起してみたくなったんです。

ですから、そんなに大上段に振りかぶって議論をするようなお話ではありません。この曲を初めて聴いて素朴な疑問を抱いたのは「なぜ、この曲をデビュー・シングルに選んだのか?」ということです。

(2)なぜロックンロールではなかったのか?

もう初めて聴いた時の感覚を忘れてしまいましたが、ちょっと意外な気がしたような記憶があります。というのも「ビートルズ=ロックバンド」というイメージが強かったので、てっきりアップテンポのロックンロールでデビューしたんだろうと予想していたら、ミドルテンポの曲だったんですよね。「あれ?」と意外に思ったような記憶があります。

彼らも「オレたちは、ロックンロールバンドだ」と強く意識していましたから、当然、デビュー曲は、ロックンロールでいったんだろうと思いきや、意外にもミドルテンポのゆったりした曲調でした。少なくとも彼らのお気に入りのアップテンポな曲ではありません。

(3)オーディションで失敗していた

ビートルズが下積み時代にデッカレコードのオーディションを受けた際、マネージャーのブライアン・エプスタインの方針により、彼らが得意とするロックンロールを中心としたナンバーではなく、レコード会社のスタッフに受けそうな大人っぽいナンバーを選びました。

結果としてオーディションには不合格となり、メンバーは、自分たちの得意なロックンロールを前面に押し出していれば合格できたはずだとブライアンに強い不満を抱きました。そういう苦い経験も踏まえると、デビュー曲は、ビートの効いたダンスの踊れるようなロックンロールということに必然的になるはずです。

しかし、彼らが選んだ曲は、ロックンロールではありませんでした。少なくともティーン・エイジャーが熱狂してダンスを踊るような曲ではありません。では、なぜ彼らは、これをデビュー・シングルに選んだのでしょうか?そこが第一の疑問点です。

 

 

2 「Love Me Do」に強い自信があった

(1)デビュー・シングルは自分たちのオリジナルで

27 April 1964: US single release: Love Me Do | The Beatles Bible

ビートルズは、当時はまだ数が少なかった自分たちで作曲できるバンドでした。となれば、デビュー・シングルは、自分たちのオリジナルで飾りたいと思うのが自然です。彼らは、下積み時代にたくさんのカヴァー曲をレパートリーに加えていましたが、デビュー・シングルとなれば、やはり自分たちの作った曲でと思うのは当然だったでしょう。

ただ、その時点で手持ちの曲の中に自信を持って出せるロックンロール・ナンバーがなかったという事情はあったのかもしれません。逆にいえば「オレたちは、ロックンロールだけじゃなくこんな曲も作れるんだぜ」という自負もあった可能性があります。

ビートルズが、プロデューサーのジョージ・マーティンから提供された「How do you do it?」を拒否したのは有名な話です。彼らは、この曲自体も気に入りませんでしたし、やはり、デビューは自分たちのオリジナルで飾りたいという意識が強かったのでしょう。それに「Love Me Do」に強い自信を持っていましたから。

(2)元々はポールが制作した

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この曲は、元々ボールが1958年に作曲しました。その当時、キーはAで、彼らが大好きだったバディ・ホリーに似たリズムで演奏していました。ジョンとポールは、ホリーの「Maybe Baby」に似たテンポで曲を展開したと推測されます。曲の構成もAメロを2回繰り返し、Bメロを1回挟んでAメロに戻るという点で同じです。ジャンルで分類するとロカビリーですね。

聴いた限りでは「Love Me Do」より「Maybe Baby」の方がテンポが早いような感じを受けますが、実際には、「Maybe Baby」がBPM137なのに対し、「Love Me Do」が148なので「Love Me Do」の方が若干早いです。BPMとは「Beats Per Minute」の略で、1分間に何拍ビートを刻むかを表したもので、分かりやすく言えばテンポのことです。余談ですが「Maybe Baby」は、1957年にアメリカでリリースされチャート17位を獲得しました。偶然ですが、ビートルズが「Love Me Do」でイギリスで獲得した順位と同じです。

 

 

3 新曲が必要なため手直しした

(1)よりブルージーに改変

1962年9月4日「Love Me Do」をレコーディングするビートルズ

1962年5月9日、ドイツのハンブルグへ巡業していたビートルズにブライアンから電報が届き「EMIとレコーディング契約を結ぶことが決まったから、新曲をリハーサルするように」と指示され、ジョンとポールは、これは新曲の制作に取り組めということだと考えました。カヴァー曲ではダメだということですね。そこで彼らは「Love Me Do」をその時点でのベスト・ソングと位置づけ、6月6日のレコーディングに向けてこの曲をアレンジし直すことにしました。

この曲は、初めて作曲した当時から4年が経過してやや流行後れになっていた感じもあったので、最新の音楽的な流行を取り入れることにしました。キーをGに下げ、テンポを遅くして、よりブルージーな感じに仕上げたのです。

(2)ロックンロールの時代は終わりを迎えていた

1950年代の終わりから60年代初頭は、ロックンロールにとってあまりにも不幸な出来事が立て続けに続いたのです。エルヴィス・プレスリーアメリカ軍に徴兵され、リトル・リチャードが突如引退しました。

バディ・ホリーは飛行機事故で、エディ・コクランが交通事故で亡くなりました。チャック・ベリーは、少女を連れまわした罪で刑務所で服役しました。まるで「ロックンロールの時代は終わった」と宣言されたかのように、スーパースターたちが次々とステージから退場していったのです。それとともにロックンロールのブームが下火になり、よりスローテンポでブルージーな曲が流行していました。

(3)ブルースを作るつもりだった

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初期のヴァージョンは、レコードよりももう少しテンポが早かったようです。いつ録音されたのか分からないのですが、歓声が入っているので明らかにライヴ会場で録音されたと思われる音源が残されています。アコースティック・ギターがハッキリ聴こえ、どちらかというとカントリーっぽいですね。

ポールは、この曲では「ブルースをやろうとしていた」と語っていますが、「いつもそうしてるから、(本当のブルースより)もっと白っぽくなった」とも語っています。ブルースは、もちろんブラック・ミュージックですが、ビートルズはイギリス人なので、どうしてもサウンドがヨーロッパ人寄りになるんですね。

アーサー・アレクサンダーのブルース・サウンドが取り入れられ、ジェイムズ・レイなどのアーティストのハーモニカや、ブルース・チャンネルの当時のヒット曲「Hey! Baby」も取り入れられました。1963年、ジョンは、メロディー・メイカー誌に「Love Me Do」の改作について次のように説明しています。「ちょうど『Hey! Baby』が出た直後だったんだ。僕らは、イギリスのグループで初めてハーモニカを使ったレコードを作りたいと思っていたんだ。」ジョンもポールもブルースっぽい曲を制作して、チャート1位を狙うつもりだったのは間違いありません。

 

 

4 謎が一つ解決した

自分で問題提起しておいて解決するのもなんですが、謎の一つが解決したと思います。ビートルズが「Love Me Do」をデビュー・シングルに選んだのは、ロックンロールがもう終わりを迎えていて、むしろ世の中ではブルースが流行していた時代に合わせて曲をアレンジしたからということですね。その当時の事情を分析した結果、私なりにたどり着いた結論です。

それで改めて1960年当時のUKチャートで1位をとった曲のリストを調べてみたんですが知らない曲ばかりです。それはある意味当然で、ポップスは、「流行」という宿命がありますから、旬が過ぎれば忘れ去られてしまいます。時代や世代を超えていつまでも愛される曲は、そうそう誕生するものではありません。

例えば、オーストラリアの歌手フランク・アイフィールドは、1942年に公開された「I Remember You」をカントリー・ミュージック風にアレンジして1962年5月にリリースしました。このレコードは、UKシングル チャート1位を獲得し、7週間にわたってその地位を維持しました。聴けば分かる通り、ゆったりとしたテンポの曲です。

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実は、ビートルズは、早速この曲をカヴァーしていて、1962年12 月にハンブルグのスター・クラブで演奏しました。それを観客がテープに録音した音源が、1977年にハンブルグのスター・クラブでの演奏を録音した海賊版「Live!」として公開されました。つまり、「Love Me Do」は、当時最新の流行を取り入れた曲だったのです。

でも、まだこの曲にまつわるすべての謎が解決されたわけではありません。次回も他の謎について検討してみたいと思います。

(参照文献)ビートルズ・ミュージック・ヒストリー

(続く)

 

 

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