★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

映画「Get Back」〜メンバー全員が作品を完成させようとしていた(351)

Paul McCartney: the film Get Back changed how I see the Beatles' break-up |  Culture | The Sunday Times

※この記事は、映画「Get Back」の「ネタバレ」を含んでいるので注意してご覧ください。

1 ジョンはライヴをやるつもりだった

(1)ジョンはライヴを嫌っていたのでは?

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ジョン「部屋でリハーサルした方がいいんじゃないか?いっそ客を入れる?」

ポール「今から人の視線に慣れてた方がいい」

第一部で、ポールがセッションに加わってからのやりとりです。何気ない会話ですが、この時点で、もうすでに今まで語られてきたことと違う事実が浮かび上がってきます。今までは、メンバーの中でも特にジョンがライヴを嫌がっており、ルーフトップもポールに引きずられる形で渋々やったというのが定説でした。

(2)ライヴの開催に積極的だったジョン

しかし、映画の冒頭でビートルズが「Hey Jude」のPVを有観客で実施して成功したことに気を良くし、再びライヴをやろうとしていた事実が紹介されました。それに続くこの会話から分かることは、ビートルズは、ライヴを前提に考えていて、このトウィッケナム・スタジオでは、そのリハーサルをやろうとしていたということが分かります。つまり、ジョンは、ライヴを嫌がっていたどころか、むしろ、積極的にやろうとしていたのです。

会場をどこにするかでなかなか良いアイデアが浮かばず、最終的には「えいやっ!」っという感じで、ルーフトップにたどり着いたわけですね。この箇所だけで音楽史、少なくともビートルズに関する歴史の一部が塗り替えられてしまいました(^_^;)いや、本当に「百聞は一見にしかず」「論より証拠」ということわざ通りです。

2  PAシステムはトップテン・クラブで導入済だった?

(1)PAとは

f:id:abbeyroad0310:20211216130438j:imageもう一つ私が驚いたのは、ジョージの発言です。「PA が欲しい。ハンブルクのトップテンのような。ビンソン・エコーレック。」PAとは「Public Address」の略で、多くの人にサウンドを伝達するシステムのことです。ミキシング・コンソールを中心にしたものですね。

現代のライヴ会場では、欠かせないシステムになっています。これがないと大きな会場で観客全員に適切なサウンドを届けられません。ライヴ会場だと、客席最後尾の中央付近にシステムが設置されていることが多いですね。

(2)ハンブルク時代に導入済みだった

PAは、このシステムを担当する人を指す場合も多いのですが、ここではシステムそのものを指しています。1960年のハンブルクでの下積み時代に、ビートルズが演奏していたトップテン・クラブにすでにPAが導入されていたという事実に驚きました。

アンプとスピーカーといった必要最小限の機材しかなかったと思い込んでいました。私が知らなかっただけかもしれませんが💦これまでハンブルク時代の楽器などについては言及されても、PAについてまで言及されたことはなかったのではないでしょうか?もっとも、ジョージは、「ビンソン・エコーレック」と言っているので、単にエフェクターを指していたのかもしれません。

(3)ビンソン・エコーレックとは

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ビンソン・エコーレック

ビンソンは、イタリアで誕生したギターアンプ、ミキサー、PAスピーカーなどの音楽機材を製作するメーカーです。エコーレックはその製品の一つで、エフェクターの一種でディレイ効果を出します。ディレイというのは英語で遅れるという意味で、ギターの残響がこだまのように遅れて聴こえてくるんですね。数多くの一流アーティストに愛用されました。

ここでエンジニアのグリン・ジョンズが登場します。肩書きはエンジニアなんですが、このセッションでは、実質的にジョージ・マーティンに代わってプロデューサーを担当していました。

 

3 「I’ve Got A Feeling」が登場!

(1)盛んにディスカッションしていた

www.youtube.com

ジョン「ベースとギターが一つになったのがあればいい。」この発言の意味がちょっとよく分かりませんでした(^_^;)早く曲を完成させたいんだけど、ギターやベースの担当がそれぞれ別なので、なかなか合わせるのが難しい、いっそのことそれらが一つになっていれば、仕事がはかどるのにと思ったのでしょうか。

面倒なことが嫌いな彼らしい発言です。もちろん、そんな便利な楽器があるはずもないことは分かり切っていたのですが、時間がないため完成を急いでいたことが伝わってきます。

ジョンのこの発言に対してポールは「一人一楽器でなきゃ。」つまり、一人一人が担当する楽器をちゃんと演奏すべきだと当然のことを発言し、さらにジョージは「まずは曲を覚えるべきだろう。」と意見を述べました。流石に、ジョンも「確かに」と同意して、ポールの名曲「I’ve Got A Feeling」の制作に取り掛かります。

(2)全員が曲を完成させようとしていた

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ポールのヴォーカルに合わせてギターを弾くジョン

映像を観れば分かるとおり、ちゃんとみんなでディスカッションして、曲を完成させようとしているじゃないですか!作曲を巡って何の意見の対立もありませんでした。どこのバンドでもやっているレコーディング風景にしか見えません。彼らの仲が悪かったという雰囲気が、このシーンを見る限り全く見当たらないのです。

ポールがリードヴォーカルとベースの演奏を始めると、他の3人は、それを聴きながら一生懸命合わせようとしています。彼らの表情は真剣そのもので、ふざけた要素は全くありません。

この時点では、既にポールのパートの部分はほぼ完成に近い状態で、後は他の3人がどれだけ自分の担当のパートを完成させられるかにかかっているように見えました。気になったのは、ジョンのヴォーカル・パートがいつどこで出来上がったんだろうということですね。

サビのパートに入ると、ポールは、「次はE」「G」「D」と他のメンバーにコードを指示します。それに合わせてジョンとジョージは、そのコードでギターを自分なりのアレンジで演奏します。ここまで確認できた段階で一旦演奏を中断します。

ジョンは、ポールに「合うか確認しよう。」と話しかけ、ポールもうなずきました。初めて全員で音を合わせたので、アレンジが合っているかどうかを確認しようということですね。仲が悪い素振りなんてかけらもありません。  

4 和やかな雰囲気だった

(1)あえてタイトルを翻訳した?

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ジョージは「曲名は「I’ve Got A Feeling」?」とポールに尋ねます。この箇所の字幕は「感情がある?」と翻訳されていました。オリジナルのタイトルには邦題が付けられていないので、敢えて翻訳する必要はなかったはずです。しかし、原曲のタイトルのままだと、ビートルズの曲に詳しくない日本の観客が観た時には曲の持つ意味が伝わりづらいかもしれないので、あえて翻訳したのかもしれません。

(2)ジョンのジョークにポールは受けていた

ジョンは「I’ve Got A Hard On(勃起している)」とお得意のダジャレですかさずジョークを入れました。ポールも笑顔で「みんな、勃起している」と返し、さらに「俺と俺の猿以外」とジョークを被せました。言うまでもなくホワイトアルバムに収録されていたジョンの「Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey」にかけたんですね。これにはジョンも大笑いしました。メンバー全員がずっと機嫌が良かったのです。

 

5 ジョンのパートが登場

(1)映画では説明がなかった

f:id:abbeyroad0310:20211216130050j:imageここで突然ジョンのパートが始まり、彼がポールとリードヴォーカルを交代します。ちょうど「A Hard Day’s Night」のジョンのパートからポールのパートに変わった時の逆ヴァージョンですね。でも、あの時は、コード進行は別でしたが、こちらの方はそこは同じで、しかも途中から対位法で同時進行するというアクロバティックなことをやっています。

ところで、このパートは、どうやってできたんでしょうか?ジョンがあらかじめ作ってきたんでしょうか?即興にしてはあまりにもできすぎていますが、映画ではその部分の説明がないんです💦そこを知りたいんですけどね。

(2)どうやってこの曲が誕生したのか?

さらっとジョンは、リードヴォーカルを交代しましたが、このあうんの呼吸は、まさに神業としか言えないんですよ(^_^;)だって、コード進行こそ同じものの、メロディーも歌詞も全く違うんですから。それが何故こんな絶妙なタイミングで、まるで事前に十分打ち合わせしていたかのように、ポールとパートを自然に交代しました。この曲を知らない人が初めて聴いたら、ジョンが違う曲を演奏し出したのかなと思うかもしれません。

実は、この曲の誕生にはアナザー・ストーリーがあるんですが、ここでそれを書いているととても紙幅が足りませんし、この記事の目的は、あくまで映画「Get Back」のレヴューなので、それはまた別の機会に譲ります。

この映画の中では、そこが明らかにされていません。ひょっとしたら、編集でカットされていた記録映像の中にヒントが残されていたのかもしれません。そうなるとやっぱり全編を見てみたいですね。

 

(続く)

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