★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

名曲「Get Back」ついに完成!(371)

「Get Back」のカウントを始めるジョン

※この記事は、映画「Get Back」の「ネタバレ」を含んでいるので注意してご覧ください。

1 「Get Back」ついに完成

(1)レコーディングを中断

ビートルズは、いよいよ「Get Back」の仕上げにかかりました。イントロからレコーディングを開始します。快調な滑り出しでした。それに気を良くしたのか、プロデューサー兼エンジニアのグリン・ジョンズがコントロール・ルームのマイクで「いいぞ」と声をかけました。

それを聞いたビートルズは、何かレコーディングに不具合があったのかと思い演奏を止めてしまいました。ポール「何?何か言った?」ジョンズ「続けてと。」それを聞いたビートルズは、せっかくいい感じで演奏をスタートしたのに腰を折られて、一斉にジョンズにクレームをつけました。

(2)レコーディングを再開

ジョンズにクレームをつけるジョンとポール

ポール「演奏の邪魔をするな。」ジョン「僕らは大スターだぞ!」ジョンズの本来の仕事は、レコーディング・エンジニアですからね。レコーディング中に余計な音を絶対出してはいけないという当たり前のルールをよく分かっていなかったのかもしれません。

出鼻をくじかれてしまったビートルズはやる気をなくして、しばらくふざけてアイドル時代の曲をまたダラダラと演奏し始めました。ジョンが「座ってやろう。興奮しすぎるから。」と提案し、仕切り直してもう一度レコーディングを再開しました。

イントロでジョンは弦をピックで弾かず、右手でタッピングしてサウンドを出しています。レコードやCDで聴き慣れたあの音源に限りなく近づいてきました。とりあえず適当な言葉を当てはめていた歌詞も、ここへきてようやく完成したようです。

 

 

2 5か月振りのシングルに決定

(1)シングルにも力を入れていた

ビートルズは、レコーディングを終え、コントロール・ルームでテープをチェックしました。ここで「彼らは5か月シングルを出していない」と字幕が入ります。ビートルズがアルバムにアーティストの全精力をつぎ込んだ集大成としての意味合いを持たせて以降、アルバムをメインに制作するアーティストが次第に増えていきました。

しかし、ビートルズは、アルバムの制作に力を入れていた一方、一般のリスナーに忘れられないようにチャート1位を狙える曲をシングルとしてリリースしていたのです。となると、そろそろ新しいシングル曲が欲しくなった頃です。

(2)ジョージがシングル化を提案

シングルとしてリリースすることを提案するジョージ

テープを聴きながら、ジョンはちらっとポールを振り返って見ました。何も言いませんでしたが、(なかなかいいじゃないか)と言いたそうな表情です。ポールも(いけるだろ?)とアイコンタクトを交わしました。

ジョージは、このテープを聴いて「これシングルにしたら?シングルにして出そう。」と提案しました。キャッチーでノリの良い曲なので、これならチャート1位を獲れると直感したのでしょう。ジョンも「なら早く出そうぜ。」と応えました。結果的にこの曲は、シングルとしてリリースされ、英米でチャート1位を獲得し、ジョージの直感が正しかったことが証明されました。ポールとは色々あったジョージですが、いい曲は素直に認めるところが彼の人格の素晴らしさですね。

シングルとしてリリースでき、またライヴでも演奏できる曲が完成したビートルズは、それに満足して帰宅しました。これで23日の撮影は終わりです。

 

3 ポールの完璧主義

(1)まだ満足していなかった

撮影15日目、24日を迎えました。ビートルズがスタジオで雑談しています。今回のレコーディング中に撮影した写真を中心に本も出版するつもりだったようですね。

ジョージは、ポールに対して「Get Back」をシングルで出すのかと念を押しましたが、ポールは「どうかな。まだリハーサルの最中だから。」と応えるにとどめました。かなり仕上がってると思えるのですが、彼は、まだ満足していなかったようです。こういうところにも彼の完璧主義的な性格が出ていますね。実際にリリースされたヴァージョンも、前日にレコーディングされたテープのものではありませんでした。

(2)ポールの完璧主義

ポールは曲の仕上がりにまだ満足していなかった

ポール「ちゃんと仕上がったのはこの曲だけで。」ジョン「「Don’t .Let Me~」「Pony~」もできてる。」ポール「Don’t .Let Me~は満足していない。」ジョン「あれは全員が良い。焦るなって。」

「Don’t Let Me~」は、ジョンの曲ですから、仕上がったかどうかは彼が判断すべきですが、結局ボールが満足しておらず、ジョンがたしなめています。いやはや、これは性格なのでどうしようもないですね。

 

 

4 プレストンをメンバーに加えるか?

(1)アップルに移籍した

アップルに移籍したプレストン

この時、ビリー・プレストンは、テレビのリハーサルが入っていたので、レコーディングに遅れるとのことでした。ジョンは、キャピトルから移籍させてジョージがプロデュースすると話しています。実際、プレストンは、当時所属していたキャピトル・レコードからアップル・レコードに移籍しました。

ポール「ハンブルク後どうしてたか聞いた。ぼくらの大躍進を横目に、バンドを組んだりしたが好きにやれてない。」

ジョージ「ビリーは今回の参加をすごく楽しんでるし、大チャンスだと思っているはずだ。」

ポール「僕らと一緒に名前が出る「ビリー・プレストン」」ここで「次の彼のアルバム2枚はアップルから出る」と字幕が入ります。

(2)プレストンをメンバーに加えるか?

ここで彼に支払うギャラの話が出ました。どうやらここまでは友情出演の扱いでノーギャラだったみたいですね。この辺りからしてもプレストンを招待したのではなく、偶然彼がスタジオを訪れたという方が真実に近いでしょう。

招待してレコーディングに参加してもらうのであれば、当然ギャラの話もしていたはずです。ジョージの親友のクラプトンと違って、プレストンは友人ではあったものの、ハンブルク以来10年位会っていませんでしたから。

ここでジョンから驚きの発言が飛び出しました。「ハプニングだよな。彼をバンドに加えよう。5人目のビートル。トゥイッケナムで3人、今は4人から5人。」

ジョージもジョンの提案に乗りました。「ボブ・ディランも誘おう。彼もバンドに入るぞ。みんなを入れるんだ。」

いや、プレストンはともかく、流石にディランは無理でしょう。彼は、ずっとソロでやってきましたから。ポールは、冷めた口調で「入らないだろう。」とぽつりと語りました。

(3)メンバーに加える選択肢もあったのでは?

なおもジョンとジョージが他のメンバーを参加させるというアイディアに乗り気になっていましたが、ボールは「よせ。4人だけでも大変なんだから。」と冷や水を浴びせました。その一言にジョンもジョージも(確かにその通りだよな)とでも言うように苦笑いしながらうつむきました。これでこの話は終わりました。

ただ、これも結果論ですから何とも言えませんが、プレストンが参加していればギスギスしたメンバーの良い緩衝材になったんじゃないかと思います。キーボードの腕は一流でしたし、メンバーからの注文にも文句は言わなかったでしょう。正式なメンバーではなくても、サポートメンバーとして、しばらくレコーディングやライヴに付き合ってもらっても良かったのではないでしょうか?

   

5 「Two Of Us」のアレンジを変えた

アコースティック・ギターに交換したジョンとポール

コントロール・ルームのジョンズからポールに「別のベースを使ったら?」と提案がありました。 そこで、ポールはそれまで使っていたヘフナーをリッケンバッカーに取り替えました。ベースの音が弱かったようですが、リッケンバッカーも調子が悪いのか、交換してもさほど変わりませんでした。

ビートルズは、再び「Two Of Us」のレコーディングを開始しました。ジョンが「今までのは少し固苦しかったから、スティーヴィー・ワンダーみたいにルーズにやってみたらどうか」と提案しました。それを受けてボールはマルにアコースティック・ギターを持って来させ、ベースと交換し「この曲ではベースは弾かない。」と話しました。ジョンもアコースティックに交換し、ベースが無くなりましたが、とりあえずこれでやってみて様子を見てみようということになりました。

ジョンが提案した「ルーズな感じ」で演奏してみると、リリースされた音源に近いアレンジになってきました。ジョージも「いい感じだ。あんな苦しんだ曲とは思えない。」と話しました。ようやく手応えを掴んだ感じですね。しかし、この曲は、ライヴには間に合わず、アルバム「Let It Be」に収録されました。

6 スティール・ギターを導入した

(1)ジョンが持ち込んだ

ジョンがマルに「ハワイアンのやつは?」と尋ねました。それに応えてマルがケースから取り出したのはスティール・ギターです。膝の上にのせ左手で弦を抑える代わりに、金属製のバーをスライドさせて演奏します。これで独特のハワイアンっぽいサウンドが出るんですね。

なぜ、ジョンがレコーディングでこれを使おうとしたのかは分かりません。ジョージがこれを使ってポールの「Her Majesty」を演奏しました。彼は、ソロになってからスティール・ギターの腕を高く評価されることになりました。

(2)プレストンに改めて参加を要請した

そこへ、テレビのリハーサルを終えたプレストンが合流しました。ポールは、彼に「毎日来られるか?聞いてない?」と尋ねました。すると、プレストンは「喜んで。今は空いてるし。」と応えました。ポール「「その前にギャラは?」と言われるかと思ってた。」と笑顔で話しました。

プロとしてレコーディングに参加するんですから、当然ギャラは発生しますよね。しかし、プレストンにしてみれば、ビートルズと一緒にレコーディングに参加できるだけで嬉しかったようです。彼のスケジュールが空いていて、レコーディングだけでなくルーフトップ・コンサートにも参加できたことは、ビートルズにとってとても幸運でした。 

 (続く)

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