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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

映画「Get Back」~ポールがジョンの曲の歌詞に手を加えた(356)

※この記事は、映画「Get Back」の「ネタバレ」を含んでいるので注意してご覧ください。

1 ビリー・プレストンの名が挙がる

(1)ジョージが絶賛した

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撮影当時のビリー・プレストン

しばらく、ジョージのギター哲学が続きます。「エリックはうまい。即興でずっと弾ける。僕は苦手だ。ずっと弾けるヤツはいるが演奏はクソだ。彼はパターンから違うところに行き、最終的に解決させるんだ。」クラプトンと違ってただ延々とギターソロを続けるギタリストは、同じパターンを繰り返して上手いように聴かせているだけだと批判したんですね。

レイ・チャールズのバンドはジャズだけど感動した。最高だ。特にビリー・プレストンね。」ここで初めて、ジョージがビリー・プレストンの名を口にしました。映画では「ハンブルク時代ビリーとビートルズは親交があった」と字幕で解説が入ります。

彼は、リトル・リチャードのツアーバンドの一員として、ハンブルクでプレイしていたときにビートルズに初めて出会いました。その後、リヴァプールでリチャードのツアーがあった時に再会しています。

(2)二日目が終了

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眠そうなポール

「きっと気に入るよ。バンドではピアノを弾き、自分のコーナーで歌い踊り、オルガンを弾くんだ。レイよりうまい。オルガンが最高なんだ。もうレイはオルガンを彼に任せてる。すごいよ。」ジョージのプレストンに対する賞賛が止まりません。やがて、彼の招きによりプレストンがセッションに参加することになります。

その後、ポールが「I’m So Tired」を演奏しましたが、これは偶然ではなく本当に疲れていたからでしょう。ポールはあくびをし、リンゴも目をこすって眠そうです。ジョンに至っては、キーボードにうつ伏せになってうたた寝してしまっていました。ポールが笑顔で「ジョン!」と呼びかけると、ハッと目を覚まして起き上がりました。これで1月3日の撮影は終了です。

 

2 8トラックの機材が運び込まれた

(1)自前の機材を用意した

土日は撮影が休みで、撮影3日目の1月6日、月曜日を迎えました。ポールが最初にスタジオ入りしていて、機材はいつ来るんだとスタッフに尋ねています。室内なのにコートを着て本当に寒そうですね。レコーディング機材を搬入する前に暖房器具が必要だったんじゃないかと思います。

少し遅れてジョンとヨーコがスタジオ入りしました。リンゼイ=ホッグが「特番のことを考えよう」とジョンに話しかけると、彼は「考えてる。四六時中。」と応えました。刻一刻と迫るライヴの期限に、関係者全員が焦りの色を隠せない様子がうかがえます。

(2)ポールもライヴはムリだと考えていた

メンバー全員がそろったところで、再びリンゼイ=ホッグが「大観衆の前でやらない?」と持ちかけました。彼としては、3年振りに大観衆の前でライヴ・パフォーマンスを繰り広げているビートルズを撮影して撮れ高を得たいんですよね。しかし、ジョージは、そっけなく「ショーは中止すべきだ。」と応えました。そして、あろうことかポールも「ああ、やめよう、賛成だ。」と応じたのです。彼の姿はフレームの外でしたが、声からして間違いありません。

「あれ?ポールは、一番ライヴをやりたがっていたんじゃないの?」とちょっと驚きました。ライヴが大好きなポールでしたが、新曲が完成しない中途半端な状況では、とても観衆の前で演奏などできないと考えたのでしょう。

(3)ようやく機材が到着

彼らが雑談している間にアップルのロゴをプリントした車が到着し、スタッフが機材をスタジオに運び込みました。ジョージが自分の8トラックのレコーディング機材を持ってこさせたのです。

彼が希望していた8トラックの機材は、「マジック」アレックスが製作するはずでしたが、何の知識も技術もない人物にできるはずもありません。誰かが「彼に頼むべきじゃなかった。既存の機材で作れたんだ。」と言いましたが、もっと早く気づくべきでしたね。当時のアップルは乱脈経営で、こういうでたらめな人物が大勢かかわっていたのです。

 

3 「Don’t Let Me Down」が次第に完成していく

(1)メンバーから様々なアイデアが提供された

それから、ビートルズは、思いついた曲を当てもないままジャム・セッションして時間を過ごしました。その後、ポールが「コーラスを入れよう。歌詞は『人生で初めての愛』『永遠に続く愛』ここに入れるんだ。」と提案しました。これは、言わずと知れたジョンの名曲「Don’t Let Me Down」の歌詞です。ポールの提案にジョージも賛成し、コーラスを入れてみました。そこから、メンバーが様々なアイデアを提供しました。

ジョージ「少しフィルを入れてみたらどうかな。歌と歌の間にさ。リズムか何かをかえてもいいと思う。」と提案しました。ジョンは「それならピアノだな。」と応じました。

(2)ピアノは誰が弾く?

ピアノを入れるのはいいとして、誰が弾くのかが問題になりました。レコーディングではなくライヴが前提ですから、後で追加するというわけにはいきません。

ジョン「ピアノを専門で弾く人間を呼ぶのはどうだ?」ポール「N・ホプキンスとか?」話の流れからビリー・プレストンに依頼することになるんだろうと思いきや、見事に肩透かしを食らわされました。

最終的には、彼のエレクトリック・ピアノが入ったんですが、正にこのサウンドだという感じで、これ以上ないというぐらいピタリとハマってましたね。彼の演奏が素晴らしかったのはもちろんですが、ここでピアノを入れたことと彼をサポートメンバーに選んだことが、やはりビートルズはスゴいバンドだと思わせます。

(3)ザ・ムーヴとは

ジョン「マイク3本でやることを考えてた。BBCの音楽番組でザ・ムーヴを見たんだ。3人で歌い、ハモっているんだが、別々のボーカルって感じでさ。」

彼が話題にしたザ・ムーヴは、イギリスのロックバンドで1965年から活動し、イギリスではシングルがチャート上位を獲得してかなり人気がありました。ジョンが観たシーンかどうかは分かりませんが、彼らがBBCでパフォーマンスしている動画は残されています。ジョンの言う通り、マイク3本で3人がハモっています。

 

4 ポールが指示し始めた

(1)ギターもドラムも

ここからポールが他のメンバーに対して、アレンジについてあれこれ指示し始めました。コーラス、ギター、ドラムのそれぞれについて、そこはこうして、ああしてと細かく注文を付け出したのです。

彼には全く悪気はないし、ジョンの曲を良くしようと一生懸命になっているのも分かるんですけどね。ジョンは黙っていましたが、内心は「おいおい、オレの曲だぜ。」と思っていたかもしれません。ポールは、一旦スイッチが入るとこうなっちゃうんですよね。

(2)コーラスには違和感が

3人がこの部分をコーラスにしてみました。長年リリースされたヴァージョンを聴き慣れているせいか、どうしても違和感があります。結局、ルーフトップでは、ポールが抑え気味にコーラスを入れるだけに留めました。

ポールがジョージに「僕らがハモるから、君はコードをアヴェ・マリアみたいに…」弾いてくれと指示しました。これは、アルペジオで弾いてくれという意味でしょうね。

ジョージがポールの指示に従って弾いてみると、聴き慣れたあのフレーズが出てきました。この辺りは、流石に長年一緒に曲を作ってきたメンバー同士のあうんの呼吸を感じさせました。確かに、コーラスよりこちらの方がしっくり来る感じがします。

 

5 ポールがジョンの曲の歌詞に手を加えた

(1)ジョンの曲なのに

ビートルズは、しばらくセッションを続けましたが、満足のいく仕上がりにはなりませんでした。すると、ポールが「よし。次は2か所ばかり変えてみよう。」と歌詞に手を加えました。一瞬、え?と思いましたよ。だって、ジョンの曲ですからね💦

アレンジを試してみるならまだしも、歌詞にまで手を入れるとなるとコンポーザーの領域を侵すことになります。私は、コンポーザーではないので気持ちは分かりませんが、あまりいい気はしないでしょうね。

ジョージの「All Things Must Pass」の歌詞の一部をジョンがアドバイスして変更した時も、ジョンは提案はしましたが、指示はしていませんでした。そこの違いはありますよね。しかし、ジョンは「いいね」と意外なほどあっさり受け入れ、結局、ポールの提案した通りの歌詞になりました。この辺りは、一悶着あるのかとハラハラしましたが杞憂でした。

(2)時間がない

ビートルズは、様々なアレンジを試みましたが、なかなか意見がまとまりませんでした。ポールとジョージの意見が割れて、ちょっと緊張状態になりました。この辺りは「バンドあるある」で珍しいことではないでしょう。ただ、アイドル時代と違って曲も複雑になっていますし、彼らの音楽に関する知識が豊富になり、テクニックも向上しているので、色んなアイデアが湧き、メンバーそれぞれにこだわりがあってまとまらなくなっていたのです。

そうこうしているうちに、彼らは、ライヴまであと12日しかないのに、新曲が仕上がっていないことに改めて気づき焦りました。「Don’t Let Me Down」はいったん棚上げし、これまた制作途中の「Two Of Us」に取り掛かりました。しかし、ここでもまとまりません。このセッションで、3人が互いに妥協できない抜き差しならぬ立場になっていたという事実が浮き彫りになりました

ここからポールのホンネトークが始まるのですが、長くなるのでこの続きは次回で。

(続く)

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