★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ガールズグループから多くを学んだビートルズ(416)

「Chains」のオリジナルをリリースしたクッキーズ

1 ヴォーカルに比重を置いた

(1)ヴォーカルの多様性

ビートルズに多大な影響を与えたガールズグループのお話を続けます。彼女たちの音楽が他のポピュラー音楽と最も容易に区別されるのは、ヴォーカルに比重が置かれていることです。彼女たちの音楽は、ヴォーカルをベースとして、多くの場合、ゴスペルのパワーとソウルの感情を持ったアフリカ系アメリカ人女性の声でした。

ギリシャ神話のような良心の天使と悪の天使など、内外のさまざまな役割を演じるパワフルなバックシンガーたちの存在が、曲に多様性を与え、複数の観点から同時にあらゆる状況をリスナーに想像させていました。ビートルズの3人の力強いヴォーカルとガールズグループの音楽への明確な愛着を持っていたことを考え合わせると、初期のビートルズの印象的なヒット曲の多くが強いハーモニーを特徴とし、しばしばコール・レスポンスを交えたり、視点が交互に入れ替わったりしていることに気づきます。

(2)ビートルズはコーラスをお手本にした?

youtu.be

ビートルズが、コーラスグループと呼んでも差し支えないほど素晴らしいコーラステクニックを持っていたことはよく知られています。彼らは正式な音楽教育を受けておらず、当然コーラスの理論も知りませんでした。私の憶測ですが、おそらく彼らは、ガールズグループのコーラスを耳コピして、それを再現しながら自分たちなりのコツをつかんだのではないでしょうか?そういう意味では、彼女たちは、ビートルズのコーラスワークのスキルをアップさせる、とってとてもよいお手本だったと思います。

ヴォーカルだけでなくガールズグループが採用したアレンジは、ビートルズの作品に数多く見られます。エコーがかかったハンドクラップ、タンバリン、メインメロディーを引き立てるカウンターメロディー、リアルな効果音などは、すべてガールズグループが始めたものです。これらは、後にビートルズのプロデューサーも務めたフィル・スペクターが、ガールズグループのために開発したテクニックで、後にビートルズビーチ・ボーイズが好んで使用しました。

 

 

2 ガールズグループは貴重なお手本だった

(1)ティーンエイジャーに受けていた

マーヴェレッツ

アメリカのティーンエイジャーは、既にガールズグループの音楽を聴き慣れていたため、「She Loves You」「I Want To Hold Your Hand」といったビートルズの曲は、何の違和感もなく彼らの間に受け入れられました。それまでアメリカの音楽一辺倒だったポピュラー音楽界で、イギリスの音楽が受け入れられることなど考えられなかったのです。

ある意味、ガールズグループの音楽が、イギリスの音楽をアメリカに受け入れさせるための橋渡しをしたともいえます。ビートルズがそこまで計算してこれらの楽曲を制作したわけではないでしょうが、「ティーンエイジャーに受けるものは誰にでも受ける」という確信はあったのでしょう。彼らに受けるあらゆる要素を取り込んで、それを自分たちなりに集大成したのがビートルズの初期の楽曲だったのかもしれません。

(2)好んでガールズグループの楽曲をカヴァーした

www.youtube.com

さらに、ビートルズのカヴァーにも、ガールズグループの影響が色濃く反映されています。クッキーズの「Chains」、シュレルズの「Boys」「Baby It's You」、ドネイズの「Devil In His/Her Heart」、マーヴェレッツの「Please Mr.Postman」などです。また、ビートルズもガールズグループがほとんどカヴァーしている「Twist And Shout」や「Shout」などをカヴァーしています。ガールズグループのファンからすれば、ビートルズは、ガールズグループのスタイルでオリジナルを制作して演奏し、そのスタイルのヒット曲をカヴァーし、またガールズグループがカヴァーした曲をカヴァーするという、三拍子そろった存在だったのです。

 

 

3 女の子たちの気持ちを代弁していた

(1)ステレオタイプな女の子ではなかった

クリスタルズ

ガールズグループの一つであるクリスタルズなどを、実体のないティーン・エイジャー向けのロマンティックで商業的なグループとみなすのは簡単ですが、それは物事の本質を正しくとらえているとは言えません。たとえば、ティーン・エイジャーの女の子が恋愛の対象とするのは、イケメンでかっこよくてお金持ちだという、ありきたりのイメージに対して反発する動きは、ビートルズが登場する以前からすでにはっきりと進行していました。クリスタルズの「He's A Rebel」は、ヤンキーを愛する女の子の歌ですし、「He's Sure the Boy I Love」は、お金持ちではない普通の男の子に憧れる女の子の歌です。

そして、このありえないアンチヒーローを作品として描き出すことにおいて、ジョンやプロデューサーのフィル・スペクターほどふさわしい人物はいませんでした。当時の少女たちは、彼女たちなりのやり方で、ステレオタイプな振る舞いを押し付けようとする大人たちに反発していたのです。ガールズグループの音楽は、そんな彼女たちの共感を呼ぶのにふさわしいものでした。

(2)ガールズグループは時代の先端を走っていた

ガールズグループの音楽には、早くから社会問題に対する意識がありました。クリスタルズの「Uptown」や前述の「He's Sure The Boy I Love」では、貧しいけれど愛されるはみ出し者的な男の子の像を女の子に提示しました。そして、この音楽は、シンガーソングライター、プロデューサー、プレイヤーなど音楽関係者、そして、アメリカの白人アーティストと黒人アーティストの間に緊密な協力関係をもたらしたのです。

例えば、スペクターの作品は、当時はまだまだ高かった人種の壁を超えました。レニー・ブルースビリー・プレストンソニー&シェール、アイク・ターナードクター・ジョンレオン・ラッセルなど、多くのアーティストが音楽を通して交流しました。

 

 

4 ガールズグループの強い影響

(1)数多くカヴァーした

1966年のロネッツなどビートルズは、ガールズグループと頻繁にツアーを行っていました。ビートルズのメンバーで、ガールズグループの影響を最も強く受けているのはジョンとジョージでした。それを示す具体例として、ビートルズがガールズグループの曲をカヴァーする場合、リードヴォーカルはほとんどジョンで、ポールはあまり担当していなかったことが挙げられます。

スペクターとアーサー・アレクサンダーに加えて、キャロル・キングの曲が2曲入っていることは注目に値します。どちらもテーマは、恋愛における大きな悩みである嫉妬や、外見を基準に恋愛対象を決めることに対する反発です。ここにジョンがガールズグループから影響を受けた足跡が認められます。最初の2枚のアルバムにはガールズグループのカヴァーが5曲もありますが、これらは、チャック・ベリーや他にビートルズが影響を受けたアーティストの作品よりも多いのです。

(2)ポールの貢献

www.youtube.com

ガールズグループに影響を受けた作品でのポールの作曲的な貢献はジョンに比べれば小さいのですが、彼のバッキングヴォーカルとベースは重要な役割を担っています。ポールは、ジョージ・マーティンの洗練された指導を受けながら、ガールズグループのハーモニーの要素を見つけ出し、それを超える完璧なヴォーカルを提供していました。ジョンがリードヴォーカルを担当している間、何か面白いことをして注目を集めようとするポールは、副次的な役割ではあるものの最高の仕事をしました。対照的にジョンは、ポールの曲にはあまり貢献していません。

これらのバッキングヴォーカルは、ヴォーカルに変化を与え、曲を美しく彩っただけでなく、作品の完成度を高めました。「Devil In Her Heart」「Baby It's You」「You Can't Do That」「You're Going To Lose That Girl」などの曲では、バッキングコーラスが歌詞の主人公であったり、恋愛対象であったり、ライヴァル以外のティーンエイジャーなど様々な役割を担い、ソロヴォーカルだけでは浮かび上がらない広い世界をリスナーに見せています。

(3)スペクターはガールズグループの第一人者

ロネッツフィル・スペクター

スペクターは、クリスタルズやロネッツのプロデューサーとして、また「To Know Him Is To Love Him」のソングライターとして活躍するなど、ガールズグループの第一人者でした。ジョンの父親との関係性などは、彼と類似したところがありました。フィルも異なる人種の女性と結婚し、ジョンとヨーコが経験したような非難にさらされました。

また、ジョンとジョージは、ビートルズに積極的にガールズグループのサウンドを取り入れ、ソロアルバムでは、スペクターをプロデューサーとして起用しています。彼の基本原則は、自分の感情に素直であること、誰にもカヴァーできないサウンドを作ることでした。重厚なサウンドを作る「ウォール・オヴ・サウンド」というテクニックは彼が建てた金字塔です。彼のサウンド作りは、ソロになったジョンとジョージの作品に採用されました。

(参照文献)サウンドスケイプス

(続く)

 

 

(追記)

YouTube配信ドラマに出演しています。4月5日まで無料配信しています。スリリングなドラマですので是非ご覧ください。こちらから視聴チケットを入手できます。

https://gekidan-focus.stores.jp/items/63e490f37c42ee3738e405ad

「カートに入れる」→「ゲスト購入する」で必要事項を記入していただくと、配信用URLがメールで届きます。

この記事を気に入っていただけたら、下のボタンのクリックをお願いします。

にほんブログ村 音楽ブログ ビートルズへ
にほんブログ村

下の「読者になる」ボタンをクリックしていただくと、新着記事をお届けできます。