★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

モータウンはビートルズの後期の楽曲にも影響を与えていた(481)

White Album」を制作中のビートルズ

1 ガールズグループのバッキング・ヴォーカルから影響を受けた

(1)カヴァーでもオリジナリティーを込めた

マーヴェレッツ

「You Really Got a Hold on Me」は、ロビンソンのオリジナルよりもややハードなサウンドになっていますが、ビートルズは、オリジナルのアレンジにほぼ忠実でした。イアン・マクドナルドが「Revolution in the Head」で書いているように、「レノンは情熱的なリードヴォーカルを提供し、スモーキー・ロビンソンの絶妙な繊細さの横に、ニュアンスに欠ける部分を力強く補っている。最終的なスコアが引き分けだったとしても、それはビートルズの解釈者としての多才さに対する素晴らしい賛辞だ」

ビートルズは、カヴァー曲であってもそのソウルは尊重しつつ、そこに自分たちのオリジナリティーを込めることに卓越していたのです。ジョンのソウルフルなリード・ヴォーカルと、ポールとジョージのバッキング・ハーモニーによる「All I've Got to Do」は、ガールズ・グループ、マーヴェレッツのような完璧な作品です。

(2)オリジナル曲にも影響がみえる

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アルバム「A Hard Day's Night」では、モータウンの影響が冒頭のドラムビートと「Tell Me Why」のコードに残っており、彼らは、より多くのサウンドを探求しています。「The Beatles as Musicians:The Quarry Men through Rubber Soul」の中で、音楽学者ウォルター・エヴェレットは、「Help!」のトラック「You're Going to Lose That Girl」がモータウンサウンド、特に「ポールとジョージによるモータウン・ベースのバッキング・ヴォーカル」に多くを負っていると指摘しています。

彼は、ジャクリーン・ワーウィックのバッキング・ヴォーカル・ガール・グループ論の分析を引用し、彼女がこの曲のためにモータウンの振り付けを空想していることを紹介しています。「ポールとジョージが楽器さえなければ、指を振っている姿を思い浮かべるのは簡単だ」彼らは、楽器を持っているので指は振れませんが、まるで振っているかのようにバッキング・ヴォーカルを入れていて、それは、モータウンのガールズグループのコーラスに影響を受けたものであるということです。ギターやベースを弾きながら、ガールズグループのような見事なバッキングコーラスを入れた彼らに改めて感心します。

 

 

2 ジョンの勘違い?

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また、1980年のインタヴューで、ジョンは、「When I Get Home」を「もう一つのウィルソン・ピケットモータウンサウンド…1小節にカウベルを4発入れた」と表現しています。ウィルソン・ピケットがトレードマークのR&Bサウンドを確立したのは1965年後半になってからというのは事実ですが、60年代初頭のモータウン/スタックスのリズムが、ジョンのこの曲へのインスピレーションを刺激しました。

でも、ちょっと待ってください。何かおかしいと思いませんか?

ジョンは、この曲にカウベルを入れたと語っていますが、全体を通してカウベルが鳴っている箇所は一つもありません。間違いなく彼は、この曲をこの年にレコーディングされた他の3曲、つまり「You Can't Do That」「A Hard Day's Night」「I Call Your Name」という似たようなサウンドの曲と混同していたのでしょう。よくある彼の勘違いです。確かに、この3曲は、カウベルが実にいいアクセントになっていますが、こんなところにもモータウンが影響してたんですね。

 

 

3 ベースもコーラスもモータウンっぽくしたかった

(1)ここにもそこにもモータウン

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主にフォークに影響を受けたアルバムとして知られている「Rubber Soul」にもモータウンの要素が含まれています。ポールは、かつて「You Won't See Me」を「とてもモータウンっぽいサウンドだ。ジェイムズ・ジェマーソン(モータウンを代表するベーシスト)のような感じだ」とキース・バッドマン著作の「The Beatles:Off the Record」で語っています。

確かに、「ラララ」というバッキング・ヴォーカルは、シュープリームスのレコードからそのまま出てきたように聴こえます。そして「Drive My Car」には、ロビンソンやゴーディが書いたかもしれないような巧みな歌詞が含まれています。

(2)ベースにも取り込んだ

ポールとエメリック

ビートルズは、また、ファンク・ブラザーズサウンド、特に重低音を模倣したかったのです。サウンドエンジニアのジェフ・エメリックは、「Paperback Writer」のセッション中、ポールから特別なリクエストを持ちかけられたと回想しています。

「ポールは、私に向き直った。彼は、こう話し始めた。『ジェフ、この曲は、僕らが話していたディープなモータウンのベース・サウンドが必要なんだ。だから、今回は全力を尽くしてくれ。いいだろう?』」(オレはいつだって全力を尽くしてきたよ)とエメリックは思ったかもしれませんが、それだけポールの思い入れが強かったということでしょう。

エメリックは、ポールとマスタリング・ルームでしばしば会って、「彼がアメリカから手に入れた新しい輸入盤のロー・エンド、たいていはモータウンのトラック」を聴いていたと語りました。そこで彼は、ラウドスピーカーをマイクとして使うというアイデアを思いついたのです。

「マイクをベース・アンプのグリルに当て、スピーカーとスピーカーを接続し、コンプレッサーとフィルターの複雑なセットアップに信号を通すことで、良いベース・サウンドを得ることができた」今ならコンピュータで簡単にできますが、当時はこういったアナログなやり方しかできなかったのです。しかし、エメリックは、見事にポールの要求に応えました。「Paperback Writer」自体は、一見するとモータウンとは関係ないように思えますが、ベース・サウンドモータウンにインスパイアされています。

 

 

4 後期の楽曲にもモータウンは影響していた

(1)「Revolver」にも

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アルバム「Revolver」に収録されている「Got to Get You into My Life」は、ビートルズがソウルに真っ向から飛び込んだことを象徴しています。1968年のジョナサン・コットとのインタヴューで、ジョンは、この曲を「僕らのタムラ・モータウン・ビット」と表現しています。「わかるだろ、オレたちは、どんなものにも影響されるんだ。たとえ影響を受けていなくても、ある時期にはみんなそうなるんだ」ポールの曲なのにジョンがインタヴューを受けているのが面白いですね。確かに ホーン・セクション、豪華な出来栄え、それらのすべてが最高のモータウンを反映していました。

(2)「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」にも

「Sgt. Pepper’s」は、ビートルズサイケデリックな時代にしっかりと根ざしているかもしれませんが、スティーヴン・スタークが「Meet the Beatles: A Cultural History of the Band That Shook Youth, Gender, and the World」で指摘しているように、このアルバムの全曲がゴーディーのソングライティングのひとつの要素を踏襲しています。これは意図的なものではないかもしれませんが、モータウンの歌詞を長年聴いてきた結果かもしれません。

 

5 「White Album」や「Get Back」セッション中にも

(1)「White Album」にも

モータウンのソングライターやプロデューサーたちは、ビートルズの1967年のサイケデリックサウンドを聴いており、シュープリームスの「Reflections」やテンプテーションズの「Cloud Nine」のような曲はすぐにそれに続いた。つまり、ビートルズモータウンに「逆輸入」されたのです。

White Album」で「While My Guitar Gently Weeps」のテイクをレコーディングしていたとき、ジョージがロビンソンのファルセット・ヴォーカルを真似しようとしましたが、その試みはうまくいきませんでした。「大丈夫だよ。スモーキーをやろうとしたけど、僕はスモーキーじゃなかったんだ」と彼は笑いました。1968年でもまだモータウンの影響が残っていたとは驚きです。しかし、モータウンは他の場所にも存在していました。「Happiness Is a Warm Gun」の不規則な変拍子でのポールのメロディックなベースは、ジャマーソンに大きな影響を受けた名残でしょう。

(2)「Get Back」のセッション中にも

「Get Back」のセッション中であっても、モータウンサウンドが彼らの頭にあったのは明らかです。ビートルズが演奏した多くの曲の断片の中には、ゲイの「Hitch Hike」、ミラクルズの「I've Been Good to You」「You’ve Really Got a Hold on Me」「The Tracks of My Tears」シュレルズの「Love Is a Swingin' Thing」、ストロングの「Money(That's What I Want)といったモータウンのヒット曲が含まれていました。

これでビートルズモータウンとの関係のお話しはひとまず終わります。

(参照文献)サムシング・ニュー

( 続く)

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