★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

名曲「Get Back」が完成に近づいていった(370)

「Get Back」を仕上げにかかるビートルズ

※この記事は、映画「Get Back」の「ネタバレ」を含んでいるので注意してご覧ください。

1 NEMSの買収計画

(1)「ビートルズ乗っ取り中止」とは?

映画の字幕には「ビートルズ乗っ取り中止」という新聞記事のタイトルが映ります。ほんの一瞬で、しかも本文の記事の文字が小さくて読みづらいのですが、どうやらこの記事は、ビートルズがNEMSエンタープライズという会社を買収する計画を断念したことを伝えていたようです。新聞の日付は、1969年1月22日になっています。

NEMSエンタープライズは、ビートルズのマネージャーで1967年に他界したブライアン・エプスタインが、彼が契約しているアーティストのマネジメントを管理するために設立した会社です。彼の死後、同社の株式は、彼の母親と兄弟が相続していました。ビートルズも10%の株式を所有していました。そして、この頃、ビートルズがこの会社を買収しようとした計画は確かにありました。

ただ、ビートルズが、ジョンの個人顧問となったアラン・クラインを交えて買収について話し合ったのは1月28日でした。ですから、時系列でいうと、この記事は、先走った報道をしていたことになります。ビートルズがNEMSエンタープライズを購入しようとした試みは失敗し、NEMSエンタープライズは、2月14日にトライアンフインベストメントトラストが買収しました。結果的にはビートルズが買収に失敗したので、記事のとおりとはなりましたが。

(2)このシーンをなぜ挿入したのか?

当時のカメラマンがこの新聞記事を撮影した意味は何だったのでしょうか?また、今回の映画でジャクソン監督が、このシーンをあえて挿入した意図は何だったのでしょうか?

別にカットしたからといって、作品全体に大きな影響を与えたようには思えません。もっとも、このシーンを挿入することで、ビートルズのビジネスがうまくいっていなかったことを間接的に匂わせる効果はあったと思います。監督は、それを表現したかったのかもしれません。

ただ、ビートルズについてあまり詳しくない人がこのシーンを観ても、何を意味しているのか分からないでしょうね。人によっては、字幕を読んでビートルズが誰かに乗っ取られようとしていたのかと誤解した人もいるかもしれません。もう少し丁寧な説明があった方が良かったのではないかと思います。

テイクを終えたビートルズとプレストンは、コントロール・ルームに入り、テープのサウンドをチェックしました。そこで、ジョンが「EMIにスピーカーを4つ頼むと、耳は2つだと言われた。」と話して皆の笑いを誘いました。実際には4台置かれているので、貸出してくれたようです。

(3)ハゲタカ~アラン・クラインが登場

アップルの重役に就任していたピーター・ブラウンが、コントロール・ルームでジョンと話しています。「クラインと話した。彼は金曜に来る。体が空くのは6時頃かな。」ここで字幕が入ります。「クラインはストーンズのマネージャーを務め、ビートルズを担当したいと願っていた。」

ビートルズ解散の一因とも言われ、「担当したアーティストを食い物にするハゲタカ」として悪名高いマネージャー、アラン・クラインが金の匂いを嗅ぎつけてついにやってきたのです。ビートルズ解散の予兆が図らずも映し出された瞬間です。これで22日の撮影は終わりました。

 

 

2  ホッグが最後の提案

ホッグは、ビートルズにライヴのアイデアを提案しました。「現在の案は、来週末にやるというものだ。今は皆がまとまり順調だ。この勢いでやろう。」昨日、ジョンがライヴに前向きな発言をしたことで勇気づけられ、プレストンの参加で現場の雰囲気が良くなったタイミングを見逃すべきではないと判断したのでしょう。

元々屋外ライヴの実施に消極的だったビートルズにやらせるためには、このタイミングを逃したら永遠にチャンスは訪れないと考えたのだと思います。そして実際にその通りだったでしょう。私も、この時にやってしまわなければ、ルーフトップ・コンサートは実現していなかったと思います。

 

 

3 「Get Back」を仕上げにかかる

(1)プロテストソングという設定を止めた

プロテストソングの設定を止めると宣言するポール

ビートルズは、「Oh! Darling」を演奏しました。メロディーとコードはできているものの、まだ歌詞が完成していませんでしたが、やはりこの段階で聴いても名曲ですね。ルーフトップに間に合わなかったのが残念です。

続いて、彼らは「Get Back」に取り組みました。それまでのダラけた雰囲気はもうありません。プレストンの参加で、ビートルズは生気を取り戻しました。ジョージが「ヴァースは何回?」とポールに聞きました。すると、ボールは「前はプロテストソングで始めたけど、今のはヴァース2つの方がいいと思うんだ。最初がロレッタ・マーティン。」

ポールが最初に作った時は、イギリスで世間を騒がせていた移民反対運動に対するプロテストソングという設定で歌詞を作っていました。しかし、結果的にはそうしなくて良かったと思います。この問題をヘタに扱うと、むしろビートルズが移民に反対しているように誤解されてしまいかねませんでしたから。

(2)曲のアレンジが決まっていく

彼らは話し合って、イントロ、ヴァース、コーラス、ギターソロ、コーラス…とアレンジの順番を決めていきました。ここでジョンが「ギターソロは1回にしよう。これしか弾けないから。」とポールに話しました。ということは、既にこの時点でこの曲のギターソロは、ジョージではなくジョンが担当することになっていたことになります。

ギターソロは、ジョージが担当するのがお約束でしたが、この曲でジョンが担当することになった経緯は、この映画を見る限りは分かりません。おそらく、ジョージがビートルズを一時的に脱退していたため、彼がギターソロを入れられなかったので、代わりにジョンが担当することになったと思われます。ジョージは、程なく復帰しましたが、すでにジョンがソロを練習していたので、そのまま彼が担当することになったのでしょう。

 

 

4 いよいよ完成形に近づいた

(1)ジョージが指示した

アレンジを身振り手振りで説明するジョージ

歌詞もでき上っていき、レコードとしてリリースされた曲に近づいて来ました。主人公はジョジョという名で、ツーソンに住む女装家、ハイヒールを履いて家を出た。戻れ、自分の元いた場所へ。

ジョージは、この曲はヒットすると直感したのでしょう。演奏しながらアレンジをあれこれ指示し始めました。「途中でブレイクを入れ、こう歌う。このビートで。Get back。」と身振り手振りを加えながらメンバーに指示を出します。自分がリードしてアレンジを指示しているので楽しそうですね。今までは、ポールに指示されてばかりでしたから。

「そこでリードだ。キャッチーなリフを。」そして、ジョージは「ソロの前の最後のヴァースだけど、皆がストップして君が歌い続けるのはどう?弾くのはリンゴと僕だけ。叩いて…。で歌って。」と続けました。

最後にポールがそれらをまとめて最終的なアレンジを決めました。プレストンは、彼の右斜め前に座っていましたが、ポールは、彼に対して「最後の音から入って。」と指示しました。「once belong」のところですね。ここにエレピが入ります。

プレストンに指示するポール

(2)ギターソロは2回に決まった

ギターソロは1回でいいと主張するジョン

ジョージ「ソロの後のブレイクだけど、分けるためだよね?」ポール「ブレイクで別のソロだ。」ジョージ「ソロは3回?」ポール「2回。今演奏したやつがいいから…。」ジョンのギターソロは、キャッチーでレコードの音源に近いものになっています。ポールも気に入ったんですね。

しかし、ジョンは、ソロを1回だけにしたかったようです。元々彼は、ソロをあまりやってきませんでしたし、久々のライヴということで自信がなかったんでしょう。そこで、ポールが「君が2回やって間でビリーが1回。」と提案しました。どうしてもジョンにソロを2回弾いて欲しいようです。するとジョンは「同じフレーズを弾くよ。昔のロックによくある。」と応えました。

(3)違うソロが2回でよかった

ジョージに促されて立ち上がったジョン

ジョンは、自分がギターソロをやるとこうなってしまう、とおどけてぐちゃぐちゃにギターを弾きました。そして、アイドルの頃のオーストラリア公演の思い出話になりました。リンゴが病気で入院し、ジミー・ニコルが代役でドラムを担当した時です。

ニコルが女性に見とれてポーっとしている間に、「She Loves You」のカウントが「ワン!ツー!」と入り、彼は、そこから慌てて叩き始めました。一度タイミングを外すともう立て直せなくなってしまい、そのまま最後まで演奏を続けました。もっとも、観客は、誰も気づいていなかったでしょう。

(4)立ち上がって演奏した

ギターソロに自信なさげなジョンでしたが、結局、ポールの提案通り2回違うフレーズを弾くことになりました。同じフレーズを繰り返すより、その方が曲にアクセントが効いてよかったと思います。ジョンは、終始自信がなさそうでしたが、ルーフトップでバッチリ決めたのはさすがです。

ジョージは立ち上がりながら、「ソロを弾くときは立った方がいいんじゃない?」とジョンとポールに促しました。ずっと椅子に腰かけてレコーディングしていた彼らでしたが、ライヴはもちろん立ってやりますから、その感じを掴むのであれば立った方がより近くなります。ジョージは、本当にいいところで的確な提案をしていました。さあ、名曲「Get Back」がいよいよ完成します。

(続く)

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