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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

「Get Back」でジョンがギターソロを担当したのはなぜか?(382)

1 ジョンがギターソロを担当した経緯

(1)ギターソロはジョージがお約束

映画「Get Back」に関する一連の記事は前回で終了したはずなのですが、前回の記事を読んだ方から「Get Back」でジョンがギターソロを担当した経緯について触れていなかったことを指摘されたので、今更になりますがこの点について検討してみようと思います。
ファンにとって「ビートルズのギターソロは基本的にはジョージが担当する」というお約束になっていたことはおなじみです。そうすると、ジョンがルーフトップ・コンサートでソロを担当していたことに違和感を覚えた人も多いはずです。もちろん、ジョンやポールも曲によってソロを担当したことはそれまでにもありました。
しかし、それはあくまで例外的なものであり、そこには何らかの事情がありました。ですから、ファンからするとなぜジョンがこの曲でソロを担当しているのだろうと不思議に思ってもおかしくありません。

(2)映画では触れたシーンはなかった

私は、そう指摘されて、ひょっとするとそれに関係するシーンを見落としたのかもしれないと思い、何度も繰り返し見直しました。映画は、パート1から3に分かれており、パート1のラスト辺りでジョージがビートルズを脱退するシーンが登場します。結局、他の3人が彼と話し合って復帰したのですが、「Get Back」のレコーディングのシーンに移ると、すでにジョンがソロを担当していました。
つまり、少なくともこの映画のシーンでは、ジョンがソロを担当することになった経緯については触れられていなかったのです。どこかにそれを示唆するものがないかと一生懸命探したのですが見当たりませんでした。

 

 

2 推測するしかないが

(1)経緯を明示したシーンはなかった

私は、今回の映画のレヴューについて実際に映像として描かれていたものあるいはそこから推察される事実についてのみ記事にしました。それ以外のことを書いてしまうと、読んだ人に予断を与えてしまうからです。
パート2の「Get Back」のレコーディングシーンでは、もう既にジョンが担当することが決まっていて、彼は自信がないから2回のソロを同じフレーズで弾くとポールに話していました。普段、彼は、ソロを担当していませんでしたし、久々のライヴでもあるので自信がなかったのでしょう。
ただ、この時点ではまだ彼のソロパートは固まっていませんでした。ですから、復帰したジョージと交代してもおかしくなかったわけです。しかし、実際にはジョンが頑張って違うフレーズのソロを2回演奏しました。

(2)ジョージが脱退したから

ビートルズを脱退したジョージ

映画を見る限り、なぜジョンがソロを担当するかを明確に示すシーンはありませんでした。ですから、推測するしかないのですが、一般的にいわれているのはジョージが脱退したためにジョンが担当することになったという極めて単純な理由です。

このセッションではオーバーダビングはしないという方針でしたから、後でソロだけテイクを重ねるという訳には行かなかったのです。最悪、ジョージ抜きでライヴもやるとなると、ギターを担当するのはジョン一人でしたから、当然のことながら彼がソロを担当するということになります。
ジョージが自己主張の強いタイプであれば、復帰してから「ソロは俺の担当だから俺がやる」と言ったかもしれません。でも、彼は、元々控えめな性格でしたし、それに脱退したのは彼自身でしたから、その負い目もあったでしょうしね。
ただ、ジョージは、ホンネではやりたかったと思いますよ。彼は、マスターテープを聴きながら、シングルA面にすればいいと提案したほどできのいい曲だと認めていたので、なおさらやりたかったでしょう。しかし、自分が脱退している間にジョンが担当することに決まったことを覆すのは、さすがに自分勝手だと思って遠慮したのかもしれません。

 

 

3 担当を決めたシーンは記録があるはず

(1)話し合いは記録しただろう

3人はリンゴの自宅でジョージの復帰について話し合った

誰がソロを担当するかは重要なことですから、当然ジョンとポールの間で話し合いが行われたはずです。ジョージがいない間も3人+1人でレコーディングを続けていたので、自然な流れでジョンが担当することになったのでしょう。
そして、レコーディングの間中カメラは回しっぱなしになっていましたから、ジョンとポールが話し合ってジョンがソロを担当すると決めたシーンも記録されていた可能性が高いと思います。そういった段取りを話し合うのはスタジオでしかありえませんから、おそらく映像は残っているでしょう。

(2)なぜカットしたのか?

シーンをチェックするピーター・ジャクソン

そこで、ピーター・ジャクソン監督がなぜそのシーンをカットしたかということなんですが、ここはもう本当に推測するしかありません。この作品は、三部作という大作でただでさえ長時間の映画です。ジャクソンとしては、ここに限らず他にも残したいシーンはたくさんあったでしょう。
しかし、エピソードの重要性やストーリーの流れなどの要素をいろいろと考慮した結果、そのシーンはカットしたのだと思います。ジョージが脱退したことは、ビートルズにとって一大事でしたから、さすがにそこをカットするわけにはいかなかったでしょう。それに比べてジョンがソロを担当することになった経緯については、脱退に伴う付随的な問題なので、この映画で取り上げるほどの重要性はないと判断したのだと思います。
(3)最初から撮影されていなかった可能性も

もちろん、これは憶測に過ぎず、そもそもそのようなシーンは、最初から撮影されていなかったのかもしれません。ただ、誰がソロを担当するかというのはレコーディングにおいては非常に重要な問題ですから、ジョンとポールがそれについて話合わなかったとは考えられません。そのシーンも記録されているはずですが、これはもうジャクソンに聞くしかありません。

それ以外の可能性として考えられるのは、3人がリンゴの自宅で話し合った時に決めたということです。この時はカメラが回っていませんでしたから、記録に残っていなくてもおかしくはありません。しかし、そのときの話題もジョージの脱退という緊急事態にどう対処するかがメインであり、ソロを誰が担当するかをのんびり話し合っていた場合ではなかったでしょう。

 

 

4 ジョンのインタヴュー

(1)ジョンはポールが配慮してくれたと発言したが

「ポールは、後期になるとシングルA面が自分の曲ばっかりになったので、ジョンに気を遣ってソロを任せた」という説があります。その根拠になったのは、1970年12月にジョンがローリングストーン誌のジャン・ウェナーのインタヴューに応えた記事です。その中でこんなやり取りがありました。
ウェナー「あなたは『Get Back』ではスライドギターを弾いたとのことですが。」
ジョン「そう、その時のソロを弾いたんだ。ポールが優しい気持ちになっている時は、僕にソロをやらせてくれたんだ!彼がシングルA面をほとんど取ってしまったことに罪悪感を感じているときとかに彼は僕にソロをやらせてくれたんだ。それで、そのソロを弾いたんだ。ジョージは、美しいギタープレイを生み出したと思う。でも、彼は、本当に一杯一杯だったと思うんだ、でも、それはエリックも同じだよ、本当に。彼は変わったかもしれない。彼らは、みんな一杯一杯なんだ。僕たちもそうさ、それが問題なんだ。僕はB.B.Kingが好きだ。」

(2)スライドギターの話だった

ティール・ギターを用意するジョン

ここで注目すべきなのは、ウェナーが質問したのは、あくまでジョンが「Get Backセッション」でスライドギターを弾いたことについてです。彼がスライドギターを弾いたといえば「For You Blue」であって「Get Back」ではありません。確かにジョンは、その曲でスライドギターでソロを弾いていました。
彼が「For You Blue」についてのみ応えたのだとすれば、「ポールがジョンに気を遣って『Get Back』でソロを担当させた」という説は消えます。話の流れからすると「For You Blue」についてのようですね。「そのソロを弾いた」というのはおそらくそれを指していると思われます。

ただ、それ以外の曲についてもそんな傾向はあったようです。セッションから2年足らずに行われたインタヴューなので、ジョンの記憶もまだ鮮明だったと思います。そして、彼が思い違いをしていたとも考えにくいです。

(3)解釈の仕方いかんで変わってくる

ここは、解釈の仕方いかんで変わってくるのですが、どうでしょう、これを「Get Back」のソロを担当した経緯にまで広げるのはいささか拡大解釈のような気がします。というのも、ジョージが脱退したという抜き差しならぬ事態が起こり、ライヴの期日も迫っていたことから、必然的にジョンがソロを担当せざるを得ない状況だったからです。
つまり、他の曲でポールがジョンに気を遣ってソロを任せたことはあったかもしれないが、少なくとも「Get Back」に関してはそんなことを考えている余裕はなかったというのが実情ではないでしょうか?もちろん、これも解釈の一つなのでそうではないかもしれません。その辺りは、皆さんの判断にお任せします。
面白いですね~、この話一つだけでもこれだけ話が膨らむんですから。「Get Back」については、もうホントにこれで終わりにします。

(続く)

 

 

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