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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

映画「Get Back」~名曲「Let It Be」ついに登場!(362)

Let It Be' And 'Get Back' Offer New Perspectives On The Beatles, Fifty  Years Later

※この記事は、映画「Get Back」の「ネタバレ」を含んでいるので注意してご覧ください。

1 「Get Back」と移民政策との関係

(1)イギリス政府の移民政策

Tony Marks (tonymarks841) - Profile | Pinterest

再びビートルズは、「Get Back」の完成に向けてセッションを始めました。ポールは、自ら自分が作った歌詞の修正を申し出ました。「帰れ。自分が元いたところに。」そして、そこにコーラスを重ねることをジョンとジョージに提案したのです。

ここで、当時のニュース映像が流されます。それは、イギリス国内での移民反対のデモ行進を撮影したものでした。「新聞は移民排斥運動の記事であふれた」と字幕が入ります。また、国会議員が激しく移民反対を演説しています。当時のイギリスは、移民や人種問題を巡って国内で世論が真っ二つに分裂していました。時代そして洋の東西を問わず、政府が数多くの移民を受け入れると、彼らによって「国が乗っ取られる」「職を奪われる」「治安が悪くなる」などと主張して反対する人々が大勢いたのです。

(2)白人至上主義に対するプロテストソングだった

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仮の歌詞で「Get Back」を演奏するポール

当初、ビートルズは、「Get Back」を白人至上主義に反対するプロテストソングとする方針でした。ポールは、「パキスタン人はいらない」「プエルトリコ人はいらない」と歌いました。これは、移民に反対する人々を皮肉った歌詞ですが、文字通りに受け取るとむしろ移民を排斥しているように取れる、ちょっと誤解されかねない危ない内容ですね。

ここもジャクソンの編集の巧みさが窺えます。セッションの前に移民排斥運動のエピソードを紹介しておかないと、ビートルズが移民排斥に賛成していしたかのように誤解されてしまう恐れがあると判断したのでしょう。そういえば「Hey Jude」の時も「ユダヤ人を侮辱した」と誤解されました。

ジョンズがたまたまその移民排斥に関する記事が一面に掲載された新聞を持ってきました。「ピアノを入れたら?」とアイデアが出されましたが、これは、ビリー・プレストンをサポートメンバーに選び、彼が小気味よいエレクトリックピアノの間奏で演奏するという形で実現しました。この曲のセッションはここまでで終わり、別の曲に移りました。

 

 

2 「She Came in Through the Bathroom Window」をセッション

THE BEATLES - EVEREST - FORMIDABLE MAG

ポールは、演奏を始めるとジョンに「最近、僕の身に起こったことだ」と話しかけました。そして、演奏し始めたのが、「She Came in Through the Bathroom Window」です。いやはや、もう名曲のオンパレードですね。これは、熱狂的なポールのファンが、彼の留守中に自宅に侵入したという実話を題材にした曲です。もしも、これが強盗だったらと思うとぞっとしますよね。

ポールがメインヴォーカルを歌うと、すかさずジョンがピアノを弾きながらコーラスを入れました。ジョージとリンゴも彼らをしっかりフォローしています。この辺りのあうんの呼吸は、やはり長年スーパーバンドとして君臨してきた彼らですね。

演奏が終わると、ポールは、おどけてエルヴィス・プレスリーのものまねをしました。彼の大好きなアーティストの一人ですが、たまたま撮影日の前日が彼の34歳の誕生日だったんですね。

 

 

3 「Let It Be」のセッションを開始

(1)あの名曲がついに登場

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リンダが撮影した「Let It Be」を演奏するポール

ポールが「通してやるから頭に入れてくれ」とメンバーに話し、ジョンは「ベース要る?」「リフのところで?」とポールに尋ねましたが、まだはっきりとした考えがまとまっていなかったようで「どうかな」とあいまいに応えました。それで、ジョンは、「耳で聴いて弾く」と話して、とりあえずポールのヴォーカルとピアノに合わせることにしました。ジョンが珍しく6弦ベースを弾きましたが、これは、このセッションが「オーバーダブをしない」という方針だったからです。

ポールは、ついに名曲「Let It Be」の演奏を始めました。何度も聴いたあのピアノのイントロが流れます。続いてポールが歌いだすと、他の3人はしばらく演奏せず、じっと聴いていました。そして、サビのところに入ると、すかさずジョンとジョージがコーラスを入れました。これが、ポールの演奏にぴたりとハマっています。ビートルズは、普段はバラバラなようでいて、スタジオでセッションを始めるとちゃんとまとまるんですよね。

(2)ブリュートナーのピアノ

Let It Be | Isolated Blüthner Piano | The Beatles - YouTube

ポールが弾いていたピアノの側板にBlüthnerと大きなロゴがプリントされているのが画面ではっきり確認できます。リンゴのドラムの「THE BEATLES」と同じくらい、かなり目立つロゴですね。ブリュートナーは、1853年にドイツで創業した老舗のピアノメーカーで、スタインウェイ・アンド・サンズ、ベーゼンドルファーと並んで世界三大ピアノメーカーと呼ばれています。

大きな特長は、高音部に4本の弦が張られていることです。他のメーカーのピアノの高音部は、1音に対して3本の弦が張られているのと比較して大きな違いがあります。4本目は共鳴弦で、他の3本が鳴ると共鳴してより響きを増幅させます。この工夫により、音自体は柔らかいにもかかわらず、豊かな響きと余韻があり、ブラームス、リスト、チャイコフスキーなど著名な音楽家たちから愛用されてきました。

(3)歌詞は未完成だった

この時点で「Let It Be」のメロディーとコードは、ほぼ完成していたようですが、2番以降の歌詞はまだ完成しておらず、ポールは、ハミングあるいは適当な歌詞を入れて歌っていました。このシーンでもリンダが一生懸命カメラで彼の姿を撮影しているのが印象的です。ちなみに彼女の持っているカメラは、日本のニコン製でした。

ジョンが「歌詞は?」と尋ねると、ポールは未完成のため照れくさそうに笑い、ジョージもそれにつられて笑いました。和やかな雰囲気で、とても解散が近づいているグループとは思えませんね。

www.youtube.com

(4)メンバーが相談しながら作り込んでいった

その後、ピアノの前に座っているポールに対してグリン・ジョンズが何ごとか熱心に話しかけています。最初の音声が収録されていないのでハッキリとは分かりませんが、どうやら間奏のピアノの奏法について何かアドヴァイスしていたようです。ポールが「なるほど」と納得したところから見て、彼の意見が適切だと判断したようです。

その間にジョンとジョージが向かい合いながら、バッキングのギターを合わせようとしています。ジョンは、この曲を嫌っていたとされていますが、決してポールに協力しなかったわけではなく、作品がちゃんと完成するよう協力していたことが映像から分かります。

彼は、ポールに向かって「僕が弾いたのはFからだ。」と呼びかけました。ポール「Cに下がって。」ジョン「Fの時の音が合わない。」ポール「F、C、G」

 

 

4 ギターとドラムが入るタイミング

(1)意外に難しい

彼らがそんなやりとりをしていると、ジョンズが「タイミングが少し早い。同時に入ればいいんだ。」と声をかけました。ジョンとジョージがギターをどのタイミングで入ればいいか迷っていたようなので、このアドヴァイスは的確だったと思います。

確かに、人々は、完成したヴァージョンを聴き慣れているため気づきにくいでしょうが、初めてこの曲を聴いて、バッキングのギターやドラムを入れる時に、ポールのヴォーカルに続いて、どのタイミングで入ったらいいか結構迷ったでしょうね。おそらく、イントロからギターやドラムが入るのはちょっと違うだろうなという気はします。それだとこの曲の荘厳なイメージが出にくいのではないでしょうか。

(2)ベストなタイミング

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ポールの演奏にベースとコーラスを合わせるジョン

ここは、やはりシンプルにイントロはピアノだけにして、それに続いてポールのヴォーカルが重なり、さらにギターとドラムが入るというのが、静かに曲が盛り上がっていくという意味で、もっともふさわしいアレンジではないでしょうか?

ポールは、もう一度イントロからやり直しました。サビの「Let」のところのメロディーが、レコードに収録されたアレンジより少し長くなっています。ジョージは、静かに聴いていましたが、ジョンは、カメラに向かって変顔をしてふざけていました。しかし、サビのコーラスの箇所に来ると一転して真剣な顔付きになり、マイクに向かってコーラスを入れました。彼は、へそ曲がりというかあまのじゃくなんですよね。

(3)ジョージのギターソロのパート

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コーラスとギターを入れるジョンとジョージ

面白かったのは、このセッションの間、ヨーコとリンダがかなり近い距離でおしゃべりしていたことです。夫たちが大音量でセッションしてますから、近づかないと相手の声が聞こえませんからね。この時のヨーコは、結構明るい印象でした。

もちろん、彼女たちの音声は残っていないので、何を話していたかは全く分かりません。読唇術ができる人なら分かるかもしれませんが、おそらくビートルの妻同士のとりとめのない世間話だったのでしょう。

「Let It Be」は、この時点ではまだラフではあったものの、ほぼ出来上がっていたといっていいでしょう。後は、歌詞を完成させることと、アレンジを決めることですね。

ここで間奏に入って、いよいよジョージのギターソロのパートになりました。彼は即興でこの曲の間奏に合うであろうソロを演奏しました。もちろん、まだ適当に弾いただけで本格的なソロパートにはなっていませんから、ここから仕上げていくことになります。これで9日の撮影は終了しました。

(続く)

 

 

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