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映画「Get Back」~ポールがマルの意見で歌詞の一部を変更した!(361)

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ピアノで弾き語りしているポールと傍らにいるリンゴ

※この記事は、映画「Get Back」の「ネタバレ」を含んでいるので注意してご覧ください。

1 リンダがスタジオにやって来た

(1)愛しいポールを見守るリンダ

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演奏中のポールを見守るリンダ

ビートルズとホッグは、ライヴをどこでどのように実施するかについて夜遅くまで話し合いましたが、結論が出ないまま8日の撮影は終了しました。そして、撮影6日目の9日を迎えました。

ポールが妻のリンダを伴ってスタジオに一番乗りしました。そして、まだメンバーが到着していないスタジオで、ピアノの弾き語りを始めました。演奏した曲は、ソロになってから初のシングルとしてリリースされた「Another Day」です。この時点ではほぼ完成していたのですが、実際のレコードとは若干メロディーが異なっています。

印象深いのは、リンダが傍らでずっとポールを見守っていたことです。いつもジョンのすぐそばにいたヨーコとは対照的に、離れた場所に座って彼をじっと見つめていました。その眼差しには、ポールに対する深い愛情がこもっていました。

(2)二つの名曲

ピアノを演奏しているポールにマルが近づいて「他に新曲でメモする歌詞はある?」と尋ねました。すると、ポールは「ああ。マザー・メアリーの曲とThe Long And Winding Road」と応えました。その時に「The Long And Winding Road」の伴奏を弾いていたのです。「マザー・メアリーの曲」というのは、おそらく「Let It Be」のことでしょう。この時点ではまだタイトルが決まっていなかったんですね。つまり、彼は、この時点で音楽史に残る二つの名曲をすでに制作していたのです。

ただ、「The Long〜」の方は、メロディーはできあがっているものの、二番の歌詞はまだ完成していませんでした。この後の僅かな時間でそれを完成させてしまうのですから、その才能には今さらながら驚かされます。

 

 

2 ポールがマルの意見で歌詞の一部を変更した!

(1)「The Long And Winding Road」の歌詞 

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左端がマル

ここでは珍しく、裏方のマルがポールと会話しているシーンが残されています。マルがポールにライヴの会場が決まったかどうかを尋ねると、彼は、軽く首を振りました。すると、マルは、屋内が良いと自分の希望を述べました。

「実はスコットランドの農場に決まった」とポールは冗談を言った後、ピアノを弾きながら「The Long And Winding Road」の歌詞を口ずさみました。メロディーはほぼできあがっていたようですが、「二番はできてない」と言って適当に歌いました。マルと話しながら、ポールは、ここは喜びを入れた方がいいと話した瞬間に、ブリッジの歌詞の一部をひらめいたんです。「The many ways I’ve tried」です。

ポールが次々に思いつく歌詞をマルが一生懸命ノートに書き留めています。アーティストそれぞれに作曲方法があると思いますが、ポールは、あれこれ試行錯誤を繰り返しながら作り込んでいったようです。

(2)マルの意見で歌詞の一部を変更した

Paul McCartney, Mal Evans, John Lennon – Twickenham Film Studios, 2 January  1969 - The Beatles Bible

驚いたのは、ポールが「waiting」としていた最初の歌詞を聴いたマルが「standingの方がいい」と意見を述べ、ポールが「その方が良いのか?」と尋ねて、それを取り入れて修正したことです。そのうえ、マルは、「「standing」をここに「waiting」をここに入れたら良い」とまでアドヴァイスしたのです。

長年の付き合いとはいえ、マルは、ローディーですからね。「プロの仕事に素人が口を出すな。」と言われても仕方ない立場でした。ところが、ポールは、あっさりとマルの意見を採用したのです。こういう時は、かえって素人の方が良いアイデアを思い付くのかもしれません。ポールは、歌詞を修正した上で「ここは、ブリッジっていうんだ。」とマルに教えました。リンゴも傍でジッとそのやり取りを真剣な面持ちで聞いていました。

ポールも「待たされた」というよりは「置き去りにされた」とした方が、主人公の辛く切ない気持ちがよりリスナーに伝わると判断したのでしょう。もっとも、マルが調子に乗って道路そのものに障害があるとしたらと提案しましたが、ポールは、悪天候のような障害にしたいと取り上げませんでした。

メンバーの意見で曲に手を加えたことは当然あっただろうと想像はつきますが、まさか、メンバー以外の素人の意見を取り入れたとは驚きです。他の曲もそうですし、マル以外の他のスタッフも曲作りに何らかの形でかかわったことは他にもあるかもしれませんね。ただ、記録に残っている範囲内でしか我々には分かりません。大体、作った本人も忘れちゃってることが多いですし。

 

 

(3)素人のアイデアが思わぬヒントに

ポールは、主人公が長く曲がりくねった道を辿っていく上でぶつかる様々な障害を描きたかったのです。そして、彼は、そのイメージが頭に浮かんでいると話しました。彼の頭の中にあった情景は、彼がスコットランドに持っていた農場までの長くて曲がりくねった道でした。スコットランドという地域は、海からの風が強く、雨がよく降るんですね。ほんのちょっぴりですが、彼の楽曲の制作方法のヒントが見えたかもしれません。彼は、頭の中で情景を思い浮かべてそれを歌詞やメロディーに変換するわけですね。  

3 「Golden Slumbers」が登場

(1)リンダが写真を撮影

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リンダが撮影した写真

続いてポールは、「英国民謡の歌詞が出てくる」と話しつつ「Golden Slumbers」を演奏し始めました、いやはや、次から次へと名曲が登場しますね。すると、その様子を見守っていたリンダが、プロカメラマンである職業柄か、たまらずカメラを構えてポール、リンゴ、マルの3ショットを撮影しました。それが上の写真です。私は、彼女の写真展に行ったことがありますが、特に、親しい人の何気ない一瞬のきらめきを切り取る才能は抜群だったと思います。彼女は、ここは撮影しておくべきだと敏感に感じ取ったのでしょう。

ポールは「おとぎ話みたいにしたい。王様が子守唄を歌う。」そう、この曲のコンセプトは子守唄です。でも、「♪〜Golden Slumbers」なんてシャウトしちゃったら、寝てる子も起きちゃいますけどね(^_^;)

マルが「君のオリジナル?」と尋ねると、ポールは「オリジナルは別にある。」と説明しました。それは、イギリスの伝承童謡集「マザーグース」に収録されているトマス・デッカーが作曲した子守歌「Golden Slumbers Kiss Your Eyes」です。
「Golden Slumbers kiss your eyes, Smiles awake you when you rise, Sleep, pretty wanton; do not cry, And I will sing a lullaby」歌詞は殆ど同じですが、17世紀に制作された曲なので著作権の問題は生じませんでした。

その時にギターを持ったジョージが到着し、おはようと挨拶しました。彼は、朝食を食べていたら遅れたと弁解しました。でも、ポールもリンゴも笑って全く咎めません。この辺りからも彼らの関係性が、それまで語られてきたほど険悪ではなかったことが見てとれます。

(2)コメディー風にするつもりだった

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ここでポールが「この曲はリンゴ用にと思って書いた。物語みたいな歌詞だ。」と説明しました。彼は、この曲をリンゴのために「Act Naturally」のようなコメディー風の曲として用意していたんですね。実際、彼が演奏してみせたのは、アルバム「Abbey Road」に収録されたゆったりしたアレンジとは真逆のアップテンポなものだったので驚きです。それをアルバムのB面メドレーを構成する一曲に編成し直したのですから恐れ入ります。

最後にジョンがやって来ました。ジョージは、アコギで「For You Blue」を演奏し始めました。ポールが「歌詞は?」と尋ねるとジョージは「君は簡単に作れるよね。」と応えました。まだできていなかったんですね。ポールがいとも簡単に歌詞を作ることが羨ましかったんでしょう。いや、ジョンもポールも天才なんですよ。ジョージがこの二人と同じバンドであるが故の苦労が垣間見えた気がします。

ポールは、ジョージのこの曲を「良い曲だ。」と素直に褒めましたが、ジョンは、一言も感想を言いませんでした。この頃のビートルズといえば、どうしてもジョンとポールの不仲が取り上げられがちですが、実は、ジョンとジョージの仲の方が深刻だったのではないかという印象を受けます。この映画ではそんなシーンが散見されます。

(続く)

 

 

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