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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ビートルズの良きライヴァルだったブライアン・ウィルソンを偲ぶ(529)

1 お互いに尊敬し賞賛していた

(1)お互いに高め合った

ビーチ・ボーイズビートルズ

2025年6月11日、アメリカのミュージシャンでザ・ビーチ・ボーイズのリーダーであるブライアン・ウィルソンが82歳で他界しました。ビーチ・ボーイズアメリカのバンドですが、ビートルズと同世代であり、大西洋を挟んでお互いにしのぎを削っていました。ビートルズビーチ・ボーイズとの関係については過去にこのブログで詳細に触れましたが、改めて振り返ってみたいと思います。

クリエイティヴな環境において、ある程度のライヴァル関係は非常に実りあるものになり得ます。ビートルズの1960年代半ばのアルバム「Rubber Soul」がなければ、ウィルソンは「Pet Sounds」を思いつくことはなかったでしょうし、「Pet Sounds」がなければ「Sgt Pepper’s Lonely Hearts Club Band」があれほど革新的ではなかったかもしれません。60年代中期の両者は、音楽という共通の言語によってお互いに刺激し合い、高め合っていたのです

(2)ポールもウィルソンを認めていた

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ブライアン・ウィルソンは本当に素晴らしい作曲家であることを証明した」と、ポールは、2013年のローリング・ストーンズのギタリストであるロニー・ウッドとのインタヴューで称賛しています。「当時、私はコードやハーモニーなどに興味を持っていたので、こういうライヴァル関係になったんだ。私たちが曲をリリースすると、ブライアンがそれを聴いてまた曲を書いてくれるんだ」

トップアーティスト同士の音楽を通じたコミュニケーションは素晴らしいですね。「そう来たか。じゃあ、こんなのはどうだい?」といった感じで大西洋をまたいでお互いにやり取りしている姿が目に浮かぶようです。

ポールは、このライヴァル関係を「素晴らしい」と表現し、ビートルズの中にも同じような雰囲気が生まれていたと指摘しました。「僕とジョンはいつもお互いを上回ろうとしていた」と彼は語りました。「でも、ウィルソンは最終的に『Pet Sounds』に収録された『God Only Knows』という力強い曲を出したんだ。メロディー、ハーモニー、歌詞、どれをとっても素晴らしい曲だと思うよ」

 

 

2 ウィルソンも認めた

(1)「Norwegian Wood」がお気に入りだった

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皮肉なことに、ポールの初期の創造性はこの羨望の的となる作品の誕生に大きく影響しました。2017年のザ・ビートルズ・ストーリーのインタヴューで、ウィルソンは「Pet Sounds」がビートルズの「Rubber Soul」の作品に挑戦する試みだったことを認めています。「すごくクールな雰囲気があって、それに似たものをやりたいと思った。それで『Pet Sounds』が生まれたんだ」と彼は称賛しました。

1965年のアルバムの中で、ウィルソンが最も愛したのは「Norwegian Wood」でした。ジョンがボブ・ディランにインスピレーションを受け、ジョージの先駆的なシタール奏法に支えられて書いたこの曲は、ウィルソンにとって特別な存在でした。「『Norwegian Wood』が私のお気に入りだ」とウィルソンはかつてインタヴューで語っています。「歌詞は本当に素晴らしくて独創的だ。最初の歌詞からして。『僕にはかつて彼女がいた/というか、彼女がかつて僕を所有していたというべきか』」

(2)ジョンの作詞観における転換期

「Rubber Soul」をレコーディング中のジョン

この曲は、ジョンの作詞観における転換期を象徴する曲でした。ビート・ジェネレーションの作家たちやボブ・ディランアブストラクト・フォークロックにインスピレーションを受けたジョンは、初めてリスナーを混乱させようとしました。「とてもミステリアスだ。彼が彼女に夢中なのか、それとも彼女が彼に夢中なのか? とにかく衝撃的だった」とウィルソンは続けました。「そして最後に、彼が目を覚ますと彼女はいなくなっていて、火を灯す。『いいじゃないか? ノルウェーの森』って。彼は彼女の家に火を放つのか? その時は分からなかったし、今でも分からない。あれは素晴らしいと思った」

確かに、この歌詞はリスナーに様々なことを想像させます。この男女の関係は?女は自分の家に男を泊めながら何もさせずにさっさと眠ってしまう。次の日になると彼女はいない。男が最後に火を付けたって何に?まさか家に放火したのか?その辺りの事情をあえて曖昧にすることでリスナーの想像力をかき立てます。

「Norwegian Wood」がウィルソンの心を揺さぶったとすれば、「Strawberry Fields Forever」は彼を完全に打ちのめしてしまいましたの。彼は、車のラジオから流れてきたこの曲を聴き「僕が『Smile』でやりたかったことを、彼らはもうやってしまった。遅すぎたかもしれない。」と車を停めて同乗していた友人に語りました。そこまで落ち込む必要はなかったのですが、それほど彼にとってこの曲を聴いて受けた衝撃は大きかったのです。 

 

 

3 ウィルソンお気に入りの三枚のアルバム

(1)Revolver

ウィルソンが好きだったビートルズのアルバムが三枚あります。2021年にスピン誌とのインタヴューで 、ブライアン・ウィルソンビートルズの1966年のアルバム「Revolver」を、彼にとってなくてはならないレコードとして挙げました。「好きにならない理由なんてあるかい?ポールの最高傑作の一つだ。彼のヴォーカルは素晴らしい」とウィルソンは語りました。

(2)Rubber Soul

ウィルソンは2016年のエスクァイア・ミドルイースト誌のインタヴューで、「Rubber Soul」もお気に入りの一枚として挙げました。「ジョンとポールのコンビネーションが、いくつかの曲で私を圧倒した」と語っています。ウィルソンは2022年にスマッシング・インタヴューズ誌の取材に対し、このレコードがアルバム「Pet Sounds」制作の最大のインスピレーションになったと語りました。

「特に何も経験したわけじゃない。ただすごくインスピレーションを受けたんだ。ビートルズの『Rubber Soul』を聴いて、『Pet Sounds』を作ろうと思ったんだ」同じインタヴューの中で、ウィルソンは両バンドの間には競争意識はなかったと語り、むしろ「お互いを尊敬し合っていた」と主張しています。これは偽らざる感想でしょうね。

(3)Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band

ブライアン・ウィルソンは、エスクァイア・ミドル・イーストとの同じインタヴューで、ビートルズのアルバム「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」をお気に入りの一枚として挙げています。興味深いことに、ポールは、その1年前にリリースされたビーチ・ボーイズのアルバム「Pet Sounds」が「Sgt. Pepper’s」の制作において大きな影響を受けたと述べています。 2016年のヘラルド・トリビューン紙のインタヴューで、ウィルソンは、このアルバムに収録されている「She’s Leaving Home」がビートルズの曲の中で一番好きだと明かしています。

 

 

4 ポールはウィルソンを尊敬していた

(1)ポールは「God Only Knows」がお気に入り

The Beach Boys 『God Only Knows』 和訳 - ロスト・イン・トランスレーション

ポールはロニー・ウッドと対談した際、ビーチ・ボーイズの中でお気に入りの曲は「God Only Knows」だと明かしました。二人は、リリースから数十年後もステージでこの曲を一緒に歌っています。ポールはまた、「Pet Sounds」がいかに彼にインスピレーションを与えたかを回想しました。

「曲をリリースすると、ブライアンがそれを聴いて、彼も1曲作ってくれるんだ。僕とジョンみたいに。そういうのっていいよね。いつもお互いを超えようとしてるじゃないか。でも、最終的に彼が『God Only Knows』をリリースしたんだよ」彼らは競い合うというよりは、お互いにインスピレーションを与えあって作品を制作したのです。トップ・アーティスト同士だからこそ起こった化学反応ですね。

(2)同じステージに立ち緊張した

「一度、ブライアンと一緒にチャリティーショーをやった時に一緒に歌ったんだけど、本番では大丈夫だった。落ち着いていたんだ。でも、リハーサル、サウンドチェックでは、もう何もできなくなっちゃった。すごくエモーショナルな曲だからね。『なんてこった、ブライアンと一緒に歌ってる!』って思ったらもう何もできなくなった。でも、小さな振動が音楽に伝わる。小さな振動、小さな言葉、小さなもの。すごくパワフルな効果があるんだよ」とポールは語りました。あのポールが、ウィルソンと同じステージに立って歌うだけで緊張したとは驚きです。

 

 

5 ポールの追悼の言葉

Paul McCartney Pays Tribute to Beach Boys Founder Brian Wilson

ポールはウィルソンの訃報を聞いて、次のように追悼の言葉を贈りました。「ブライアンには、その曲にとても特別な魅力を与える、神秘的な音楽的才能があった。彼が頭の中で聴き、私たちに伝えた音符はシンプルでありながら、同時に華麗だった。私は彼を愛し、その輝かしい光のそばでしばらく過ごすことができたことを光栄に思う。ブライアン・ウィルソンを失った後、僕たちはどのようにやっていけばいいのか、それは『God Only Knows』だ。ありがとう、ブライアン。ポール」

(参照文献)ファー・アウト、ロックンロール・ガレージ

(続く)

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