- 1 1966年~「Pet Sounds」「Revolver」「Good Vibrations」~サイケデリック・ポップの到来
- 2 「Revolver」の登場
- 3 「Good Vibrations」の登場
- 4 1967年~「Strawberry Fields Forever」「Sgt. Pepper's」の登場と「Smile」の廃盤
1 1966年~「Pet Sounds」「Revolver」「Good Vibrations」~サイケデリック・ポップの到来
(1)Rubber Soul」はブライアンに影響を与えた
ビートルズが「Rubber Soul」を制作したとき、ビーチ・ボーイズのサウンドに耳を傾けていましたが、ブライアン・ウィルソンもまたそれに応えていました。彼は、回顧録「I Am Brian Wilson」の中で「『Rubber Soul』はおそらく史上最高のレコードだろう」と書いています。「1965年12月に発売され、私をピアノに向かわせた」と彼は語っています。「歌詞やメロディーだけでなく、プロダクションやハーモニーも…。ほとんど芸術音楽だった」
ブライアンがピアノに向かい、「Rubber Soul」の上を行こうとした時に出てきた曲とは何だったのでしょうか?それは、ポールが後に最も好きな曲と語った「God Only Knows」です。ポールの「Here, There and Everywhere」は、この曲から影響を受けたとされています。
(2)「Pet Sounds」の登場
しかし、ブライアンは、この曲だけでは満足せず、ビートルズと同じようにアルバム1枚で完結する壮大な作品を作りたいと考えていました。彼は、作曲、プロデュース、アレンジ、そしてリード・ヴォーカル(作詞はトニー・アッシャーと共作)を担当し、その結果、深く個人的な、サイケデリックでバロック的なポップ・アルバムができあがり、彼や他の誰よりもポピュラー音楽の境界線を押し広げることになりました。
40人以上のセッション・ミュージシャンの協力を得て、1966年の誰もが聴いたことのある最も複雑にアレンジされたポピュラー音楽が完成したのです。しかし、その革新的なサウンドは、メンバーの中でも賛否を巻き起こし、特にマイク・ラヴの反発を招きました。
2 「Revolver」の登場
(1)「Pet Sounds」の影響
ビートルズもまたしっかり「Pet Sounds」を聴いていました。その影響は、1967年の「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band,」で完全に明らかになりますが、1966年の「Revolver」ですでに影響を与えていたのです。
ブライアンと同様、ビートルズとプロデューサーのジョージ・マーティンは「Revolver」においてストリングスとホーンのアレンジにますます興味を持つようになり、それは「Eleanor Rigby」の決定的なバロック・ポップ、「For No One」のフレンチホルンのソロ、「Got To Get You Into My Life」のホーン・セクションなどに表れています。
(2)スタジオを楽器として使う
ビートルズとエンジニアのジェフ・エメリックは、ビーチ・ボーイズからスタジオを楽器として使うことも学んでおり、サイケ・フォークの逸品「I'm Only Sleeping」や深いサイケデリックな「Tomorrow Never Knows」で逆回転させたギターのサウンドを聴かせてくれました。
ジョージは「Revolver」のセッション中、「Rubber Soul」の制作の時以上にインド音楽に傾倒していました。「Love You To」ではシタールだけでなく、インド古典音楽にも正面から取り組んでいます。LSDの影響は、このアルバムとアルバムには未収録だったシングル「Paperback Writer」と「Rain」の全編に及んでいました。ビーチ・ボーイズやビートルズが発表した中でも、トリップ・ミュージックであることが明らかになっています。
3 「Good Vibrations」の登場
(1)たった1曲に7か月をかけた
ブライアン・ウィルソンが「Rubber Soul」と「Sgt. Pepper's」にどう反応したかについて語るドキュメンタリーや記事がある割には、「Revolver」については触れていません。それは、1966年後半のブライアンの主な目標が、自身が制作した「Pet Sounds」をさらに超えることだったからかもしれません。
「Pet Sounds」の制作中、彼は、すでにバンドの次のシングルとなる、ポピュラー音楽を再び前進させる創作活動に取り掛かっていました。それが「Good Vibrations」です。この非常に野心的で、複数のパートから成る重層的な曲は、スタジオで7か月間かけて制作されました。これは1966年にたった1曲のために費やされた前代未聞の時間です。
(2)プログレッシブ・ポップ
歌詞の中の鮮やかなイメージからアレンジに至るまで、「Pet Sounds」よりもサイケデリアをよりダイレクトに表現しています。スタジオを楽器として使うという歴史的な進歩を遂げ、エレクトロ・テルミンの普及に貢献し、そのユニークな曲構成は、プログレッシヴ・ポップというジャンルを切り開いたのです。批評家やミュージシャン仲間から、ポップミュージックにおける大きな偉業として認められただけでなく、成功も収めました。
「Pet Sounds」とは異なり、「Good Vibrations」は1位を獲得しました。ブライアンは、この曲をビーチ・ボーイズの次のアルバム「Smile」のファースト・シングルとして堂々と売り出し、「Pet Sounds」を超え「Good Vibrations」のような野心的なアルバムになるだろうと約束しました。
4 1967年~「Strawberry Fields Forever」「Sgt. Pepper's」の登場と「Smile」の廃盤
(1)「Sgt. Pepper's」の登場
ブライアンが「Pet Sounds」を超える作品を目指していたように、ビートルズもまた、それを超える作品を目指していました。「Pet Soundsがなければ、Sgt. Pepper'sは作られなかった」と、ジョージ・マーティンは語っています。
「ジョンに『Pet Sounds』を聴かせたら、その影響から逃れるのは難しいだろう」と、ポールは「Sgt. Pepper's」への影響についてこう語っています。「もし、このレコードにバンド内の監督がいるとしたら、僕は『Pepper』を監督していたようなものだ。そして、僕が影響を受けたのは、基本的に『Pet Sounds』だったんだ。」
「Pet Sounds」のバロック・ポップとビーチ・ボーイズのハーモニーが「Sgt. Pepper's」に直接影響を与えたことは容易に理解できます。ポールは「Pet Sounds」がアルバムでの彼のメロディックなベースラインにも影響を与えたと語っています。ビートルズは、いつものように現状よりさらにその先を目指したのです。
(2)「Smile」の制作を断念した
ビートルズは、インド音楽、民族音楽、よりハードなアシッド・ロック、サーカス音楽、ボードビル、その他多くのものを探求し続け、そのすべてを融合させる方法は隙のないものでした。このセッションからリリースされた最初のシングルは、アルバム未収録のダブルA面シングル「Penny Lane / Strawberry Fields Forever」でした。
ブライアンが「Strawberry Fields Forever」を聴いたことが、精神的な問題、キャピトル・レコード、ブライアンの父マリー、メンバーのマイク・ラヴからのプレッシャーとともに、ブライアンが大々的に宣伝していたアルバム「Smile」を放棄させるきっかけとなったのです。伝えられているところでは、ブライアンが友人と車で移動中、ラジオから「Strawberry Fields Forever」が流れてきました。彼は車を止め、それを聴きながら友人にこう言ったのです。「僕が『Smile』でやりたかったことを、彼らはもうやってしまった。遅すぎたかもしれない。」と。
(3)遅すぎるということはなかった
今となっては遅すぎるということはなかったのですが、ブライアンが「Strawberry Fields Forever」をポップ・ミュージック競争における新たな飛躍と解釈したことは間違ってはいませんでした。バロック・ポップなストリングスとホーンのアレンジ、ずっと鳴り続けるインド音楽の影響、鮮やかなサイケデリック・イメージ、太陽のように舞い上がるヴォーカルなど、60年代半ばから後半にかけてのビートルズの素晴らしさをすべてこの1曲にパッケージしたのです。最も革新的で最もゴージャスなポップソングの一つだといえるでしょう。
ブライアンは、自分の傑作になるはずのものをあきらめてしまいましたが、ビートルズは、自分たちの作品として進んでいきました。「Sgt. Pepper's」には「Strawberry Fields Forever」は収録されていませんが、ブライアンがこの曲を初めて聴いたときに思ったことをすべて実現しました。
ジョンとポールが二人で協力し合えたのに比べ、ブライアンは、一人で何でもやらなければならなかったという点が大きなハンデとしてのしかかりました。プレッシャーを一人で受けるのと二人で分割するのとでは全然違いますからね。
(参照文献)ブルックリン・ヴィーガン
(続く)
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