★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

歴史に残る傑作「Something」登場(376)

リハーサルを続けるビートルズ

※この記事は、映画「Get Back」の「ネタバレ」を含んでいるので注意してご覧ください。

1 ライヴのセットリストを話し合った

(1)演奏できる曲目をリストアップした

撮影19日目の28日を迎えました。いよいよライヴが2日後に迫り、何を演奏するかセットリストを作る必要がありました。ビートルズとホッグが相談しました。

ホッグ「現時点で屋上でやれそうな曲は?ピアノがない曲で。」マーティン「今まで聴いてきた曲をやれば?」ホッグ「曲目を書いて。」マーティン「リストがないよな?アラン。」ホッグ「Dig A Pony」ポール「Let It Be」ホッグ「いや、あの曲は下(スタジオ)でやるべきだ。ピアノがあるから。」屋上にはピアノがありませんからね。

(2)どれを演奏するか

ジョージの新曲を覚えようと提案するジョン

ポール「これでアルバムを作る。またはライヴで何曲もやれるよう練習する曲を増やす?」ジョン「5曲を選べ。」ジョージ「何曲かをライヴでやり、他の曲は録音すればいい。アルバム用に。」完成している曲が少なかったので、これが一番現実的な考えだったでしょうし、実際、ほぼその通りになりました。

ジョンは「『ドント・レット〜』『アイヴ・ガッタ〜』は十分。もういい。まとまってない曲をやろう。ジョージの新曲を覚えよう。」と提案しました。ジョンは、ジョージがずっと自分の扱いに不満を抱えていることに配慮したようです。

 

 

2 歴史に残る傑作「Something」登場

(1)歌詞ができていなかった

Something」をメンバーに披露するジョージ

ジョージは、この時点でまだ作りかけだった「Something」の演奏を始めました。大まかなメロディーはでき上がっていますが、まだ完成には程遠いラフな仕上がりでした。これがあの名曲になるのですから、本当に音楽は不思議なものです。

ジョージがポールにアドヴァイスを求めました。「続きが出ない。『彼女の何気ない仕草が…』」この歌詞に続く歌詞が思いつかなかったんですね。そこでジョンがアドヴァイスしました.「『カリフラワーみたいに』とか入れ、後で考える。」この作詞方法は、確かパート1か2で、ジョンが「歌詞が思いつかない時には、とりあえず適当な言葉を入れておいて後で考える」というやり方をアドヴァイスしていたと思います。

(2)苦心の末にできあがった傑作

youtu.be

ジョージは「でも、もう半年くらい考えてる。『ザクロのように引きつける』としておこうか。」と仮の歌詞をあてがいました。ジョージがこの曲を完成させるのに相当苦労したことが窺えます。しかし、苦労した甲斐があって歴史に残る傑作が誕生しました。この名曲ができあがっていく過程を見届けられただけでも幸せです。

サビのメロディーは出来上がっていましたが、歌詞は全くできていませんでした。このセッションでは完成に至りませんでしたが、「アビイ・ロード」には間に合いました。

 

 

3 I’ve Got A Feeling」のリハーサル

そうやってリハーサルを続けている間に午後1時半になりました。昨日ポールが話していた通り、彼は、外出することになっていたのでスタジオを後にしました。それで、残ったメンバーで「I’ve Got A Feeling」のジョンのパートのリハーサルをしました。

ジョンが「ここをフォークっぽくする」と話して演奏し始めました。レコードの音源とはメロディーが異なっています。ジョンは「ここを変えて歌うから」とジョージに話しました。自分のパートですね。「今のは最後のヴァースのところが難しいところだ。シンコペートはポールに任す。」するとジョージは「別に難しくないよ。間の箇所だろ?リフの。」と応えました。ギターのリフが小気味よく入ります。

いい感じですが、ジョンが「でも、誰かの音にみんなが合わせる必要がある。」と意見を述べると、ジョージが「ピアノだろうな。」と応えました。結局、プレストンのエレピに合わせることになりました。

 

 

4 ジョンがアラン・クラインに取り込まれた

(1)初めて会った時の印象を語る

アラン・クライン

ジョンがビートルズの新たなマネージャーになろうとしているアラン・クラインと初めて話した時のことをジョージに話しました。とうとうあのハゲタカが、金の匂いを嗅ぎつけてジョンに接触してきたのです。

「すごく面白かったよ、色々な面でね。君に聞いてもらいたくて。とにかく彼は素晴らしいんだ。僕らが知らないニュースも知ってる。色々話してくれた。彼は何でも知ってるんだ。夜の2時まで話し込んだ。ずっと会わなきゃと思ってた。長年彼の噂は聞いてたし。とにかく信じられない。なんでも知ってる。事の顛末だとか事情だとかね。詳しいことはまた今度話すけど。僕の面倒を見てくれることになった。」

ジョンが初めて会ったクラインの話に感銘を受けて、やや興奮気味に話しています。ジョンは、元々人を信じてしまいやすいタイプなのですが、クラインというとんでもない詐欺師に引っかかってしまい、まんまと彼のホラ話に乗せられてしまいました。

クラインが何を話したのかは分かりませんが、詐欺師ですから色んな情報を知ってますよ。それに尾ひれを付けて騙す相手を信用させるんです。ジョンは、クラインをすっかり信用し、自分の個人秘書にすることにしました。

(2)完全にクラインを信じ込んだジョン

ストーンズの映画「ロックンロール・サーカス」に出演したジョン

「僕らのことも詳しい。全員のことを知ってる。何をしたか何をする気か君ら並みに僕を知ってる。すごいよ。彼は自分のことを実務家と言ってた。僕が出たストーンズのサーカス(映画)も彼の手配だ。ストーンズは旧作の印税を僕らより貰ってる。僕らがいくら売っても儲かるのは会社。クラインはサーカスからLPとか本とか色々作る気だ。出演者全員のLPを作り売り上げて食糧を買いビアフラに届けるって。君の映画も話した。食糧と一緒に金も持っていく。彼は自分だけで手配する気だ。彼に引き込まれて夢中になった。」

そりゃ、詐欺師ですから、騙す相手のことは徹底的に調べ尽くしていますよ。「あなたのことは、これだけ詳しく知っていますよ。」と言われれば、大抵の人は感激します。そうやってまず相手を信用させ、心の中に入り込むのが詐欺師の手口なんです。

ジョンが話した「ビアフラ」というのはアフリカのナイジェリアの一部で、1967年に独立を宣言して政府と戦争を起こしました。そのあおりで食糧危機を起こし、多くの子どもたちが餓死したことが世界中に報道され、国際問題になりました。

世界中から支援物資が送られたのですが、あのクラインがそんな慈善活動なんかするはずがありません。だって、クライアントのローリング・ストーンズの楽曲の著作権を横取りしたんですから。

(3)ハゲタカだった

クラインは、ローリング・ストーンズのマネージャーになって、レコード会社と交渉し、彼らの印税を引き上げたのは事実です。しかし、その話にはウラがあって、彼らの楽曲のすべての著作権を自分の会社に所有させたのです。

印税を大幅に引き上げられて喜んだストーンズでしたが、後でクラインに騙されたことに気づいて激怒し、著作権を取り戻すために訴訟を提起しました。詐欺師がよくやる手口で最初だけ儲けさせて信用させ、それから金を吸い上げるんですね。

ジョンは、完全にクラインに騙されていたのですが、悲しいことに彼には全くその認識がありませんでした。私は、当時の事情は資料で知っていましたが、この映像を見るとジョンがいかにクラインに取り込まれていたかが悲しいほどはっきり分かります。

 

 

5 再び「Old Blown Shoe」に取り組む

(1)苦手なピアノと格闘

歌うジョージと伴奏するプレストン

ジョージがピアノの前に座り、再び「Old Blown Shoe」を完成させようと取り組みました。その合間にマルに対して黒い革靴を買ってきてくれと頼んでいました。「古い茶色の靴」を作曲中に黒い革靴を買うなんてジョークのつもりですかね?驚いたのは「靴屋に行ったことがない。」という彼の発言です。じゃあ、今までどうやって靴を買っていたんでしょうか?

相変わらず彼は、ピアノを弾きながら格闘していますが、なかなか上手くいかない様子です。その間、プレストンがギターを弾いています。どちらも得意の楽器ではないので、ぎこちない感じがしますね。やがて、お互いに得意の楽器に交代しました。そのうちジョージは、歌詞を書いたノートを持って歌い、プレストンがピアノを弾きました。この方が治りがいいですね。

(2)ジョンがスタイロフォンを持ち込んだ

スタイロフォンを操作するプレストン

そこへ、ジョンが何やら得体の知れないものを持ち込んできました。リンゴやプレストンは、興味津々で「それは誰が作ったの?日本製?」と尋ねました。ジョンは「テレビで見たぞ。」と応えました。トランジスタラジオのような形と大きさです。

これは、1968年にイギリスで発売された「スタイロフォン」という小型の電子楽器で、コードで繋がれたスタイラスでフラットなキーボードに触れることにより、スピーカーから電子サウンドが出ます。スタイラスを滑らせると、キーボードではテクニックが必要なグリッサンド奏法が簡単に行えます。元々は、子ども向けのおもちゃとして販売されましたが、デヴィッド・ボウイなどのプロ・ミュージシャンも使用しました。

しばらくすると、プレストンは操作のコツを掴んだようで、早速「Old Blown Shoe」に合わせて演奏し始めました。さすがは、一流のピアニストですね。ジョージも興味深そうにプレストンの手元のスタイラスを覗き込んでいました。彼は、電子楽器が大好きでしたから、これで何か作曲のヒントを掴んだのかもしれません。

「あの曲はいい。傑作だ。完璧だ。他の曲は?」とマーティンが上機嫌でスタジオに入りながら珍しく褒めました。ジョージもそれを聞いて、嬉しそうに笑顔を見せていました。また一つ名曲が誕生した瞬間です。

(続く)

この記事を気に入っていただけたら、下のボタンのクリックをお願いします。

にほんブログ村 音楽ブログ ビートルズへ
にほんブログ村

下の「読者になる」ボタンをクリックしていただくと、新着記事をお届けできます。