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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ホッグ監督はジョンとポールの会話を秘密録音した!(365)

The Beatles. “Get Back”, ovvero i giorni del passato presente - Articoli -  SENTIREASCOLTARE

※この記事は、映画「Get Back」の「ネタバレ」を含んでいるので注意してご覧ください。

1 衝撃の事実が明らかになった

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隠しマイクを仕掛けたホッグ

映画で衝撃の事実が明らかになりました。ホッグ監督は、レコーディングの休憩中にジョンとポールの2人だけで行われた密室での会話を秘密録音していたのです。彼がなぜそんなことをしたのか、どうやってマイクを仕掛けたのかなどなど分からないことだらけです。

10日にジョージがビートルズを脱退し、12日にリンゴの自宅に集合したメンバーは、今後のことについて話し合いましたが、結論はでませんでした。このままでは、撮影どころかビートルズの存続自体も危うい状況でした。そして、撮影8日目の13日を迎えました。

撮影の開始時間にスタジオに現れたのは、リンゴ1人でした。遅れてポールが現れましたが、他のメンバーは来そうにありませんでした。

 

 

2 ポールが苦しい心境を語った

(1)ジョークが現実になった皮肉

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苦しい心境を語るポール

ポールは「僕らには父親のようなまとめ役が要る。『恋人は連れてくるな』と言ってくれる人がね。」「でも解散の理由が『ヨーコがアンプに座ってたから』ではね。50年後には大笑いされるぞ。本当かよってね。」と冗談めかして語りました。

もちろん、彼が50年後のことまで予想していたわけではありませんでした。しかし、それが解散直後から50年以上の長きに亘り、多くの人々の間に「ヨーコが解散の原因だった」と語り継がれることになるという思わぬ形で現実になってしまいました。何とも皮肉な巡り合わせです。

(2)ポールの目に涙が

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涙ぐむポール

ポールは、ビートルズが上手くいっていない現状を切々と訴えました。ホッグは、ポールに対し「ジョンに少しは協力しろと迫る気はある?」と尋ねました。しかし、この人は、聞きづらいことを遠慮なしに聞きますね~。まあ、そのおかげで我々は真実に迫れるわけですが。

ポールは、ホッグから目をそらして指をかみながら「どうかな?そして2人になった。」とだけ応えて、その後長い間沈黙しました。彼の目は潤んで今にも涙がこぼれそうでした。暗いシーンは、編集で概ねカットされている映画ですが、ここは、観ていてとても辛く感じました。リンゴも天を仰いで、もうどうしようもないという表情でした。

 

 

3 なぜ秘密録音したのか?

(1)隠しマイクをどうやって仕掛けた?

Michael Lindsay-Hogg

ジョンは、昼食時に到着し、ポールと別室で二人だけで話し合いました。何とホッグは、その部屋のテーブルの上に置かれた花瓶の中に隠しマイクを仕掛けていたのです!これには驚きました。

なぜ、彼はこんなスパイみたいな真似をしたのでしょうか?そもそもジョンとポールが2人だけで話すとか、それをどこでするかといったことは事前に分かっていなかったはずです。それなのにピンポイントで部屋を特定し、マイクを仕掛けたのはまるでCIA並みの手際の良さです。ホッグは、2人の話を聞いて部屋に先回りして隠しマイクを仕掛けるようスタッフに命じたのでしょうか?この映像だけでは、彼の目的も手法も全くわかりません。

(2)何の目的で?

仮に秘密録音自体が違法でなかったとしても、本人たちの同意なしに録音したものですから、当然のことながら彼は、録音した音声を映画に使用することはできませんでした。使えないとわかっているのになぜ録音したのでしょうか?彼は、映画監督であってジャーナリストではありませんから、真実を知りそれを報道する必要はなかったのです。彼がなぜこんなスパイみたいなことをしたのか、その真意を測りかねます。

 

 

4 ジョンとポールの会話の内容

ポール「ジョージは?」

ジョン「来たくないのさ。」

ポール「彼は家にいるって。」

ジョン「そうだろうさ。僕だって家に帰りたいよ。スタジオより家でレコーディングしたい。大勢とここにいるよりね。彼は、満足感を得られないと言った。一緒にいると妥協を余儀なくされると。彼の傷は膿んでる。僕らは膿むに任せ、昨日はさらに傷つけ、絆創膏も渡さなかった。あそこまでいくと、こっちもエゴが出るからな。」

ポール「ジョージに対し、前はフレーズも指定し『♪ダダダダダ~、こんな風に弾いて』と言ってたが、先週は好きに弾いてと言おうと…。」

ジョン「要するに、今回2人で彼にそういうことをした。今までの不満もあるからな。」

ポール「僕らは、彼をそんな風に扱ってきた。僕らの腹積もりも彼には見え見えだな。でも、実際彼は正しいよ。」

ジョン「そうだね。」

ポール「結局は、僕らみんなが悪いんだ。全員が別の方向に進んでる。でも、いつか来るよ。自分が好きなように弾ける日が来るさ。ジョージは僕から何の指示もされず、好きに弾ける日がね。」

ジョン「君は自分が望む通り彼が弾かないと恐れてる。僕にも指示する。僕は指示する気はない。」

ポール「それが問題なんだよ。君は指示出来る時でも何も言わず『この曲は難しいからまずやろう』と言う。」

ジョン「それが僕のやり方だ。僕が後悔してるのは、君が曲を違う方向に持って行くのを許したり、それを避けるためにジョージに任せたり、やるように仕向けたこと。提案を断る自由をくれ。いい提案は頂くから。曲のアレンジもそうだ。嫌なんだ…。うまく言えない。」

ポール「よくわかるよ。」

ジョン「ある時期、君のアレンジに対して誰も何も言わなかったろ。君は拒絶するから。」

ポール「そうだね。」

ジョン「僕は『仕切ってる』とジョージにこぼす。ポール様だからな。君は、正しい時も間違ってた時もあった。みんなも同様だ。でも、君がすべてを握り、解決法が見えない。

ポール「思ったことを言ってる。」

ジョン「もう『ビートルズ』はただの仕事になっちまった。」

ポール「一つ言わせてくれ。結局こういうことさ。君はボスだった。今は僕が第2のボスってわけ。」

ジョン「いつもじゃない。」

ポール「いつもさ。もっとお互い仲良くできればいいんだよ。『ジョージ、I've Got A Feelingを僕のベースの通り弾いて。』『僕は君じゃないから無理だ。』なんて感じで。」

ジョン「今年に入って君が今までしてきたことや僕たちがしてきたことに問題があると僕が感じただけじゃなくて、人間関係の問題についてみんなに責任があると思っている。僕たちは、もっと何かできたんじゃないかって。君を責めてるんじゃない。僕は気付いたんだ。僕の問題だって。僕が守りたいのは相変わらず自分なんだ。僕は君やジョージの好きにやらせてきた。みんなが彼を求めるなら従う。みんなの方針で結束してきた。」

ボール「分からないけど、僕は彼が戻ってくると思い込んでる。もし戻ってこなければ、新たな問題発生だ。みんながもっと年を取れば、お互いに認め合ってみんなで歌えるさ。」

私なりに翻訳したので、日本語の字幕とはかなり違っている部分があることをご了承ください。

 

 

5 会話で明らかになったこと

(1)2人がジョージにストレスをかけていた

George Harrison – Twickenham Film Studios, 8 January 1969 - The Beatles  Bible

ここまでが映画で公開された会話の内容です。これで終わりなのか、まだ続きがあるのかは分かりません。2人だけの会話(だと彼らは思っていた)なので、包み隠さずホンネで話したのだろうと思います。

これを通して分かることは、彼ら2人がジョージにストレスを掛けて、追い詰めていたことをお互いに自覚し、反省していたことです。おそらく、この時だけでなくそれまでも何度か同じようなことについて話し合っていたはずです。2人ともこうやって普通に会話しているとちゃんと認識しているのに、いざスタジオに入ってセッションを始めると、途端にエゴが出てしまったんですね。

(2)互いの不満をぶつけた

もう一つジョンとポールは、互いの仕事の進め方に不満を持っていることも分かりました。ジョンは、ポールがレコーディングを一人が仕切っていることに、逆にポールは、ジョンが今までのようにリーダーシップを発揮しないことに不満を漏らしました。どちらの指摘もそれはそれで当たってるんですが、自分たちではどうにも解決できない状態になっていたことが分かります。

さらに、2人ともジョージに復帰して欲しいと思っていることも分かりました。ジョンは、クラプトンに代えようとスタジオでは言っていましたが、冷静になって考え直してみると、やはりジョージに戻って来て欲しいと思っていたんですね。

おそらく、彼らがこういった反省を踏まえて「Abbey road」に取り組んだから、最高傑作とされるアルバムが完成したのでしょう。

6 解散は回避できたか?

(1)決して避けていたわけではない

この録音が、ビートルズの歴史を語る上で、とてつもなく貴重な記録であることに間違いありません。ジョンとポールが、これほど腹を割って話し合ったのは久しぶりではないでしょうか?この時期に、彼らがここまで真剣に話し合ったことは、今まであまり知られていなかったと思います。どちらかといえば、ほとんど口もきかなかったという考えが一般的でした。

しかし、そうではなく彼らは、自分たちが抱えていた問題に気づいていて、それを何とか解決しようと出口を探していたんです。それが分かって気持ちがだいぶ楽になりました。

(2)もっと話し合っていれば

Zo rauw zag u The Beatles nog nooit | De Standaard Mobile

私は、この時点でなら、まだ解散を回避してあと数年は活動できる一縷(る)の望みがあったのではないかと思います。今後の活動方針について、もう一度メンバーでじっくり話し合うべきでした。

ジョン以外の3人は、ヨーコをスタジオに入れないよう他の3人がジョンを説得すべきだったと思います。レコーディングは、アーティストが全身全霊をぶつけて一つの作品を作り上げる仕事です。そこにヨーコであれ誰であれ、部外者がいれば集中できないのは当然です。そのことを遠慮せず、はっきりとジョンに伝えるべきでした。

ポールは、そんなことをしたらジョンが脱退してしまうと恐れていたのです。しかし、彼も今までのように一人でレコーディングを仕切るのを控える代わりに、ジョンにもヨーコをスタジオに入れないように求めるべきでした。そこで妥協できないなら解散するしかありませんが、そこまで話を詰めず互いに遠慮してしまった結果、最悪の解散の仕方になってしまったのです。

(続く)

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