★ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログ★

ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

ビートルズのピローファイト(枕叩き)を撮影したカメラマン(424)

ベンソンを一躍有名にした「枕叩きに興じるビートルズ

1 アイドルとしての絶頂期を捉えた

ニューヨークに到着したビートルズ

ビートルズを撮影したことをきっかけにブレイクしたカメラマンは、これまで紹介したように数多くいますが、ハリー・ベンソンもその一人です。1964年、30代半ばだった彼は、デイリー・エクスプレス紙から電話を受け、ビートルズのパリ旅行を取材する仕事を引き受けました。

ジョルジュ・サンク・ホテルで彼らが、まるで修学旅行の生徒のように無邪気にはしゃいでベッドの枕叩きに興じている写真がデイリー・エクスプレス紙の表紙を飾った瞬間に彼に対する評価は一気に上がり、ビートルズとの絆が生まれました。ベンソンは、彼らの生涯の友となり、その親しい関係性からくつろいだ彼らの姿を何枚も撮影しました。

1964年は、ビートルズにとって極めて重要な年であり、ベンソンは、彼らがスーパースターへと昇り詰めていく過程を写真で完璧に表現しています。アイドルとして絶頂期を迎えたビートルズをもっとも象徴的に捉えた1枚でしょう。

 

 

2 ジャーナリストだった

(1)輝かしい経歴

アメリカで公民権運動を行うキング牧師(右から二人目)

ハリー・ベンソンは、アメリカの公民権運動、キング牧師暗殺、歴代アメリカ大統領の大統領選挙、多くの著名人など、歴史上の重要な瞬間を撮影しました。彼の写真は、「ライフ」などの著名な出版物に掲載されています。彼は、その功績によりエリザベス女王から大英帝国勲章(OBE)を授与されました。

ベンソンの写真は、被写体の本質と感情を捉え、率直で親しみやすいところが特徴です。彼の作品群は多岐にわたり、ドキュメンタリー写真の分野で影響力を持ち続けています。ベンソンは、1929年、スコットランドグラスゴーで生まれました。フォトジャーナリストとして歴史的な大事件や著名人を象徴的に撮影した写真で世界的に有名です。

(2)パリでライヴを行ったビートルズ

パリの街を歩くジョン、ポール、ジョージ

ベンソンは、1950年代、イギリスの新聞である「ザ・デイリー・スケッチ」でフォトジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせました。彼の本業はジャーナリストで、国際情勢や社会情勢をテーマとして取材していました。ですから、本当はビートルズと接点があるはずはなかったのです。しかし、ある偶然から彼らを撮影することになりました。

1964年1月15日、ビートルズは、フランスで初めてのライヴを行いました。ジョン、ポール、ジョージの3人がパリに到着すると(リンゴは遅れて合流)、60人のファンとフランスの報道陣が出迎えました。また、滞在中の宿泊先であるジョルジュ・サンク・ホテルでも、多くのファンが彼らを待っていました。まだヨーロッパでブレイクする前だったので、出迎えたファンはたった60人だったんですね。

 

 

3 ビートルズに衝撃を受けた

(1)新聞社からの命令

若き日のハリー・ベンソン

ベンソンは、パリでビートルズを撮影した時のことをこう語っています。「デイリー・エクスプレス紙の大きなニュース記事のためにウガンダに行く予定だったのだが、直前になって新聞社から電話があり、代わりにパリでビートルズを撮影してほしいと言われた。私は、自分を真のジャーナリストだと自負していたから断ったんだ。ビートルズのことは知っていたが、1964年初頭の彼らは、まだブレイクしていない時期だった。彼らに同行して撮影することに興味はなかったんだ」

おそらくベンソンは、1964年初めに、2年前にイギリスから独立したウガンダで起こった国防軍の反乱を取材に行こうとしていたと思われます。彼にしてみれば、「こっちは、命がけでスクープをものにしようとしているのに、昨日今日売れたばかりのアイドルの取材になんか行ってられるか」というところだったのでしょう。

(2)彼らはカリスマだ

ホテルの部屋で作曲するジョンとポール

「その5分後、編集者から電話があり、私がどう思おうが行くことになると告げられた。そこで私は、フォンテーヌブローで彼らに追いつき、その後、彼らは、パリでの大きなショーの前にウォームアップのギグを行っていた。フラッシュに使う延長コードを取りに車まで行って戻ってくると、彼らは『All My Loving』を演奏していた。センセーショナルだった。私は、『おお神よ、これだ、これは画期的だ』と思った。音楽の話題がニュースになっていたんだ」

彼のビートルズに対する消極的な姿勢は、彼らの演奏を聴いたとたんに吹っ飛びました。社会派のジャーナリストである彼ですら、ビートルズの演奏を聞いて彼らのカリスマ性に気づき、彼らが音楽の世界を変えるだけでなく社会をも変えると予感したのです。彼の予感は的中し、この頃からマスコミがポピュラー音楽を盛んに取り上げ、音楽がエンターテインメントにとどまらず社会現象となっていきました。

 

 

4 ピローファイトを撮影

(1)ビートルズの話に閃いた

枕を振りかぶるポール

ベンソンの談話を続けます。「それ以来、私は、彼らの近くにいるようにした。後日、彼らのホテルのスイートルームに行ったとき、彼らの一人が言った『そういえば、この間の夜に枕叩きをやったよな』と。それを聞いた私は、もう一度やってくれたらその写真を撮るよと促した。すると、ジョンが『イヤだよ。まるでバカな子どもに見えちまう』と言った。ポールは、ブランデーを飲んでいた…彼は、いつも高い酒を頼んでいたんだ。するとジョンは、ポールの背後から忍び寄り、枕で彼の頭をバシンと叩いたんだ。それが号砲だった』」

「ポールがジョンを叩き、ジョンがジョージを叩いているところが好きだ。そこには、写真を完璧にする流れがある。ポールがキーになっている。彼が枕を持ち上げているのがわかるかな?それがこのショットを動かしている。この構図は、有名な「硫黄島で旗を立てるショット(太平洋戦争で米軍兵士が硫黄島星条旗を立てた写真)」を思い起こさせる。彼らは、いつも一列に並んでポーズを取るとき、一人か二人(たいていはリンゴかジョージ)がいつもおどけた顔をしていたのだが、今回ばかりは、全員がいつもの堅苦しいポーズから外れている」

ベンソンは、ビートルズがホテルのスイートルームで枕叩きをしたと聞き、もう一度やらせて写真に撮ったら面白いと閃いたんですね。この閃きこそ、彼が超一流のカメラマンであることを示しています。誰しもカメラの前では緊張するものですが、ビートルズは、草原で首輪を外してもらった子犬のように陽気にはしゃぎ回って写真に収まりました。

(2)モハメド・アリとの写真も

チャンピオンになる直前のモハメド・アリ

「あの夜撮った写真を改めて見返してみると、どれもいい仕事だったと思う。でも、この1枚は際立っている。それが私をアメリカへ連れて行ったんだ。バンドが初めてアメリカへ行ったとき、私も同行した。彼らがモハメド・アリに殴られるところを撮ったら、ジョンは、その仕上がりをまったく気に入らなかった。彼らをバカにしたような写真だと言われた。私は、しばらく彼らに口をきいてもらえなかったが、やがて仲直りした。」

これは意外ですね。ユーモア好きのビートルズが、このユーモア満載の写真を気に入らなかったなんて。てっきり彼らが喜んであんなポーズを取ったものだとばかり思っていました。

「私は、これまでたくさんの仕事をしてきたし、またやりたいと思う仕事もたくさんある。でも、これはそのうちの一つではない。なぜあんなにうまくいったのか、自分でもよくわからない。若かったからだろう。」ベンソンはこう謙遜していますが、彼に才能があり努力した賜物だと思います。

 

 

5 ビートルズの写真を次から次へと撮影

(1)ビートルズに密着した2年間

エドサリヴァン・ショーに出演したビートルズ

ベンソンがその後の2年間に撮影した写真の数々が、ビートルズのサクセスストーリーを見事に描いていることは、彼の写真家としての才能を証明しています。その年の暮れには、バンドとともにアメリカでのデビュー・ツアーを撮影し、エドサリヴァン・ショーへの出演やカシアス・クレイ(後にモハメド・アリと改名)との写真など、ビートルマニアがヒステリーを叫ぶようにアメリカを席巻した象徴的な瞬間を不滅のものにしました。

さらに、初主演映画「A Hard Day's Night」の撮影風景や、ジョンのキリスト発言、ジョージのバルバドスへの新婚旅行などもわずか2年間で撮影しました。ベンソンは、ビートルズの姿を撮影することで、その時代の精神をモノクロの写真の中に込めたのです。

(2)ジャーナリストとして

銃撃された直後のロバート・ケネディ

ベンソンは、その後、公民権運動や、アイゼンハワー以降のすべてのアメリカ大統領の写真にその存在感を持たせ、ジョン・F・ケネディの弟であるロバート・ケネディが暗殺された瞬間には、悲劇的なことにその隣にいたのです。彼は、ジャーナリストとしてその瞬間を撮影しました。「私は、自分に言い聞かせ続けた。『これは歴史のためだ。落ち着け。明日失敗しても今日じゃない』」

「写真というものは、たとえ同じストーリーに取り組んでいたとしても、毎日が新しい一日だ。なぜなら、毎日、前日にやったことを修正し、少し前進させたり後退させたりするチャンスがあるからだ」

(参照文献)ガーディアン、ファーアウト

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