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ビートルズを誰にでも分かりやすく解説するブログです。メンバーの生い立ちから解散に至るまでの様々なエピソードを交えながら、彼らがいかに偉大な存在であるかについてご紹介します。

(その130)リンゴ・スターのドラミングの凄さについて~ドラマーによるかなり濃いお話

Why Ringo Didn't Play Drums on The Beatles' First Hit Record

1 リンゴのドラムについてのかなり濃いお話

Sir Ringo Starr: Career in pictures | UK News | Sky News

Facebookのお友達に紹介していただき、2017年7月7日、リンゴの誕生日に東京の恵比寿America-Bashi Galleryで「Vol.3 あのラディックが恵比寿にやって来る!! 」というイヴェントが開催されたので、参加してきました。

ジョージ・マーティンも唸らせたカヴァーバンド「ザ・ビートルース」のリーダーのパウロ鈴木氏、彼と盟友のドラマー、ラディック古野氏、「ビートルズ10」のパーソナリティでおなじみのカンケ氏と、日本のビートルマニアでは知らない人がいない豪華な顔ぶれで、リンゴのドラムについての濃いお話を聴かせていただきました。

2016年に全世界で公開された映画「エイト・デイズ・ア・ウィーク」の日本語字幕監修をされた藤本国彦氏も出席されていました。

以下のお話は、主にラディック古野氏の解説を元ネタに書いています。お話がカルピスの原液くらい濃いので、ドラマーでない人にはピンとこないかもしれません(^_^;)

 

できるだけ分かりやすく解説しますが、なにしろ記憶に頼って書いていますので、記憶違いや聞き間違いがあるかもしれませんが、その辺りはご容赦ください。

なお、写真のドラムキットは、エドサリヴァン・ショーで使われたセットと同じものだそうです。完全に当時のものでネジ1本も違わないのだとか。それにしても良く揃えましたね。

2 ピート・ベストをなぜリンゴ・スターに変えたのか?

ここではあくまで人間関係などは別にして、純粋に音楽的な観点から、ピート・ベストのドラムが、なぜビートルズには合わなかったのか。なぜ、リンゴ・スターと交代しなければならなかったのかについて検討します。

ピート・ベストのドラミングは、音が軽すぎた上に、同じフレーズしか出せないワンパターンだったので、どの曲を演奏しても同じにしか聴こえませんでした。スネアの連打の単調なパターンが続くんですが、そうなると他のメンバーのジョージやポールから不満が出るわけですね。

デッカレコードのオーディションの時は、ピートがドラムを叩いていますが、とても単調に聴こえます。例えば、ライク・ドリーマーズ・ドゥですが、ワンパターンで手数が少ないですね。

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同じくデッカオーディションの時のティル・ゼア・ワズ・ユーです。スネアに加えハイハットも入っていますが、これもワンパターンで単調です。

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次に、リンゴがドラムを担当したアイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼアです。

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ここで重要なのは、リンゴのドラムがポールのベースを全く邪魔していないということです。ポールのベースを最大限に生かすようにドラムを叩いています。

バンドでありがちなのは、ドラムが前に出過ぎてベースやヴォーカルを邪魔してしまうことです。最悪なのは、低音域でベースとバスドラムが被ってしまい、お互いに打ち消し合ってしまうことです。しかし、リンゴは、決してそのようなことはしませんでした。

 

ピートでは、とてもこのようなテクニックは使えず、彼がドラマーのままだったなら、ビートルズがバンドとしてあれ程成功できたかどうか分かりません。それほど、リンゴの果たした役割は重要だったんです。

また、ピートは、ドラムのチューニングが甘く緩い感じだったのに対し、リンゴは、ドラムのスキンをパンパンに張っていました。ドラムのチューニングは非常に重要な作業で、海外ではそれを専門にしている人もいるくらいです。

3 リンゴ・スターからブリティッシュ・ロックのドラムが始まった!

では、デビュー曲「ラヴ・ミー・ドゥ」のピート・ヴァージョンを聴いてみましょう。

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ピートがドラムを叩くと、パターンが古臭くて50年代のオールディーズに聴こえてしまうんです。しかし、リンゴが叩くと我々が知っている、いわゆる60年代のロック・ドラムになるわけです。ドラマーが入れ替わるだけで全然サウンドが違って聴こえてしまうわけです。

多くのドラマーは、リンゴとレッド・ツェッペリンジョン・ボーナムが、同じリズム感、グルーヴ感を持っていると語ります。

ただ、ビートルズのデビュー曲「ラヴ・ミー・ドゥ」では、リンゴのドラムは初版のシングル版のみ採用され、それ以降は、セッション・ドラマーのアンディー・ホワイトのものに差し替えられました。これは、知らない人が意外に多いと思います。

この辺りは、ポール・マッカートニービーチ・ボーイズブライアン・ウィルソンのベースがカッコいいと思っていたら、実はレコーディングでは、全部キャロル・ケイが代わって弾いていたという話と似たような話かもしれません(笑)

それはともかく、現代のロックドラムを始めた一人がリンゴであったことは間違いありません。

4 典型例

これぞリンゴのドラムという典型例だとしてヘルプが挙げられました。

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1番2番の🎵When I was~ではリムショットというテクニックを使用してスネアを叩いています。リムショットとは、スネアドラムのスキンをスティックの先端で叩くと同時に、周囲のリムと呼ばれる金属部分をスティックの中程のところで叩くテクニックです。

言葉だけだと分かりにくいので、分かりやすく解説した動画をご紹介します。リムショットを使った場合とそうでない場合の音の違いに注目してください。

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ヘルプの前半ではリムショットを使っていますから、スッコーン、スッコーンといった金属音が混じった音が聴こえます。

ところが、ブレイクを入れた後の音は、明らかに違っていてタン、タンという音に変わり、金属音は聴こえてきません。ここがリンゴのスゴいところで、たった1台のスネアで違う音を出しているのです。リムショットを止めてスキンだけを叩いています。

まるで楽器が変わったのではないかと思わせるぐらいに音が変わっています。この辺りは、相当ドラムに詳しい方でないと、あるいは耳が良い方でないと気がつかないかもしれません。初めてこのドラムを聴いて違いに気づいた人は、なぜ前半と後半で音が違うのか不思議に思ったでしょう。

何しろ、リンゴがドラムを叩いているところがアップになることは、まずありませんでしたから。特に手元は、なかなか映してくれませんから、分からないんですね。

5 同じメロディーでも叩き方を変えた

このように、3番ではスキンだけを叩いているため音が違っています。同じ曲の中でこんな風にドラムの音を変えるなどということは、当時としてはありえない発想でした。テクニックとしてはとても地味なんですが、物凄いことをサラッとやっているんです。地味なので分かる人にしか分からない。ここがリンゴのスゴいところですね。

余談ですが、リンゴが使っていたスネアは、ジャズフェスティバルという製品です。こういうようにドラムの叩き方を変えるだけでサウンドが変わるというのは、恐らく彼自身が誰に教えられることもなく、自分で編み出したのでしょうが、その辺りは、やはり、天才としか言いようがありませんね(^_^;)

ヘルプでは、前半はジョンが助けてくれと悲痛に叫んでいますが、そのことにリンゴは意識をフォーカスし、ドラムで表現しています。しかし、後半になるとジョンの気持ちがやや落ち着きを取り戻し、若い頃の僕はこんなんじゃなかった、誰の助けも要らなかったんだ、とリスナーに切々と訴えかけるような哀愁を帯びてくるのです。その微妙な意識の変化をリンゴは、同じメロディーでもスネアの叩き方を変えることで巧みに表現しているのです。

ドラムは、ギターやキーボードみたいにコードを弾くことはできません。ドラマーの役割は、ベースと連携して正確なリズムを提供しつつ、グルーヴ感を出してバンドを支えることにあります。

しかし、リンゴは、それに飽き足らず、ちゃんと曲の意味や状況を理解して、それに合わせた音を提供していたのです。

え~、ということで今週はこの辺りまでにしておきます。っていうか、相当マニアックなお話になってますが、皆さんにちゃんと伝わってますかね?(^_^;)

もしも、「今回の話は、ちょっと濃すぎてついて行けないなあ〜💦」という方は、こちらをご覧下さい。

https://www.studiorag.com/blog/fushimiten/the-beatles-ringo-starr

 

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(続く)