1 最後のドラムキット
ゲットバックセッションで使用していたのは、ビッグビートというハリウッドモデルのドラムキットです。色はブラウンですね。これを使用するようになったのは69年に入ってからです。
面白いのがメリーホプキンが歌っていた「ケ・セラ・セラ」という曲のドラムは、このドラムを使用していたんです。っていうか、音で分かるというんですから凄いですね(^_^;)
最初のテイクは、ポールがアコースティックギターを弾き、リンゴがドラムを担当しました。その後、ポールがリードギターとベースを弾き、リンゴもドラムを追加してそれらをオーバーダヴしました。ホプキンスは、アコースティックギターを弾きながらボーカルを担当しました。
彼女は、ポールがモデルのツイッギー(ミニスカートを世界に普及させた女性です)から推薦を受け、アップルレコードで初めてプロデュースしてデビューした歌手です。
結構、ポールは、リンゴのドラムを勝手に使っていたんだそうです。そういえば、こんな写真もありましたね。
ビートルズの解散後、ポールがウィングスの「メアリーの子羊」のPVを撮影した時、リンゴの20インチのダウンビートを使用してるんですね。
これも何だか楽しそうに叩いてますけど、リンゴのドラムですからね(笑)ただ、アップルの所有だったから別に構わなかったのかな?
最後は泥沼離婚みたいな形で解散したのに、何で元メンバーのドラムを使えるのか良く分かりません。リンゴは、一々ドラムを自宅に持って帰らず、アップルに置きっぱなしにしていたために使えたのかもしれませんね。
2 タムは1個だけ!
リンゴは、ビートルズ時代は、一部の例外を除いてタムを1個しか使いませんでした。オリジナルのラディックのドラムキットは、タムが1個しかないんです。もちろん、タムを増やすことはできましたし、当時でも2個以上セッティングしたドラマーも数多くいました。
その意味でリンゴのキットは、極めてシンプルな構成でした。こういうところからも彼のドラムテクニックが大したことがなかったという俗説が生まれたのかもしれませんね。
だって、タムをズラ~っと並べてる方がいかにも腕のあるドラマーっぽく見えるじゃないですか。まあ、見かけは別としても、タムは多い方がドラマーとしては音に変化を付け易いのは事実です。
しかし、リンゴは、「シンプル・イズ・ベスト」でタムは1個で十分だと考えていたんです。むしろ、1個しかないタムで様々な音を出すことの方が大変なんですよ。よほどのテクニックがないと単調になってしまいます。それだけ自信があったんですね。
あるいは、2個あるとハイタム、ロータムというセッティングになりますが、左手でリードするとその使い分けがやりにくかったのかもしれません。この辺りは、左利きで右利きにセッティングしたドラムを使っているドラマーなら分かるかもしれません。
ラディックのバスドラムが納品された状態では、その上にタムを置けるようになっているのですが、リンゴは、何故かそれを使わずわざわざスタンドを使ったんです。
どうもオリジナルのタムの位置が気に入らなかったようですね。この位置にはそれまでシンバルが来ていたので邪魔になったみたいです。
ドラマーの方はお分かりになると思いますが、キットの配置にはスゴい拘りがあるでしょ❓ちょっとでもズレるとイヤですよね。
映画ハードデイズナイトでも、スタッフがキットに触れるだけで、リンゴが不機嫌になってましたから。
3 スネアドラムとスタンド
リンゴは、ドラムのメーカーを色々と変えましたが、唯一このスネアだけは、ビートルズ時代を通じてずっと同じ製品を使い続けたのです。
ルーフトップコンサートでも、このスネアにタオルをかけて使っていました。数としては、数台予備のスネアを持っていたのですが、モデルは全て同じものでした。
映画ハードデイズナイトでは、ロジャース製のバックロジャースというスタンドを初めて使いました。BBCラジオで使っていたものは安っぽい感じでしたが、流石にこれは頑丈にできています。そして、これも今ではとても入手が困難になっているそうです。やはり、ルーフトップで使っていました。
4 シンバルスタンド
シンバルスタンドは、左手で持っているすぐ上の部分がコの地になっていて、そこにネジを取り付けて閉めていました。
しかしこれも非常に不安定で、ヘタをするとシンバルを叩いた瞬間に、ガシャンと落ちてしまう恐れがありました。これも今ではほとんど入手できなくなっています。
5 バスドラム
バスドラムのヘッドのロゴは7種類ありました。ただ最後の一種類は、「レット・イット・ビー」の時に製作されたのですが、結局取り付けられませんでした。
ですから、実際に使われたものとしては6種類ということになります。写真のロゴは、エド・サリヴァン・ショーで使われた最も人気の高いものです。
ラディック氏は、キットもリンゴが使っていた物を完コピして使っていました。すると演奏中にフロアタムの足がポキッと折れてしまい、タムがコロコロと観客の方に転がっていってしまったそうです(爆)
当時のシェルは、ベニヤで出来ていてことごとく壊れてしまい、1年持たなかったそうです。やはりコピーは、本物を超えられないんですね。
ラディック氏は、バスドラムを使っているとフロントヘッドが汚れてしまうので大事に保管しておき、コピーを使いました。友人に器用な人がいて完璧にコピーした物を作ってくれたそうです。
リンゴは、65年にはドラムキット全体をスーパークラシックというモデルに変えてしまうのですが、最後に一度だけその前のモデルが登場するシーンがありました。別にクイズでもないですけど、どのシーンだか分かりますか?もし、分かったら相当なマニアです。
答えは映画ヘルプのシーンです。「恋のアドバイス」を演奏するシーンにこのキットが登場します。ビートルズが演奏し終わると、ドラムキットの床がストンと抜けて、リンゴがドラムキットと一緒に落ちてしまうシーンですね。
このキットが登場したのはそれが最後です。リンゴは、このキットを2台所有していてそのうちの1台が2015年にオークションに出品され、2,200万ドルで落札されました。もう1台の方は、なぜかバスドラムがなくタムとフロアタムだけです。
6 リンゴのドラムキットの配置
リンゴは、フロアタムから入るパターンが多かったのです。普通は、音程の高い方から低い方へ向かって叩くことが多いですが、曲によっては逆のパターンもありました。
「シー・ラヴズ・ユー」の「ドコンドコン」というあのゾクゾクするイントロはフロアタムですね。
リンゴは、左利きでありながら、右利き用のドラムキットで演奏していました。このことについては、以前にリンゴの特集(その43以降、飛び飛びですが)でお話ししたので、そちらをご覧下さい。
大抵のドラマーは右利きで、キットも右利き用にセットされていますが、リンゴは、左利きなのに敢えて右利き用にセットされたキットを使いました。で、右利きのドラマーだと、いわゆる「タム回し」をスネアからタム、フロアタムという風に右手でリードしながらやるわけです。
ところが、リンゴは左利きだったため、このタム回しを左手でリードしながらやるんですが、これが独特のユニークなサウンドを生んだんですね。このことについて語るリンゴです。
普通、右利きのドラマーがセッティングするとこの図のような配置になります。リンゴは、左利きでも敢えてこのような配置でドラムを叩いたんです。
実を言うと、リンゴのドラムキットは、上のノーマルな配置とはちょっとした違いがあるんです。位置が上の図とは違うキットが二つあるんですが、それはどれとどれでしょう?これは、次回までの「宿題」にしておきましょう。写真やライヴの動画を見て考えてみて下さい。
う~ん、相変わらず濃い話だなあ~。私は、書いてて楽しくてしょうがないんですけどね(^_^;)
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(続く)